青結晶の洞窟㉒
「うぅ……」
島田は頭を抱えてその場にうずくまっていた。
死ぬのがただ恐かった。このまま時間が過ぎればいいのに、とそんなことばかり考えてしまう。
遠くからは轟音が木霊してくる。未だに戦闘中なのだろう。
――あいつらまだやってんのか。
島田の仲間達はほぼ瞬殺だった。
それに比べれば善戦していると言える。
――あいつらが死ねば、俺は一人になるのか。
当たり前のことだ。
だがそれを考えると全身の鳥肌が立つ。
こんなわけのわからない洞窟に一人で生きる。助けも絶対に来ない。来るのは新たに生まれるモンスターだけ。
――嫌だ、嫌だ、そんなのは嫌だ!
もう何もかもが嫌だった。
だがそんなことを思っても現実は何も変わらない。
――あいつらはどうして戦える?
決まっている。生きるためだ。
なのに自分は死にたくないのにここにいる。
完全に矛盾していた。
何よりも情けなかった。友達を見捨てた自分に言い訳ばかりしているのが、情けなさ過ぎた。
このまま終わっていいのか。万が一、彼らが勝って助かったとして自分は丸まって怯えていただけなんて生き恥もいいところではないか。
戦わないと己に示しがつかない。
島田は壁を支えに、ふらつきながら立ち上がる。太股に納められたワンドを乱雑に取り出した。
――やるしかねえ、やるしかねえ!
ここで待っていても何も変わらない。
今戦っている二人が死ねば、島田一人ではどうにもならない。ただ惨い死が待っているだけだ。
ならばやることは決まっている。
勝率を少しでも上げるのだ。
例え死ぬことになっても結果は同じ。戦って死んだ方がマシかもしれない。
島田はワンドのトリガーを引いた。
属性は『鉄』だと言われた魔法。パチンコ玉のようなものを出して攻撃する方法と使い道はもう一つあった。
島田の全身を覆っていた皮膚が銀色に包まれていく。顎から下はもはや肌色が存在しなくなっていた。
己の体の肉体硬化と肉体強化。体を鋼鉄のように硬くし、そして人外レベルの身体能力を得る。
だがその間は格闘でしか戦えず、リスクも大きいため使い勝手は最悪だった。
それでもこの形態が一番強い。
「くっ……」
あの油に飲まれる想像しかできない。窒息死か、あるいは諦めたところで拷問が始まるか。
――いや決めたんだ。
島田は拳をぎゅっと握る。浅くなった息を整え、走り出した。
少しずつ加速していく。
「もう、どうにでもなれ!」
覚悟なんて格好いい状態ではない。
半分ヤケクソになって島田は戦場へと向かうのだった。
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