夜になると身体が疼く。


「夜月! お帰りなさい!」


  少女が玄関先まで迎えにきた。

  夜月は何も言わず、家に入っていく。そのあとを少女はぺたぺたとついていく。


「夜月? どうしたの?」

「………………」


  バタン。

  部屋に入り、ドアを閉める。夜月はそのドアに背中を押しつけもたれかかった。


「夜月……苦しいの?」


  少女は不安そうに瞳を揺らしながら夜月を見た。

  息が荒い。肩を上下させ、夜月は自分の胸をえぐるようにつかんだ。


「夜月……」


  少女は懸命に背伸びをする。夜月がよくそうしてくれるように、彼の頭をなでてあげようと思ったのだ。


「は……な」


  うめくように名前を呼び、夜月は少女を抱き寄せた。少女は夜月の頬に触れ、彼を元気づけようと言う。


「花が側にいるからね。大丈夫だからね」

「………………」


  少女は魂を消化する力を持っている。そのことを彼女自身は知らない。

  夜月は目を閉じた。ゆっくりと解放されていく。

 

「夜月、寝ちゃったの?」


  少女の声がうっすらと残る意識の中で聞こえた。

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