海底神殿④
「どうなっている……」
頭の痛くなるような状況が川蝉の目の前にはあった。
「ヒドい……」
七瀬も口を手で覆いショックを隠しきれていない様子だった。
川蝉達がトータスと連戦しながらも順調に進んでいると、ターミナルを見つけた。
幸先がいいとばかりに、それを確認しに行ってみると落胆の光景がそこにはあった。
眼に入ったのは無惨にも破壊されたターミナルの空間である。赤い近代的な壁から天井まで、あらゆる部分に容赦のない攻撃が広がっている。
当然、ターミナルは使えなくなっている。日吉の件でわかっていたことだが、この装置自体はタフではないのだ。
何か巨大な爪にでも削られたような痕がそこかしこに残っている。おそらくここを滅茶苦茶にする際に行われた無作為的な攻撃なのだろう。
「何すかね、この痕」
「わからない。現状ではモンスターの攻撃ってのが一番考えられるが……」
少なくともトータスの仕業ではない。彼らにこのパワーを出すのは不可能だ。
「問題は他のターミナルがどうなっているかだ」
「もしこれがモンスターの仕業だったら……」
「ターミナルは全滅しているかもしれない」
ヤドクが日吉を殺した際に起きたような、事故とも言えるターミナルの破壊ならいい。
だが意図的にこちらが帰還できないようにモンスターがターミナルを壊しているのだとすれば話は悪い方向へ進んでいく。
――だが本当にモンスターか?
疑惑の種が川蝉の中で生まれる。
モンスターにそんな習性があるとは何故か思えなかった。知能のあるヤドク、それに蝦蟇仙人すらそれをしなかったのだ。それにモンスターにこれが何なのか理解しているのかも疑問の余地がある。
このダンジョンが開いたのは初めてであり、モンスター側も人間と出会うのは初のはず。
本能的にこう言った小部屋を壊す本能のあるモンスターでもいるのか。
――いや、これ以上考えても無駄だな。
確定的なことがわからないので、結局思考は堂々巡りにしかならなかった。
「行こうか、ここに留まる理由もない」
「わかったっす」
川蝉はターミナルの小部屋を出て、改めて石畳の通路に足を付ける。七瀬もそれをぴょこぴょこと追ってくる。
このフロアはすでにそこそこの探索をし終えていた。行き止まりを除けばルートはあと二つ。
どちらかは正解で先に進むめるのだろう。
ターミナルが使えない。
トータスの強さといい、今回のダンジョンはどう見ても前より手強い。
それでいてこのアクシデント。
どうも状況が悪い方へ転がって行っている気がしてならなかった。
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