精霊界での7日目。
- チュン チュン -
いつも通りの朝。鳥のさえずりで目が覚める。窓からは、優しい光りがさしこんでいる。
今日の天気も晴れ。精霊界は、晴れの日が比較的、多いのだろうか?
そして、今日から旅というと大袈裟かもしれないが、それに近い事をしなければならない。
そう言えば、旅の用意って何をすれば良いのだろうか?
今更だけど、レイにメールを送ってみた。
返ってきた返信には、特に何も要らないと言うメッセージ。仲間が何か持ってくるのか?色々と…?とりあえず、出発の準備をする事にする。準備と言っても服を着替えるだけだ。どの服にしようか?もしかしたら、着替えが出来ない事も考えると、戦いに行くって雰囲気の服装の方が良いだろうか?それとも、普通の雰囲気の服装で良いのだろうか…?
悩んだ末、身動きのとりやすい普通の服にした。
- コンコン -
ドアをノックする音、ドアを開けるとレイが朝食を持って立っていた。
レイ 「今日の食事は、お店で買った物です。
食べたらすぐに出発しましょう。」
人間界で言うところの、コンビニのおにぎりみたいな物とパンのような物がさしだされた。
レイと一緒に朝食を済ませ、すぐに宿を出た。
レイ 「本当に戦いに出るのですね。」
私 「あぁ、精霊同士の争いじゃない上に、戦えるのが私しか居ない
のであれば戦わなければならない。
この平和な精霊界を護りたいからな。」
レイ 「ありがとうございます。」
そして、色々と話をしながら歩いていると、ギールの家についた。
いつも通り、兵士が出迎えてくれたが、私はそれよりも旅を一緒にする仲間の方が気になっていた。
どんな精霊が、仲間になるのだろうか…?
接しにくい精霊だと気が重いな。
兵士 「さぁ、ギールさんの所へ案内します。」
レイ 「ありがとう。」
私 「あぁ…。」
ギールは、何か作業をしていたようだが、その作業を中断して話しかけてきた。
ギール 「さて、お前さんに精霊界での名前を与えよう。
人間界の名前のままでは、かなり違和感があるからのぉ。
勿論、お前さんの中で人間界に居た頃の名前を忘れたく
ないなら、覚えていても問題はない。
お前さんの精霊界での名前は、サリアだ。
一緒に行く3人にも、その名前で伝えてある。」
私 「サリア…、ですか?」
ギール 「意味としては、唯一の存在と言う感じで良い。
人間界で育った精霊はお前さん以外に居ないからのぉ…。」
なるほど、人間界で育った精霊は、私しか居ない。
だから、唯一の存在。そう言う事なのだろう。
ギール 「それでは、お前さん達と一緒に行く仲間を紹介しよう。」
そう言うと、ギールは杖を床に向かって数回、叩いた。
ギールの後ろの扉が開き、そこから3人の精霊が出てきた。
ギール 「左から順番に紹介しよう。まずは、ノイル。
君達の健康を考えて料理を作ってくれる。料理担当じゃ。」
ノイル 「よろしく頼む。」
ノイルは男性の精霊。背が高く、水色に限りなく近い青髪短髪。色白で無愛想だ。
まるで、敵意を向けているような感じも受ける。
ギール 「真ん中に居るのが、サシャだ。
サシャは、衣類や身体を今、この出発時の状態に戻す事が出来る。
清潔感を保つには、重要な存在じゃ。」
サシャ 「精霊なら清潔感は大事☆ よろしく~☆」
サシャは女性の精霊。背は、私と同じくらいだろうか。髪を後ろでまとめている。
話し方がゆっくりで、上品な感じを受ける。
ギール 「右に居るのが、ミリアだ。ミリアは、傷を治す力をもっている。
怪我をした時には、頼りになる存在じゃ。」
ミリア 「よ、よろしくお願いします………。」
ミリアは女性の精霊。背は低く、恥ずかしがり屋のようだ。
ボソッとつぶやいたが、かろうじて聞こえた。髪は、セミロング。
私 「私は、サリア。 言い慣れないな…。」
ギール 「そのうち慣れるさ。最初は違和感があるかもしれないが…。」
私 「改めて、私はサリア。悪魔のような存在を消し去るのが目的です。
よろしく。」
私も精霊の事は言えない。なんか、挨拶が素っ気ない。
初対面での第一印象が大事だとは言うが、嫌われたりしていないだろうか?
レイ 「私は、レイ。
シールドを使えますので、ピンチの時は皆様を護れると思います。
よろしくお願いします☆」
レイは、はきはきと自己紹介をしている。凄いな。
でも、自己紹介をしていると言う事は、レイも知らない精霊達なのだろうか…。
ギール 「ノイルは、プロの料理人を目指しておる。
無愛想だが、料理の腕は良い。 そんなに、気にする事は無い。」
ギールは、私の心を読んだ。気にする事は無いと言われても、気になってしまう。
ギールの提案で、食事はギールの家で済ませた。
あまり、会話という会話も無かったが、初対面ならそんなものか…。
各自、荷物を持ち5人で悪魔のような存在を消し去る旅に出た。
ギールの話によると、その本体までは三日もあれば着くという。
ノイルもサシャもミリアも戦うわけではないが、必要な存在だ。
全員で帰らないと、ギールに何をされるか分からない。
私とレイで、この精霊達を護らなければならない。
出発して、数分が経つが会話も無い。ギールの精霊選択ミスじゃないか? これ…。
私 「なぁ、レイ。この中に知り合いは、居ないのか?」
レイ 「サリアが知り合いですよ?」
私 「そう言う事じゃねぇよっ!(ツッコミ)」
レイ 「冗談ですよ。知り合いは居ません。初対面では、話す事も無いです。」
私 「だよなぁ…。」
会話も無く、ただただ歩き続ける5人。周囲から、おかしく見られているんだろうな。
ギールの話だと、この辺りはまだ人が多いが、本体が居るのは精霊の住んでいない所だという。どんな所なのか、想像もつかない。レイを除いて、この3人のうち、誰が最初に何を言うのかも逆に気になる。それにしても、三日間もかかると言うのにこの軽い装備で大丈夫なのだろうか?水分補給の為に、各自水筒だけは持っている。それ以外、私とレイに関しては手ぶらだ。
サシャ 「う~、荷物が重いですぅ~。」
最初の発言は、サシャだった。
そんなに、重そうではないのだが…。
私 「私、手ぶらだし持とうか?」
サシャ 「本当ですかぁ~? ありがとうございます~☆」
サシャの荷物を引き受けたが、言うほどは重くなかった。その後も、歩き続け。
1日目の目的地である場所に到着した頃には周囲は暗くなっていた。
私 「ギールの指示だと、今夜はここで泊まることになりそうだ。
サシャ、地味に荷物が重くなってきたけど、何の荷物だ?」
サシャ 「お弁当ですよ~。夕飯を作ってきました~。」
あぁ、なるほど。私が持っていたのは、お弁当か…。あれ?
料理担当は、ノイルじゃなかったか!?
しかも、お弁当って…、ピクニックじゃないし…。(汗)
レイ 「あれ? 料理担当は、ノイルじゃ?」
ノイル 「残念だが、この辺りに食材は無い。」
ノイルは、食材が無いと料理が出来ないのか…。これ、確実に精霊の選択ミスですよ。
サシャが夕飯のお弁当を持ってきていなかったら、空腹で過ごす事になっていたかもしれないのか…。
私 「サシャ、良い仕事したな。
なんとか、空腹で夜を過ごす事は回避できた。」
サシャ 「いえいえ~、最後まで私が持つつもりだったのですが、ありがとう
ございます~…。」
ノイル 「地面に座るのは嫌だからな。俺が敷物を出してやる。」
そう言うと、無愛想な顔のまま敷物を作り出した。これも、思いの力なのだろうか?
ノイルが作り出した敷物に全員で座り、サシャの持ってきたお弁当を食べる。
かなり美味しい、食材は分からないけど…。
私 「これは、サシャの手作りなのか?」
サシャ 「はい。全部、手作りですよ~。」
私 「美味しいな。」
サシャ 「ありがとうございます~。」
ノイル 「この程度の料理なら、誰にでも作れるさ。」
何が気に入らないのか、ノイルは自分が食べたいものだけ持って何処かへ行ってしまった。でも、敷物は消えない。私達の事、少しは気遣ってくれているのだろうか?
レイ 「一つ気になったんだけど? 全員、初対面なの?」
ミリア 「はっ…、はい。 しょ…、初対面です。」
サシャ 「ギールさん。確実に精霊の選び方を間違ってますぅ~。」
私 「激しく同感する。」
皆、素直に同じ事を思っている。少しずつ、精霊の心を読めるようになってきた感じがする。でも、ノイルの心は読めない。強いて言うなら、私の事をよく思っていない波長のようなものは感じる。ちょうど、食事が終わる頃、ノイルが戻ってきた。
ノイル 「そろそろ疲れてきたから敷物、消すぞ?」
やはり、ノイルも思いの力で敷物を作り出していたらしい。
無愛想だけど、実は良い奴なのかもしれない。
サシャ 「それでは皆さん、一列に並んでくださ~い。」
サシャの発言に皆、従う。ノイルは従いそうにも無いのに従っている。
サシャは呪文のようなものを唱えたが、特に何も変わっていない。
サシャ 「は~い、終了で~す。皆さん、出発時の清潔な状態に戻りました。」
私 「ぇ? 本当に?」
サシャ 「はい、汗もちゃんとスッキリ消えてます~。」
確かに、言われてみると服も出発時と同じような感じだ。
ミリア 「そっ、それでは私は、寝る場所を作ります。」
すると、ミリアは大きな建物を作り出した。
私 「ぇ? ミリアが寝たら消えるんじゃ?」
ミリア 「わっ、私の思いは時間を設定できるので、その時間が終わるまでは
存在させ続ける事が出来ますっ…!」
ミリアは、傷を治す力だけじゃないのか…。
ギール、実は精霊の選択ミスはしていない?
いや、でもノイルは確実にミスじゃ…。
ミリア 「で…、あのっ! カードゲーム持ってきました! やりましょう!
寝落ちするまでっ!」
私 「あれ…? なんか、楽しんでない?」
ミリア 「楽しい事がないと、その…、ほら、あの…。 憂鬱になりますよ!」
ミリアは、恥ずかしいのを我慢して必死で会話をしている。
まぁ、これも時間が経てば慣れてくるので普通になるだろう。
早ければ、このゲームで遊んだ今夜にでも…。
ノイル 「俺はやらない。 悪いけど、もう寝るわ…。」
そう言うと、ノイルは一人、横になった。
ミリア 「だ…、誰もゲームしませんか?(汗)」
言い出した本人が焦っている。断る理由も無いので、ゲームに参加する。
私 「私は、参加する。 ただし、ルールは知らないから教えてほしい。」
レイ 「簡単なゲームですよ。」
サシャ 「今日は、簡単なゲームをして~。明日は、ちょっと難しいゲームを
しましょう♪」
レイ 「私、難しいゲームは苦手です。」
ミリア 「じゃ、じゃあ、今日は簡単なゲームでっ!」
そう言って、私はゲームの説明を受けたが…。人間界で言う神経衰弱だった。
流石に簡単と言えば簡単だが、私には記憶力がない。
結局、何回か挑戦したが私の負けばかりだった。
そして、ゲームをしようと言った本人は、すでに遊び疲れて寝ている。
そのあと、サシャも寝落ちしてしまった。
私 「そろそろ、寝るか?」
レイ 「そうですね。 明日も結構、歩かないとですね。」
私 「なぁ、明日からの食事ってどうなるんだ? 特に朝食。」
レイ 「・・・・・。 気にしたらダメです。」
私 「え? いや、気になるだろうよ?」
レイ 「なんとなります☆ お休みなさい☆」
そう言うと、レイも横になって寝てしまった。私も横になる。
そう言えば、敵らしい敵は現れていないな。
案外、本体しか居ないと言うオチもあり得るんじゃないか?
こんなに、平和な世界なのに…。そもそも、悪魔のような存在ってなんだ?
どんな生物なんだ? 謎は深まるばかりだな。精霊界で、7日目の夜は野宿?
いや、これはキャンプか?
こうやって初対面の精霊同士でも寝泊まりできる。
不思議な感覚だな。人間界では、考えられないような事だ。
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