残り612円



 わたしは限られたエネルギーです。



 駅まで走る。握りしめた小銭で切符を買って、ホームへの階段を駆け下りる。丁度停まっていた電車に駆け込む。発車ベルが鳴る。わたしは呼吸を整える。

 扉が開いた瞬間に、また駆け出す。市内の一等地(の端っこ)までを駆け抜ける。夕闇に佇む古びた奇妙なビルの階段を、六階分一気に駆け上がる。重い鉄製の扉を押し開ける。


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