第23話 ゆまと透子と守
「おまたせ」
時が止まったかのように、獏と透子っちはずっと並んで見つめ合うように立っていた。
まってと言われた時から、ずっと。マネキンのように。
「・・・ゆま、遅かったですね」
「ごめんなさい、私、しなければいけない事しに戻ってきました」
「そうですか・・・どうするつもりで?」
「・・・透子っちの精神世界にいきます」
「・・・貴方の為に頑張ってくれていた人を消すつもりですか。まあ、この世界は貴方の世界なので、どちらでもいいのですが、私達からしたら」
「消させません。私は迎えにいくんです!」
「でも私たちは貰いにいきますよ、透子さんの過去を。これは獏の生き方でも
あるのですから、その結果消えてしまいますよ」
「ええ。でも、それは私がいないと消えませんよね?」
「・・・確かにそうですが、それが?」
「守君に任せます、迎えに行ってきてもらうんですよ!!!」
ここまで横でポカンとしていた、守君が私の方を向き、はあ?と言いたげな顔で
見てきたけど、まあ、そういう反応されるの分かってたので、にこっと微笑む。
「いや、笑顔で何いうてはるの!?いまいち状況判断がつかめとらんのに、急に俺に任せるってどないなってんの!」
「守君、後でちゃーんと説明するから、お願い。透子っちを迎えにいってあげて?
流れと透子っちの本を透子っちより先に見つけて、精神世界へ行く!そういう流れ」
「いや、後でって今欲しい所やねんけど」
「さて、透子っち。後で色々言いたい事あるんだけど、とりあえず一言!
ありがとう!後でね!」
そういって私は透子っちに、棒を振る。
そうすると、透子っちと守君だけが消えた。
ここに残ったのは、私とそして、獏。
「んで、獏。貴方は私と来てほしい。まゆの所に」
「・・・ゆま、貴方は何をしようとしているんです?いくら貴方があの二人を私から遠ざけても私は、時が来た時に行きますよ、透子の世界に」
「うん、そうだね。でもそれまでに守君が間に合うとこに意味があるの。」
「なんでです?」
「獏は守君をイレギュラーな存在として扱ってますよね?」
「まあね、実際イレギュラーなのですから」
「だから、可能性にかけてみたかったんですよ。私では無理でもあの人ならなんとかしてくれるんじゃないかって」
「なんとか出来てたらって無理ですね」
「かもしれないけど、でも私ある物を渡してきたんです。だから、きっと
透子っちを助けてきてくれますよ」
「何を渡してきたんです?」
「まあ、後でわかりますから。ほら、話しているうちに着きました、保健室」
一方その頃の守君SIDE
ドッスン!!!
「いってえええ!!!・・・いててて、腰が・・何が起きたんだよ」
「飛ばされましたね、遠野さん」
目の前には透子ちゃんが居た。
「・・・透子ちゃん!透子ちゃんどこいってたんや!探してたんやで」
「探してたのは、ゆまの方でしょう?」
「二人共や!」
「お世辞はいいですよ」
「お世辞ちゃうし!それも大事やけど、今はそれどころちゃう!透子ちゃん!
はよ、帰ろう!」
「どこにです?遠野さん、私に買える場所なんてないんですよ」
そういうと、透子ちゃんは俺を一瞥して、走り出した。
「ちょっ!透子ちゃん!」
「遠野さん、私はもういいの。だからゆまを助けてあげてよ!」
「何言ってんねん!俺はな、二人とも一緒に帰る気満々でけど!?」
正直走りながらはきついが逃げるので追いかけている。
透子ちゃんはかなり、速さで走り抜けていってしまい、完璧に見失なった。
「早過ぎィ!!!ふー・・・かくれんぼかいな。たくっ!手のかかる後輩やで」
ゆまちゃんが来てから、俺、探し物にほぼ手伝っているような気がするなと思いつつ
俺は探していく。
歩いていて、此処はさっきまでいた教室からさほど遠くない廊下だというのが分かってきた。
この学校はいつもの学校だけど、ほのぐらい。
さほど疑問には思ってはいなかったが、何故、授業の時はあんなにずっと明るいのに
今はこんなに暗いんだと思いつつ、それにしても全然居ないなと思いつつ探していく。
「透子ちゃん、かくれんぼ上手すぎやろ」
正直かなりさがしまくったが見つからない。
「あー見つからん!!!どこや!!どの教室におらんやん!!!」
「大変ですね~」
「ほんまに!って!」
なんでサンタ先生がおるの!?
「なんでここに~?って顔ですね~分かります~」
「なんでいるん!?」
「ふふ~私もね~貴方と一緒に~飛ばされました~」
「俺、よくわからんけど、あんさん、獏なんやったら、そんな飛ばされる前にガードしたらええんちゃうの」
「ん~・・あ~そうですね~まあ、いいじゃないですか~」
「適当やな・・・なあ、先生。透子ちゃんを探してるんやけど、一緒に探してくれへん?」
「透子、またいなくなったんですね~いいですよ~」
「また?どゆことや?それに、先生、呼び捨てなんやな、透子ちゃんは生徒やのに」
「ふふ~以前に一回、まゆさんがまだ一人だった時に手伝わされました~。」
「は?行ってる意味がいまいちよくわからんのやけど」
「君は~多分ね~ぎりぎりになったらすべてわかるよ~。まあ、その頃に君がどう思うかはわからないけどね~」
「ぎりぎりに分かるって先生なんか知ってんなら教えてや」
「ん~、それは駄目ですよ~私達は決してあなたにはいえないのですから~、さてさてさて~探しにいきましょうか~透子の場所は想像つきますし~」
「相変わらず、俺は教えてもらえんのやな」
「知らないことも、時には~大事ですよ~?でも、とりあえず透子の所にいきましょか~?
ゆまにも頼まれましたしね~?」
「大事ねぇ。はぐらかされてる気がするけど、今は、透子ちゃん探しにいくわ」
サンタセンセーに続いて歩いていくと、そこはグラウンドの端っこにあったブランコだ。
そこに一人、透子がブランコに座っていた。
「透子ちゃん!見つけたで!」
「遅いですね、遠野さん。遅すぎて眠たくなってきましたもん。」
「ずっと学校の中やと思ってたし、こんな所あるなんて知らんかったわ・・」
「でしょうね、だって私とゆまとまゆしか使ってなかったし」
「まゆ?」
「そう、遠野さんは知らない、もう一人のゆま、それがまゆですよ。ねえ?
獏」
透子ちゃんは、俺に顔を合わせていたが、ふいっとセンセーの方を向いてそう聞いていた。
「そうですね~。まあ、私はこれ以上~なにも言えませんが」
「そうだったわね、まあ、説明なんて不要だけど・・・だって、遠野さんが来ても、もう私は手遅れだから」
ゴウっと突風が急に目の前をよぎる、そして、びっくりしてる間に
目の前に居た、透子ちゃんはいなかった。
ただ、ブランコに黒いノートだけを置いて。
「透子ちゃん!?どこにいったんや!」
急に風に飛ばされたかのようにいない。
俺は、一時呆然としていた、ただ、ハッと思いたち、ノートをてに取ろうとする。
だが、触る前にボウっと火を上げた。
「うわあっ!燃えた!?」
ほぼ、一瞬の出来事のようにノートは燃えてしまっていた。
「な・・・おい。透子ちゃん・・・どこいったんよ?これ燃えたら、君どうなるんよ」
「存在を消したんですよ~自分から~」
こんな状況でなんとも間延びした声が聞こえる。
「先生!なんでそんな冷静なん!消したってなんやねん!」
「透子とね~約束してたみたいですね~あの人は~いつか消える為に~」
「なにいってんだよ!消える為とか!こんなの嘘っぱちだろ?」
「・・・嘘でもありますね、でも本当でもあります」
「意味わかんね!俺、探しに行く!」
「ん~無理ですよ~だって存在が消えたものを探す事なんてできません~」
そう間延びした声を最後まで聞く間もなく俺は走った。
色々さがしたけど、見つからない。
「透子ちゃ・・ん・・どこ行ったんよ・・・。ゆまちゃんとも約束したんや、一緒に帰ろうや・・・また、俺は助けられんとかいややで!!」
泣きそうだ。走り回っても、見つからない。
どうして、俺は無力なんだろ・・・何時間あるいても全然見つからなくなってきて
本格的に、足も痛くなってきた。
「ふ~・・・守さん、お疲れ様です。満足しました~?」
「・・・先生・・・どうにかしてくれよ!」
「う~ん・・・あ、そういえば守さん、貴方、契約されてました~?夢食と~?」
「・・・してましたけど、それが何か?」
「ふむふむ~。ふふ、そうですね。守さん、賭けしません?」
「賭け?何をいうとるん?」
「あなたは夢食と契約している。なら~連れて行ってあげれますよ。
ですが~私のルートでいくと、貴方はどんどん忘れていきます~。
貴方がそこ透子に何しにいくのか忘れないかの賭けです。
勝てば、私が責任もって透子とあなたを助けにいきます。
透子に着くころに何を~していたかすら~忘れるでしょう~それでもいいのなら連れて~いきますよ?」
「行く。てか、場所知ってるなら、俺の労力の前にいうてくれてもええやん!」
「即答ですか~さすがですね~。まあ~制約が多いので~」
「まあ、ええわ。いくで、どうせその方法しかないし。それにな、可愛い後輩見捨てるとか後味悪いし。で?どういくん?」
「わかりました~。では~目つぶってもらっていいですかね~?」
「ええけど、なんで?」
「見られては困るので~」
「めっちゃ不安なんやけど・・・まあ、ええわ。もう後にもひけんし」
それからの流れというと、俺は急に吸い込まれたかのような感じがした。
正直、西遊記にでてきそうな瓢箪に吸い込まれた気分だ。
そこから、数秒後に俺は上から落とされた。
「うぎゃっ!・・いてて・・ゆまちゃんもサンタ先生ももうちょっと優しく運んでやっ!
・・・さて、先生がいうには透子ちゃんの夢の世界いってたな」
一本道に扉が沢山あるのと、空は暗いくらいか。
いままで、色々とこの夢の世界らしき所につれてこられていたので動揺はないな。
信の世界とは違う、人によって世界は違うみたいやなぁ。
「よし、ここにおっても意味ないし、進むか。でも向こう側は全然みえんし・・・。
歩いて時間すぎるより、開けてく方がええよなぁ」
正直、先生に言われたこと、気にしてないわけではない。
進むほど忘れるかもしれないし、動くのも怖い。
でも、このままなんもせえへんくても、帰れん。
そう覚悟をきめて、俺はひとつめの扉をあけることにした。
一番近くにある、右手のドアを開けるとそこには、ゆまちゃんと透子ちゃんがいた。
「・・・・え?いや、透子ちゃん?」
正直びっくりした、こんなすぐに見つかると思ってなかったし、ただ何故ゆまちゃんがいるんか、不思議におもいつつ入ろうとすると、はじかれて、そのドアは消えてしまった。
「な、なんでやねん・・・あれはなんやったんや。」
まあ、そんなすぐな訳なかったみたいやな、にしてもゆまちゃんも来てたのかなと思ったけれども、いや、これ夢の世界やしとふと思い出す。
「うーん、このまま探していくのまじ疲れそう・・」
そう、扉は見えないくらいにある。
弱音をはきたくなるが、ゆまちゃんにも頼まれたし!二人を連れて帰るつもりで来たからには、進む。
その後、もう、20くらいの扉をあけていった。そこにはゆまちゃんと透子ちゃんが楽しく遊んでいる所の映像が大半で、ただ、途中からゆまちゃんそっくりの子が出て来てた。
「あれ、だれや?」
可能性としては実はゆまちゃんが姉妹とかなと思うけど・・・なんか透子ちゃんとかが、なんとかちゃんに会ったとか聞いてたな。
んーだれやったやろ。
いくら考えても思い出せないので、疑問に思いつつの扉をあけていく。
50位まであけていくと、内容が少し変わっていた。
ゆまちゃんがいなくなり、それに場所も違う。暗い部屋に透子ちゃんだけがいる。
「・・・透子ちゃん、なんでそんな暗い部屋おるんや・・?だって初めの方は・・・あれ?」
思い出せない・・?此処に来た時の最初の扉の内容はなんやったけ?
「まじか・・!そろそろやばくなってきたんか!」
体感的に数時間後の事だし、忘れてもおかしくはない気はするけど、それでもなにも思い出せへんとかやばいやんっ!
「わかっていたけど・・徐々に忘れていくんはかなりの不安やな」
でも、ゆまちゃんに託されたことでもあるし、俺はもう信みたいになにも出来ないなんてそんなことしたくない。
若干震える足を叩いて、俺は進んだ。
70まで行くと、俺は絶句していた。
てか、そこくらいから、扉の内容はえぐくなっていた。
「透子ちゃん・・・・俺・・・知らんかった・・ごめん」
暗い部屋で一人、暴力に耐えてるまゆちゃんを、何度か助けようとするが、はじかれてしまう。ものすごく悔しいし、もどかしくて俺は唇をかんでいた。
「透子ちゃん、俺、絶対見つけたるから!そして、めいいっぱい、ゆまちゃんと抱きしめたるからまっとれよ!」
体力的な疲れはほぼないが、精神的にかなりまいってはいたが、やる気を無理やりだして進んでいく。
歩きながら、どこまで忘れいたのかを気にはなっていた。
もう、最初部屋の内容や、途中の部屋の内容も覚えてない。だから、一発目(点をいれる)
のはずの70部屋目は、パンチが強すぎる。
精神的にまいりそうになりながら、歩いていく。
「・・・本間に約束まもってくれるんかな・・・・あれ?誰と約束してたっけ?それになんで約束した・・・透子ちゃん迎えにいくためやろ・・?」
やばい、やばいやばいやばい。急に不安が増してきた。
大体忘れていたのは、ここのだけのはずやのに、多分それより前のはずの記憶がない。
「俺、ほんまに大丈夫なんやろか・・・戻っても帰れはしいひんし・・・」
多分、進めは進むほど、つらい内容が増える気がする。
でも、戻っても帰れることはないし、透子ちゃんにゆまちゃんにも会えない。
そう、考えてもわかっていたこど。
それから俺は気分は最悪だが、だるい体をひきずり、歩いていくことにした。
そして、90部屋。
吐いていた。ものすごくだるい、なんで、なんで、なんで、なんでや!
透子ちゃん・・・ずっと我慢してたんか・・・ごめん。ごめん!
その頃には生傷がどんどん増えていた。
食べるものもすくないのか、ふらふらだ。
90部屋行く前に、学校らしき映像も流れていた。
怪我もしていても、まだ学校には通っていた、でも、ほぼ誰も近寄らず、ほぼ一人だ。
ただ、途中で、ゆまちゃんが透子ちゃんを助けていた。
そのおかげで、透子ちゃんが学校では笑っていた。
家では、泣いていたけど、それでもまだ幸せそうだった。
そして・・・ついに学校を行かなくなったのかほぼそれから家にいる。
俺はもう、足を止めていた。
歩いている間、涙も流したし、吐いて、もう動けなくなっていた。
なにもできない、見えるだけ、正直、透子ちゃんの方がつらいのに、なにお前が傷づいてんだよって感じだろうが・・・。
「・・・・・・・俺・・どうしたらいいやろ・・・なあ、し・・し・・あれ・・・
俺、今誰の名前・・・を言おうとしたんや?ていうか俺だれ・・・や?なんでこんな場所に・・!!!うあああああああああああああっっつ!」
思い出せない。思い出せない。
「俺は誰だよ・・・ここどこだよ、助けてくれよ、ゆ・・・っ・・・くそおおおお!」
泣きながら、上を向き、叫んでいた。
「誰か助けてくれ・・・。」
とそういうと、ぴかっとポケットが光った。
小さな光ではあったが、確かに光ったのだ。
ポケットを探ると、そこにはボール。
「・・・・なんだこれ?」
変哲もないただのボールにしか見えない。
「なんでこんなもの持ってたんだ?」
『守、お前なら出来るよ・・・』
「え?誰だ?」
気のせいか・・・?誰かの声が聞こえた気がする。
キョロキョロするが、だれもいない。
「なあ、だれかいるのか?」
聞くが返事はない・・・正直助けがきたのかと思ったがそれだけだった。
でも、なんだろう、だれかに背中を押されたそんな気がした。
「なあ、だれかわからんけど、慰めてくれたんか?・・そうならありがとうな。
俺、進むよ」
ほぼ独り言のように呟いて、ボールをポケットに入れて進んだ。
そして、99部屋目、そこで俺は、よくわからない映像をみた。
女の子が飛んでいる、空を飛んでいる。
ベランダで女の子が泣いている。
空に、カバらしきものが飛んでる。
あまりにも衝撃的な映像で、俺はそこで足を止まっていた。
それは数秒の事だったのかもしれない、でも俺はもっと長く感じていた。
消えたころには、ただ茫然と立っていた。
「な、なんやのあれ・・・?」
「お待たせしました、守さん。改めて聞きに来ましたよ」
ドアが消えたかと思うと、横に急に、さっきみたカバと似たような生物がいた、でもスーツを着ていて、俺は口を大きく開けて固まっていた。
「守さん、聞いてますか?」
「へ!?な、なにが!?」
「守さん、約束を、賭けを果たしにしたんですよ。」
「はあ!?賭け!?」
「はい、守さん、貴方は、何故、
この場所にきたんですか?(点々つける)」
「なっなんでって・・・」
なんでだ・・・ろ?俺、なんでこんな場所にいるんだ・・あれ?
「・・・私の勝ちですね・・・少しだけですが、期待をしてましたが。まあ、普通は無理な事です・・。さて、もう忘れましょうか、そして楽しい夢を見せてあげます」
このカバらしきものは、俺の頭の方を掴もうとしていたが、逃げられない。
なんでか体が動かない。
俺・・どうなってしまうんだ・・!
その時ポケットからさっきより輝いて光った。
「うわっ」
俺はまぶしくて、目を開けてられなかった。
でも、声だけが聞こえていた。
『先生、僕の親友に手出しはさせません・・・よ・・・』
「・・・君は・・・どうして・・・?」
『・・・・先生、少し待っててもらえますか・・・?』
『・・・守・・・守、お前はここで消えちゃだめだよ・・・僕の大事な親友・・・』
この声は・・この声は・・・
「・・・・・しっ信・・・?」
『・・・おかえり。忘れるなんて・・・ひどいな・・』
「・・・・信!!!なっんでっお前」
『・・・僕・・・が消える前に、ある女の子に頼まれて・・たんだ。
わたしのせいで、あなたの親友は大変な目にきっと会う。だから、
助けてやってほしい・・・って
そう、ゆまさんにそっくりの・・女の子が謝りながら、泣きながら頼んでたから・・
断れないよね・・・女の子の頼みは・・」
「・・・・ははっ・・・お前、消える前に何イケメンな事してんや!
信、ありがとうな、すべて忘れる所やった・・ありがとう!・・・でも
どうせ、もうすぐ消えるんやろ・・姿も見せへんとかせこいで!」
『へへ・・ごめん・・』
「謝るんちゃうやろ?そこは、なあ、俺、どうなっても今度こそお前の事忘れんから!」
『ありがとう・・・ねえ、最後にもう一度聞いてもいいかな・・?』
「俺も聞きたいねんけど?」
『え・・でも・・・』
「ほらっ!最後の最後でなに怖気づいてねん!」
『・・うん・・守、僕、いや俺たちは
「『親友』」
だよな!』」
姿は見えなかった、でもなんとなく手を出されたような気がしたから、グーを出したら、
気のせいかもしれないが、ちゃんと当て返してくれた気がした。
光は徐々に消えていき、ただボールだけが落ちた。
その落ちたボールを拾い、俺はサンタ先生(点々)の方を向く。
「サンタ先生、賭けは俺の勝ち!」
「・・・そうみたいですね~。いやはや~さんはよい友達と持っておりましたね」
「持ってたちゃう、今も昔もそして、未来も大切な相棒やで!」
「それはそれは~。では、貴方の勝ちですし~透子を助けにいきますか」
「おう!」
ここにくるまでの体のだるさは消えていた。
もう、部屋はこの100部屋目。
ちょうど突き当りにドアがある。
そこだけは両開きのドアだ。
俺はそのドアを開けると、まっくらな部屋が出た。
「おお、この感じはそろそろ来た感じやな」
深層意識まできたのだろう、身におぼえがある雰囲気だ。
ずっと進んでいくと、ぽつんと明かりがひとつ。
「透子ちゃん・・・?」
透子ちゃんにしてはとても小さい子だった。
でも、確かに透子ちゃんだ。
いままでの部屋で、そう、泣いていた透子ちゃんだ。
俺はその子に近づこうとする。
が、サンタ先生が俺の前にでる。
「守さん、貴方はどんな大人になりたいですか?」
「へ?急になんなん?」
「答えてください」
じっと俺を見て来た。
俺が、記憶が飛んでいた、その時と同じようにしゃべり方が変わっていて・・ごまかしをゆるさないそんな覚悟がこもった気迫を感じたから、俺はちゃんと正直に答えた。
「俺は、もう、見てるだけやない、ちゃんといざという時にも守れる大人になりたい」
「そうですね、それでこそ、守さんですね~。契約してましたよね、なら貴方にはこの夢を与えましょう、そう、これで、守ってあげてください。」
そういって先生は上に飛ぶ。そして、また、光るとサンタ先生が、人の姿になっていた。
ていうか、もろサンタのような。
そして、プレゼント袋を出してきて、俺の手のひらに乗せる。
そして、飛んで行った。
「・・・トナカイなしで自分で行くんかい!」
とりあえず、突っ込みだけいれて、俺は手のひらに乗せられた、小さな、箱を
あけようとするが、あかない。
「おい、プレゼントあかへんのやけど」
今はあけられへんのかいな。
うーむ・・・と思ったけど、それより今は、透子ちゃんだ。
ポケットには入らないので、片手にもって、透子ちゃんの所に向かう。
そこまで遠い距離ではないので、少し歩いたら透子ちゃんの所に辿り着いた。
「・・・透子ちゃん、帰ろうや」
後ろからそう俺は語りかけたが、振り向きもせず、ただ下を向いて泣いている。
なので、顔の方に行き、しゃがんでもう一度語り掛けた。
「ゆまちゃんも待ってるで、一緒に帰ろう」
そういって、俺はゆまちゃんに手を差し伸べた。
「ゆ・・まちゃん・・?」
下を向いたままだが、反応はしてくれた。
「そう、ゆまちゃんがまっとる」
「・・・だめ・・なの。ゆまちゃんは悪くないのに・・私が悪いのに・・だから
ゆまちゃんに迷惑かけちゃだめなの・・」
「透子ちゃん、透子ちゃんもゆまちゃんも悪くない、君らはなんも悪くないんよ」
ほぼ無意識だった。
俺は、透子ちゃんを抱きしめていた。
透子ちゃんはびっくりしたのかびくっと体を震わせて固まっていた。
でも、逃げたりはせずただ、固まっていた。
正直、触ったら嫌がられて、ひっかかれるかなと思ってたけど、そんな事もなかった。
ていうか、急に抱きしめておびえてるだけかも。
そりゃあ、急に抱きしめたら、何されるんだろうって思うよな。
なので、とりあえず落ち着いてもらう為にも、抱きしめつつ背中をなでてみる事にした。
「・・・きゃっ!ごっごめんなさい!」
叩かれると思ったんか両手を頭にかけて震えていた。
「大丈夫やで、なんもせえへん、痛い事なんてなんもせえへんよ」
そういって俺は背中をなでた。
ビクっとしてまた震えだしたが、撫でてやると俺の方を見た。
「・・・なんで・・?私、悪い子だよ・・?なんで・・?」
「透子ちゃんは、良い子やで!友達や親の為に色々我慢して本当に優しい子や、でもな甘えてもええんやで・・」
背中をなでて、そして頭もなでてあげた。
また叩かれると思ったのは少し、離れようとしたが、なでてやるとまた俺の方をみる。
「・・・・おにいちゃん・・・いいの・・・?私、甘えてもいいの・・?」
「ええよ、おにいちゃんにどーんと甘えてみ」
「・・・う・・うわあぁぁぁん!」
数分だろうか透子ちゃんは俺に抱きつきずっと泣いていた。
その間ずっと、抱きしめて時折頭をなでてあげていた。
「透子ちゃん、君はひとりちゃうよ・・・もし、戻った時に俺がいなかったとしても絶対迎えに行く、ゆまちゃんと一緒にな、だから、もし世界が敵だらけでも俺とゆまちゃんだけでも信じてついてきてくれんかな・・?」
「・・・おにいちゃん、本当に・・私を迎えにきてくれるの・・・?」
小さい透子ちゃんは泣きながら、そう聞いていた。
「おう!時間が少しかかるかもしれん、でも絶対に迎えにいく。」
「・・・おにいちゃん・・約束・・してくれる?・・指切りげんま・・・ん」
俺は指を出して、指切りげんまんした。
「絶対に迎えにいくよ、だから・・一緒にここからでよ。ここで消えたらあかん!」
俺は、半分泣きそうにながらそう叫んだ。
叫んだ瞬間、急に体が浮きだした。
そして、小さい透子ちゃんは大きくなっていた。
「・・・・透子ちゃん、帰ろか」
「遠野さん・・・・でも、無理ですよ・・ここは私の世界です・・消えていく運命なんです、
だから、遠野さんだけでもかえってください」
「なにいうてんの?君も帰るの!絶対に離さんから」
「だから、無理なんですって!小さい私を・・・慰めてくれて本当に嬉しかったです。
それがあなたは優しさであって、無理だとしても言ってくれて嬉しかったけれども、でも!
一緒にでれるわけがないです!」
「いや、でる。方法は多分ある!」
「・・・話聞いてます?それに、そろそろ・・この世界の崩壊が・・??あれ?」
「してへんやろ、浮いたりしてるけど。前みたいに周りが崩れていく感じはない」
「ど、どうして?」
「分からん。でも、透子ちゃんを抱きしめた時から、本当は崩壊しはじめたり、その前に浮いたりするはずやと思ってたけどせえへんかった。だから、それはなんかあったんやと思う、だから、帰れるはずや」
「・・・説得力ないですよ」
と、その時にまたボールが光りだす。
「お、また光った。なんか手助けでもしてくれるんか?」
さっきみたいに光った、ただ、だれも声も聞こえず、ただ光っていた。
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