Ⅲ
玄関の扉がわずかに開いていた。嫌いな雨に打たれて不機嫌な顔の夜月は少々乱暴にその扉を開け、家に入った。
いつもならぱたぱたと聞こえてくるはずの足音がいつまで経ってもない。
夜月は玄関口に置いてある傘がなくなっていることに気づいた。
「……花?」
嫌な予感がした。家の中がやけに静かだ。
「花。花」
広間。花の部屋。夜月の部屋。温室。客間。地下の書庫。
どこも
「花……」
何が起こっているのかをようやく理解した夜月は、とっさに家を飛び出した。
雨の存在など忘れていた。予備の傘を持ち出している余裕はなかった。
夜月の頭には彼女のことしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます