目覚めると、そこは湿った土の上だった。


(ここ……は?)


  地面に横たわっている。空が真上に見える。

  真っ黒な空だ。星のない夜。静かな夜。

 

(私はどうしてここにいるの……?)


  乾いた風。ねっとりとした空気。

  この場所は。


  誰もいない。孤独なその場所で、あるひとつの光が揺らめいていた。彼女はそれを身体で感じ取った。


(誰か……来る)


  足音はしない。わずかな空気の振動だけが近づいてくる。

 

「……くっ」


  うめき声が聞こえた。すぐ側で何かが崩れ落ちた。

  彼女は立ち上がってその何かを確かめた。


(……夜月!)


  大好きな夜月。彼が目の前で倒れている。


(夜月! 夜月!)


  大きな声で呼びかけても彼は目を開けない。


(夜月? どうしたの、夜月?)


  目の前がぼやける。視界がふにゃふにゃと歪んでいき、風景が崩れていく。


(夜月……!)

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