精霊界での3日目。
― チュン チュン ―
鳥のさえずりで目が覚めた。
ピピピピピって言う鳴き声は、音にしか聞こえないがチュンチュンなら鳥のさえずりだと思える。ベランダを見てみると、小さな小鳥が二羽ほど居た。暖かい光に包まれる朝、人間界に居た頃の目覚めとは全然違う。
何かこう、一日が始まった。頑張ろうと言う気にさせてくれる。
これは、精霊界の力なのだろうか?
外出用の服を着て、ファルルをいじっていたらドアをノックする音が聞こえてきた。
レイが朝食を持ってきたのだろう。
- コンコン -
私 「おはよう。」
レイ 「おはようございます。よく眠れましたか?」
私 「あぁ、よく眠れた。 今日の朝食も昨日と同じだな?」
レイ 「朝食は、だいたいこんな感じですよ?」
私 「そうか。 食べ終わったら出かける感じでいいのか?」
レイ 「はい、一階の休憩室でお待ちしています。」
そう言うと、レイは歩いて行った。
私もお腹がすいていたので、朝食を食べた。
昨日と同じメニューでも食材が分からないし、初めて食べたものだから飽きと言うものがこない。美味しい。食べ終えた私は、一階で待つレイのもとへ向かった。
私 「お待たせ~。」
レイ 「そんなに待ってはいませんが、おぉ~! 似合うじゃないですか服!」
やはり、服に関しては気になるのか…。
似合うと言われると少し照れてしまう。
私 「そうか? まだ、ちょっと慣れないけど…。 ありがとう。」
レイ 「さぁ、それでは、ギールさんの所へ行きましょう♪」
こうして、私とレイはギールの家に向かった。ギールの家では、兵士がまた出迎えてくれた。
兵士 「ようこそ、さぁ、中へ…。」
レイ 「はい。」
私 「あぁ…。」
兵士に案内され、いつも通りギールの居る部屋へ連れて行かれる。
ギール 「今日から訓練を始めるが…。少し、厄介な事になった。」
私 「厄介な事ですか?」
ギール 「あぁ、悪魔のような存在が動き始めている。お前さんには、早く技術を
身につけてもらわないと………。厳しくいくぞ?」
私 「はい、頑張ります。」
レイ 「頑張ってくさいね。」
ギール 「レイよ。何を言っている?お前さんも、今より術の腕を上げるのじゃ。
まだまだ、お前さんも力をつける事は出来る。
2人とも訓練をするのじゃ。」
レイ 「はい、分かりました。」
私 「それでは、ギールさん。 お願いします。」
すると、ギールは私を訓練施設に案内した。レイは、別の場所で自分なりに技術をつけていくらしい。それにしても、この訓練施設。的以外、広いだけで何もない。
どんな訓練をするのだろう…?
ギール 「この訓練施設は、ただ広いだけではない。
見ての通り、止まっている的と動く的を用意してある。
おそらく、銃系の装備が必要になる。
訓練と言っても、的を撃ちぬくだけの訓練だ。最初は…。
的をうまく撃ちぬけるようになれば、今度は攻撃する機能も用意した。
そして、最終試験は、私と勝負をしてもらう。」
私 「かなり、念入りですね?」
ギール 「私も戦いに行かせる以上、生きて帰ってきてほしいからのぉ。」
ギールは、全員に生きて帰ってきてほしいらしい。
まぁ、私なんかは死んだとしても誰も悲しまないだろうが、精霊界で育った精霊達はそうもいかない。私は、悪魔のような存在と戦いつつ精霊も護っていかなければならないな。
しかし、訓練。いったい、何をすれば…。
ギール 「それでは早速、訓練を始める。」
私 「はい、お願いします。」
ギール 「まずは、小型の銃で一発ずつ撃てるものを出せ。」
私 「ぇ? どうやって…?」
ギール 「手を出し、その手に銃が出てくることを強く思うのじゃ…。」
ギールが言うには、私の手に銃が出てくる事を強く思えば銃が出てくるという。
そんな事、ある訳がない。でも、ものは試しなのでやってみる。
私 「・・・・・。」
ギール 「思いが足らん! もっとしっかり、思え!」
私 「・・・・・・・。」
ギール 「その調子だ…。」
私の手に、小型の銃が姿を現した。
私 「出来ましたっ!」
銃が出てきた事に驚きと嬉しさから、つい言葉に出してしまった。
が、銃はすぐに消えてなくなってしまった。
ギール 「集中しろ。思いの力が弱くなれば当然、武器も消える。しっかりと
思い続けなければ、撃つ事も出来ないぞ?」
私 「はい…。」
ギールは、私に厳しく言った。思いの力が弱いと、銃も消えてしまう。
的を撃ちぬくまでは、気を抜いてはいけないと言う事か…。
少し難しいかもしれない。
ギール 「まぁ、良い。 今度は、その銃であの的を撃ちぬくのじゃ…。」
私 「はい…。」
私はまた、強く銃が出てくる事を思い銃を作り出した。そして、思いの力を変えずに銃を的に向け、弾を撃った。人間界の銃のように、発射時にでる音は無い。
静かに弾だけが、的を撃ちぬいた。撃ちぬいた事に気が抜けた私は、思いを弱めた。すると、銃はすぐに消えてしまった。
ギール 「やるじゃないか。次は、連発で撃てる銃を作り出して、あそこにある
大きな的を出来るだけ、撃ちぬけ。」
私 「はい、分かりました。」
私は、マシンガンをイメージして、それを生み出せるように思いを強くした。
すると、マシンガンでは無いが、連発で撃てる銃が姿を現した。
そして、それをかまえ大きな的めがけて弾を撃ち込んだ。
大きな的は、ハチの巣状態になり折れた部分もあった。
思いの力とは言え、なんだか疲れてしまう。
気を抜いたら、すぐに銃は消えてしまった。
ギール 「お前さん、なかなかやるのぉ。 どうじゃ? 疲れたじゃろ?」
私 「はい…。」
ギール 「思いの力と言うのは、簡単なように見えて真剣に取り組めば
疲れてしまうものなのじゃ。だが、これも何回も使っているうちに
持久力がついていき、更に長く能力を使え、兵装も強くする事が
出来る。思いの力で、色々な兵装を作れるのがお前さんの能力じゃ。」
私 「でも、それって…。」
ギール 「あぁ、使い方を間違えれば大変な事になるが、お前さんは大丈夫
じゃよ。少し、休憩を入れよう。休憩を終わらせたら次は、攻撃を
回避しながら、的を撃つ訓練じゃ。厳しいからのぉ。
覚悟をしておけ。」
そう言うと、ギールは何処かへ行ってしまった。
休憩か…。まさか、私にこんな力があっただなんて、それだけでも驚きだ。
むしろ、武器が作れるようになったのなら戦いにも行けるんじゃないか?
でも、相手の攻撃を回避しつつ、銃を作るなんて事は、出来ないかもしれない。
難しいな。色々と考えていると、ギールが戻ってきた。
ギール 「さぁ、次の訓練じゃ。攻撃をよけつつ、銃を作り出し的を撃つ。
先に言っておくが、簡単な訓練ではないぞ? 安心しろ。
少し怪我をしたくらいであれば、治癒の術ですぐに治る。」
私 「分かりました。」
ギール 「最初だからと言って容赦はしない。的を2つ撃ちぬいて最後に
あの大きな的を撃ちぬくんだ。」
私は、心配だったが訓練を受け入れた。1つ目の的はすぐに撃ちぬけた。
が、2つ目の的は攻撃をしかけてくる。
攻撃をよける事は、ギリギリできるが考え事をしながらだとよけきれない。
思いを強くするなんて不可能だ。攻撃をよけるばずつ、体力も失われていく。
でも、逃げ回っているだけでは何も解決しない。
攻撃をよけながら、なんとか小型の銃は作り出せた。
的に向け、撃とうとしたその時、攻撃に当たってしまった。
右腕に切り傷が出来てしまった。
すると、その痛みに思いが消され武器は消えてしまった。
ギールが、訓練の装置を停止させた。
そして、ギールは私の右腕を見て、治癒の術で傷を治した。
ギール 「どうじゃ? 意外と難しいじゃろう?」
私 「・・・・・。」
ギール 「お前さんは、こんな状態で戦いに行くと言っていたのだぞ。
無謀にも程がある。」
私 「そうですね…。」
正直、悔しかった。
でも、そこまでの力がないのは私の能力不足。
いや、経験不足か…。
ギール 「気を落とす事は無い。 初めのうちは、そんなものだ。」
私 「しかし、早く悪魔のような存在を消し去らないと、一人でも怪我を
負ったり殺されたりした時には、そこからこの平和な世界が崩れて
いくような気がします。憎しみなんかは、もってほしくはない。」
ギール 「・・・・・。」
私 「被害が出る前に、解決したいんです。」
ギール 「それは、私も同じような考えではある。
私も全然、焦っていない訳ではない。」
私 「とりあえず、全力を尽くします。」
ギール 「あぁ、その意気だ。 しかし、今日の訓練はここまでだ。
あまり無理をすると、明日の訓練にも響くからな。」
私 「分かりました。」
ギール 「まだ、夜になるまで時間はある。 精霊界を見てまわると良い。」
ギールは、明日も来るようにと言い残して去って行った。
私は、レイを迎えに行き一緒にギールの家をあとにした。
レイ 「訓練、どうだった?」
私 「・・・・・。」
レイ 「おもわしくなかったの?」
私 「いや、色々と不安で…。 おもわしくなかったのも事実だ。」
レイ 「私も最初は、全然ダメだったよ。 術とか…。」
私 「そうなのか?」
レイ 「シールドも作れなかったし、失敗ばかりだった。」
私 「・・・・・。」
レイ 「それでも、失敗は成功への近道じゃん?
今では私、結構な力を持っていると思う し☆ 少し自信はある。
今回の戦いに行くのだって昔の私なら、きっとギールさんは
一緒に行く事は許可してくれなかった。
だから、私はもっと力をつけるし、お互いに頑張りましょう!」
レイは、笑顔で言った。レイの心が少し読めたような気がした。
確かに、その発言には裏も何もない。レイの素直な言葉だ。
レイ 「そうだ、まだ夕方まで時間あるし街中にでも行ってみる?」
私 「あぁ、帰ってもする事は無いし気分転換に…。」
レイ 「街中で売っている物も、色々と良い物があるよ。」
そんな訳で、街中にやってきたが売られている物はアクセサリーや食材がほとんどだ。
でも、ちょっとした食べ物なんかは、ここで買えたりできそうだ。
レイ 「この辺りでは、食材やアクセサリーを買う事が出来ます。」
私 「いまいち、どの食材にも馴染みがないなぁ。」
レイ 「そうですよね。 ほら、あぁ言うアクセサリーを売っています。」
アクセサリーも種類が豊富で、私好みの物もある。
が、流石にアクセサリー系は生活に必要なものではないので、自分のお金で買えるようになったら買いに来ることにしよう。
レイ 「試食を置いてあるお店もあるので結構、楽しいですよ。
はい、これも試食です♪」
レイが私に試食品を手渡すが、どう見ても普通に買わなければならないサイズだ。
私 「これ、本当に試食なのか?」
レイ 「はい、大きくてボリュームもありますが試食ですよ。
ちゃんと食べて、味わってから買ってほしいのです皆。」
私 「なるほど…。」
その試食品を食べながら、私とレイは宿に向かった。
周囲が暗くなり、もう夜になろうとしている。
そう言えば、温度変化があまりないのは何故だろう?
私 「精霊界って温度変化は、そんなに無いのか?」
レイ 「風や雨や雪とかはありますけど、温度変化は特にはないですね。
温度変化がなくても時期によっては雪で、人間界の雪はとけるかも
しれないけど、精霊界の雪はこの温度でも普通につもりますし…。
言うほど、冷たくもないです。人間界で育ったあなたからしたら
それはまた、衝撃的だと思いますよ☆」
確かに、この温度で積もる雪の時点ですでに衝撃的だ。
暑くもなく寒くもなく、ちょうどいい感じの温度。
宿に着いた私とレイは、また別々にわかれた。挨拶だけして、私の部屋へ向かう。
いつも通る自動販売機の商品が最近、気になって仕方がないけど、お金がないので買えない。いつか、自動販売機の商品も自分のお金で買えるようになるのだろうか?
それにしても、今日は疲れた。夕飯前にお風呂に入って、くつろいでおこう。
ベッドも昨日と同じように完璧なベッドメイキング。
凄い…。精霊って、几帳面なのかな…。
お風呂に温泉を入れながら、服を脱いでお風呂に入る準備をする。
これ、明日は筋肉痛になるんじゃないだろうか…。
それとも、筋肉痛になる事を考えて、ギールはあそこで訓練を終わらせたのか?
謎だ。さて、そろそろお風呂に入ろう。湯船に肩までつかると、すごく気持ちいい。
疲れが一瞬でふきとぶような感じがする。シャンプーも良い香りだし、言う事なしだな。
いつも通り、お風呂に入って身体を洗ってお風呂から出た。そして、ベッドにダイブ!
この瞬間が何気に楽しい♪ そんな私は、子供か?
ファルルでテレビをつけてみる。面白そうな番組があったので流す。お笑い番組らしい。
お笑い番組を見ていたら、ドアをノックする音が聞こえた。
- コンコン -
レイが夕食を持ってきてくれた。
レイ 「あれ? もうお風呂に入ったんですか?」
私 「なんか、温泉、気に入ったから入ってしまう。」
レイ 「それは、良かったです。 こちらが、今日の夕飯です。」
私 「ありがとう。」
レイは、夕食を置いて行ってしまった。今日の料理は、お肉…なのか?
ミートボールみたいな感じの食材がお皿にもられている。それと、これはサラダ。
これが、ご飯みたいなものかな…。○○かな? 的なノリで食べているけど、いつかはこの食材がなんなのか分かるようになりたい。どれも、美味しいし…。
そんな事を思いながら、いつも通り、残すことなく全て食べ終えてベッドに横になった。明日から、生活スタイル、少し見直さないといけないな。
食べてからすぐ横になるのは、ダメだな。
お風呂を食後にするとか、試行錯誤してみるか…。
これで、眠りについたら、3日目の夜か…。
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