烏合の衆
NHKのドラマで「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」というドラマが放映されていて視聴しました。
劇中でも紹介されていたスクールロイヤー(学校弁護士)が主人公で、学校で起こる問題を法律の観点から解決を図るドラマのようです。アメリカではすでにスクールロイヤーを配備しているそうですが、あまりにもなじみがないのでピンときませんでした。
しかし一話見るだけで大体の事は分かります。スクールロイヤーは教育者のためにある閉鎖的な学校という籠を壊す第一歩です。
その話はモンスターペアレントの話でした。自分の子供が授業妨害をしていたことを注意され、無理やり椅子に座らせたことを体罰だと学校へ乗り込んできたようです。
暇なのか二時間だか大人に謝らせ続けたおばさんは、ここぞとばかりに「訴えるぞ」と脅しをかけました。そこに主人公が登場しこう言います「訴えたいのはこっちのほうだ」と。
おばさんが教師を拘束していたことによって、授業に教師は来ることができずに、当事者以外の生徒たちは多大な迷惑を受けています。業務にも支障がでますし、もし体罰が行われていたのであれば他の生徒へのケアも考えなければならない、時間は有限なのです。
そのおばさんも一時は引きます。おそらく自分の娘がどういうことをしたのかは娘から聞いてはいないのでしょう、その場も決意に支えられた突っ張りではないので弁護士がでてこようものなら自分の圧倒的不利を悟ります。
そうして今度は土俵を変えます。自宅に体罰をしたという教師を一人で来いと呼び、狭い玄関先に立たせてあることないことまくしたて念書を書かせます。
その教師は新人教師で、年季の入ったおばさんの喧騒に勝てずに、念書にサイン捺印をしてしまいます。
ここで困るのは学校の先生方。すぐさま会議を始め、雁首揃えた大人たちが新人教師を責め立てます。
曰く軽率、曰く身勝手、およそ教育者とは思えない稚拙な押し付け合いをはじめて、しめの校長は波風を立てないようにと解決を図るなと決めます。
新人教師は、涙を流しながら主人公に気持ちを吐露します。それほどまでに追い詰められながらもなりたかった教師に夢をみて頑張っているのです。
結局のところ解決に動いた学年主任は長い教員生活で身に着けた処世術で、問題家庭へ入り込み問題生徒を再登校させることに成功します。
しかしそこから始まったのは問題生徒による教師いじめでした。階段の上から汚水を新人教師にかけます。
それでもなお話し合おうとする教師を問題生徒は取り巻きをつかってあおり、他人の弁当を新人教師の頭からかけます。
我慢できない、我慢できるはずがない、学校という枠を外れていれば問題生徒の行いは断罪されてしかるべきです。しかし新人教師は自分がされたことに怒るのではなく、弁当を勝手に使われた生徒に謝るよう問題生徒の頭を下げさせようとします。
その最中問題生徒の取り巻き以外の生徒は、うざそうなめんどくさそうな絶妙に迷惑そうな顔をしています。盛り上がっている一部以外は迷惑で嫌われている存在なのでしょう、クラス内ではその生徒らを排除してほしい空気が漂います。
そんなことはお構いなしに、狙い通り体罰の写真を押さえた問題生徒は、モンスターペアレントを召喚します。
鬼の首を獲ったかのように喜びわめくモンスターペアレントに主人公は手を出すことを指示したのは自分だと名乗り出ます。
新人教師は追い詰められて辞表を用意していました。自らの首をかけてまで問題生徒となお向き合おうとしたのです。以前からおばさんモンスターペアレントのせいで教師たちは腫物を触らないように向き合うことをやめました。そんな空気を打開するべくとった行動になんの落ち度もない、この大立ち回りのおかげでモンスターペアレントの主張は取り下げられ、問題生徒と新人教師も話合いを行うことができました。
しかし、学年主任は意を唱えます「主人公のやり方は劇薬だ」と、そして主人公は返します「異議あり」と、学校ルールと法律というルールで対立する二人に波乱の幕開けを感じさせる素晴らしい第一話でした。
以前に私が思っていた。雁首揃えた大人たちの無能さがテーマの一つのように感じられました。
教員という人にものを教えることのできる大人が、数そろって会議しても解決案は一つも出ませんでした。大体保留の意見か、自分が関係していないことをアピールするだけです。まとめ役の頭は波風が大きく立たないことだけをお願いして、意見の集約はしません。
決まらない決められない決めたくない烏合の衆は、結局のところ学年主任の言うような毒も飲めない古い人間たちが、狭いコミュニティーを支配していたから更新されずに古く古くなっていったのが原因だと思います。
体罰という言葉も、古く昔から行われていたことが表面化しただけです。おそらくは立場を利用して殴る蹴るなどはずっとあったことなのです。
そうした古い教育者がポストを得て、自分たちがやってきたことを次に押し付けて、お前たちはやるなと上から押さえつけていればどこかで行き詰るのは目に見えているのに、やめることができない。
古さを更新することができない、新しさを知らないし学ばないからです。
教職がブラックであると話題にはなっていましたが、ドラマのような話題性のある切り口がないと気付かれもしないのでしょうね、悲しいことです。
いじめ問題の早期解決のためにも、スクールロイヤーの制度はすべての学校に導入すべきだと感じました。
学校内の烏合では足りません、もっと多くの烏合が必要です。
数をそろえても解決できない問題に、数を足すのもどうかと思いますが、まともな考え方のできる人間を一人でも多く集めて、子供達が悲しまない不幸が起こらないような環境にするべく、毒も栄養もすべて飲み込んで吸収する必要が迫っていると思います。
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