第21話 夢の世界

「今いる場所は、あなたとあなたが作った夢の世界だから」


「は?と、透子ちゃん?」


「ゆまが追いかけてきてくれて嬉しかったよ、もし明日までに見つからなければ私は

黙って消える気だったけど、見つけてきてくれたから、言わなければならない」


「透子ちゃん、何をいってるの?」


「ゆま、もう黒い本みた?」


「え、あ、うん・・」


「でも、過去って書いたページの後は読めなかったでしょう?」


「うん・・・」


「それをしたのは、私なの。私が貴方の記憶をいじったの。だから思い出せないし、

本にも載らない」


透子ちゃんは何をいってるんだろう。

私の記憶が思い出せないのは透子ちゃんがしたってなんで??


「ゆまちゃん、でもね、それを頼んだのは、ゆまちゃん本人なんだよ」


「やめて!」


頭痛、吐き気、身体が重い。


「ゆまちゃん、もうそろそろあなたは向き合わなければならないの、本当はもっと早く向き合うべきだったけど、久しぶりに会えたから、私、一緒にあそんでいたかった」


「透子ちゃん・・やめてよ!」


「でも、迎えがきたから。ねえ、ゆまちゃん。

もう終わりにしよう?


この世界を作ったのは


貴方なの。


私とそして自分自身の為に作った場所」


「やめてよ!!!!!」


「私はずっとね、親に虐待されていて、学校でもいじめられてた。

その時に助けてくれたのはゆまちゃんだった、ゆまちゃんが常に私のそばにいてくれて

本当に嬉しかった・・・。でもそれでゆまちゃんがいじめられる事になってたよね。

その頃くらいから私は、家から出して貰えなくなってきてた。」


「もうやめてやめてよ!!!」


「私、ずっと手紙かいてたの。届かない手紙を、きっと届かない手紙。

でもね、奇跡起きたの。

ゆまちゃんがね、来てくれたの。


空から。夢かと思ったけど、夢でもいいからあえてとても嬉しかった。


その時にゆまちゃんはいったんだよ。


『・・・透子っち・・・私と一緒に来てくれる?』って。

手を差し伸べてくれて、アタシは迷わず手を握ったわ。


ゆまっちがつれてきてくれた場所は本当になにもなかった。

広大な平地でただ、空が淡いピンクでとても綺麗だったわ・・。


ゆまちゃんその空を見ながら言ったわ」


『私のユートピアを作る場所だよ・・・透子っちと私が幸せに暮らせる場所、

いじめも虐待も悲しみのない場所』



私は忘れていたかったよ。透子っち。

・・・・どうして、どうして、覚めないといけないの。

頭痛も収まって、ただいまは空虚感だけが残っていた。

ユートピアでは私の意思はいらないのに。だから記憶を消してもらったのに!


「ここにいましたか。二人とも」


私とそして透子っちの間に現れたのは、サンタ先生と夢食い先生だ。


「その様子だと、透子、貴方言いましたね」


「言いましたよ、だってもうゆまは此処にいてはいけないの、元の世界に戻るべきなの」


「透子、もし元に戻ったとしてもゆまが罪悪感でつぶれてしまってもいいという事ですか?

貴方も知っている通り、私とサンタは二人で一つ。


私達、いえ、私は夢を食べて、よい夢をさずける事を生業としてきたものです。


だからゆまやこの世界に呼ばれてきた人たちの悲しいキオクを食べます。

でもその後良い夢を見させて、少しの間だけ幸せな時間を上げる、それだけで記憶を操作したり、存在を消すなんて事できません。


ただそれだけのことしかしていません。


本当にその後存在を消させてしまわせたのは私達ではなく、


ゆまのもう一人の人格、まゆです。


普通の人間ではこんなことできないですが、ゆまはそういう性質をもっていたのでしょうね。そうでなければ、あの棒、夢の世界の住人しか使えないのに使える訳がない」


「・・・私もそう思ってましたよ。思い出したらつぶれるかもしれない。

 それに私だって戻りたくないです。

だってここは夢の世界。あなた方がいうには現実と夢のはざまにある場所。時はここで止まっている。だからもし戻ったらまたあの場所かもしれない。


でも、もう、ゆまの記憶をけしたくないの!!

いつもいつも忘れさせるたびに違う記憶をいれて、私との記憶が消されていくの・・・つらい過去かもしれないけど、私がいた証をこれ以上消してほしくないの・・・」




透子っちが泣いてる。

私が泣かしてしまったんだろうな。

私は、二人が言い合ってるの、力なしに膝まづいて聞いてる。


空虚感だけが続いていた。

多分、.悲しいとかつらいとか超えると感情がとまるよね。それだと思う。

忘れていた記憶・・・ただ、透子っちを助けたくていじめっ子に歯向かったらいじめられちゃって・・・透子っちはいじめられなくなったけど、私に集中したねぇ。

ただ、ひとり助けてくれたのは守くんだったね。


つらかったな・・・色々隠されたり。だから私、皆がいない、私と透子っちが幸せになれる場所が欲しかった。

守君も来てほしかったけど・・・守君は輝いていて呼べなかったな。


ただ、楽しく暮らしていたかっただけなのに、隠していた気持ちは許してくれなかったんだねぇ・・・・。

あの写真はまゆと私と透子ちゃんが学校を作ってまもなくに撮った写真だったね。

消えたい気持ちはあの時はそんなになかったのに、楽しい気持ちが増えるたびに幸せが消えるのが怖くて・・・その気持ちはまゆに全部押し付けてた。


まゆ、貴方は今どこにいるのかな?

まゆに会って、色々話したい。


さっきまで空虚な気持ちだけだった。でも、今は会いたい。渇望している。


もう一人の私に、まゆに会わないと思った。


すくっと経つと、私は二人に言う。


「透子っち、獏、少しここで待ってて、私、会ってくる!もう一人の私に!」

私は走った。

どこにいるかとか分からなかったけど、見つかるよう気はしていたから、迷わずこっちに居るだろうと思って走っていく。

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