第15話 友達

「はなしてよ・・・・」


「絶対はなさん!!」

右手をつないで入ってきた二人。

まあ、なんとなく会話の流れ的にも説得は失敗した感じだな。


「どうしました?」と先生が聞く。


「・・・夢食先生・・・僕・・・決めました・・・」


「なんでや!俺がいるやろ!!」


「・・・ごめん・・此処に来て、君と友達になれてよかった・・・でもそれはこの世界だけ・・それの方がつらいよ・・・」


「信・・・でもな、俺との記憶は支えにはならんか?お前は十分いいやつで優しい奴や、戻ったとしても・・きっと立ち治れるはずや!」


「・・・でも・・僕は・・もう頑張りつかれたんだよ・・・」


入っていけない雰囲気に私は黙っていた。


「稲井さん、申し訳ありませんが、私ではだめですよ。契約は私ではなく、サンタ先生です。

サンタ先生は今、此処にはいないので後日お願いしていただけると」


「・・・そうですか・・・分かりました・・・」


ふーと溜息をついて職員室を去ろうとしていた。


「先生!ありがとうございました!」私はそれだけいうと二人を追いかけた。


そんなには急いで戻っていなかったようですぐ見つかる。

追いついて、あまりいい雰囲気でない二人に話しかける。


「信さん、お久しぶりです。」


「・・・・あ・・・パーティーの時の・・・?」


「はい、その時に居ました。信さん・・どうしても、どうしても契約はしてしまわないといけないのですか?」


「うん・・・心配かけて・・・ごめんね。ずっと考えて・・決めた事だから・・・」


「守さんがあなたに消えて欲しくないって言っていてもですか?」


「・・・そうだね・・むしろ僕が居ない方が・・・いいよ・・・もう守はさ、俺が居なくても大丈夫・・・」


「そんな訳あるかい!!」と守君が反論してきた。


「守・・・」


「俺は此処にきてからお前に色々手助けしてもらって本当に助かったし、今でも俺がヘマした時には慰めてくれたり、相談にのってくれたり、俺にとって大切な友達が居なくていいわけあるかい!」


「ありがとう・・・・だからこそ・・君と別れるの・・・つらいんだ・・」


「俺だって、俺と離れるの寂しいで、でもな、成長の為には別れも大事なんや、それにそもそもそんなすぐに行くわけちゃうねんたら、思い出作ろうや」


「思い出・・・?」


「そう、もしかしたら忘れしまっても、よくいうやん。身体が覚えてるっていうやろ?

もし、戻った時に似たような作業した時に思い出せるかもしれん!」


「・・・思い出さないかもしれないよ・・・」


「ネガティブに考えたらあかんで!」


と話していたら、思ったより時間がかかっていたのか、人が周りに集まっていた。

だが二人は眼中にないようだったけど、サンタ先生が通ってきて


「三人とも~もうすぐ授業はじまります~戻ってください~」と話しかける。


信君は守君の方をみていたが、先生に気づくと先生の方を向かい


「先生、僕・・・その・・・契約します」


「そうですか~?ずいぶん~時間かかりましたね~。ん~そうなると授業は少しおいて先にそちらを~済ませないといけないですね~・・・遠野くん~君は戻って~クラスの人たちに~伝えておいてください~」


「信!!!どうしてや!!!・・・・なんでや!!!」


「・・・僕・・・この世界が好きだった。君が居て、皆話しかけてくれて・・・だからこそ

この世界を忘れたくない。忘れないまま消えたいんだ・・・もうそれは決めてた事で・・・ただずっと・・・言わなかったのは・・・君が・・・心配だったんだ・・でも、もう大丈夫だよ・・・だって君は見つけた・・・」


「心配なら此処に居ろや!!!」


会ってそんなには経ってないけど、それでもずっと泣くことはなかった守君が

ボロボロ涙を流していた。

泣きながら怒りながら、ずっと手をつなげていた。


「・・・有山さん・・」


「はい!?」


「守をよろしくお願いします・・・・」


「え?そんな何を言ってるんです?」


それだけを言うと稲井さんは先生の方を向き


「先生、行きましょう・・」という。


「ん~。でもですね~自習の件を伝えないと~ゆまさん~頼めませんか?」


「・・・私、この二人を置いていけません」

特に守君が心配すぎる。


「そうですかぁ~なら~言いにいってからの方が~いいですかね~」


との事で、ここで待っていて欲しいと言われて先生は去っていった。

その間、守君は、考え直してくれ!と言ってたけど、信くんは何も話さず黙っていた。


「稲井さん・・・私に任せるのではなく、貴方がいればいいじゃないですか」

と言っても寂しく微笑むだけ。


「答えてくださいよ・・・!」


守くんが泣いていたから、私も切なくっても泣けなかった。

何を聞いてもただ、微笑むだけの稲井さんは覚悟を本当に決めたのが伝わっていて

余計に悲しくなる。


「ゆまっち!!あれ、ゆま?ゆまゆま?」


悲しい雰囲気をぶち壊していくような声が後ろから聞こえてくる。

多分、あの人だとわかっていて振り向くと


羽音さんだった。想像どうり。


「羽音さん・・・?どうしてここに?」


「透子っちが心配してたよ!!!来てないからって!!」


「あ・・・ごめん。でも・・今は行けないって伝えて貰ってもいいかな?」


「駄目だよ!!連れてくるっていっちゃったもん!!」


「えええ・・・」


と、三年生に自習を伝え終わったのか、サンタ先生が帰ってきた。


「おま~た~せ~しました~。あれ~人数増えてますね~授業あるはずですよね~皆さん~用事ある人以外は~戻って~くださいね~」


そう先生に言われたけれど、だれもそこから移動しようとしない。


「も~・・・皆さん授業は大事~ですよ~どうしても~ついていきたいのですか~?」


「俺は、今離れたらあかんのや!」と守君


「私はお迎え係を任命されたので!」と羽音さん


そして私、「先生、私この二人を置いていけないです」


はぁと先生は珍しくため息をつき、「わかりました~・・・羽音さんと~ゆまさん~

~後で夢食先生に謝っておいてくださいね~」


そういうと諦めてくれたのか、職員室に戻っていく。

それに四人がついていく。


職員室の玄関前まで待たされて、また移動になった。

てっきり職員室での用事かと思ったけど違うみたいだ。

その間、私もそして守君もどうしても考えを変えられないか聞いていたけどずっと黙ったままだった。動けないよう体重をのせてひっぱったりしたけど、動かない。

おとなしい性格であれど体形は守君もガッチリしていて動かす事ができず、石のようだ。


先生についていき、着いた先は


保健室だった。

入る前に先生は信くんに向かって聞いた。


「本当に~いい~のですか~?」


「・・・・はい」


揺るがないようで、先生が「わかりました~」といって中に入っていく。

信君、守君、私、羽音さんも入っていく。


「さて~この中で~聞いてはいけない人がいますね~・・・少しかわいそうだったので~ここまで連れてきた~のですが少し眠ってもらいますね~」


そういうと、持っていた鞄から棒をとりだす、ただの小さい棒をとりだし、

守君に向けて何か呪文を言う。


守君はずしゃっと地面に膝まついてしまった。


「守くん!!!」守君に近づくと、息はちゃんとしている。ただすーすーと寝ているような寝息が聞こえる。


「大丈夫~ですよ~少し~寝てもらう~だけです~」


「サンタ先生、なんでですか!守君は・・・稲井さんに消えて・・・・うっ・・・ほしくなくて・・」


相変わらず、この単語を言うと頭痛くなる。


「呼ばれた人でしか、見てはだめな契約~ですから~」


「そんなっ!こんなの駄目ですよ!」


私は揺らしたりして起こそうとするけど、全然起きない。

そして、つながっていた手の方が離されてしまった。


「稲井さん・・?」稲井さんを方を向くと、稲井さんはしゃがんで守君を抱きしめていた。


「・・・・ごめん・・・」


そう一言だけを言って稲井さんは私に守君を渡して、先生の方にむかう

私は守君を床に置き、止めようとするけど、私の力ではとめられない。



「さて~では~これに書いてもらって~後はベッドにねてください~」


「誰でもいいから、稲井さんを止めて!!!」

羽音さんが稲井さんに向かって蹴りだした。

でも、それはサンタ先生にとめられる。


「駄目です」


いつもと違い、どす黒い表情に変わった。

足を捕まえられていて動けず、私もとめられず稲井さんは署名してしまった。


「稲井さん・・・・!!」


そして、何を思ったのやら、稲井さんは立ち上がり、守君の所に行き、


あの黒い本をだす。


「何をする気なんですか!?」ほぼ引っ張られてる状況で聞く。


「・・・最後はお前に任せたい・・・」


そういって黒い本を守君に渡す。


私はとっさにとめようと手を差し出していて、もう眠くなりそうな時

もう一人・・・手が・・・みえて・・・・

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