第7話一緒に

話しかけられたよね?

振り返ると、そこに居たのは私より身長が高めの男の人だ。

横の席に居た男の子と同様に真っ黒な学ランに黒紙の短髪。


「聞いとる?」


「わぁっ」


また考え事しながらぼんやりしていたのか、その男(人)が目の前まで来ていた。

「あ、ごめんなさい、聞いてなかったです」

「聞いといてやー!まあ、ええわ。あ、せや。そういえば、聞いといて、俺、自分の事言ってなかったな!ごめんごめん!俺は遠野守!よろしゅう。」


「初めまして、私はゆまといいます」

「後ろからごめんなさい、初めまして!私は保知透子っていいます」


保知さん、下の名前透子(とおこ)っていうのか。

白イノシシ先生、苗字しか言ってなかったからなぁ。


「君ら、此処でなにしてるはるの?先生おらんし、気持ち悪くなったん?」


「いえ、ちょっと探し物していて・・」

「探し物?何探してるの?」

「・・・本です。」

「本?教科書とか?」


そう遠野さんがいうと、保知さんが後ろの方から、見えてなかったけど、物静かな声、いや神妙な感じで言った。


「・・・貴方も持ってるはずです。黒い本といえば分かりますよね?」


「・・・・マジで?」


二人とも数秒黙っていた。

なんだか、本当に私の失くしたらしき本はかなり、大事な物らしい。


「見つかったん?」


「一応、探してますけど、見つかってないです」

「まじかぁ・・・・それ、時間的には大丈夫なん?」

「分からないです。失くしたのは、この子、ゆまなんですけど、覚えてないらしくって、時間の事も多分・・覚えてないはず、ね?ゆま」


また新たなワードが出てきた。

時間?どういう事なのかな・・・正直時計は動いてなかったし時間間隔はほぼ分からないから、ほぼ体感でしか分からなかったけど、本を持っていないとダメなのは分かっていたけど、

制限時間でもあるのかな。。

相変わらずの後出し情報だ。


「うん。全然覚えてない。本持ってないとこれまたやばいの?」


「これは、重症やな」

「そうなんですよね」


なんだか、心配半分、憐みも含まれているような気がする。


「保知さん、色々迷惑かけているけど、改めて聞きたいけど、本を持っていない時間って

何かやばい?」


「んー・・・・アタシは失くした事は此処に来てから一度もないけど、それでも教えて貰った時は、えっと・・本をなくして、時間がたってごとに、存在がなくなるとか言ってた」


は?何を言っているのかなー・・・?


「・・・・本当に?」

「先生はそう言ってた。本当かどうかは分からないけど、アタシは目的も達成させられないまま消えたくはなかったし、何より存在なくなるって怖いし、ほぼ肌身離さず持ってる。

今もずっと」


そういえば、移動してからも片手にあの黒い本をずっと持っていた。

正直、邪魔なんじゃないかなとは思ってはいたけど。


「そうだったんだ、でもそれ・・(最初に言ってほしかったなぁ)」

本音が出そうになったけど、心配してくれてるのに言うのは少し気が引けてしまったので、のど元まで出かかった言葉はしまって、とりあえず、早く見つけないとこれは本当にやばい。


「ごめんね・・多分、言ってほしかったって事だよね?どこまで覚えていてるのか分からなかったし、私も少し動揺してたかも。ゆまが消えてしまってほしくなかったの。」

「保知さん・・・」


「な、いい雰囲気な所、ごめんやで!とりあえず、事情分かったねんけど、もうひとつ聞きたいねん。保健室のセンセーどこいかはったか知らん?」


「「知らないです」」


「ハモリの即答かい!そおかぁ・・胃薬欲しかったんやけどしゃあないなぁ・・・教室もどるかぁ・・・・じゃあ、邪魔したな。」

「ねえ、遠野さん。」


あれ、いつのまに保知さん私の横に居たんだ。


「・・・なんやろ?なんか、君の微笑みが怖いねんけども」


「あのですね、私たち、いまだ本が見つかってなくてやはり人が多いほうがいいかなと思うんですけども、手伝ってもらえませんか?お礼はしますので」


「ほんまに?なんかくれるんやったら、手伝うのはええけど、もうすぐチャイムなるで?後でなら手伝うのでええか?」


「ありがとうございます!ぎりぎりまでここで探してみます。また、次の休み時間に保健室に来てほしいです」


「OK」


遠野さんが去った後、保知さんはまた私の本探しを始めてくれた。

少し、呆気に取られてぽかんと見ていたけど、そもそも私の本なので、保健室をくまなく探してみる。


数分たったかなと思える位にチャイムが鳴りだす。


「あ、なっちゃった。ゆま!とりあえず、教室に戻ろう」

「う、うん」


前にも言ったけど、このまま探すのはしないのは何故なんだろう。

保知さんがそそくさと行ってしまいそうになるので、いまだ教室までの道順を覚えていないので、仕方なくついていく事にした。

「ね、保知さん。さっきいってた、24時間以内って言ってたけど、教室も、保健室も

時計が長針しかないし、ずっと9の数字の所で止まったままなんでだけど、どうやったら時間とかわかるの?」


歩きながら、私は聞いてみた。


「チャイムかな」

「チャイム?」


「チャイムで大体一時間経ってるはず。私も短針があるの見た事ないけど、此処で暮らしてきて、一日の計算を体感でしかないけど、一時間たってると思う、本当にそうかは分からないけど、先生も教えてはくれなかったしね」


「うーん・・・大体一時間。とすると、私が来てから・・・二回くらいはなってるはずか」


「来てから?何を言ってるの?」


「あ、いやなんでもない。ね、今日ってチャイムって何回鳴ってた?」


「多分、5回は鳴ってたと思うけど、しっかりとは数えてないわ」


なるほど、そうすると5時間は経ってるはずなのか。


「じゃあ、その時間で計算すると19時間かな。うーん・・・どこにあるか分からないものを探すには時間がたりないよね」


「まあね、ゆまが覚えてくれたら、楽だったけど」


「う、ごめん」


「ごめんごめん、ちょっと意地悪しちゃった。さ、教室ついたし授業受けて、また探しにいこう」


「うん、色々ありがとね」


「いーえ!ゆまの為だしね!」

さて、また、白イノシシ先生が来て、私は持ってないけど、新しい感じの教科書をもって色々教えてくれていた。

まったくもって何を言ってるのか分からない。

正直この授業の時だけは何語?的な言葉で話しているし、黒板も読めない。


本当、変わり身作って探しにいけないかな。

分からない授業を聞いてると眠たくなってきてしまう。


でも、この世界で眠ってしまうと、さっきみたいな変な所連れて枯れるかもしれないという不安もある。


自分の存在が危ういのに、体は正直なのか、授業中はほぼうとうとしていた。

チャイムが鳴って、はっと目が覚める。

手で頬を叩き、目を覚ます。


「何してるの?ゆま」


「眠気覚まし」


「寝てたの?」


「ううん。寝かけそうになってただけ」


「ほぼ寝てたって事だと思うけど」


「・・・・てへ」


なんだか初めにあった時より、少し打ち解けた気がする会話の流れになって

少しうれしかった。


「前、急に倒れた時みたいに寝てしまったのかと思ったけど、大丈夫みたいね」


「さすがに前みたいになるのは嫌だったから頑張って起きてたつもり!」


「ぶふ!つもりって!さ、遠野さんを待たせてるかもしれないから行こう」


「うん!」


保健室に行く間、あまり、過去にはふれず当たり障りのない会話を楽しみながら保健室に向かう。

保健室に近くに行くと、先ほどの男の子が保健室のドアの近くで待っていた。早っ!


「緊張感ないなー!あんたら。何にこやかに話してんのー」


「本当に来てくれたんですね・・・!」


「有村さんやったけ?疑ってたん~?」


「い、いえいえ。正直口約束だけでよく来てくれたなと」


「確かにな。でも俺は約束は守る男やから!それにお礼はがっぽり貰うつもりやし、

よろしく」


少し頼む人間違えた感。真面目なのかなと思ったけど、良い性格してるかも。


「あー・・・はい」


「遠野さん、ゆま。その話はさておき、保健室ってほぼ探したけど見つからなかったから、他にも探してみたいの、後行った場所ある?」


うーん。保健室以外だと私が近寄った所って・・・


「玄関かなぁ・・私が後行った場所って」


「玄関ってそんな所落としてたすぐわかると思うで」


確かにそうなんだけども、そんな怪訝な目で私を見ないでほしい。


「玄関ね。まあ、百聞は一見に如かずでしょうし、見に行きましょう、二人とも」


「だよね!」


ということで、怪しみながらも三人で、玄関に向かうことにした。

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