王子様はまだ恋を知らない。〜After story〜(2)
何て事を言ってしまったんだろう。
陸斗くんに嫌いだよとか最低すぎる。
「私、子供だな・・・」
こんなんじゃもう終わりかもしれない。
「みっちゃん、みっちゃん」
陸斗くんは私より佐々木さんって子のが良いのかもしれない。
「桜木!!」
はっ!
姫島くんが大声で私の名前を呼び、私は気がつく。
「ご、ごめん」
「みっちゃん、大丈夫?さっきからずっとぼーっとしているわよ」
「らしくねぇな?」
「あはは。大丈夫、大丈夫!」
「もしかして、陸斗とケンカしたとか?」
「う・・・」
「なーにやってんだか。あいつは」
「り、陸斗くんは悪くないよ!私が・・・いけないの」
「あたし達にもう遠慮しなくて良いわよ。話して?みっちゃん」
「全部吐き出せ。友達だろ」
「綾ちゃん・・・姫島くん・・・」
私は二人に全て話した。
最近陸斗くんがアルバイト漬けな事、仲良い女の子ができた事、嫌いだと私が言ってしまった事。
「それは・・・陸斗が悪いな」
「そうね。あたしもそう思う」
「えっ?」
「みっちゃんが不安になるのは当然よ。付き合ってまだ短いんだし。だから言ったのよ。みっちゃんに甘えすぎるなって。みっちゃんだって甘えたいし、もっと一緒にいたいのよね」
「でも、それは私のワガママで。陸斗くんを困らせるだけだよ。もしかしたら気持ち離れちゃったのかな・・・」
「ユイユイ、どうする?」
「確かに俺らは陸斗がバイト漬けな理由知ってるけど・・・俺らが言ったって陸斗にばれたら大変だよな」
「そうね」
綾ちゃんと姫島くんはこそこそ何か話している。
「二人とも?」
「みっちゃん。ワガママになって良いのよ。彼女、なんだから」
「綾ちゃん・・・」
「陸斗がみっちゃん以外好きになるとか絶対ありえないわよ。ね、ユイユイ」
「そうだな。あいつ、めちゃくちゃ桜木好きだよ。さっき帰る時だってすっげぇ暗かったし」
「ドアに頭ぶつけてたものね。あれは重症だわ」
「きっと桜木に嫌いって言われたのが響いたんじゃね?」
「全く。陸斗は本当ーに不器用なんだから!」
「これは俺らが一肌脱ぐしかねぇな、綾斗さんよぉ」
「ふふっ。そうね」
「姫島くん、綾ちゃん・・・?」
「大丈夫よ、みっちゃん。あたし達が何とかしてあげる」
「俺らに任せとけ!桜木!」
だ、大丈夫かな?
3人がケンカにならないと良いけど・・・。
私はずっと陸斗くんの事を考えて思い悩む。
嫌いなんて言いたくなかった。
本当は大好きだよ。
大好きだからこんなにも不安になる。
付き合って安心し切ってた、私。
だめなのかな?私達。
私がずっと泣いていると、夜中に陸斗くんからLINEが来た。
(夜中にごめん。今から会える?)
陸斗くん!!
(どうしたの?)
私は返信する。
(ちゃんと話がしたい)
っ・・・
もしかして別れ話だったりして。
怖い・・・。
私が返信出来ずにいると、またLINEが来た。
(蜜葉の家の前にいる)
えっ!?
私は二階にある自分の部屋の窓を開け、外を見る。
「陸斗・・・くん」
「ごめん。夜中に。どうしても話したかったんだ!」
「どうして・・・?」
「綾斗と結斗に蜜葉が泣いてるって聞いていても立ってもいられなくなった」
っ・・・
私は走って家を飛び出す。
「蜜葉・・・」
「ごめんなさい!嫌いなんて言ってごめんなさい!」
私は陸斗くんに抱きつき、言う。
「大丈夫だから。全部、俺が悪いんだ」
「陸斗くん・・・?」
「蜜葉を不安にさせた俺が悪い・・・」
「陸斗くんは悪くないよ!私がだめだめなの。怖くなっちゃったんだ。私ばっかり好きなのかなって。陸斗くんが他の女の子好きになったらどうしよう、とか」
「バカ蜜葉」
「へ?」
「俺の気持ちなめるな。俺は蜜葉じゃなきゃだめだ。蜜葉が思ってる以上に俺は蜜葉を愛している」
「陸斗くん・・・」
陸斗くんは優しい微笑みを浮かべている。
何、勘違いしていたんだろう。
陸斗くんはちゃんと私を好きでいてくれてるのに。
こんなだめな私を。
「蜜葉?」
「ごめん、ごめんなさい・・・陸斗くん」
「俺もごめん。蜜葉の気持ちちゃんと考えられてなかった。俺、バカだ」
「嫌いって言ってごめんなさい!私、本当は陸斗くんが大好きだからね」
「ーー知ってる」
陸斗くんはそう言うと、私の唇を塞いだ。
「蜜葉、また下向いてる」
「だ、だってまだ慣れないんだよっ」
「可愛い。本当に本当に蜜葉は可愛いな」
っ!
「そ、そういう事言われると、めちゃくちゃ照れます」
「照れ顔も可愛い、萌え」
「り、陸斗くん!・・・っくしゅん!」
「蜜葉、風邪引く」
「あはは。パジャマで出ちゃったから。そろそろ戻らないと。お母さんにばれたら大変」
「俺のコート貸す、もっと話したい」
「陸斗くんが風邪引いちゃうよ?」
「む・・・」
「なんかロミオとジュリエットみたい」
「ああ。俺がロミオで蜜葉がジュリエット」
っ・・・
「なんか言ってて恥ずかしくなるね。あはは」
「蜜葉はもっとワガママ言って良い。俺、蜜葉に甘えて欲しい」
「う、うん!もうケンカ・・・したくないよ、私」
「大丈夫。俺は蜜葉を嫌いになったりしないから。だから蜜葉もずっと俺だけを好きでいて」
「あ、当たり前だよ!」
「じゃあ、そろそろ帰るな」
「陸斗くん、おやすみなさい」
「おやすみ、蜜葉」
陸斗くんは私の頭を優しく撫でると帰った。
不安になる事無かった。
私は考え過ぎていただけだ。
陸斗くん、ごめんなさい。
本当に本当に大好きだよ・・・。
ーークリスマスイブになると、私達は遊園地へ。
「校外学習で行って以来だ」
「本当だね。あ、陸斗くん!見て!おっきなクリスマスツリーがあるよ!綺麗ーっ!」
私は大きなクリスマスツリーに見惚れる。
クリスマスツリーはその遊園地の動物のキャラクターのオーナメントとたくさんのカラフルな玉やジンジャーマンのクッキーのオーナメントが飾られていてとても可愛らしい。
私がツリーに目を輝かせてると、後ろからシャッター音が聞こえた。
「陸斗くん、今撮りました?」
「うん。蜜葉隠し撮り」
「変な顔してたかも」
「そんな事無い。蜜葉はいつも可愛い」
「っ・・・そういう事言うの、ずるい」
「たくさん隠し撮りするつもり」
「じゃあ、私もたくさん隠し撮りしてやる!」
陸斗くんとクリスマスに二人っきりでデートこんなに幸せな事って無いよ。
「蜜葉、俺はカピバラの耳つける。蜜葉はうさぎで」
「うん!」
二人で遊園地のキャラクターの耳のカチューシャをつけて歩き回る。
それだけでこんなに楽しい気持ちになる。
私は陸斗くんに幸せを貰ってばっかり。
私も陸斗くんに幸せを与えられてると良いなぁ。
「蜜葉、ジェットコースター乗ろう」
「あ、あの速そうなの!?」
「ん。蜜葉と乗りたい」
「り、陸斗くん!待ってー!」
陸斗くんとずっと一緒にいたい。
私、こんなに誰かを好きになったのは初めてなんだよ。
「蜜葉、ショーやってる。キャラクター皆可愛いな」
「ね!うさぎさんサンタの格好していて可愛いなぁ」
「一緒にダンスしなきゃいけないみたいだな」
「えっ!?私、上手く出来るかな」
「こんな感じか」
「わっ!陸斗くん、さすが!ダンスも出来るんだ!」
「蜜葉も」
「えっと、こう?」
「蜜葉、右足と左足が反対」
「え?えぇっ!難しい!」
「蜜葉、運動音痴」
「陸斗くん笑いすぎ!もう!」
陸斗くんとたくさん乗り物に乗り、ショーやパレードを見ると、あっという間に夜になってしまった。
「そろそろ帰ろう」
「そうだね。あ、ケーキ買ってこ?」
遊園地内のイタリアンレストランで夕飯を済ませると、私達は遊園地を出る。
あっという間だったなぁ。
でも、今日は特別。
陸斗くんちにお泊まりするんだ。
「来年また来よう、蜜葉」
「うん!」
「来年もまた蜜葉の下手っちょダンス見るの楽しみにしてる」
「陸斗くん、もう忘れてー!」
だけど
お泊まりって・・・陸斗くんと一晩中二人っきりって事だよね?
もしかしたりする?
どうしよう!
そんな余裕無いよ!
「蜜葉、ケーキたくさんある。どれが良い?」
「え、えっと・・・」
「好きなの選んで」
「じゃあ、このブッシュドノエルかな?サンタさんとトナカイが乗ってて可愛い」
「決まり」
私と陸斗くんはケーキを買うと、陸斗くんの家に向かう。
「可愛いのが買えて良かったな」
「う、うん!」
陸斗くんと二人きり、陸斗くんと二人きり・・・。
陸斗くんの家は高層マンションだった。
やっぱり創作研究部の男子皆、お金持ちばっかりだ!
「ここ」
「お、お邪魔します」
陸斗くんの家は7階。
私は陸斗くんの家に上がる。
「ここ、俺の部屋」
わっ!
陸斗くんの部屋の壁一面にはライアスのポスターが貼られており、本棚にはライアスの関連書籍や演劇関係の本がたくさん並んでいる。
「すごいライアス愛に満ちた部屋だね」
勉強机にはたくさんフィギュアもあるし。
「ん。自分では気に入ってる。あ、紅茶入れてくる。ついでにケーキも切る」
「え?わ、私が・・・」
「蜜葉は来客だ。休んでて」
「あ、ありがとう」
お泊まりするんだよね・・・。
まさかキス以上の展開が!?
私、心の準備出来てないよ!
「んー・・・ケーキ美味い」
「うん!すごく美味しいね。来年もここのケーキ屋さんにしなきゃ」
「うん。ご馳走様!」
意外と早くケーキ食べ終わっちゃった。
これからどうしよう?
「蜜葉」
「ん?」
「左手出して」
「左手?」
私は陸斗くんに言われると、陸斗くんの前に左手を差し出す。
すると
陸斗くんは私の左手の薬指に何かをはめた。
これって!?
左手の薬指にはシルバーリングがきらりと光っている。
「陸斗くん・・・もしかしてずっとバイトしてたのって・・・」
「蜜葉にどうしてもプレゼントしたい物だったから。言えなかったせいで蜜葉を不安にさせてすまなかった」
「う、ううん!私の為だったのに怒ってごめんなさい!」
「気にするな。実は俺も同じのを持っている」
陸斗くんも左手の薬指に指輪をはめ、私に見せながら言う。
「ペアリング・・・」
「蜜葉とお揃いの物、欲しかったから」
「嬉しい!大事にするよ!陸斗くん」
私が言うと、陸斗くんは微笑む。
そして
私の手を取る。
「陸斗くん・・・?」
「今はまだ安い指輪しか渡せないけど、いつかはもっと良い指輪を渡すから。だから待ってて欲しい」
「え・・・」
「蜜葉、俺と結婚を前提にお付き合いしてください」
陸斗くんは私を見つめ、言った。
っ・・・
「そんな事言われたら、嬉しくて泣いちゃう。バカ!陸斗くんのバカ!オッケーに決まってるよ」
「蜜葉・・・」
陸斗くんは私を優しく抱きしめる。
「絶対絶対幸せにするから」
「はい・・・」
「本当に本当に大好きだよ、蜜葉が」
やっぱり陸斗くんは私に幸せばかりくれる。
大好きだよ。
私、陸斗くんとずっとずっと一緒にいたい。
おじいさんおばあさんになってもずっと。
「陸斗くん」
「ん?」
私は勇気を出して陸斗くんにキスをする。
「隙あり」
「な、な、なっ!?み、蜜葉!?」
「陸斗くん、動揺しすぎ」
「そんなめちゃくちゃ可愛い事するとかずるいです、蜜葉さん」
「えへへ。私だって陸斗くんに迫りたいもん」
「蜜葉め・・・」
「私もプレゼントがあるんだよ」
「え?」
「はい!メリークリスマス。陸斗くん」
私は陸斗くんにプレゼントを渡す。
陸斗くんは中身を取り出す。
中から出て来たのは腕時計。
「これ、有名ブランドの・・・」
「やっぱり陸斗くんへのプレゼントだし、身につけられる物渡したいなぁって。陸斗くんっぽい雰囲気を感じて買ったの」
「あ、ありがとう!蜜葉!すっげぇ大事にする!」
良かった。
陸斗くん、喜んでくれた!
だけど
プレゼント交換会が終わったとたん、私はまた緊張し始める事になった。
私が先にお風呂に入り、今は陸斗くんが入浴中。
部屋には一つのベッドしか無く、陸斗くんが来客用の布団を用意する気配が無い。
やっぱりそう・・・なるのかな。
ど、どうしよう!
まだ私にはいっぱいいっぱいだよーっ!
だけど
陸斗くんは私が思ってる以上に早くお風呂から上がった。
グレーのスウェット陸斗くん、素晴らしい!
って私!
「蜜葉、寝よう」
「い、一緒のベッドで!?」
「ん。ダメか?」
「だ、だめじゃないけど・・・わ、私・・・ま、まだ心の準備が!」
「へ?」
「ま、まだキスでいっぱいいっぱいなわけで・・・」
「大丈夫。まだエッチな事しないよ。蜜葉には」
「え?」
「蜜葉が大丈夫になったらする。我慢できなくなったら大変申し訳ないが」
「陸斗くん・・・」
「だから、一緒に寝よう?蜜葉」
天使かな、この人。
「あ、ありがとう」
陸斗くんがベッドに入ると、私もベッドへ。
いざ入ると異常なくらいドキドキしている。
陸斗くんの匂いが!
「蜜葉・・・キスなら良いのか?」
「へ?」
「イチャイチャタイムする」
陸斗くんはそう言うと、私にキスをする。
「り、陸斗くん・・・」
「蜜葉、めちゃくちゃ緊張してる」
「あ、当たり前だよ!陸斗くん」
「キスで恥じらう蜜葉、もっと見たい」
「り、陸斗く・・・」
陸斗くんは何度も私にキスをする。
「り、陸斗くん・・・だめ・・・わ、私の心臓おかしくなっちゃう。顔もなんかすごく熱いし・・・だめ・・・」
「今の蜜葉さん、すごく色っぽい。そそられる」
「陸斗くん・・・だめ・・・」
「ん。俺も理性がやばいし、おあずけする」
陸斗くんにあんなにキスされたらやばいよ。
身体中が熱い。
私、こんなやらしかったっけ。
陸斗くんにキスされただけでこんなに気持ちよくなっちゃうとか。
いやらしい蜜葉ーっ!
「じゃあ、ハグして寝る」
「り、陸斗くん!?」
「蜜葉の匂いと温もり、大好き。おやすみ」
「お、おやすみ」
どんどん好きになっていく。
陸斗くんじゃなきゃ私はだめなんだ。
心も身体も陸斗くんに支配されている。
これからまたケンカしたり、波乱もあるかもしれない。
付き合ってからも安心はできない。
だけど
それでも、負けない。
陸斗くんとずっとずっと一緒にいたいから。
陸斗くんのお嫁さんになれますように、そう願って私は眠りに落ちた。
(END)
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