ifストーリー(2)&あとがき
ifストーリー〜結斗ルート〜
私が創作研究部に入ってから一ヶ月。
私には悩みがある。
「おい、てめぇ。陸斗に褒められてデレデレしてんじゃねぇよ」
「す、すみません・・・」
ーー姫島くんの事だ。
高宮くんや綾ちゃんとは仲良くなれてきた。
でも、姫島くんは私に心を開いてくれない。
綾ちゃんいわく、姫島くんは高宮くんに近付く女子を敵視する習性があるらしい。
「こら、結斗。桜木にガン飛ばすな。びびってる」
「そうよ!女の子には優しくね、ユイユイ」
「ふん」
私、嫌われてる?
姫島くんは見た目派手だし、気が強いから私自身怖かった。
でも
綾ちゃんいわく慣れてない人にはすぐ噛み付く飼われたての犬みたいな男子らしい。
そう考えたら、落ち着いて接する事が出来る。
「姫島くん、こないだカツアゲしてたらしいよ?」
「やっだ!こわーっ!」
クラスでは姫島くんの悪い噂が絶えない。
全部憶測な気がする。
姫島くんを見ていると、そんな人には見えない。
高宮くんや綾ちゃんは信頼を置いてるし。
私も姫島くんと仲良くなりたいんだ。
よし!
昼休みになると、私は購買に向かう。
高宮くんと綾ちゃんと姫島くんとランチが決定したけど、姫島くんだけ教室にいないので私は購買まで探しに行く。
姫島くん、購買の唐揚げサンドが好きらしいからね。
だけど
「おい、てめぇだな?最近、生意気な一年ってのは」
えっ!?
一階に降りると、姫島くんが三年生の先輩達に囲まれていた。
いかにも不良っぽいグループだ。
大変!!
「一年のくせにチャラチャラしやがって。ムカつくんだよ」
「鬱陶しいガキは排除しねぇとな」
「土下座したら許してやってもいいぜ?」
「面倒くさ・・・」
姫島くんが危ない!
「や、やめてください!!一人に大勢で襲うとか卑怯じゃないですか!!」
私は姫島くんの前に立ち、先輩達に言い放つ。
体が震える。
こ、怖っ!
「桜木!?」
「なんだよ?姫島。可愛い女の子に守って貰っちゃって。だせぇ」
「なぁ、山田。この子で遊ぶのもありじゃね?」
「だな!楽しめそうだな、姫島ボコるより」
「きゃっ!」
「桜木!?」
私はグループのリーダー格の男子に腕を掴まれる。
「じゃあな、姫島」
「は、離してください!!」
怖い、怖い!!
姫島くんを助けに来たはずなのに私がピンチになってどうする!
だけど
「うわぁぁっ!」
グループの男子の一人が倒れる。
「桜木に手出すな!」
姫島くんがグループの一人を倒したらしい。
「姫島、てめぇ!」
姫島くんは襲いかかる先輩のお腹に蹴りを入れる。
「ぐ・・・つえぇ・・・」
「桜木に手を出す奴は許さねぇ。桜木を解放しろ。さもなければ顏が分からなくなるくらい殴ってやるよ?そこに倒れてる奴らを」
「ひっ・・・」
「俺、あいにく血の匂いが好きなんでな」
「すみませんでしたぁ!!」
先輩達は怯えて逃げて行った。
「姫島くん、ありがとう・・・ごめん。助けるつもりが迷惑を・・・」
「バカ!女が喧嘩に口挟むな!」
「ご、ごめんなさい!でも、姫島くんに何かあったらやだから私・・・」
「は?」
「姫島くんが危険な目に遭ってたらほっとけないよ!私は姫島くんの友達なんだから」
「友達?俺と桜木が?」
「う、うん。私はそう思ってる」
「わ、悪かったよ!心配かけて」
「姫島くん・・・」
「でも!桜木、もうあんな危険な真似はすんじゃねぇよ。桜木があいつらに何かされたら俺は・・・」
心配してくれてるんだ、姫島くん。
「ごめん。今度からは先生呼ぶとかする。でも、良かった!私、姫島くんに嫌われてると思ってたから。心配してくれて嬉しい。ありがとう」
「なっ!?バカか・・・」
「ふふっ。あ!そうそう。綾ちゃんと高宮くんが創作研究部の皆でランチしようって」
「わーった。購買寄ってから行くわ」
「わ、私も行っても良いかな?」
「良いけど」
「ありがとう」
私は姫島くんと購買に向かう事にした。
「つーか、気にしねぇの?お前」
「へ?」
「俺と歩いてっと、桜木まで変な噂されんだろ」
「私は気にしないよ!姫島くんと友達でいる事をコソコソするのは嫌だから。それに、皆は誤解しているんだよ。姫島くんは悪い人じゃない。私はそれを知ってるから一緒に歩けるんだよ?」
「本当・・・桜木は変わってる」
「え?」
「陸斗と綾斗が気に入るわけだわ」
「姫島くん?」
「さて、何にすっかなー」
でも
さっきケンカしてた姫島くんはやけに強くてカッコよかったなぁ。
「桜木、何にすんだ?お前は」
購買に着くと、姫島くんが私に聞く。
「私はイチゴミルクとメロンパン!」
「弁当もあるのにか?太るぜ」
「綾ちゃんに美味しいって聞いたの!綾ちゃんと半分こするから太らないよ」
「半分こ、ねぇ」
「姫島くんは?」
「俺は唐揚げ買う。ここのうめぇんだわ」
「そっか」
姫島くんと仲良くなるにはどうしたら良いんだろう?
いっそ高宮くんみたいなキャラになるとか?
いや、無理!
あんなミステリアスなキャラにはなれない!
「甘くて美味しい・・・」
私はいちごミルクを飲みながら言う。
「琴莉みてぇだな、桜木は」
「琴莉?」
「うちの妹。甘いの大好きなんだわ」
「そっか!姫島くん、妹いるんだっけ」
「ああ。小1の妹がな」
「あ、そうだ!姫島くんも飲む?いちごミルク」
私は姫島くんにいちごミルクを近付け、聞く。
「な、な、何だと!?」
「あ、甘いのだめ?姫島くん」
「じゃなくて!それ、今・・・桜木が・・・」
「ん?」
「い、いい。甘いだろ、どうせ」
「そっか。じゃあ、綾ちゃんに分けよう。甘いの好きだし」
「あぁ!もう!」
姫島くんはいきなり私の手からいちごミルクを奪い、飲んだ。
「ひ、姫島くん!?」
「甘っ!甘過ぎんだろ」
「ど、どうしたの?」
「やっぱ飲みたくなったんだわ。悪いかよ?」
「う、ううん!」
「何意識してんだよ、俺。こんなんギャルゲーで慣れっこのはずだろ・・・」
「姫島くん?」
顔赤い気がするけど、大丈夫かな?
「みっちゃん、ユイユイ!おっそいよー!」
「綾ちゃん!ごめん!」
私達は教室に戻り、綾ちゃんと高宮くんと昼食をとる。
「桜木、大丈夫?結斗にいじめられなかったか?」
「おい、陸斗!お前のその発言がいじめだ!俺に対する」
「ユイユイはホモだから女の子の扱い下手くそよね」
「誰がホモだ!」
でも
姫島くん、創作研究部に入る前と印象変わったな。
優しい人だと思う。
「降りて来なさい!BLの神!!」
「綾斗、うっせぇ」
放課後は部活。
綾ちゃんはスランプ気味っぽい。
私もスランプだなぁ、若干。
「はぁ、ずっとパソコンの前にいっから肩凝るわ」
「ユイユイはラノベだもんね」
「ああ。ラブコメ書いてるんだわ。でも、なんかヒロインがぱっとしないというか」
「恋愛経験ゼロだからね、ユイユイは」
「綾斗だって付き合ったりしてねぇだろ」
「あたしは妄想力がすごいから!あと、片想いならたくさんしてるわよ。ユイユイみたいに片想い経験すらないわけじゃないわ」
「結斗の初恋の話、聞いた事ない」
「一応あるわ!小学校の担任だった、初恋」
「ユイユイ、ませてるぅ!」
照れながら言う姫島くんに綾ちゃんが茶化す。
「まあ、担任のお気に入りは陸斗だったけど」
「陸斗は昔っからモテたのね」
高宮くん、小さな頃から・・・
「じゃあ、今は?ユイユイ、好きな人いないのー?やっぱり陸斗一筋?」
「だからホモ扱いすんな!好きな奴・・・か」
姫島くんがちらっと私を見る。
「姫島くん?」
「ふふっ。ユイユイってばわかりやすーい」
「なんだよ?綾斗」
「ちなみにあたしはみっちゃんがだーいすき!」
綾ちゃんは私に抱きつく。
あ、綾ちゃん!?
だけど
「さ、桜木に触んな!セクハラカマ野郎!」
姫島くんは綾ちゃんの背中を蹴る。
「いたぁい!ユイユイ!陸斗、ユイユイがあたしをいじめるぅ!」
「結斗、ハグは挨拶。セクハラじゃない」
「ここは日本だ!陸斗!」
「もう!ユイユイったらこわーい!」
「綾斗、てめぇ・・・」
なんかギスギスしてる?
姫島くん、どうしたんだろ?
なんか不機嫌?
休日になると、私は画材を買いに文房具屋へ。
トーンたくさん買わないと。
漫画家志望って常に金欠だなぁ。
バイトしようかな?
画材を買い揃えると、私は家に帰ろうとする。
だけど
ん?
公園の前を通ると、うさぎのキャラクターの顔型のポーチが落ちていた。
誰かの落し物?
うさりんちゃんだよね、このキャラクター。
私、小さい頃ぬいぐるみとか集めてたなぁ。
交番に届けなきゃ。
だけど
「無い、無いっ!」
公園から女の子の声がする。
「どうしよう。お兄ちゃんから買って貰ったポーチなのに」
私は公園の中に入る。
公園の中には必死に何かを探す女の子がいた。
もしかして・・・
「探してるのってこれ?」
私は女の子に声をかける。
「へ?あ!うさりんちゃん!!そ、それです!」
私は女の子にポーチを渡す。
ツインテールの小学校低学年くらいの可愛らしい女の子だ。
「ありがとうございます!大事なポーチだったんです」
「良かった!届けられて。もう無くさないようにね」
「はい!」
良かった。
すると
「琴莉ーっ!」
「あ、お兄ちゃん!」
え?
「あれ?桜木?」
公園の中に突然姫島くんが入って来た。
「姫島くん・・・?」
「お兄ちゃんとお姉ちゃん、お友達なの?」
「あ、ああ。同じクラスで同じ部活。琴莉、探したんだぞー?兄ちゃんは」
「ごめんなさーい!」
「姫島くんの妹さん?」
「ああ」
姫島くんの妹さん、めちゃくちゃ可愛い。
「琴莉が無くしたうさりんちゃんのポーチ、お姉ちゃんが拾ってくれたんだよ!」
「そうだったのか。世話になったな、桜木」
「ううん!大丈夫!」
「琴莉、自己紹介」
「は、はーい!姫島琴莉です。さっきはありがとうございました!」
しっかりしてるなぁ。
「桜木蜜葉です。よろしくね、琴莉ちゃん」
「琴莉、そろそろ行かねぇと。お母さんが待ってる」
「そうだった!でも、琴莉・・・お姉ちゃんともっと話したい」
「また今度。いつでも会えるよ、琴莉」
「琴莉ちゃん、またね」
「はぁーい!バイバイ!お姉ちゃん!」
「じゃあまた、桜木」
「う、うん!」
姫島くんは琴莉ちゃんと手を繋ぎ、公園から出た。
優しいお兄ちゃんなんだなぁ。
なんか微笑ましい。
そういえば・・・
「姫島くん!今日、放課後姫島くんの家に寄っても良い?」
月曜になると、私は姫島くんに聞いた。
「えっ・・・」
「琴莉ちゃんに渡したい物があって」
「あ、ああ・・・琴莉に。わーったよ。部活終わったら一緒に行こうぜ」
「ありがとう!」
「あ、あのさ!桜木・・・」
「ん?」
「今度の日曜日・・・俺と・・・」
「みっちゃん、おっはよー!」
あっ!
「あ、綾ちゃん。おはよう・・・」
「今日も超可愛い!」
綾ちゃんは私の頭を撫でながら言う。
「ちっ・・・」
「ひ、姫島くん!」
「あら?ユイユイ、どうしたのかしら」
姫島くんは教室を出て行った。
何か言いかけてたな。
後で聞いてみようかな?
「わあ!お姉ちゃんだ!また会えたー!」
放課後、部活を終えると私は姫島くんと姫島くんの家へ。
「はい!琴莉ちゃんにプレゼント!うさりんちゃんだよ!」
私はうさりんちゃんのぬいぐるみを琴莉ちゃんに渡す。
「わあ!ありがとう!可愛い!」
「家に同じのが二つあったの思い出して。私が小さい時、父がクレーンゲームで二つとっちゃったんだ。ちょっと古いのだけど」
「お姉ちゃんも同じのあるの?じゃあ、琴莉とお揃いだね!」
「う、うん!お揃い!」
可愛すぎるよ、琴莉ちゃん!
「良かったなぁ、琴莉」
「うん!」
「桜木、家上がってけよ。琴莉も遊びたがってる」
「え?じゃ、じゃあお邪魔します」
「わーい!」
私は姫島くんの家へ。
さすが人気漫画家の家。
私の家なんかよりもずっと広いし、家具皆高そうな!
「お姉ちゃん、ゲームして遊ぼう!」
「うん!」
「そうだ。桜木、飯食ってけよ?今日は俺と琴莉の二人だけだからさ。桜木いたら盛り上がる」
「えっ?でも・・・」
「お姉ちゃん、一緒に御飯食べよう!」
「う、うん」
意外だった。
姫島くんには嫌われてると思ってたから。
「お姉ちゃん、負けないよー!」
「わわっ!琴莉ちゃん、ゲーム上手」
私は琴莉ちゃんとスポーツのゲームで対決する。
リアルでも運動音痴な私はゲームでも散々だ。
「桜木、よえーな」
「ひ、姫島くんっ。あはは。リアルでも運動音痴だからね、私」
「ああ。スポーツテストのハンドボール投げ、全然遠くまで行けてなかったもんな」
「み、見てたの!?」
「ああ。俺、いつも桜木見てっし」
「へ?」
「うわっ!な、何言ってんだ、俺」
「お姉ちゃん、次はお絵描きしよう!」
「う、うん!」
いつも見てるって言ってた?今。
や、やっぱり見てられないんだろうなぁ。
私の運動音痴がやばすぎて。
「今日はカレーにすっか」
「姫島くん、手伝うよ?」
「良いよ。桜木は琴莉と遊んでやってくれ」
「でも・・・」
「良いから。俺、料理には自信あるんだぜ?」
「お兄ちゃんが作るカレー、めちゃくちゃ美味しいんだよー!」
「あはは。ありがとうな、琴莉」
「今日はにんじんさん入れちゃやだよ?」
「だめだぞ?琴莉。好き嫌いは。ちゃんとにんじんさんも食べろ」
「はぁい」
「良い子だな、琴莉は」
姫島くん、琴莉ちゃんにすごく優しい。
「姫島くんって良いお兄ちゃんだね」
「え?」
「学校にいる時と違うなぁって」
「キモいか?シスコンみたいで」
「そんな事無いよ!私もこんなお兄ちゃん欲しかったなぁって。えへへ」
「俺は桜木を妹として見たくねぇな」
「うっ。振られたー!」
「俺はそんな風に見れねぇよ、桜木。この意味、分かれよ」
「姫島くん・・・?」
どうしたんだろ?姫島くん。
「琴莉、お風呂入れたから入って来いよ」
「はぁい!」
6時過ぎになると、琴莉ちゃんはお風呂へ。
「姫島くん、やっぱり手伝おうか?」
「桜木は客だ。気にすんなよ。俺の部屋から何か好きな漫画でも取って来いよ」
「えっ?勝手に入って良いの?」
「ああ。読みたいのあっかなぁ。少年漫画しかねぇし」
「あ、じゃあ卒アル見たい!中学の」
「マジか。取って来るな」
「あ、ありがとう」
姫島くんは卒アルを取りに部屋へ。
「ほら、これだ。俺と陸斗と綾斗はA組にいる」
「あ、ありがとっ」
私は姫島くんから卒アルを貰うと、A組のページを開く。
「いた!綾ちゃん、髪短い。男子だ」
「卒アルは親もみっからってちゃんと男子で写ったんだよ、あいつ」
「高宮くんはそんなに変わらないかも?」
「ああ、陸斗は俺や綾斗みたいに髪型変えたりもしないからな」
姫島くんは・・・
「いた!姫島くん、髪の毛真っ黒だ」
「受験生だったからよ。似合わなすぎてうけんだろ?」
「確かに姫島くんって明るい髪のが似合う印象かも」
「でも、桜木は髪色派手な男とか無理だろ?」
「そんな事無いよ!姫島くんの今の髪型好きだよ!ちょいワルな感じが良いよ!」
「ちょいワルって・・・」
「あっ!これ、一年生の時の写真?高宮くんと姫島くん可愛い!幼い!」
「俺も陸斗も背低かったんだよ、一年生の時は。一年生の校外学習は山登りでしんどかったわ」
「いつも高宮くんと一緒に写ってるね」
「ああ。陸斗は俺と綾斗以外と一切仲良くならなかったから」
「そっか。あ!二年生の写真から綾ちゃんがいる」
「あいつとは二年生で仲良くなったからよ」
「そっか。長い付き合いなんだねぇ」
「桜木?」
「羨ましいなぁ。私も三人と中学時代に出会いたかった」
やっぱり三人だけの絆を感じる時あるんだよね。
私は知り合って間もないし、仕方ないんだろうけど。
すると
いきなり姫島くんにデコピンされた。
「痛っ」
「バーカ。くだらねぇ事考えてんじゃねぇよ。桜木ももう仲間だろうが」
「姫島くん・・・」
「出会った年月は関係ねぇよ」
「良かった。姫島くんに嫌われてると思ってたから。すごく嬉しい」
「は?嫌ってなんかねぇよ!俺は・・・桜木、好きだし」
「あ、ありがとう!私も姫島くん好きだよ!」
「なっ!?す、好きとか簡単に言うな」
「姫島くんだって言ったーっ!」
「全く。桜木には敵わねぇな」
姫島くんとちょっとずつだけど距離が縮まった気がする。
「美味しい!!姫島くんの作ったカレーすごく美味しいよ!」
「あ、ありがとうな」
「お兄ちゃん照れてるーっ!」
「う、うるせぇ!琴莉」
「なんかお兄ちゃんとお姉ちゃん新婚さんみたい!」
「こ、琴莉ちゃん!?」
「ば、バカ!やめろ、琴莉」
「何で?だってお兄ちゃんはお姉ちゃん大好きなんでしょ?いつも琴莉にお姉ちゃんの・・・」
「さ、桜木!おかわりいるか?」
「わ、私は大丈夫だよ!」
「悪いな。琴莉が変な事言って」
「へ、平気」
なんか意識しちゃう!!
「良いのか?家まで送るのに」
「琴莉ちゃん、家に一人にする方が心配だし。私なら大丈夫!駅まですぐだから」
「悪いな。今日は遅くまで」
「き、気にしないで!すごく楽しかったよ」
「そうか。こ、今度はさ!どっか行くか?映画とか」
「琴莉ちゃんと姫島くんと?」
「いや、俺と二人で・・・」
「え・・・」
「お、俺としては!桜木ともっと仲良くなりてぇなぁと。べ、別に深い意味はねぇんだからな!」
「ふふっ。良いよ!」
「・・・え?」
「私も姫島くんと仲良くなりたいからね」
「さ、桜木・・・お、俺は期待して良いのか?」
「期待?」
「い、いや!じゃあ、また空いた日分かれば声かける。それと、家着いたら俺にLINEしろよな?心配だから」
「ありがとう、姫島くん。じゃあ、またね」
「ま、またな!」
姫島くんと今日は仲良くなれて良かった。
綾ちゃんや高宮くんにも話そう。
きっと心配していただろうから、私と姫島くんの関係について。
(無事に帰ったよ(^^)!今からマツコさんの番組観る)
私は家に着くと、姫島くんにLINEをする。
(おかえり。安心した!でも、あんま夜更かしはしない事。桜木は毎晩作業であんま寝てねぇだろうし)
ちょっとしたLINEなのに文章にキュンとする。
姫島くん、やっぱり優しいな。
(ありがとう!じゃあ、今日はお風呂入ってもう寝ようかな。明日から暫く作業あるし)
(そうしとけ。おやすみ!また学校でな)
(おやすみなさーい!)
なんだかドキドキしている。
変な私。
友達同士のLINEのやりとりなのにな。
だけど
「・・・っくしゅん!」
頭がくらくらする。
翌日からずっと徹夜で漫画の作業をしていただろうか?
金曜日になると、何だか身体がだるく感じた。
まあ、歩けるし、大丈夫!
皆勤賞欲しいし。
私は何回も出るくしゃみを気にしながらも、マスクをして登校した。
「おはようー」
「おはよう、みっちゃん!って!あら、やだ。風邪?」
「あはは。そうみたい」
「桜木、早退した方が良い。ノートなら俺がとる」
「大丈夫!そんなに辛くないし」
「みっちゃん・・・」
綾ちゃんと高宮くんに心配かけちゃってるな、私。
「部活は一応休むね?」
「当たり前よ!身体が大事!」
「俺、スポドリ探して来る」
「だ、大丈夫だよ!高宮くん」
「だめだ。風邪引いた時、スポドリ飲んだら俺はいつも楽になる」
「あ、ありがとう。高宮くん」
すると
「うっす。って、桜木!?風邪引いたのかよ?」
「あ、姫島くん。おはよー」
「全く、無理しやがって。早退した方が良いんじゃね?」
「意外と元気だから大丈夫だよ!」
「バカ!無理すんなよな。薬持ち歩いてるからやる」
「ありがとう、姫島くん」
「あら?ユイユイったら優しいー!こないだまでみっちゃんに敵対心剥き出しだったのに」
「結斗、最近桜木の話するようになった。仲良くなった証拠」
「綾斗、陸斗うるせぇ!」
皆に本当申し訳ないなぁ。
「長かった・・・」
体調不良の時の6時間はやけに長く感じる。
「桜木、帰るぞ。家まで送る」
放課後になると、姫島くんが私の席に来て言った。
「ひ、姫島くん!?」
「陸斗と綾斗は委員会らしいからな。俺が送る」
「あ、ありがとう」
「おうよ。鞄持つな」
やっぱり優しいなぁ、姫島くんは。
「今日、親は?」
「二人とも遅くなるみたい」
「仕方ねぇな。桜木は寝とけ。俺がお粥作ってやる」
「えっ?でも・・・」
っ!?
姫島くんが私のおでこに自分のおでこをくっつけてきた。
「熱い。やっぱり熱あるな」
「ひ、姫島くん!」
「わ、悪い!」
「う、ううん」
余計熱が!!
「お邪魔します」
「ど、どうぞ」
なんかドキドキする!
これ、私が漫画で描いた展開と全く同じ状況!
「桜木はパジャマに着替えて寝た方が良いな。タオルで汗拭かないと」
「う、うん!」
「タオルは脱衣所か?」
「うん」
「桜木は部屋にいとけ」
姫島くんにお世話になりっぱなしだなぁ、私。
「ほら、タオル。これ使え」
「あ、ありがとうね」
「桜木、俺後ろ向いててやっから上脱げ、汗拭こうにも桜木は背中拭けないだろうから」
そ、それって!
「だ、大丈夫だ。上脱いだら自分で汗拭けるとこは拭いてうつ伏せに寝ろ。したら、俺に声かけろ。背中ささっと拭くから」
「は、はい」
私はドキドキしながら上を脱ぐと胸元に流れる汗を拭い、ベッドにうつ伏せになる。
「ひ、姫島くん!」
「お、おう」
は、恥ずかしいーっ!
前を見られないようにはしてるけど。
姫島くんは私の背中をタオルで優しく拭く。
すごくドキドキしてる。
「拭いたぞ。俺、後ろ向いてっからパジャマに着替えろ。終わったら声かけて」
「あ、ありがとう」
私は新しい下着とパジャマに着替える。
「だ、大丈夫だよ」
「おう。桜木は寝とけ。冷蔵庫に冷却シートとかあるか?」
「うん!私がよく風邪引くからあるよ」
「とりあえず、これ。陸斗が桜木にって。預かってたスポドリ。飲んどけ」
「あ、ありがとう」
本当にありがたい。
私はベッドに入る。
姫島くんと二人きり。
すごくドキドキしている。
「体温計と冷却シート持ってきた」
「あ、ありがとう」
「まずは測れ」
「う、うん!」
私は姫島くんから体温計を受け取ると、熱を測る。
「38度6分・・・結構あんじゃねぇか!全く、無理しやがって。とりあえず冷やさないと」
姫島くんは私のおでこに冷却シートを貼る。
「大丈夫か?桜木。辛いか?」
姫島くんは私の頭を撫で、優しい声で聞く。
「大丈夫だよ。ありがとう、姫島くん」
「欲しいもん無いか?」
「今は大丈夫」
「そうか。ほら、早く寝ろ。俺がいると落ち着かねぇだろうから俺はリビングにいんな。何かあったらLINE鳴らして」
あ・・・
気付いたら私は行こうとする姫島くんの手を掴んでいた。
「桜木?」
「ご、ごめん・・・」
私、何やって・・・
「側にいて欲しいか?桜木」
っ・・・
「あ、あの・・・」
「大丈夫だ。ちゃんと側にいてやる。風邪ん時は心細くなるもんな」
姫島くんは私の頭を優しく撫で、言う。
「ほら、安心して寝ろ。桜木」
姫島くんの声はいつもより優しい。
私の頭を撫でる手も優しくて、すごく安心する。
気付いたら私は眠りに落ちていた。
『はーはっはっは!俺様は非常に機嫌が悪いからな!姫に呪いをかけてやったぜ』
『みゃーちゃん、何て事を!』
『出番が少ないからって気にしないで、桜小路くん』
『出番少ない言うなぁ!高宮陸斗ーっ!俺様の時代はこれからなんだよ!』
お城の中にいるのは魔王の格好をした桜小路くんと魔法使いの格好をした綾ちゃんと高宮くん?
夢だ。
何てファンタジーな夢なんだ。
場面が切り替わる。
あれ?
私、夢の中でも眠ってる!?
身体が動かないし、目が開かない。
意識はあるのに。
もしかして眠り姫の世界?
さっきのお城の場面から察するに。
すると
ドアが開かれる音がした。
『桜小路め、姫に何て事を!』
姫島くんの声!?
『姫、迎えに来ました。どうか早くお目覚めください。私は貴方を心から愛しているのです』
ひ、姫島くん!?
『さあ、私の口づけでお目覚めください』
えっ・・・
えーっ!?
私は起き上がる。
す、すごい夢を見てしまった。
ひ、姫島くんとキスする夢・・・。
あ!
姫島くんは私の手を握ったまま椅子に座り、眠ってしまっている。
ずっと握っててくれたんだ。
わ、私・・・
姫島くんの事が・・・?
「ん・・・」
姫島くんが目覚める。
「桜木、起きたのか」
「う、うん!」
「お粥作るな。待ってろ」
「あ、ありがとう!」
意識しまくり!あんな夢見たから!
私の破廉恥!!
「お、熱少し下がったな。良かった。あ、冷却シート新しいのと変えるか」
姫島くんは頼りになるなぁ。
さすがお兄ちゃん。
「お粥、熱いな。口開けろ。食わしてやる」
「へ?」
姫島くんはスプーンでお粥を掬うと、息を吹きかけ少し冷ましてから私の口に入れる。
「美味いか?」
「う、うん」
な、なんか恥ずかしい!
「元気になってきたみたいで良かった。ずっと辛そうだったから。嫌な夢でも見たか?」
「ううん!桜小路大魔王は出てきたけど、悪い夢じゃなかったよ」
「なんだよ、桜小路大魔王って」
「あはは」
「もう無理すんなよな?桜木に何かあったら俺が耐えられない」
「姫島くん・・・」
「ちゃんと自分を大事にしろ」
「うん・・・」
私は姫島くんが好き・・・なんだ。
気付いてしまった。
「もう大丈夫なのか?」
「うん。大分楽になったよ、ありがとう。本当に助かりました」
「そうか。何かあったらすぐ電話な。駆けつけるから」
「ありがとう!」
「じゃあな、桜木」
お粥を食べ終えると、私は姫島くんを家に帰した。
これ以上は意識して私がいっぱいいっぱいだった。
姫島くんが好きだって自覚しちゃったから。
だけど
ーー翌日。
「何これ・・・」
黒板には私の家から出て来る姫島くんの写真がたくさん貼られていた。
写真の周りにはチョークで“桜木蜜葉と姫島結斗はできている”や“優等生・桜木蜜葉はビッチ説”と書かれている。
「桜木さん、清廉潔白なイメージだったのになぁ」
「あの姫島とできてるとかマジ引くわ。非処女確定だな」
「姫島ってカツアゲとかしてんでしょ?桜木さんも実はやばい事やってたりして」
「ありえるー!姫島くんと深い仲なら絶対裏あるよね」
「てかさ、腹立つよね。高宮くんや橘くんにも良い顔してさ。なのに姫島くんの女とか」
「優等生ぶってるわりには男好きのビッチなんだろうね?高宮くんと橘くんもあんなのに絡まなきゃ良いのに。騙されてんじゃね?」
っ・・・
「何だよ、これ!」
姫島くん!
姫島くんは写真を剥がし、黒板に書かれた文字を消す。
「誰がやった!名乗り出ろ!許さねぇぞ!」
姫島くんが怒鳴り散らすも誰も前には出ない。
「桜木と俺はそんなんじゃねぇから。昨日こいつが風邪で辛そうだったから看病してやってたんだ。それ以上の事は何もねぇよ!」
姫島くん・・・
「桜木の事、悪く言ってたな?お前ら。俺の事は悪く言って良い!でもな、桜木の悪口だけは許さねぇからな」
さっきまで噂話をしていた皆は黙り込む。
「姫島くん、大丈夫だよ!私は」
「桜木。無理すんな。悪い、俺のせいで」
姫島くんはそう言うと、教室を出て行った。
姫島くん・・・
こんな事になるなんて。
姫島くんに私はまた迷惑をかけてしまった。
「他のクラスの皆も噂しまくってるわね」
「誰がやったんだろうか。許せない」
「うーん。面白半分でやるような男子生徒か、みっちゃんが創作研究部にいるのを良しとしない女子かしらね?陸斗もユイユイもみっちゃんには構うけど、みっちゃん以外の女子には塩対応だからね。嫉妬かも」
「桜木以外の女子はうるさくて苦手だ」
「ユイユイも同じような事言ってたわね」
「姫島くん、私の看病をずっとしてくれたんだよ?なのにこんな噂にされて。私と噂なんかされたくないよね、きっと」
「みっちゃん!ユイユイはそんな事思ってないわよ」
「ん。結斗はそんな奴じゃない」
綾ちゃん、高宮くん・・・
だけど
「ひ、姫島くん!一緒にご飯食べよ?」
「いい。一人で食いたいから」
「あ・・・」
創作研究部のランチに今日は姫島くんは参加しなかった。
「ユイユイ、部活行くわよー?」
「今日は行かね。悪いな。母ちゃんに仕事頼まれてんだ」
「ちょっと!ユイユイ!」
姫島くんは部活も休んでしまった。
やっぱり気にしてるのかな?
私は大丈夫だけど。
だけど
「姫島くん、今日また琴莉ちゃんに・・・」
「悪い。もううちに来ないでくれるか?桜木」
「え?」
「また変な噂されると面倒だしよ」
「そ、そっか。ごめん」
「てか、部活以外では俺に話しかけんな」
「ひ、姫島くん!?」
「その方が良い。俺らにとって」
翌日も、姫島くんは素っ気ない態度だった。
「姫島くん、私は・・・」
「田中、ちょっといいか?」
「なんだ?姫島」
姫島くん・・・。
やっぱり迷惑なんだ。
私と付き合ってるとか言われるの。
「またユイユイはサボり?」
「結斗に怒る、俺」
「陸斗がユイユイに説教なんてできるのー?」
「俺、怒ると意外と怖い」
「陸斗が?超気になるー!」
姫島くんは部活をまた休んだ。
部活辞めちゃったりしないよね?
「私のせいで・・・」
「みっちゃんは悪くないわよ!ユイユイはみっちゃんの為に避けてるのよ」
「えっ?」
「俺も思った。結斗は桜木が心配みたいだ。桜木を悪く言う奴がたくさんいるから」
「皆、憶測だけどね。ユイユイが不良言われちゃうのも皆の思い込みだし。あいつがカツアゲしてる不良グループ見つけては暴力振るってたから。正義感がやけにあるからやたらとトラブルに首突っ込んでそれをたまたま見てた人達が勘違いしてユイユイを悪者扱い。噂って怖いわ」
「結斗は優しいのに皆、結斗を悪者にする。だから、俺は結斗を貶す同級生達が嫌いで関わりたくない」
「あたしもよ」
「私は姫島くんが不良じゃないって知ってるし、噂されても気にならないよ。私は構わないもの!だって、私は・・・」
「みっちゃん、ユイユイが好きなんでしょ?」
「へ?」
「乙女の勘!あたしの勘は当たるのよ」
「あ、綾ちゃんっ」
「だったら、ユイユイに自分の気持ち伝えてあげて。あの子も本当はみっちゃんと話したいのよ」
「でも・・・」
「ユイユイがあんなに優しくする女の子ってみっちゃんくらいよ?きっとユイユイもみっちゃんが大事なの。だからみっちゃんの為に避ける事にした。不器用よね。でも、みっちゃんはこのままは嫌でしょ?だったら変えなきゃ」
「綾ちゃん・・・」
「ちゃんと話しなさい。みっちゃん」
「う、うん!」
そうだよね。
ちゃんと話さなきゃ。
だけど
「きゃあああ!」
「先生呼びに行かないと!」
廊下から悲鳴が聞こえる。
な、何?
私達は部室を出る。
「これでデータは完全に消えた。もうやらないって誓え。そしたら殴るのをやめてやる」
「す、すみませんでした!もうしません!許してください!」
姫島くん!?
姫島くんの前には土下座する男子生徒。
床にはデジカメが落ちている。
「何やってんだ!」
あっ!
鬼島先生がやって来た。
「お前ら、ちょっと来い!」
やばい・・・
姫島くん達は鬼島先生に連れて行かれてしまった。
「何があったの?」
綾ちゃんは部室を出て、近くにいた生徒に聞く。
「姫島が俺と桜木の写真を撮ったのはお前だな?って言っていきなりあいつに殴りかかったんだ。で、デジカメも叩きつけて壊して。とにかく怖かった。何回も顔を殴って」
「ユイユイが・・・」
「犯人見つけたんだ、結斗」
「姫島くん、大丈夫かな」
「でも、ユイユイ達連行したのは鬼ちゃんだし。鬼ちゃんなら安心よ。あたし達の味方だからね。停学にはしないはずよ」
「そっか、良かった」
「ほら、みっちゃん行きなさい。ちゃんとユイユイと話する!」
「う、うん!」
私は職員室へ向かった。
姫島くん・・・
ちゃんと伝えたい。
私の気持ちを。
30分くらい待つと、姫島くんが職員室から出て来た。
「姫島くん!!」
「桜木・・・」
「話したい事があって!お願い、逃げないで」
「わーったよ。屋上行くぞ」
私と姫島くんは屋上へ。
「んだよ?桜木」
姫島くんは困った顔をしている。
「あの・・・ごめんなさい。私、姫島くんにたくさん迷惑かけてる」
「桜木は気にすんな。てか、俺と離れた方が良いって言ったよな?俺、部活も辞めてもいいと思ってるし。噂が治まるように桜木は・・・」
「嫌だよ!」
「桜木?」
「私は噂されても気にしないよ!勝手に私の気持ち解釈しないで」
「何だよ、それ。俺は・・・」
「私は姫島くんと離れたくないよ!だって、私は姫島くんが好きなんだもん!」
私は涙目になりながら言う。
「え・・・」
「ごめん。姫島くんを困らせるの分かってるんだけど・・・」
「何だよ、それ。俺、バカだ」
「姫島くん?」
「桜木。俺もお前が好きだ」
「え・・・」
「でも、お前が俺なんかを好きになるわけないって。噂されてお前に迷惑かけんのが嫌で離れた」
「姫島くん・・・」
「俺は桜木の側にいて良いのか?」
「いて・・・欲しいです」
私が言うと、姫島くんは笑う。
「すっげぇ嬉しい。悩んでいたのがバカみてぇだ。なぁ、桜木」
「ん?」
姫島くんは私の頰に触れる。
「姫島くん・・・?」
気付いたら私は姫島くんに唇を奪われていた。
「大好き・・・だぜ」
「ひ、姫島くん!い、いきなり・・・」
「なーに顔真っ赤にしてんだよ?」
「うっ・・・恥ずかしいんだもん」
「か、可愛すぎかよ!」
胸がいっぱいになる。
私、姫島くんの彼女になれたんだ。
すごく嬉しい・・・。
すごく幸せな気分だ。
ーー1ヶ月後。
「結斗くん、分かった?」
「お、おぅ。蜜葉、教え方上手いな」
「そうかな?はい、結斗くん。問題解いて」
「お、おぅ。赤点とっちまったら鬼島の鬼畜補習と再試が待ってっからな。頑張らねぇと」
試験が近付き、私は結斗くんと結斗くんの部屋で勉強会をする。
「出来た!どうだ?」
「答え合わせするね」
私は結斗くんが問題を解くと、答え合わせを始める。
わっ!
全問正解。
「結斗くん、すごい!全問正解!」
「蜜葉のおかげだな。数学はこれでいけんな。よし、蜜葉」
「ん?」
「何かご褒美くれるか?そしたら明日の勉強会ももっと頑張れるわ」
「ご、ご褒美?」
「おぅ。俺が喜びそうな事。蜜葉がご褒美くれないと頑張れねぇなぁ、俺」
「も、もう!結斗くんずるいよ!」
「だめか?」
ご褒美・・・。
「い、いいよ。じゃ、じゃあ・・・」
私は勇気を出して結斗くんにキスをする。
は、恥ずかしい・・・。
「や、やべぇ・・・」
結斗くんはいきなり寝転ぶ。
「結斗くん?」
「そんな可愛い事されたらやべぇだろうが」
「ゆ、結斗くんがご褒美ちょうだいって言ったから!」
「蜜葉」
「ん?」
「俺がテストクリアしたらこれ以上のご褒美な?」
「こ、これ以上って!?」
「俺が決めとくから。良いだろ?」
「わ、分かった。結斗くんがそれで頑張れるなら」
「楽しみにしとけよ」
結斗くんは私の頰に触れ、にやっと笑って言った。
うっ・・・
テスト終わったらさらにドキドキな展開が待ってる予感・・・。
(END)
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