第16話 独りぼっちの白
『ねえ、なんで私にこんなことするの?』
『気持ち悪いから』
『てか〇〇〇〇価値がないから?』
はっ・・・・うう・・・また・・・寝てた・・・?
目を覚めると周りは真っ白。本当に何もない。
そしてただ白以外の色の私。
そして周りに倒れていた、守君と羽音さん。
あの時、見えた手は羽音さんだったんだなぁ・・・。
まだ二人は目を覚ましていない。
まあ、何回か経験してるからもうわかってる。
この世界は多分、いや、確実にそうだろうな。
稲井さんの心の深層だろうな。
「はぁ・・・止められなかった・・」
現実世界ではもう、契約しているだろう。
あの時、稲井さんは守君にこの世界に来させようとしていた。
最後を守君に託したかったのかもしれない。
先生に色々聞いてきて、私も大体は分かってきている。
消える為には先生とそして誰かの手助け必要なんだろう。
それを多分守君を選んだのだろう。
守君・・・それそこ耐えられないような気もするんだけどな。
まだ起きない二人を起こさないとな。
一応、教室に戻る前だったので手荷物は持ったままだった。
それには一安心して、起こす。
守君は何回か揺さぶっても起きないので、先に羽音さんを起こす。
揺さぶってみると「ううう・・・ん」と起きそうな気配だった。
なんかいか揺さぶると、機嫌悪そうに起き上がる。
眠い・・・眠い・・・とつぶやきながら数分。
ようやく、しっかりしてきたらしく周りを見渡す。
「うわーーー!!!白!!!!」
「やっと起きてくれたね、羽音さん」
「あれあれ?ゆまっち!ねえ!!此処ってどこ!!?保健室??」
「そんなわけないって、此処は稲井さんの世界だよ」
「なにそれ!?そんな世界あるの!!???」
「羽音さん授業で習わなかったの?」
「覚えてないかも!私、本当にわすれっぽいから!習った気もするかも?」
大丈夫なのだろうかこの人。
「記憶喪失的なものではないですよね??」
「わかんない!でも覚えてなくても大丈夫な事はよく忘れるけど、大事な事は覚えてるからいいの!!!」
「いや、それもどうかと思うよ。」
「大丈夫、大丈夫!!それよりさ!!!この人なんで寝てるの?」
「それよりって・・・守君は、さっき起こしたけど、全然起きなくて」
「そうなんだ!」
羽音さんは守君を私と同じようにゆさぶり、それでも起きないので、お腹蹴った。
「ちょっと!!何してんの!!!」予想外の行動をして本当にびっくりした。
うぼお!となんとも痛そうな声をあげて、ガバッと起きあがった。
「なんやなんや!!!・・・いててて」
「起きたよ!!」そう羽音さんがいう。
「すごい起こし方だよね・・・後で謝っておきなよ」
「うん!!」
守君はいたたたと言いながら、周りを見渡し、ため息ひとつして私の方をむく。
「ゆまちゃん・・この場所・・まさか・・」
「はい、そのまさかだと思います」
「まじかぁ・・・そっかぁ・・・もう・・契約してしまったんか・・?信は・・」
「守君が眠らされた後、契約書に署名して、その後稲井さんは守君に黒い本を手渡したの
そこに私と羽音さんが止めようとしたつもりだったと思うけど、触ってしまって
この世界に来たって流れかな」
「・・・そうかぁ・・・」
泣きはしなかったけど、ただ下をむいて黙っていた。
「守君・・・」なにを言ってあげたらいいのか分からなかった。
ここまで来たらどうしようもない事を私もわかってるからなおさら。
「ねえ!!守っち!!アタシ、今の状況はよく分からないけど!それでも此処で落ち込んでてもなにも始まらないよ!!!だから動こう!!二人とも!!」
「羽音さん・・・でも、この世界の人を消えてく手助けをしなくちゃいけないだよ、そんなつらい事出来る訳ないよ」
「だとしても!さっきの話を聞いてると!守っちは最後を頼まれたんでしょ!
それは何も言われずに誰かの手でなくなるより、守っちに最後来てほしかったんじゃないの!」
「羽音さん!!守君だってつらいんだよ!!」
「それに、ゆまっち!!この世界に居てて戻れるの??戻れるなら動いて
私は戻りたい!だから守っちが動かないならアタシがこの世界を消しに」
「待った!!!」下を向きつつだけれど大きく叫ぶ守君。
「動けばいいんやろ!このままでいいわけないのは分かっとる。
まだ決心はつかんけど、頼まれたことを横取りされるのは勘弁や!!」
「よし!なら、とりあえず、動きましょ!!さ、ゆまちゃんも!」
羽音さんは私達の手をもって引っ張った。
「待ってまって自分で立てるから!」
「せやで!」
立ち上がった後、手を放してくれた。
「さあ!出発だね!!」と歩き出そうとする。羽音さん。
「ちょっとまって!行くのはいいけどそんなどこいくかも分からないのに、どこいくのさ!」
「とりあえず歩いてみよーよ!何か見つかるかも!!」
「羽音さんってかなりポジティブだよね・・・」
「えへっありがと!」嬉しそうに、にこっと笑った。
まあ、反論する人もいないので歩きだすことにした。
空も床も周りもすべて真っ白、一応まっすぐ歩いたけど道なき道を歩いているような気もする。
「・・・なんもないね」
「ほんとだね!!」
「ほんまやな、あいつの心はいつも寂しかったんかな思うくらいなんもないな」
「守君・・・」
歩きながら少し寂しそうにつぶやく。
「ねえ!!守っち!今更だけど!その話アタシ聞いてもいいの??」
「ほんま今更やな、君がせかしたのに。
ってそうや、聞き忘れてたけど君の名前何?そしてなんで此処にきてるん?」
「私??羽音だよ!どんな呼び方でもいいよお!なんでって・・・なんで?」
「羽音さん・・なぜ私の方見てるのかな・・」
この人想像以上に鳥頭だ。
「だってー!そういえばなんでだろ!って」
「この人は羽音さんは私のクラスメイトで、私を迎えに来てくれてたんです。
それでさっき言った通りですよ。」
「せやったんか、接点なくてあれ?と思ったわ、それにしても二人とも、なんや巻き込んでしもたみたいでごめんやで」
「いえいえ!気にしなくて大丈夫ですよ!出られれば問題なしですから!」
「・・・羽音さんの発言が今は少しどうかと思いますが置いといて、私は稲井さんや守君が心配でついてきてしまっただけなので気にしないでください」
「ありがとうな」
相変わらず、すこし寂しそうな笑顔で答える。
会話をしながら歩くもやはり、あるのは真っ白な場所だけ。
歩いても歩いても歩いてもなんもない。
前の迷路の時も困ったけどこう、なにもない方がさらに気狂いそうになりそう。
ただ、羽音さんがなにもないなー!とか疲れたねー!とか色々話していてくれて
少しはましではある。
その間、前はよく話していた守君だが、静かにただ落ち込んだ表情のまま歩いている。
「うううう!本当になにもなさすぎる!!!」
だんだんイライラしてきたのか羽音さんが叫びだす。
「本当・・・なにもないね・・・」
まあ、私も疲れがたまってきたのかあまり話す気力がなくなってきている。
「なんでこんなにないのさ!!!なさすぎるよ!!」
「なんでなんだろうね・・・」
といままで黙っていた守君がポツリ
「・・・ずっと一人やったんやて」
「へ?どういう事ですか?」
「・・信はずっと一人やったって昨日聞いた」
「それ!私聞いていいの??」
羽音さん、そのセリフ何回か聞いてるなぁ・・。
「ええよ。てか俺も少し疲れたし、愚痴りたいというか話を聞いてほしいんや」
歩きながら、私と羽音さんは昨日会ったことを教えて貰った。
「昨日な、ゆまちゃんと別れた後に、守の所にいって話しにいったんや、色々言ったけど
もう、決めたことやって聞いてはくれんかった。
納得いかへんっていったら、信が、見せてくれたんやあの黒い本の中身。」
「えっ」
「触ったらあかんかったのを知ってたんやろな、てか俺もそれは、経験した事あったし触ろうとはしなかったんやけど、最初の方じゃなくてな後ろの方の、信の・・・過去が書かれてる所や・・・。
信はずっと、どこにいて寂しかったみたいやねん。
自分の気持ちを言えなくて寂しかったって言ってんや。
もともとおとなしくて、あまり意見をはっきり言えん性格やったらしく、親にもあきれられてたらしくてな・・・それでいつのまにか引きこもってしもたて。
友達も居てたらしいけど、でもその友達もいつのまにか来なくなってきて・・・。
ずっと家で泣いてたらしいわ。また学校に行けばよかったんちゃうの?って
言うたけど・・・居場所がなかったらしいわ・・最後らへんのページでな写真があったんやけど、友達との写真らしいねんけど、信、昔から大きいかったらしく、邪魔にならないようよけて端っこに居てたんやて・・・。
その写真、どれも笑ってなくてなぁ・・・ただ寂しそうに苦笑いや。
仲は悪いわけでもなかったらしいけど、おとなしくてなにもしゃべらんから無理難題を頼まれてたりしてたみたいや・・寂しくて、でもそこから出る勇気がでなくて、いっそこと消えたいって思って寝たら、この世界やったらしい・・・ゆ、ゆまちゃん?」
どうしてだろう、悲しい話だからかな、涙が止まらない。
頭痛もする。
ボロボロ泣いていた。
「ゆ・・ゆまちゃん・・」
涙がとまらずずっと泣いていた。
「ゆまちゃん・・・俺、どうしたらよかったんやろなぁ。俺、それでも色々、いうたんよ。
また話かけたらきっと話してくれるとかさ、俺が勇気をわけたるとか、話しかけ方とか
色々・・・でも・・それでも、もう決めた事だからって曲げないアイツがいたんや」
またしんみりとした空気になった。
悲しい過去・・・もしかしたら人によってはそんな事かと思うような内容かもしれない
でも、思い出せない過去のせいなのか分からないけど、私はその稲井さんの気持ちがなんだかわかるような気がして、でも、守君の稲井さんをどうにかしたい気持ちもわかって
切なかった。
「守っち、でももう止められなかったんだよね?」
「ああ・・・。」
「ならさ、守っちはせめて最後に頼まれた事してあげようよ!」
「・・・このまま居てたら消えなくてすむかもしれへんやん」
「守っちはよくてもアタシは駄目だよ!てか!イライラしてきたよ!腹きめなよ!
ここで居ててもどうにもならないし、その人と守っちはは仲が良かったんでしょ?
なら、せめて最後の頼み位きいてあげるべき!」
「羽音ちゃんは!消えるってわかってて!進めるんか!」
と言い争いになりかけたその時、急に上からドアが現れてきた。
ずどん!!!と大きな音を立て、かなり大きい、5メートルくらいはありそうなでかい
ドアが現れてきた。
「ほわーーーーー!!!ナニコレ!!!」
叫ぶ、羽音さんとぽかん顔の私と守君。
「ねえ!これに入ってみろって事じゃない!!!!」
羽音さんは私達を見た後、ドアをあけようとするがあかない。
「おもーーーーい!!」羽音さんが押し込んでいるようだが動かない。
二人でとりあえず扉に近寄ってみると、本当にただ長細い大きな長方形の医師が二個ならんでいるだけにも見えるけど、一応届かない位置だけど、取っ手らしきものもある。
触ってみると、当たり前だけどただの冷たい石だった。
けど、守君が触った瞬間に開く。
ギギギギギとゆっくりドアが開いた。
中は真っ暗でみえない。
「・・・入れってことなんやろかな・・・来いって事なんやろか・・」
と、はいらずに悩んでいるさなか、羽音さんが
「に、決まってるでしょーーー!入らないなら先にいくよ!!」
そういってパーッと走って行ってしまった。
「羽音さん!?」
叫ぶ間もなく、暗闇の中を消えていく。
「・・・・あの人・・・何を考えてるんだろ・・・」
嵐のような人である。
まあ、この真っ暗なか追いかけても見つかる気はしないので、今はほっておこう。
さて、それよりは守君がどうするかだよね。
「守君・・・中に入る?」
「・・・・入るわ」
「え・・・ああ。うん。・・・いいの?」
「どうにもできないのはもう、わかってる事やからな。ただぐちぐちいってるだけや。
でも、こうやってドアが現れてきたの見て、思たわ。
しっかりしろって言われた気がしたわ。お前が言うなー!って感じやけどな」
いままで落ち込んだ表情をしていたけど、この扉がでて少しふっきれたのか
若干明るい表情になっていた。
少し元気がでて、私も少し笑顔になった。
「さ、入ろう。ゆまちゃん」
「うんっ」
入ってみると中は真っ暗だったけど、何故か守君が入った途端に、提灯みたいのがずらっとでてきた。それがポウっと明かりがつきまっすぐ道を作る。
「なんだか、稲井さん。本当に守君大好きですね」
「・・・・ここまで歓迎されると複雑やけどね」
その提灯を頼りに歩いていく。
提灯以外に物はなく、ただまっすぐ道があるだけ。
ふと、思ったけど、この世界、私たちがいても最終的に、あの夢食先生いなきゃ消えないのではと思った。
「ねえ、守君。」と話しかけ思ったことを言ってみると。
「ああ。確かに・・・でも基本あのセンセーら神出鬼没やし、今更この場で止められへんやろ」
「それはそうかもしれないけど、最後にこの世界を作った人を触ってから先生吸い込んでたって事はだれも触らなければいいのでは?」
「それもそうやけど・・・さっきの子が触らないでいてくれるかっていったら、
難しいような気もするんやけど」
「羽交い絞めしたみるとか」
「あの宙に浮きかけの状況で羽交い絞め難しいと思うで」
「あ、そうだったね・・・」
「ゆまちゃん、ええよ。羽音ちゃんやったけかな。あの子が言うてたとおり、もう頼まれたことをする以外方法ないねん。」
「でも、守君、前に、やってみないとわからんのに諦めたらだめだってそんな事いってたでしょう。まだ、方法があるかも」
「・・・・期待したいけどな、その期待を裏切られるのもつらいし、ええって」
「でも・・・!」
「ゆまちゃん。」
真剣な表情で、それ以上言わさないような顔で私を見つめる守君になにも言えなかった。
歩いて数分後には提灯とは違う明かりが見えてきた。
進んでみると、床以外がポスターのようなものが沢山貼られていた。
「なんやこれ?」
ポスターに近づいてみると、そこには稲井さんと守君が載っていた
他のポスターもすべて場所は違えっても皆、二人が写っている。
ポスターを挟んで一本道出来ていて、そこをポスターを見ながら歩いていく。
「守君、これ・・」
「ああ。ほんま懐かしいわ。これは初め来た時に話しかけてきた時やし、そうそうノート忘れて、見させてもろたり、外でゴールもなんもないけどクラスメイトと一緒にサッカーしたり・・・あいつ、この時幸せそうに笑ってるやろ。
クラスメイトも皆いいやつでな、あいつ本間この世界で楽しかったみたいやなぁ・・・」
「そうみたいだね・・」
私は知らないクラスメイトと仲良くしてる写真もあったけど、それでもやっぱり守君との写真は多い。
「本当、仲が良かったんだね」
「ああ」
懐かしむように、さっきよりもゆっくり、守君は歩いていた。
私は、邪魔をせず、ただ横を歩いていく。
守君がこのときは~とか話をしたら、聞いたり。
静かにしているときは、何もしゃべらず静かに歩いていた。
本当にたくさんあって、正直終わりがみえないくらい体感的には一時間程歩いてもまだ写真は沢山あった。
ふと、守くんは気づいていなかったけど、私と透子ちゃんと守君が写ってるのを見つける。
「守君、これ」
「・・・・・」返事がないのでもう少し大きく呼ぶと
「おおっ!なんや?なんや?」こっちを向いてくれた。
「ねえ、これってこの前のパーティの時だよね?」
「せやな、なんや、あの時のも楽しんでたんやな」
その写真では皆が楽しく笑っていた。
稲井さんはなんだかお父さんみたいに皆を見守っているように微笑えんでいる。
「あの時、ほんま楽しかったなー!」
「本当にね!あんなにお菓子大量だとは思ってなかったけど!」
「俺ら、最後まで頑張って食ってたんやで!あの後、信も俺もすぐベッドに入ってしもたわ。
あ、でも寝る前に、『楽しかった・・・・』というてて、俺も!って笑いあってたわ」
懐かしみながら、ふとその写真を触ってみると、吸い込まれてしまっていた。
「えええええええええええ」
滑り落ちてる。それだけは分かる。
どんぐりころりみたいに穴からおっこちてしまった気分な感じに、滑り台のように落下してる。ただ、手は前に足はしたにうつ伏せ状態なので、そろそろ体制的にもつらい。
多分、だけどたどりつける気はしている。
この世界にきてから、私たちが進んでるってるより、呼ばれてるような迎えているような感じで、進んでいるような気がしていた。
それから、数分、すべりおちてるだけなので、起きれるかなと思って座る体制に直して、
滑り落ちてると、ボスッとどこかに辿り着く。
「わきゃっ!!!・・・いててて」
私がついた場所はまた、真っ白でただ、私座っているソファーがあってそれと、その前に足跡がまっすぐつらなっている。
「・・・ついて来いってことかなぁ・・」
見た感じ周りにはなにもないし、ソファーも調べてみたけどなにもないので、
足跡をたよりに歩いていく。
行く前に実は、守君も来るかと思ってはいたけど、待っても来る気配はなかった。
まっすぐではなく、右や左となんどか曲がったりして、ようやくたどり着いた所、黒い箱が置いてあった。
「・・・まあ、これ開けて欲しいからだよねぇ・・・」
稲井さん、私になんか渡したいものでもあるかな。
あまり、開けたくはないけど、あけないといけない気もする。
まあ、開ける以外方法ないけど。
意を決してあけるとそこには手紙とボールが入っていた。
それは、守君宛とそして
私宛だ。
手紙・・稲井さん・・・何を考えてるの・・??
守君の手紙は読まずに鞄に入れて。
おそるおそる、私宛を読んでみる。
【有山ゆまさんへ
ほぼ初対面で色々迷惑かけてごめんね。
お菓子パーティー誘ってくれてありがとう。とても楽しかった!
あの時も本当に楽しくて、僕は本当はこの世界にずっと居てたかった。
でもそれもできないんだ。
忘れてしまえばいいって守は言ってくれたけど、あの本があるかぎりは僕はやっぱり忘れられない。そして忘れずにいることが僕には耐えきれなかった。
弱い奴なんだ。そんな弱い僕を頼りにしてくれたのが守だった。
こんな僕でも、役に立てるんだと思って嬉しかった。
でもね、僕、先生と守が、話してるの聞いてたんだ。間違って来た事。
それならば戻してあげるべきで、その為に僕ではない誰かが必要だと、それが君だよ」
パーティーの時に、僕は、これは直観だけどそう思ったんだ。
ずっと、あいつがいつか何かあったときに助けてあげられる人が居てほしくて、
それさえ解決すれば、消えようと思ってた。
本当にごめんね、可愛い後輩にこんな事いう先輩、駄目な先輩だね。
ゆまさん、ごめんなさい。迷惑をかけて。では、守をよろしくお願いします。】
・・・・信さん・・・のばあか!!!!
悲しみも当然あるけど、それよりはイラっとしてしまった。
色々言いたい事あるけど、せめて謝るより、感謝の言葉を言え!!
最後に会った時に文句言いたい。
何事もなくあの世界に戻る方法をあきらめたくはないけど、せめてもし
それでも無理なら、せめて・・・最後に、文句と・・・そして、あの時楽しかった事を伝えたい。
手紙を鞄にいれて、とりあえず他に周りはないか探すけど、何もないので足跡頼りにもどる。
ソファーの近くまで来た。
「さて、どうしようかな」
「何がです?」
「何がって・・・・・!?誰!?」
夢食先生が上に浮いていた。
「ゆまさん、こんにちは」
「先生・・・、かえってもらえませんかね?」
「どういうことでしょう?」
「早くありません?来るの、契約してもそんなにすぐには来ないのでしょう?」
「そうなんですが、貴方や他の方々が入ったというのを聞いて、急遽きました」
「なんで私たちが入ったら来ないといけないのですか?」
「そういうものです。特にあなたの場合はほっておくわけにはいきませんので」
「どうしてです?」
「貴方は白い本もっているでしょう?」
「持ってますけど・・・それが関係あるんですか?」
「大いにあります。その白い本、貴方だけしか持っていないのでそれ持ったまま行かれると困るので、本当はもう少し、後でもよかったですけど、貴方を連れ戻しがてら早めました」
「なんで困るんですか?」
「・・・・・・」
まただんまりか。
「私戻りませんから。」
「戻らせます」
「嫌です」
「その本を持ちながら、ではだめなのです」
そうだ、戻る気はなかったけど、羽音さんや守くんと一緒にもどれば、いつか消えなければいけなくても少しの間は一緒に居られるのではと思い、みんな一緒なら戻ると言うと。
「できますよ」
「本当ですか!」
「はい、どちらにしろ。この世界が消えたら全員戻りますから」
「それじゃないです!!!消さずに戻る方法はないんですか!」
「ないです。」
「そんなきっぱり言わなくても!・・・・もういいです!!」
私は、先生をスルーして周りを探す。
当たり前だが、何もない。
その間、先生は私の後ろに居た。
「夢食先生、なんでついてくるんですか?」
「この世界の子は、私をあまり受け入れてないので辿り着くのが難しいのです」
よく分からないけど、あの場所にいくのが私についていかないと難しいって事かな。
なら、と思い、先生から離れて走りまわる。
走り回っても先生は後ろからついてくる。
「ぜえはあ・・・先生・・ぜえはあ・・邪魔・・」
「そうですか」
涼しい顔が腹立つ。
疲れ果て、どこか座りたいと思いソファーに座った。
すると、ソファーが急に猛スピードで上に動いた。
「ええええええええええええええ」
猛スピードすぎて若干息苦しくなりつつも、落とされないようソファーに
しがみついていた。
ついた先は、さっきと同じ場所吸い込まれた場所。ソファーから飛ばされポスターが沢山ある、あの場所へ放り出された。
「きゃああああ」放物線を描くように。
「わああああああ!ゆまちゃん!!!?」
どっしーーーーーん!!!!!
「いたたた・・」
ほぼ、痛くはなく、あれと思うと、下には守君が居た。
「ご、ごめん!!」
下敷きにしていたようで、すぐにどく。
「ゆまちゃん、何があったん?」
どいた後、少し深呼吸して、そう聞かれた。
さっき会ったことを説明する。
そして、預かっていた手紙と、ボールを渡す。
「手紙・・・・か、ゆまちゃん。読んでみてもええかな?」
「はい、私は待ってますね」
「ありがとう」
手紙を読んでいる間、守君は百面相をしていた。
泣いたり、笑ったり、怒ったり。
読み終わったのか、私の方を向く。
「ゆまちゃん、あいつがほんまごめんやで」
「え?」
「多分、ゆまちゃんも同じこと書かれてるんや思うけど、俺を任せた的な事言うてたやろ?」
「あ、うん」
「ほんま、父親か母親かっちゅうねんな、さて、殴りにいこか」
「殴りに?」
「せや、色々言いたい事言わせまくりやから、殴って殴り合いして、喧嘩して、その後仲直り方法や」
「なんだかかなりむちゃくちゃな方法・・・だし、それ漫画の見すぎだよっ」
「はははっ!それな!」
私達は笑っていた。パーティーの時からあまり笑ってなかったから、沢山笑った。
守君は涙が出る程に笑っていた。
「あー・・・笑った笑った。行こか!文句言いに!」
「ですね!」
ボールを渡して、ポスターを見つつ歩いていく。
思ったよりももう、終わりに誓ったらしく、着いたのは、また真っ暗な場所。
またさっきと提灯の部屋と同じ部屋かなと思ったけど、入った途端に私もそして守君も違うと感じたようだ。
「守君・・・・此処」
「せやな・・・」
お互いになぜかわかってしまったのだけれど、多分この先だろうなと思った。
真っ暗だけど、守君は分かるのか迷いなく歩いていく。
「道わかるの?」
「いや、わからん」
「じゃあ、なんでそんな迷わず歩いてるの?」
「そりゃあ、俺とアイツの仲やから、どうせ俺が歩いても多分、自分の所来さすやろ」
「すごい自信だね」
「やろ、そりゃあ、俺とアイツは親友やからな」
「なるほど、それ言ってあげたら喜ぶかも」
「しゃあないな、いってやろ、多分泣いて喜ぶな」
「そうだねっ」
・・・そうして歩いていくとうっすら人が見てた。
それは多分想像どおりの人だ。
「信・・・」
改めて此処まで来た。私も守君もとりあえず文句いう為に来たものの、決心はまだつけてはいなくて、二人とも、その場から動けなかった。
「情けないなぁ・・・俺。いまだ決心つかへん・・」
「守君・・・」
と其処に後ろの方から、聞いたことのある、テンション高めの声が聞こえる。
「ふーたーりーとも!!!!!!」
羽音さんだ。そんなに近くにはいなくて、遠くから走ってきた。
「さびしかったー!!!」
叫びながら、私と守くんに後ろから抱き着く。
「羽音さん!どこにいってたの?」
「迷子になってた!!」
「そ、そっか」
「寂しかったー!そういえば、二人はなにしてるの??」
「あー・・・その・・」
「あれー?あの人だれ?」
「羽音さん、此処で走り出さないでね」
「え??」
「少しだけ待ってあげて欲しい」
「うん??よくわからないけど・・いいよ!さっき一人で走っていっちゃたし!
おわびに良いよ!」
数分ぐらいはたってた。
守君は、進んだり止まったりして、少しづつ近づいてはいた。
でもそれでもそんなには距離は近づいていない。
「ねー?守っち何してるの??」
何故か、私に抱き着いたまま聞いてくる。
「・・・悩んでるの」
「なんで?」
「消えてほしくなくて」
「・・・うーん。やっぱよくわかんないや!」
いまいち理解はできないようだけど手出しはするつもりないらしく。
つい数刻前に私がするよ!って言ってたのを聞いてみると。
あれは勢いで言っただけらしく、本気ではなかったようだ。
一応、それについては覚えていたらしい。
待ってはいたけどほぼ動く気配がない守君、このまま時間がすぎるのかなと思っていると
「・・・見つけました」
上から、かなり大きい物体、夢食先生が現れてきた。
前、私が運んでもらった時と同じ大きさで、でかい。
轟音の下、どーんと降りてきた。私も、守君も羽音さんを数センチかもっと飛んだ。
踏みつぶされそうだったけど間一髪ぎりぎり、三人無事だ。
「先生!???」
「本当、苦労しました、もう私が来たのでそろそろ浮きますよ」
先生が言っていた通り、うっすらだけど足元が浮き始めた。
いつもの姿より小さめだが子供くらいの小ささになった。
「来なくてもいいいですよ!」
「そういう訳にもいきません、さあ。ゆまさん、そろそろ稲井さんに別れを告げに行ってあげてください」
「お断りします」
「何言ってるんです」
「もし、しなくちゃならなくても此処の役目は私ではありません!
守君です!!」
「いえ、貴方です。」
「なぜ?」
「実際誰でもいいのですが、貴方でなければ最後の言葉を聞いてあげられないからです。
そしてそれを覚えてもらっておかなければならないのです」
「行ってる意味がよくわかりません」
「意味はともかく、記録てきにあなたにいってもらわないといけないのです」」
「意味は分かりませんが断ります」
「そのままだと、またあの白い部屋に戻されますよ。」
「どんとこいです。前は戻りたかったけど、今は違います。違う方法が何か見つかるかそれか守君が決心ついたらですよ!!」
「どちらも難しそうに見えますが」
「気のせいです!」
「しょうがないですね、強硬手段になりますが、そういってポケットからこれまた見た事ある棒をとりだす。
あの棒は前にさっきサンタ先生が使っていた棒・・・あれ?私・・・あれ。
二回目だからか改めてしっかり見たら、あれ、私持ってなかったか??
そう思って鞄の中身をさぐると、そういえば最初の頃によくわからない棒を見つけてそのまま持ってた・・・まさか・・??
とりあえず、棒を出してみる。
うん、似てる。まあ、両方ともただの棒だけど。
「それは・・・!」
「先生・・・同じのですよね?」
「ゆまさん・・・なぜ持っているのです!」
「わかりません!ただ鞄に入ってました」
「そんなっ・・・・まさか・・!ゆまさん、それを渡しなさい!」
「嫌です、もし渡してほしかったら無理やり取ればいいじゃないですか!」
「それは・・・」
「先生、私この棒がどういう事できるかはわかりませんが、もしかしたらこの状況が変わることを信じて、使います!」
「やめなさい!」
よくわからないけど、もうこうやって話してる間に、半分は浮きかけてる。
どうにでもなれ!!と思って棒を持って上にあげ振り下ろす!!
・・・・えと・・・何がおこったの?
正直何か変わったのかわからない・・けど・・ん?浮いてない?
止まった??成功したの?と思い周りを見渡すと、守君は下を向いたまま止まっていて、
夢食い先生は手をだしたようなポーズでとまっていて、羽音さんは私に抱き着いたまま
止まっている。
これ、みんな止まってない??
まさかっ時間とめた!?状況的に、夢食い先生止められたけど、どうしようか。
・・・・どうしよう。
予想外の状況に混乱なうだよ。
とりあえず、皆本当に動かないのか、羽音さんはどかすと、後ろに倒れそうになるので、倒れる前に捕まえて少し離れたところで寝かしておいた。
そして守君もやはり止まってた。
夢食い先生も止まってたけど・・・これを機になにかさぐれないかなと・・・でもそれはなぁ・・・人としてどうか・・でも非常事態だしい・・・。
ちょこっとだけ探らせてもらう事にした。
といってもスーツの中になにか隠しているわけでもない。
あと件のポケット・・・気になるけど、これ探るの怖い。
・・くっでも今は非常事態・・・!!ええい!
あれえ?何もない、普通のポケットだ。
量ともさぐっても変わらない。
うーん・・・これは本人だけが探れるポケットなのかな。
さぐってもなにもないかな。
ついでに棒も取れるかなと棒に引っ張ってみたけど思ってたよりがっしりもっていて離れないので、諦めた。
そうすると、後は・・・信さんだけかぁ。
あまり触らないように近づいて見るべきかな。
多分、するなら今だろな。
もう一回またあの棒振ったら確実に戻りそうだし。
信くんの方に近づく・・・そうすると、信さんが振り返った。
「えええええ?なんで??」
『・・・ゆまさん』
「しかも・・・この人直接脳内から・・・というのは冗談で、」
『・・・貴方は・・どうして・・・』
「・・・貴方を叱りにきました」
『・・・ごめん・・』
「それも!謝るより、言う事あるでしょう!ここまできた私に」
『・・・ありがとう・・』
「そうです、信さん、謝るより、感謝の言葉ですよ。信さん私手紙読みました。
信さん・・・私、楽しかったです!あの時パーティー!もっともっと今後もパーティーしたかったです!」
『ありがとう・・・』
「戻りましょう!!きっとまだ間に合います!」
『・・・ゆまさん・・・それは無理だよ・・君だってわかってるでしょう・・・?』
「でも・・!私まだボールとか棒使ってなんとかしてみますから!」
『もう・・いいんだ・・・そろそろ・・もう・・ねえ・・ゆまさん・・・僕は・・もう決めたんだ・・・だから・・・分かってほしい・・ここまで来てくれて
てありがとう・・守よろしくね・・・君ならきっと・・守と一緒に戻れるよ・・・ゆまさん・・最後にひとつだけ・・・渡したボールを・・僕が消える時に手にもっていて・・・それは
きっと・・・君の・・・役に・・・・・・・』
「でもっ・・・待って!!まだ言いたいことが!!」泣きそうだった。
諦めてほしくない、それなのにもう、本当に駄目なのという前に声が聞こえなくなった。
「あっ・・・」
そして、何もしてなかったけど、そんなに長くは続くものではなかったみたいで、皆が動き出した。
呼ぶ声が聞こえて、皆が私に近寄ってくる。
「ゆまちゃん!!」一番最初に来たのは守君だった。
「ゆ・・・まちゃん?なんで泣いてるんや?」
「・・・・守君、ボール渡したよね?それ持って」
「え?どういう事や?」
「お願い!私ができる事までしても無理なら、それ持って、そして守君が信君の最後をみとどけて!」
「何いうてんのや!ゆまちゃん!」
もう一度私はもっていた棒を振り下ろそうとする。
「させません」
ものすごい速さで夢食先生は私の後ろに立つ。そして、いつもの大きさに戻り私の両腕をもつかまえて、後ろにまわした。
「ゆまさん、貴方は危険です。だから、事が終わるまで、動かないでいてくださっ!!!」
「ゆまちゃんをいじめるな!!!」
夢食先生がよこから蹴られたようだ、手が離れた。
それなりに遠目に寝かしておいた気はするけど、いつのまにこの距離まで飛んできたのだろう。ありがたいけど!
「ありがとう!羽音さん!」
「あなたはねてないさい!!!」持っていた棒を羽音さんに向ける。
「きゃあ!・・・・ふえ・・・・ぐー・・・」
「羽音さん!」
羽音さんはズシャっと床に伏してしまった。
「さて、そろそろ覚悟をきめるべきですね、ゆまさん」
「先生、私諦めるの嫌いなので」
棒をお互いに使おうとして、お互いに振ると地面が地震のように揺らぎ始めた。
「ゆまさん!それ以上したら全員消えてしまいますよ!」
「どうしてそんな事いえるんですか!勝手な事いわないでください!!」
とその時、空気がかわった。
これは・・・。
ふと、後ろをむくと・・・守君は、信さんに手を差し伸べていた。
・・・・そっかぁ。
なんだか力が抜けた。でも決心着いたんだなと。となぜか安心した。
私や夢食先生はただ、後ろで見ていた。差し伸べて、そしてその後ずっと上を向いていた。
時期に、周りが暗くなっていく。
上から、信さんの映像・・・これは・・やっぱり・・信さんの過去の映像だったんね。
つらい過去の映像・・・・・守君に聞いた通りの映像が流れていく。
それをずっと守君はみていた。
「ゆまさん、戻りますよ」
「・・・先生、なんで消えなくちゃいけないのでしょうね」
「・・・・私にはわかりません・・・。」
はっきり言うのかと思いきや少し、間をあけてぽつり言った。
「・・・そういうと思ってました・・・先生、私守君と戻ります。
羽音さんをよろしくお願いします。」
「・・・ちゃんと戻ってきますか?」
「・・・秘密ですよ」
「ゆまさんっ」
「冗談ですよっ・・・戻ります。だって・・まだ透子ちゃんと話したい事たくさんあるから」
「・・・分かりました。」
さっきほど引き留めはせず、いつものサイズに戻って羽音さんを、運んで出てきたドアの向こうに行ってしまった。
わたしは、二人がいったのを見送って、守君の所に行く。
「守君・・・いろいろお疲れ様・・・決めたんだね・・」
「・・・うん、ゆまちゃん・・・ここまでありがとうな・・」
「いえ、私が勝手にした頃ですから、気にしないでください」
「・・・ありがとう・・・」
「守さん、戻りましょう?ここに居てたら私達も消えてしまいますよ」
「・・・せやな・・・」
ゆっくりお互い歩き出す、私はいい言葉が思いつかず、ただ手だけ握ってあげた。
きやすめにしかならないと思うけど、それでも私はこうやって落ち込んでる時に手だけでもつないでもらえると安心するので、してみた。
すると、何もい言わないけれども、握り返してくれた。
手をつなぎドアの入口までつく。
すると、守君はふりむき叫んだ。
「俺とお前は親友やからな!!!絶対俺お前の事わすれんから!!!これ!!
絶対なくさんから!!俺こそいままでありがとう!」
片手に持っていたボールを上に向けてそう叫んで
「さ、帰ろう」
と言って、二人でドアの向こう側に行った。
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