Ⅲ
目覚めると、そこは湿った土の上だった。
(ここ……は?)
地面に横たわっている。空が真上に見える。
真っ黒な空だ。星のない夜。静かな夜。
(私はどうしてここにいるの……?)
乾いた風。ねっとりとした空気。
この場所は。
誰もいない。孤独なその場所で、あるひとつの光が揺らめいていた。彼女はそれを身体で感じ取った。
(誰か……来る)
足音はしない。わずかな空気の振動だけが近づいてくる。
「……くっ」
うめき声が聞こえた。すぐ側で何かが崩れ落ちた。
彼女は立ち上がってその何かを確かめた。
(……夜月!)
大好きな夜月。彼が目の前で倒れている。
(夜月! 夜月!)
大きな声で呼びかけても彼は目を開けない。
(夜月? どうしたの、夜月?)
目の前がぼやける。視界がふにゃふにゃと歪んでいき、風景が崩れていく。
(夜月……!)
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