第22話 まゆ

ずっと走っていく。

階段を下りて、そして、開ける。

うん。やっぱり居た。


「まゆ、お待たせ」


私がついた場所、それは保健室だった。

いつもいじめられた時によく逃げ場所として使わせてもたっていたもんね。


「・・・遅いよ」


同じ上方で同じ外見女の子がそこに座っていた。


「ごめんね、まゆ」


同じ外見の同じ姿、ただ違う所は無表情な所と、目に光がない所。

写真では笑っていたまゆ。


「いいよ、待つのは慣れてるから。で、此処に何しに来たの?」


「決まってる!まゆと話に来たの!」


「・・・なんの話?」


「私たちの事。」


「だが断る」


「懐かしいねー!此処に来た事」


「話きいてないし」


「だって断られるにきまってるから勝手に話すつもりだから!此処に来た時は本当に建物とそして綺麗なピンク色の空だけだったよねー。

まだ、あの時は私とそして


透子ちゃんだけだったよね!


なにもなくて、ただ保健室みたいなところを見つけたから二人で座ってぼんやり外見てた。

お腹もすかないし、何もする気も起こらずぼんやりしてた。

でも、それも飽きて透子ちゃんと久しぶりに遊んだんだ、外で」


私はまだこの世界に来た時の事を思い出していた。


「本当に楽しかった!お腹も喉もすかない、眠たくも疲れもしなかった。

ただ、ずっと二人ではなかったねー。

この世界の場所を教えてくれて力を分けてくれた【獏】が来て言ったよね。


「目覚める事のできない世界で楽しそうでなによりです。

どうですか?お元気ですか?」


本当に感謝してる!ありがとう!って泣いて言ってた。

その時、初めは感謝のお礼として何かしたいっていったよね。

初めは断ってたけど、その時もう一人・・現れたのが。


私のお母さんだったね。

そう、顔もしらないお母さん。

綺麗なお姉さんみたいな人だった。


それを知ったのは、まゆが出てから教えてくれたね。

獏も困惑していたけど、お母さんの事は聞いてた。

だから、お母さんはの感謝のお礼に夢を渡す事を提案してたね。


私、よくわかってなかったんだよね。


消えてしまう事や、私が忘れてしまう事も。

そして、お母さんが私がつらくないように


あなたを生み出して、忘れさせていた事」


休憩しつつほぼ話をずっと続けていた。

まゆはただずっと私の方を見たり外をみたりしていた。


「・・・・・そうだよ。私はあなたがつらい目に合わないように作られた分身のような物。

この世界でしか生きられない。もう、ほとんど思い出しちゃったんだねー・・」


「透子っちのおかげでね」


「貴方は戻りたい?貴方の本当の時間へ。」


「・・・実はそれを相談しに来たの、私さ・・・怖いのやっぱ。

だって戻った時にあの状態のままだったらどうしようとか。

透子っちを助けてあげられないままになるかもしれないとか不安で怖いの。

透子っちは戻った方がいいと言ってるけど、強がりもあるんだ。


透子っちだつて怖いはずなんだ!戻る事が・・・」


「だよね、わかるよ。わたしだもん。そのつらい気持ちや思い出は全部もらってきたの」


「ごめんね、いままで・・・本当にごめん・・」


「いいよ、これは私の存在証明みたいなものだから、それが消えたらもう私はいらないんだ」


「なにいってるの?」


「まゆ、貴方もうすうす気づいてると思うけど、貴方はきっと助けが来る。

 あなたを助けに向かおうとしてくれた人がいる・・・。


 あの子が来た時に私、そろそろお別れ近づいてきたなと思ったもん。

だから、透子っち保健室で相談してたんだよ。


私たちのお母さんと」


「どういう事?


「透子っちはね、ずっと気にしてたんだよ。ゆまの事を。

 自分のせいだと、だから、覚悟決めてわたしたちのお母さんの所に来たの、


ゆまだけでも、帰せる方法を聞きにね」


「私だけなんでそんなっ」


「でもねお母さんは教えなかった・・・いいえ。知らなかったから。

お母さんは入れる方法しか知らなかったから」


「そうなの?だってお母さんはなんでも知ってるんでしょう?」


「ううん。ゆま、知らないこともあるよ、だってお母さんは・・・

いえ、これ以上は言えない、それにそろそろ、お迎えがきたみたいね」


「何をいってるの?まゆ」


「ゆま、また後で会おう、その時に言いたいことがあるから、でも私の前に透子ちゃんをお願い・・・」


ガラッ


「ここか!?」


声が聞こえた方をみると、そこには居るはずのない人が居た。


「・・・・守くん?」


「ゆまちゃん!!!!!!!!よかったぁ・・・」


「どうしてここに・・?」


「どうしてちゃうわ!あの後、気になって、女子寮の方に行って、さすがに入らせてはもらえんかったけど、ゆまちゃんがいないって聞いて、来たんや!」


「で、でもここそんなすぐ来れる場所じゃあないよ?学校しまってるし」


「食堂も探したり、したけどおらんし。探しまくってたら、ほらあの、テンション高い子が

いうてくれたんや、『これ使ってとんでいこ!』って渡してくれたんや、ボールを。

俺も持ってたけど、俺のじゃああかんくてな」


「なんで・・・?羽音さん何者なの?」


「わからん。でも、助けてくれたしええ奴やで!」


「それはそうだけど」


「まあ、細かい事はおいていて、帰るで!」


「えっでも、私はまだまゆと」


そう言って振り返るとまゆはいなかった。

ただ、黒いあのノートだけが落ちていた。


「どうしたん?」


「まゆ・・・?まゆ!?」


「誰や?まゆって」


「私であって私じゃない女の子」


「は?どゆこと?」


ゆま・・・どこにいったの?私、まだ話十分にできてないのに。

でも、さっきまた今度って言ってた、また会えるんだよね?

なら、会いに行く!でも、まゆも言ってたし、私も迎えに行かないと。


「ゆまちゃん!どうしたんや!・・・なんで泣いてるんよ_?」


「・・・分からない。でももう一度会いに行かないといけないの、まゆとそして


透子っちの所に!」


私は保健室を出て駆け出していた。

後ろの方から、叫び声も聞こえるから守くんもついてきてくれてるとおもう。

色々、迷惑かけてごめんね、守君と思いつつ止まらず、私は透子っちの所に急ぐ。

多分、10分もしないうちに私は透子っちの所に着いた。

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