第26話 貴方が居てくれたから、生きてこれた
「ゆま・・・起きた・・・?」
「・・・おはよ。」
「うん、おはよう」
「・・・遅かったね。」
「ごめん。」
「あ、ちゃんと透子を助けてきたのね」
「守君がね」
「そっか、さ、いつまでも寝てたら駄目ね。ちょっと手を貸して起きるわ、そして皆を連れていきたいところがあるの」
そういわれて私はゆまに手を差し出し、起こしてあげた。
「ん・・ありがと。さて、でも行く前に、遠野守さんには自己紹介しておきましょうか」
「ほわっ!?俺??」
「初めまして、私はゆまの、影のような物、いえ悲しい記憶の塊。一応、ゆま(点々)と言われているわ」
「は、初めまし・・・って!俺の名前何で知ってるん?いや、それより影とかどういう事や、それに、今触ってもうたらこの世界が・・あれ?」
「ああ、それはね。もうすぐわかるわ。私の後をついてきてくれたら」
「は、はあ?」
「・・・ふふっ、ありがとうね、貴方が来てくれたから、私は覚悟ができたのよ」
「どういう意味や?」
「ついてからのお楽しみにしておいて」
「気になるわ!」
「まあ、ついてきてきれたらわかるから。それに、透子。ありがとう・・私の存在はあなたを悲しめてしまったわね」
「・・・ううん。だって、それもあなた達が決めた事で、あの時の私は否定しなかったのだから・・」
「・・・優しいわね、透子は・・」
さて、そろそろ。いくようにせかさないといけない。
本当はもっと、まゆと話したかったけど、そんな訳にもいかない。
この世界に来た時点で、時間は進みつつある。
動かない時間が適用されたのは、あの学校だったからで、今は時は動いている。
せかそうとしようとすると、まゆは私の方を見てうなづいた。
「わかってるわよ、ゆま。貴方は私なのだから考えてる事なんてまるわかりよ、さて、いきましょうか」
「行くってどこにいくんや?」
「保健室」
私たちは、保健室に向かった。
そんな遠くないところに保健室はあった。
その保健室を前に、まゆがいう。
「・・ゆま、覚悟はいい?」
「・・・うん・・」
そしてガラッとドアをあける。
想像通りいたのは、お母さんだった。
「遅くなってごめんなさい、ママ・・」
お母さんは私達に気づくと、私たちの方を向く。
「・・・おかえり。」
「・・・ママ・・ただいま。」
「あらあら、何泣いてるの?」
「そして、さよならだね。」
私はママを抱きしめた、そしてこう言った。
「・・・ゆま」
地面が地震のように揺れた。
そして、地面が割れて、壊れていく。
そして、抱きしめた女性が小さくなっていく。
落ちながら、私は最後の言葉を、お別れの言葉を紡いでいく。
「まゆ、いままでありがとう。知らないふりありがとう。
そして、獏もいままで知らないふりありがとう」
「・・・・いえいえ」
「いままでありがと~ですよ」
二人は私の周りで一緒に落ちていた。
「楽しかったですか?ひとときの夢でしたが。
そして、ごめんなさい。私は悪夢は食べられても、本当の現実は救えなかったですね」
「いいえ、私を夢の世界につれてってくれて、私とても楽しかったわ!それはまゆも一緒なの、私の為にまゆも作ってくれてありがとう」
「いえいえ、まあ、ギブアンドテイクでしたので。」
「ふふ~。照れてない~?」
「なんのことやら、さて、まゆ、そろそろ戻りますか?」
腕の中にいるまゆに声をかけると、まゆが話し出した。
「・・・うん。ありがとうございました。獏。本来生まれるはずのないつらい気持ちだけを集めてつくられた、夢の世界の住人のような物だもの。
人間ではないからね・・・ねえ、私、ちゃんとゆまの理想の母を演じられてたかな?
私、ゆまの気持ちを少しでも助けられたかな?」
「ええ、なんだか見ていて危なかしかったですがね。でも、ゆまのサンクチュアリには貴方がいなければ、駄目でしたね。いままでお疲れ様です。」
「ちょいちょい!!!」
一緒に落ちていて、この一連の流れを見ていて守君突っ込みを入れてきた。
「どういう事や!説明しろ!」
それに夢食が説明してくれた。
「まゆという存在は、実際はいない、ゆまが作った偶像です。
それの手伝いをしたのが私達、いえ」
夢食がサンタの方を見て、手を差し出す。
一瞬ぴかっと光、そして、像のような像ではないような、神話生物のような姿。
それは、本で見た事のあるような、獏そのものだ。
いままで、見た事はあってもしっかりとは分からなかったけど、今ならわかる。
「私、獏がゆまの悪夢を食べていた時です、夢の世界で話しかけられたのは初めてでした。
なぜ、そんな事ができたのかはいまもわかりませんが、ゆまは私に話しかけてきたのです。
・・・助けて欲しいと。
助ける気はなく、ただ悪夢だけ食べて、せめて幸せな夢を渡すだけのつもりでしたが、
なぜでしょうね、いまだにこれだけは私もよくわからないんですが、その悲しそうな瞳と声に私はつい、手助けをしてしまったようです。
多分、もうこれっきりだと思いますよ。助けをだすことは。
それからあの学校をつくりましたが、あの学校はゆまの精神でどうとも変わってしまう場所でしたから、あまりにも不安定でいられるとたもてなかったのです。
それで保つためにつくられたのが、まゆです。
まゆは、あの学校と同じ夢の世界で作られた物です」
じっと守君は獏の話を聞いていた。
話が終わり、守君が話し出す。
「・・・そうやったんか。なあ、まゆちゃん・・・ありがとうな。色々と」
「・・どうしたしまして」
「なあ、でも戻るって、まゆちゃんはどこに戻るんや?」
「ゆまの中だよ、ゆまに吸収されて、私は消えるの」
「・・・消えるってそんなん、一緒に現実に帰ろうや」
「無理だよ、だって私は、ゆまから作られて存在だから、そしてゆまの夢の中だけしかいきれないのよ、ゆまが戻るというのなら、それは消えると同義なのよ。
ね、守君?なんで貴方の事、知ってるか聞いたでしょう?」
「ああ・・」
「中学一年生の時に、私が、いじめられてた時に助けてくれたよね、貴方だっていじめられるかもしれないのに・・・でも私は学校を休むようになったときに渡してくれたよね、
白いノートを、そこにあなたは励ましの言葉を沢山書いてくれてた・・・あの後、ずっ会えなかったけど、とても嬉しかったんだ・・・私はね、あの頃の悲しい記憶、嬉しい記憶をもった、もうひとりの「ゆま」だから・・だから知ってるの」
「・・・・俺、結局なんも出来てないで・・だって結局・・君は学校にはこれなくなって・・
なんも、手助けできてなかったねん・・」
「ううん・・・違うよ・・・私はあなたとそして透子っちの存在で生きてこれたの、だから・・私はとてもありがたかったの・・親も厳しい人であまり話を聞いてくれないなか、話しかけてくれてとても嬉しかったの・・だから、貴方なら、きっとまたたすけに来てくれると信じてたわ・・・・・ああ・・そろそろ私も消える時がきたわね・・」
離している間、どんどんまゆの体はどんどん下の方から、光の粒子のように消えていく。
もう、かお以外はほとんど消えている。
まゆは守君の方を見ていたが、透子ちゃんの方をみて
「透子・・・ありがと・・・さよなら・・」
そういってほぼ消えてしまい、その残った小さな光の粒子が私の中に吸収されていった。
透子っちも守君も泣いていた。
私の中に戻るだけだから、最終的には私なのだけれど、確かにまゆは、まゆとして存在していたと私は思っている、だから私はまゆにこうつぶやいて、前に進むつもりだ。
「さよなら、もう一人の私、私は、生まれ変わるからね」
第?章「さよなら、そして待ってて」
「・・・消えましたね・・・」
「・・・うん・・・」
「ゆま、貴方が忘れていた事すべてが貴方の元に戻っています・・・大丈夫ですか?」
「・・・いえ・・でもまゆがいままで背負ってくれたんですもん・・・私はこの記憶を背負って・・・生きていくと・・・決めましたからね」
「そうですか・・さて、こんな状況ですが、遠野さん・・どうされます?説得もできませんでしたね・・・私達は一応、たすけにこれからいくつもりではいますが全員はほぼ無理でしょうね」
ぼろぼろと泣いていた守君が急に話しかけられびくっと獏の方を向いた。
「・・・・ほんと、厳しいわー・・・・・」
ただ、守君はうなだれていた、
そう・・もうどうすることも・・・
私も諦めていたその時、透子っちが守君をひっぱたたいた。
「いでえええ!!!何すんの!」
「・・・・・泣いてないで考えてよ!」
透子っちも泣きながら、なのだが、でもそれが聞いたのか、守君が涙をふき、
「・・・せやな!考えてみる!ちょっと考えさせて!」
いつもの守君のあの笑顔でそう言った。
考えさせてと言われ、数分待っていた。
多分、崩壊はもう始まっているし悠長にはしてられないのだけれど、私たちは待っていた。
獏も行こうとしていたが、待ってほしいと守君に真剣に言われ、待っていた。
「・・・・せや・・・!なあ、獏?やったけ!あのプレゼント!あれって今使えへんの?」
「・・・・ああ。あれですか・・!・・・なるほど。使えますよ。なるほど・・でも、もし使うなら、此処を抜け出すために使うべきです」
「え、この後、抜け出すのはしてくれるつもりでいたけど違うん?」
「手助けはするつもりではいます。でも、助けられる方々を見捨てるかどうかによって手助けできるかどうかは、わかりませんよ」
「そっそんな!はよ!いうてや!」
「まゆが、ゆまに吸収されないと言えない仕組みではあったのですみません」
守君はまた、うーんとうなるが、そこに透子っちが名乗り出た。
「・・・私のを使えば・・どうにかならない?」
「・・・貴方のは、使ってましたよもう。貴方と守さんがこの世界に来る時に」
「そっそんな・・」
「無意識のようでしたけどね」
そう、獏に言われ透子っちも落ち込んでいた。
でも、またチャンスはあるよ、透子っち!
「なら、私のはどう?獏」
「ゆま、なんとまあ、助けてあげたのにさらに貰うつもりですか」
「うん!だって、約束したもん」
「・・・・まあ、よしとしますか。なら、どちらをどちらに使います?」
そう聞くと
「なら、俺の使って、あの学校の人たちを助けてくれ!」
「じゃあ、私のを使って戻ろう、現実へ」
「わかりました・・・・。では、遠野さん、渡した箱をもらえますか?
それを使って私たちは、あの学校に向かいます。」
「わかった」
遠野君はポケットに、手のひらサイズの箱を獏に渡した。
「頼むで」
「はい、遠野さん、最後ですし、教えてあげます。貴方がなぜこの世界にこれたのかを」
「へ?」
「あなたはイレギュラーっていっていましたね。たぶん、貴方は人間ではない、いえ、この世界につれてこられたわけではないのです。
あなたは、あの白いノートの残留思念のようなものです」
「・・・はあ?」
「ゆまを助けたい気持ちが、あのノートに色強く残っていたみたいですね、ゆまが
についた時に三つ忘れ物をしていたといっていました。
それの一つでしょうね・・・」
「・・・・・じゃあ、俺の体はどないなってんねん」
「普通に生活しているでしょう。ただの残留思念だけが残っているだけなので」
「てか残留思念ってこんなにリアルなん?」
「夢の世界ですからね、まゆがいい例でしょう」
「・・・メタやなぁ・・・・てかさ、そうやとして、俺はどこに戻るんよ?」
「そのノートがどうなってるかによりますね。そのノートを貴方本人が持っていればおもいだせると思います。」
「いやいや、おかしいやろ?俺はこのノートは渡したんやで。俺が持ってる訳ないやん」
「夢の世界と現実の世界が同じ時間だとお思いですか?」
「「え?」」
この時、私と、守君、透子っち全員でびっくりして、その後ええええええっ!と叫んでいた。
「・・・・ゆまも透子も、わかってなかったんですか・・・」
「てことはだよ、獏!もしかして、あの時に戻るって訳じゃあないの!?」
「そうですよ。まあ、ゆまは仕方ないです。すべてまゆが抱え込んでいたから。
ですが、透子は、知っているからこそ、言わないようにしていたのかと思ってましたよ」
「・・・私は・・あのベランダで死ぬ気だったから・・戻ったら死ぬだろうと思ってた。
だから、せめて、ゆまだけは戻ってちゃんと幸せになってほしくて・・」
「なるほど・・。まあ、聞かれなかったので言わなかったのですが、改めていいますが。
夢の世界は、時間がほぼ止まっています。現実は進んでいます。
だから、私もあなた方がどうなってるかは分からないのです。
生きてるか、死んでいるのか、私はあなた方の魂のような、自我というようなものを、連れてきたようなものなので、体は動いてるでしょうが、いつまで生命活動が動いているのかとかは知らないです、まあ、それはあの学校の人もそうですが」
「そんな・・・・なら、存在が消えるってのはどういう事やねん!」
「そういうものらしいですよ、こればっかりは、私も知りません。
ゆまは知らないですか?まゆなら知っているでしょう」
そういわれて、私はどうなんだろうと、思い出そうとするが、思い出せなかった。
色々と記憶が戻ってきて混乱しているのもあるけど、その部分だけは鍵がされているようだった。
「・・・・わかんない・・・なんか、見えないようにもやがかかっているような・・」
「・・・・そんな・・」
「・・・まあ、まゆにしか、知りえないこともあるようですね。
話を戻しますが、それでも生きている可能性を信じてあなた方はもどるつもりでしょう?
そして、遠野さん、貴方はこの世界の住人でもなく、ましてや魂のようなものではない、残留思念が、ゆまさんについてきたものです。だから、戻ったとしても本人とは違うので、消えるだけです。ですが、もしそのノートを触ったら、持っていたら思い出すのかもしれませんね。この世界の事も。」
「・・・・・なるほど・・信じきれんけど・・でも、その可能性を信じる以外に方法はあるか?」
「ないですね」
「くっそおお!俺は絶対、俺の元にもどってやるからな!!!」
「さてさて、本当に時間もなくなってきましたし、私はいきますね」
離している間に上から、黒く染まっていた。
箱を手に持ち、その黒く染まっている方へと獏は進んでいく。
もう、会う事はないだろう。私はそんな気がしていた。
いままで、幸せな時間をみさせてくれた、獏。
わたしのわがままを聞いてくれていた、獏。
ちゃんと、言わなきゃね、私は上に向かって進む、獏に叫んでいた。
「ありがとう!!!私のわがままをいままで聞いてくれていてありがとう!!さよなら、獏!!」
叫ぶと、獏は振り向いてこういってくれた。
「良い未来(ゆめ)をみてくださいね~・・・です」
最後にサンタ先生の面影がすこし見え、そして黒い闇へと消えていった。
そして残ったのは、私と守君と透子っち。
「守君・・・戻ったらどうなってるか分からないけど・・・でも、私達ならきっと大丈夫だよね」
「・・・当たり前や!何があっても俺が二人とも迎えにいったる」
「私、死んでいる可能性もあるかもですよ、守さん」
「ん?何言ってるか聞こえへん~」
「うわあ・・子供みたいですね」
「ふふっ二人とも子供みたいwさあ、そろそろ私のも、使わないと私達も消えちゃう」
「せやな・・」
いまさらだけど、このプレゼントというのは私たちの未来なのだから・・・誰も言わなかったけど・・・もう消えていて当たり前なのではないかと思う。
でも、そんな悲しい事、いいたくないよね。最後の最後は笑顔でお別れだよね。
私は、そう思いながらも、何故か渡された記憶はないが、あるであろうと思っていた、ポケットをさぐると、手のひらサイズの箱があった。
そして、それをあけようとする、だがその手を透子っちが止めた。
「・・・ゆま・・やめようよ・・どうせ戻っても可能性なんてゼロだよ・・・ならもうこのままここで三人でいようよ・・・消えてくのにかわりなんてないよ・・」
透子っちが震える声でそう言った。
そうかもしれない・・でも
「透子っち・・・でもさ、生きてない可能性なんてないよ!」
「せやせや」
「・・・ないよ!だって!もう未来を渡してしまったのに・・」
「・・・でも、それがいつの未来か分からないでしょ?」
「・・・でも・・」
「さ、考えるより動いたらわかるでしょう?信じようよ、未来を、私もどうなるか怖い。
でもね、私思うんだ、なんだかんだ、こうやって二人に会えてとても嬉しいの。
もう、会えないと思っていた二人に。だから、それだけで幸せだった。
でもさ、透子っちはそれではだめだと言って、私を起こしてくれたの。
過去に生きるんじゃなくて、未来に生きるという事を、だから、戻ってちゃんと会うの。
だって、生きている可能性が、1%はあるかもしれないよ?
なら、それを私は信じたい」
「・・・ゆま・・・・・分かった。絶対、生きて会おうね・・・」
「うん!!!」
「話はまもまったようやし、行きますか、まあ、待っててや!ぜえったい迎えにいくから!」
私たちは、その箱の周りにあつまり、そして、
箱をあけた。
『・・・・うっす!!!!いやはや、ついに帰る事になりましたか!!!
寂しくなるね!!いつかまた来てよね!
そうそう、それと!少しの間だけだったけど、楽しかったよ!!!
だから・・・ゆまちゃん、まゆちゃんに頼まれてたこれ使ってね!
私があげたんだけど、ゆまちゃんに渡せってうるさかったの!
じゃあね!』
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