第十三話 ボーナス

 はなたれたシン・バハムートは鮮やかな光の光跡こうせきを引いて、首無しへと向かっていく。

大丈夫だいじょうぶか!?)

 俺はその軌道きどう不安ふあんった。さっきの宇陀川うだがわのスローと同じように右側みぎがわにそれ気味ぎみの軌道。なんとか首無しの肩に当たるかどうか。

「当たれ!」俺は無意識むいしきさけんだ。

「オラ!行け!」宇陀川も叫ぶ。

 首無しから若干じゃっかんそれる軌道で飛ぶシン・バハムート。首無しの右横をすりけようとするとの時——

 その当たり判定はんていの端がギリギリかすめた。

【グアァ!!】

 というコメントが表示ひょうじされ、首無しはダメージモーションをとる。そのヒットポイントんの黄色きいろ部分ぶぶんが左へを減少げんしょうし、全てが黒く染まった。

「よっしゃ!狙い通り!」と宇陀川がう。

本当ほんとうかよ……)

 と俺はおもうが、勝てたのはかった。

「やった!」「うっしゃ!」「やり!」

 俺、蛭田ひるた毒島ぶすじま口々くちぐちに言った。


【首無しへの勝利しょうりおめでとう!


—— 打倒だとうボーナス ——

★[SSR]以上確定ガチャチケット

  ≪MATU≫≪UDA≫≪ヒル≫≪DOKU≫がゲット!


—— 順位じゅんいボーナス ——

1位 クリスタル x 300 

 ≪MATU≫ 49652ポイント

2位 クリスタル x 100

 ≪UDA≫ 47285ポイント

3位 クリスタル x 50

 ≪ヒルヒロ≫ 12500ポイント

4位 クリスタル x 30

 ≪DOKU≫ 9780ポイント

▶︎


「カァー!一位持ってかれたかぁ!やるな松波まつなみ!」宇陀川が言う。

(いやいや、あんだけやったんだから一位いちいくらいくれよ……)

 俺は思うが

「あぁ、悪いね」

 と愛想あいそうを言う。

 ギルドラのかくれキャラやボス戦では、その戦いでの活躍かつやくによってポイントが加算かさんされ、その順位によってプレイヤーへの報酬ほうしゅう決定けっていする。今回こんかいのバトルでは、首無しへのクリティカルヒットによるダメージ、騎士道きしどうでのゲームオーバー阻止のポイントボーナスで、とどめを刺した宇陀川のポイントをわずかに上回ることが出来できた。

「しかしまぁ、みんなだいぶ貰ったじゃん?毒島くんでも三千円相当のクリスタルだろ?」と俺。

「あぁ、全くだ。しばらくギルドラには課金かきんしないで済むな、ハハ!」と宇陀川が笑う。

俺は、ボーナス表示の最後さいごに▶︎が出ていることに気が付き、画面がめんをタップする。

【君たちが、首無しを倒した最初さいしょのプレイヤーだ!その栄誉えいよを称える!】

 とメッセージウインドウの文言ぶんげんが切り替わる。

「お!ファーストゲットか!」と宇陀川。

 つづいてボーナス内容ないようが表示された。

【—— ファーストゲット!ボーナス ——

★首無し[SSR+]

  ≪MATU≫≪UDA≫≪ヒル≫≪DOKU≫がゲット!

「首無しかー!SSR+だけどイラネー!!」「キモいわ!」と宇陀川と蛭田が叫ぶ。

「いや、全く」と毒島が同意どういした。

「まぁ、いいんじゃない?合成素材にしちゃっても、使わなくてもいいんだしさ」と俺が言うと

「いや、いくらなんでもこのカードはキモ過ぎるだろ。捨てるか」と宇陀川。

「まぁ、とりあえず勝てたわけだし良かったよ」と俺。

「あぁ」「そうだな」「うん」と宇陀川たちが同意する。

 時計をるとゲーム開始かいしから四十分たったくらいだ。そこまで長時間ちょうじかんプレイしたわけではないが、なんだか俺は疲れた。

「ちょっとマルチプレイ一回解散にしていい?」と切り出すと

「そうだな。首無しの報酬もたんまりゲットしたし、今日きょうはこんなもんにすっか」と宇陀川。

「じゃな」「また明日あす」「あぁ、学校がっこうで」

「じゃ、明日。切るね」

 俺は言うと、【解散かいさん】ボタンをタップする。マルチプレイは解散し、ギルドラのアプリはホーム画面へと遷移せんいした。

 ボイスチャットのざわめきがくなり、静寂せいじゃくがあたりを支配しはいする。疲れからか、何をするでもなくホーム画面を少しの間眺めていた。俺のリーダーカードのケルベロス[SSR]レベル60と、レベルなど諸々のステイタスが表示されている。そこに

【≪ゲームクリエイター≫さんからフレンド申請しんせいが来ました!】

 とポップアップウインドウが表示された。

 ギルドラでは、よくあることだ。ゲーム内のフレンドがおおい方がボスとの戦いでサポートに来てくれる確率かくりつが上がり有利ゆうりだ。なのでフレンド申請は、たびたび繰り返される。

「≪ゲームクリエイター≫って……なんか凄い名前なまえ。厨二っぽいよなー」

 俺は一人ひとりつぶやく。なんとなく、その≪ゲームクリエイター≫のことが気になり、ステイタス画面を見てみる。レベルは3。リーダーカードも初期しょきにもらえるカードがそのまま設定せっていされている。全然ぜんぜん初心者しょしんしゃプレイヤーだ。まぁ≪ゲームクリエイター≫であって、やり込みゲーマーでは無いってことかな。しかし、俺のレベルは95。普通ふつうなら、こんな初期レベルのユーザーとはマッチングしない。実際じっさいの知り合いで、フレンドコード入力にゅうりょくでもしない限り、申請がくることは無いはずだ。俺のフレンドコードはネットに公開こうかいもしてないし。どういうルートで申請してきたんだ?

「まぁ、いいか」

 と、そのフレンド申請に【はい】をタップして許可きょかする。なんだか今日一日の疲れと、夕飯ゆうはん満腹感まんぷくかんで、強烈きょうれつに眠くなってきた。

「ちょっと……寝るかな」

 ケータイを枕元に置くと、すぐさま眠りに落ちてしまった。


「しかし松波よぉ、お前よくあんな気持ち悪いやつリーダーカードに設定したな?」

 翌日よくじつ、学校の廊下。すっかり十時間ばかり寝てしまった俺に、会うなり宇陀川が言った——

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