精霊界での6日目。

- チュン チュン ピピピ チュン チュン ピー -


鳥のさえずり、どうやら眠ってしまったようだ。

窓の外から光がさしこむ。

ベランダに色々な種類の鳥がとまっている。どれも、人間界には居ない鳥達。

鳥達の合唱会だな。今日は、ギールとの勝負か、自信はないな。

そう言えば昨日、洗濯機まわしたまま取り出すのを忘れていた。

レイが朝食を持ってくるまでに、干しておこう。

部屋干しもあれか、外に干しておこう。窓を開けて、ベランダに出る。

意外とベランダも広く、服をつるようの竿もある。私は、その竿に衣類をつるしていった。

帰ってくる頃には、乾燥しているだろう。

干した後の服も、すっごくふかふかで気持ちよさそうだな。

ちょっと、楽しみかもしれない。


- コンコン -


ドアをノックする音、これももう日常になってきた。

ドアを開けると、朝食を持ってきたレイが居る。


レイ  「おはようございます。」


私   「おはよう。」


レイ  「今日の朝食を持ってきました。 食べ終わったら行きましょう。」


私   「あぁ、そうだな。」


レイ  「今日は、部屋にお邪魔しても良いですか?」


私   「あぁ、別に良いけど何もないぞ?」


レイ  「大丈夫です。 食事する間だけですから…。」


私   「それなら、良いけど。」


そう言うと、レイはベッドに座った。

私は、朝食を食べ始めたがちょっとレイの視線が気になる。


レイ  「あ、ファルル充電してる!」


私   「あぁ、電池切れになりそうだったから説明書を読んだんだ。」


レイ  「あぁ、買った時に充電しといた方が良いって言い忘れてましたね。」


私   「あぁ、それにしても1回の充電で、約一ヵ月もつってすごいな。」


レイ  「そうですか? 普通ですよ?」


精霊にとっては、普通らしい。人間界の携帯なんか、毎日充電しないといけないのに…。

精霊界の方が技術は進んでいるのか?


レイ  「あ、洗濯もしたんですね。」


私   「あぁ、昨日はかなり汗をかいたから洗いたかった。」


レイ  「あぁ、その気持ちわかります☆」


私   「仲間だな。」


レイ  「洗濯仲間。」


私   「それは、何だ?」


レイ  「気にしたらいけません。」


どうやら、気にしてはいけないらしい。

どうでも良い話をしているうちに、朝食は終わってしまった。

さぁ、ギールの所へ行くか…。

気が重い。


私   「食事も終わった事だし、行くか?」


レイ  「はい、それでは行きましょう。」


私   「そう言えばレイ、昨日、勝負が終わったのに行くのか?」


レイ  「はい、私は自分で訓練しています。」


私   「頑張り屋さんだな?」


レイ  「そうですか?」


私   「私には、そう見える。」


レイ  「ありがとうございます。」


部屋を出て、エレベーターに向かう。

エレベーターがいつもより早く、私の階に来たように思えるが、これは、何かのいたずらか…?

宿を出て歩く道もいつもより距離が短く感じてしまう。


私   「ギールさんの家、近づいてきていたりしないよな?」


レイ  「まさか、いつもと距離の感じ方が違うとか?」


私   「そう、それっ!」


レイ  「それは、ギールさんとの勝負に緊張しているからですよ。

     私も昨日、そんな感じでしたから、不思議な事ではありません。」


私   「なるほど…。」


どうやら、私の感じ方がおかしい訳ではないらしい。そして、ギールの家についてしまった。兵士がいつも通り、出てくる。


兵士  「おはようございます。 今日は、頑張ってください!」


私   「あぁ、ありがとう。」


レイ  「私からも言わせてください! 頑張ってくださいね!」


私   「あぁ、ありがとう。 頑張ってはみる。 自信は無いけど…。」


そして、レイは自分で訓練するために行ってしまった。そして、私はギールのもとへ行った。が、そこには悩んでいるギールが居た。


私   「ギールさん、今日の勝負。 よろしくお願いします!」


ギール 「・・・・・。」


私   「あの…、ギールさん…。」


私の声が聞こえていないのか? それとも、真剣に悩んでいて気がつかないのか?

ギールは一瞬、こっちを見てため息をついた。何かあったのだろうか?


ギール 「その通り、何かあったのだよ。」


また、私の心を読んだらしい。


私   「何があったのですか?」


ギール 「昨日、ついに犠牲者が1名出た。

      命に別状は無いが、かなりの怪我をしているそうだ。

      お前さんが思っているように、精霊の心に今までとは違った感情が

      生まれつつある。そして、その感情、思いは脅威だ。

      私も最悪の事態は、避けたい。命を落とすものがあってはならない。

      一つ言う。今日の勝負、お前さん、絶対に勝てよ?

      ただし、私も手加減は一切しない。 良いなっ!?」


絶対に勝てと言われて、手加減はしないって…。そんな厳しい事をよく言えるものだな。

手加減くらいしてくれても良いじゃないか…。


ギール 「おぃ!何を甘えた事を考えている!?

      そんな考えでは、やられるぞ?」


ギールは、真剣に言った。 私の心を読んでいる。


私   「すみません…。」


ギール 「私とお前さんの勝負の場を昨日、作っておいた。ついてきなさい。」


ギールはそう言うと歩き始めた。

私も、それに続いて歩き始めた。兵士も一緒に歩いてきている。


兵士  「ギールさん、こんなに早く犠牲者が出るとは思っていなかったのです。

      その分、ショックが大きかったみたいです。」


私   「犠牲者が出る事くらい、予想は出来ただろ?」


兵士  「そうですね。

      とにかく、今のギールさんは感情任せに勝負を挑んできます。

      でも、チャンスですよ。そう言う勝負は、相手に隙を多く作らせます。

      ギールさんの動きを注意深く観察し、隙を見つけたらすぐに

      仕掛ける。それで、勝てる可能性は高くなります。」


私   「あぁ、良いアドバイスありがとう。」


この兵士は、ギールの味方ではないのか…? 私にアドバイスをくれるなんて…。


ギール 「ここで、勝負をする。」


ギールが案内した部屋は、大きな部屋で障害物は何もない。本当に、1対1での勝負だ。ギールに言われるまま、立ち位置についた。そこに、兵士が入ってくる。


兵士  「ルールを説明します。ギールさんに一撃、攻撃を与える事が

      出来ればあなたの勝利です。

      ただし、命を落とすような攻撃は、お互いにしない事。

      それでは、勝負を始めてください!」


兵士のかけ声と同時に、ギールは私と距離をあけた。

この時点で、接近戦は回避されている。

ギールがどのような攻撃をしてくるのかが分からない。

お互い見つめあったまま、何もしない。何もしないまま時間が経過する。


ギール 「ほら、どうした? 何もしないのか?」


挑発なのだろうか? こちらから攻撃をしかけても良いが、もう少し様子を見よう。

ギールは、何もしてこない。ただただ、こちらを見続けるだけ。

作戦なのか何なのかすら分からない。私も、ギールをじっと見つめる。


私   「何故、勝負なのに何もしてこないのですかっ!?」


ギール 「これは、勝負じゃ。その質問には、答えない。」


お互いに見つめあうだけで、時間だけが残酷にも過ぎていく。


ギール 「どうした? そんな事では、私に一撃も与えられないぞ?」


これ以上、じっとしていても何も変わらない。こちらから、攻撃をしかけることにしよう。

しかし、兵士も言っていたが、命を落とすような攻撃をしてはいけない。

つまり、銃撃戦をする場合でも、エアガンみたいな感じで当たれば少し痛いくらいの攻撃にしないといけないのか…。それかボールの様なものを当てるか…。

接近して素手で一撃を与えるか…。どっちみち、試行錯誤しないといけないか。

私は、ギールめがけて走って行った。ギールは動かない。

私は、こぶしをにぎりギールに向けて放った。が、ギールは消えた。

今まで、そこに居たはずのギールが消えた。ギールは、私の後ろに立ち、私の頭を軽くたたいて距離をあけた。瞬間移動でもしたのか…!?


ギール 「瞬間移動と言うよりは、空間移動じゃ。空間を利用して移動した。」


空間移動…。つまり、空間移動をされる前に瞬時に当てられる攻撃をしなければならないと言う事か…。しかも、頭を軽くたたかれた。この時点で、私は攻撃を受けたことになるのか…。これ、勝ち目無いんじゃないか…。(汗)


ギール 「そうじゃのぉ。

      一応、時間を設ける。

      午後になる前に勝負がつかなければ、勝負は私の勝ち。

      すでにさっき、お前さんの頭を叩いたからのぉ。」


私   「・・・・・。 分かりました。」


時間に制限が加わった。ゆっくりと勝負をしている時間は、無いらしい。よく考えろ。

何か方法はあるはずだ…。接近戦が無理なら、銃を使うしかない。

私は強く思い、銃を作り出した。

だが、そう簡単に当たって勝てるような相手ではないだろう。

私は、動きながら銃を撃った。弾が当たれば、服がそまる仕組みだ。

ギールは、弾を弾いた。床が染まっただけだった。

空間移動が出来て、弾を弾く事が出来る。銃も意味がないのかっ!?


ギール 「お前さんの銃の弾、止まって見えるわい。」


確実に馬鹿にされている…。止まって見えるなら、もっと早い弾を撃ち込めばいけるはず。私は、速度の速い弾をイメージして、撃つタイミングを読まれないように近づきながら撃った。当たったか!?

今度は、壁の色が染まった。よけられてしまった。当たったと思ったのに…。


ギール 「お前さん、なかなかやるのぉ。正直、今のは危なかった。

      お前さん、訓練装置のレベルを最大にして訓練したじゃろ?」


私   「はい…。」


ギール 「流石じゃ。最大レベルを突破したのであれば、少し考えれば私に

      一撃を与える事は出来る。勝てる可能性は、ゼロではない。」


ギールは、そう言うが…。速い弾を撃ち込んだのに、よけられた。

これ以上の速い弾は、出せない。

あまり、そこばかりに集中していると逆に集中力がきれてしまう。

どうすれば良い?

両手に銃を装備すれば…。私は、銃を両手に作り出した。勿論、弾の速度は速い設定だ。私は、ギールに向かって走って近づきながら撃つ事にした。

一発、弾をよけられて空間移動をされてももう片方の銃で補えるはず。


ギール 「ほぉ、2つの武器を作り出すとは…。成長しておるのぉ…。」


私は、ギールの言葉を無視して一発、撃った。ギールは、よけた。

そのよけた先に、もう一発、撃ちこんだ。

いけたかと思ったが、ギールは空間移動をして回避した。

そして、私の後ろに立ち、私の頭を軽くたたいた。


ギール 「なかなか、やるじゃないか…。」


後ろを振り向くと、ギールはすぐに空間移動をして私と距離をあけた。


ギール 「お前さんの行動を見つつ、心も読みつつ回避しているが…。

      それでも、ギリギリまで追い詰めるとは…。」


ギリギリだとか、そんなのどうでも良い。早く一撃を与えなければ…。

そう焦るほど、良い案が出てこない。

流石に、火や水の武器は命を落とす可能性のある攻撃。勝負以前の問題になる。よし…。もう一度、両手に銃を装備して背中に小型の自動銃をつけてみよう。

私は、両手に銃を作り出し背中に小型の自動銃を作り出した。

これで、背後にこられた時に撃てば当たるはず。ギールに近づきながら心を読まれないように無心で近づく。一発目。想像通り、よけた。二発目。よし、空間移動。背後にくるはずだ。自動銃、頼むぞ!

が、ギールは背後に回り込まず別の場所に姿を現した。


ギール 「そろそろ、昼が近い。 諦めるか?」


私   「諦めない。 精霊達を護るためにも…。」


押してダメなら引いてみる。この作戦で行こう。超低速の弾を使用する。

私は武器を作り出し、それをギールに向けて撃った。


ギール 「お前さん、何を考えている?」


私   「その質問には、答えない。」


ギール 「こんな遅い弾、当たる訳もない。」


私   「・・・・・・・。」


私は、無心になった。


ギール 「なんだ、この弾? 何か仕掛けが…。」


ギールは、かなり焦っている。


ギール 「・・・・・。」


ギールは、弾をよけようともしない。


ギール 「空間移動…、いや…、よける…、いや………。」


私は無心で、ギールを見続けた。

ギールは時々、私を見つめてくるが弾に意識を集中している。


ギール 「私の負けか…。」


ギールは小さくつぶやいたが、その声は私に聞こえた。

次の瞬間、弾はギールに当たり、ギールは真っ赤に染まってしまった。

が、すぐにギールは術を使いその汚れを落とした。


兵士  「あなたが勝者です。おめでとうございます!」


押してダメなら引いてみろ。

これを試してみたが、本当に効果があるとは…。


ギール 「あの弾には、どんな仕掛けをしていた?」


私   「特に仕掛けはしていないですよ。

     ただ、弾の速度を遅くしただけです。」


ギール 「それでは、私がそのままよけても良かったし。

      空間移動しても何も起こらなかったというのか?」


私   「はい、その通りです。」


ギール 「流石だな。私は、深読みしすぎたようだ。

      こんな単純な攻撃を与えられるとは…。

      お前さんの勝ちだ、戦いに行く事を許可する。」


私   「ありがとうございます!」


ギール 「そして、お前さんは短期間でかなりの力を身につけた。

      今後も現れる敵を倒していくうちに、その力は強くなるだろう。

      まだ、分からないかもしれないが、その力に飲み込まれるなよ。

      力に飲み込まれたら、終わりだからな。」


私   「はい、分かりました。」


良かった。ギールに勝てた。

ギールは、難しく考えすぎていて簡単な事が分からなくなっていたのか。

なんにせよ、勝てたのだからよしとしよう。戦う許可も出たのだから…。


ギール 「さぁ、レイも呼んでお昼ご飯にしようじゃないか。

      午後からは、別の技術を教えよう。」


私   「別の技術?」


ギール 「それは、お昼ご飯を食べた後に教える。」


兵士  「それでは、食事を用意して待っています!」


兵士はそう言うと、走って行ってしまった。

別の技術も気になるが…。

しばらく、ギールと話をしたあと、昼食の場へと行った。そこには、レイも居た。


レイ  「勝てたんですね? 兵士から聞きましたよ。」


私   「あぁ、私も戦いに行く事を許可されたよ。」


レイ  「おめでとうございます。」


ギール 「まさか、私があんな簡単な事で負けるとはな…。」


ギールは、かなり落ち込んでいた。

その後、私とレイとギールと兵士で昼食を済ませ、少し休憩をしたあと、ギールが別の技術の話を始めた。


ギール 「さて、二人に技術の話をする。

      それは、シールドに関する話だが…。」


私   「私が戦う時に、レイにシールドをかけてもらう事で私の身が

     安全になると言う技術ですか?」


ギール 「なんだ、私が言う前に知っておったのか…。」


レイ  「人間界からお連れする時に、シールドをかけました。」


ギール 「本当に驚かせてくれるな。 なら、私から教えられる事はもう無い。」


ギールの話そうとしていた技術、それはもうすでに習得していた。

これで、いつでも戦いに行ける。


ギール 「それでは、戦いに行く日を言おう。明日は、日が良い。

      明日、出発しなさい。

      そして、一緒に行く仲間を3人、勝手に選ばせてもらった。

      彼らは戦う事は出来ないが、旅の道中、力になってくれる事だろう。」


私   「3人ですか?」


ギール 「あぁ、3人だ。良いか? 戦えるのはお前さんだけだ。

      怪我をするのは仕方がない事だが、全員、連れて帰ってこいよ?」


私   「はい、分かりました。」


出発は明日。ついに、戦いに出るのか…。

仲間3人も気になるが明日、会えるのだろう。

その後も色々と話をして、ギールの家をあとにした。


レイ  「3人の仲間って、誰だろう?」


私   「知り合いかもしれないのか?」


レイ  「私も、誰が一緒に行くのか見当もつきません。」


私   「接しやすい精霊だと良いな?」


レイ  「そうですね。旅をする仲間ですからね。気の合う精霊が良いです。」


そんな事を話しながら、宿に帰ってきた。

私とレイはいつも通りわかれて、私は自分の部屋に入った。まだ、夕方にもなっていない。すると、ファルルが鳴った。レイからメールが来ている。

明日に備えて、出かけないかという内容。断る理由もなく、出かける事にした。

一階で待っているようなので、一階までおりる。


私   「お待たせ~…。」


レイ  「はい、それでは行きましょうか。」


私   「あぁ…。」


レイ  「今日の夕飯は、外で食べましょう。」


私   「あの、大きなお店まで行くのか?」


レイ  「はい。色々と見てまわったら、ちょうど良い夕飯時間になると思います☆」


戦いに行く前日に、ちょっと豪勢な夕飯って感じなのかな。

レイは、戦いに行く事に不安は無いのだろうか?

私は少し、不安になってきた。

お店についた私とレイは、色々なお店をまわったりして楽しんだ。

精霊界にもゲームセンターがある事に驚いた。

まぁ、私はお金を持っていないので遊べなかったけど…。

レイの言う通り、店内をまわったらちょうど良い食事の時間になっていた。

今日は、何を食べさせてくれるのだろうか?


私   「今日は、何を食べるんだ?」


レイ  「そうですねぇ~。 数日間、この辺りにも来られないと思うので豪華な

     食事をしたいと思います☆」


私   「豪華って言っても、私には何が高級食材だとか分からないぞ?」


レイ  「とにかく、美味しければそれで良いじゃないですか☆」


私   「まぁ、それはそうだけど…。」


すると、レイは外見からして高級そうな飲食店に入った。

中のデザインも高級そうで、精霊達が生演奏で曲を弾いている。

レイに注文は、任せた。しばらくすると、料理が届いた。

一つ一つ食べていくが、どれも美味しい。流石は、高級店?だなと思う。


私   「レイ、戦いに行く事に不安は無いのか?」


レイ  「不安はありますよ。でも、選ばれたのだから行くしかないです。」


私   「私も不安だな。精霊達を護りたい勢いで、ここまで来たが…。」


レイ  「その気持ちが大事です☆」


レイは、笑顔で答えた。

その後、食事を終えた私とレイは店をあとにして暗くなった夜道を宿に向けて歩いた。


私   「そう言えば、夜になると危険生物が出たりとかは無いのか?」


レイ  「あぁ、そう言うのは無いですよ…。でも、野生の動物は怖いかも?」


私   「野生の動物が出るのか…。」


レイ  「でも、シールドを作れるので私は怖くありません。」


私   「なるほど…。」


夜道だが街灯の明かりで真っ暗ではない。時々、歩いている精霊も居る。

散歩でもしているのだろうか?

宿に着いた頃には、私も疲れていたし、レイもかなり疲れているようだった。

お互いに、お休みと挨拶をしてわかれた。流石に、自分の部屋までが遠い。

自分の部屋に入るなり、ベランダを見て服を干していた事に気づく。

湯船に温泉を入れながら、洗濯物をとりこむ。

たたむのが面倒なので、ハンガーにつるしておく。

服を脱いで、湯船がいっぱいになるのを待つ。

湯船がいっぱいになった瞬間、私はお風呂にダイブした。


私   「ふぅ~~~!!!!!」


やっぱり、声が出てしまった。ギールに勝てた安心感もあり、かなり緊張がとける。

いつも以上に効く温泉。素晴らしい♪ シャンプーは、二回もしてしまった。

旅に出たら、シャンプーは出来なさそうだ。適度にお風呂も済ませ、ベッドにダイブ!

この幸せなベッドで寝られるのも、今日で終わりなんだなぁ。

明日からは野宿決定か…。眠れるのかなぁ。地面に寝るとか、私にできるのか…?

その辺も含めて不安しかない。ベッドに仰向けになって、ファルルで適当な番組を流す。

そう言えば、仲間が3人居るって言っていたけど、彼らもファルルを持っていて連絡先交換とかする事になるのかな…。そして、悪魔のような存在の姿をまだ見ていない。

どんな敵なのか、そこも気になる。知らない事だらけだな。

でも、確実に人間界よりは安心できるし、平和。この平和がずっと続くと良いな。

人間界、今、どうなっているのだろう?

私が身を潜めていた場所も、今は崩壊とかしているのだろうか?

それか、戦争はもう終わっているのだろうか?

私が精霊。確かに感じ方は、人とは違うって思っていたけど、本当に精霊だったんだな。

こんな力が、私にあったなんて…。この力を。

精霊達を護るために使えるなら使わないとだな。精霊を傷つける存在は、許せない。

こんな事を考える私は、危険な精霊なんじゃないのだろうか?

武器を作れる精霊という存在も私だけ…。

私こそ、この精霊界の脅威では無いのだろうか?

そう考えると、私のこの世界での居場所も無さそうな気がする。

確かに精霊達が私の心を読めたとすれば、彼らに良い影響は与えない。

マイナスの事しか起こらない。ギールの術は、本当に正しい事だったと思う。

私は最近、精霊の心が読めるような感じがしてきた。精霊の心は、本当に綺麗だ。

私は、精霊でありながら人間界で育ち、確実に汚れている。

でも、その汚れで精霊達を護れるのであればそれはそれで、良い結果でもあるのだろう? 考えれば考えるだけ複雑になってくる。

今は、明日に備えて寝よう。精霊界に来て、6日目の夜…。

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