第42話 超〇金軍団と魔法少女。

 守は、目を見ていた。

 大きさはマジンダムや悪魔の倍以上で、人間の目のように瞼で縁取られた黒い瞳を向けているのだ。

 「・・・・・」

 突然の事態を前に声も出せず、見返すことしかできない。

 記憶を遡ると部屋で寝ようと目を瞑り、開けてみると、今の異常な状況下に置かれていたのである。

 異常の原因と思われる目は何もせず、でかい瞳を向けてくるだけなので、互いに見詰め合ったままの沈黙状態が続く。

 「お前は、いったいなんだ?」

 沈黙を破ったのは、守だった。

 「さあ、何かな?」

 目は、重低音という言葉がぴったりの声で、質問をはぐらかした。

 「いきなりこんなことして説明も無しかよ」

 適当な態度への苛立ちから、荒い言い方での返事になってしまう。

 「説明して分かればの話だがな」

 「まさかとは思うけど自分がこの世界そのものとか言うつもりじゃないだろうな?」

 「その通りだ」

 思い付きで言ったことをあっさり認めた。

 「お前、ひょっとして原初の神様か大邪神か?」

 「お前達からすれば大邪神だ」

 「大邪神だって~!」

 驚きの声が、辺りに響いていく。

 「何故大声を出す? 妖精や悪魔や天使に会ったお前に取っては珍しいことではないだろ」

 「神様と会うのは初めてなんだから驚きもするさ」

 「そういうことか」

 「それとさっきの言い方だと俺の事を全部知っているみたいだな」

 「全部知っている。もっと広範囲な言い方をすれば、お前を含む世界に生きる全ての者のこともだ。なにしろお前達が言うところの神様だからな」

 自慢するみたいに声を弾ませている。

 「それで大邪神様が俺に何の用だ? これまでがんばってきたご褒美でもくれるのか?」

 挑発ような口調で、目的を尋ねる。

 「戦う為に呼んだのだ」

 「やっぱりそうなるか。そうなるよな~。」

 「分かっていたような返事だな」

 大邪神が、不思議そうに聞き返してくる。

 「おばさんからおたくの話を聞いた時からいつかこういう時が来るんじゃないかって予感はしてたからな。俺がおばさんからお前のことを聞いたことも知ってるだろ」

 「そうだ」

 「それでいつ戦いを始めるんだ?」

 「今からだ」

 「それじゃあマリルを呼ばないと・・・左手が無い?!」

 契約魔法でマリルを呼ぼうとしたが、肝心の左手は見えなかった。

 「体も無いぞ?!」

 全身を見ようとしたところ体も無く、自分が真っ白な空間に居ることを初めて知った。

 「俺の体をどこへやったんだ? それとここはいったいどこだ~?!」

 焦るあまり質問を連発してしまう。

 「ここは概念の次元だ。今のお前は鋼守という概念だけで形はない」

 「じゃあ、どうやって戦うんだよ。口ケンカでもするのか?」

 「そんなわけないだろ。自分の姿を思い描け。そうすれば形になる」

 「そういうことは先に説明しろよ」

 「我は体が無いから忘れていた」

 「ったく」

 悪態を付いた後、自分自身の姿を頭に思い描くと、私服を着た体が現れ、それと同時に身体の感覚も感じられるようになった。

 「ほんとに体ができた。やっぱ体があるのと無いのじゃあ大違いだぜ~」

 顔を触った後、手足を動かして、体をある事を確認していく。

 「やはり肉体という器があるのはいいものなのだな」

 「当たり前だろ。元気な体あってこその人生だぜ。さて、マリルを呼ぶとするか。マリル、聞こえるか?」

 紋章に呼びかけるも返事はなかった。

 「おい、どうなってんだ? 通話できないぞ」

 「ここは概念の世界だ。魔法少女を呼び寄せたければ思い描いて念じればいい」

 「そういうことか」

 体と同じように思い描いた後、魔法使いの格好をしたマリルが、目の前に現れた。

 「やっぱり俺の中のマリルのイメージってこの格好なんだな」

 マリルを見ながら、自身のイメージに納得してしまう。

 「久し振りに会ったと思ったらなにその反応はって、なんで守が居るの? ここどこ? 確か連邦庁舎の執務室に居たのに」

 事態を把握できていないマリルが、辺りを見回しながら質問を連発してきた。

 「信じられないかもしれないけど原初の大邪神が居る概念の次元だ」

 「原初の大邪神? 概念の次元? 何を言っているの?」

 「そう言うのも仕方ないけどあそこに居るのが原初の大邪神」

 証拠である巨大な目を指差す。

 「あれが原初の大邪神? 大邪神って巨大な目なの?」

 大邪神を見たマリルは驚かず、首を軽く捻りながら存在を疑った。

 「この目は仮の姿に過ぎない。では、早速グレートマジンダムを呼んでくれ」

 「どうしてマジンダムを?」

 「俺達と戦いたいんだと」

 「分かったわ。呼べない?」

 マリルは、詠唱を口にしたが召喚できなかった。

 「ここは概念の次元だから思い描かないと来ないんだ。俺はマジンダムを描くからマリルはリュウガ達を描いてくれ」

 「分かったわ」

 その後、玩具サイズのマジンダムは来たが、従僕達は現れなかった。

 「なによ。来ないじゃない!」

 マリルにおもいっきり怒鳴られてしまう。

 「俺にも分からないよ。どうなってんだ?!」

 怒鳴られた怒りを大邪神に向ける。

 「この世界において概念を具現化できる力を持っているのは鋼守、お前だけだからだ」

 「初めからそう言えよ!」

 大邪神に文句を言った後、従僕を思い描いて、四人を具現化させた。

 「守様、お久しぶりでございます」

 「守殿、久しゅうござる」

 「まもやん、おひさ~」

 「まもちゃん、久しぶりね~」

 従僕達は、マリルとは正反対に再開を懐かしむ挨拶をしてきた。

  「久し振り」

 「それで、ここはいったいどこでしょうか?」

 リュウガの質問に対して、マリルの時と同じ説明をする。

 「あれが大邪神でございますか」

 「神を見るのは初めてでござる」

 「神やんとは、またどえらいこっちゃやで~」

 「神様って、ほんとに居たのね~」

 大邪神を見た従僕達が、驚くでもなく能天気感想を口にしていく。

 「戦いに必要なものは全部揃えたぞ。お前は何で戦うんだ? ラスボスっぽく何かに変身するのか?」

 「これだ」

 言い終わった後、巨大なものが大量に具現化されていった。

 「これは・・・・・」

 守は、言葉を詰まらせた。具現化されたものが、一目で分かったからだ。

 「全部巨大ロボットアニメの主役ロボじゃないか!」

 召喚されたのは、アニメに出てくる巨大ロボットだったのだ。

 「ただの巨大ロボットではない。全て超○金玩具として発売されたものだ」

 「超○金だって? 確かに超○金として発売された奴だけだな」

 「もちろんただの超○金ではなくアニメの設定もきちんと反映されているぞ」

 「言われてみれば大きさもアニメの設定通りだな」

 ロボットは、各機ごとに身長が異なっていた。

 「お前達にはこの超○金軍団と戦ってもらう」

 「なんで超○金なんだ? 普通の巨大ロボット軍団じゃダメなのかよ」

 「お前達の戦いを見続け、戦わせるなら超〇金のロボットが相応しいと判断したのだ」

 「それで俺達に超○金軍団をぶつけるってわけか。悪くない判断だ」

 「そうでございますね」

 超○金が大好きなリュウガと一緒に、大邪神の考えに理解を示す。

 「なんか、凄く違うと思うけど、ちゃんと戦えるの?」

 呆れた顔しているマリルが、戦いの意思を確認してくる。

 「当たり前だろ。なんで、そんなことを聞くんだ?」

 「ほら、相手は超○金の巨大ロボットだから戦うの嫌じゃないかなって思って」

 マリルは、不安そうな表情で聞いてきた。

 「そんな顔するな。相手がなんであれ、敵なら全力で戦うさ」

 「マジカルプリンの時には戸惑ってたじゃない」

 「あれはフィギュアとはいえ一応女の子だったからさ」

 「そろそろマジンダムに乗ってくれないか」

 大邪神が、搭乗を促してくる。

 「巨大化させる際も俺が念じる必要があるのか?」

 「いいや、この次元では一度存在が確率されれば、それが持つ性質は発揮できるからいつもの手順でいいぞ」

 「マリル、頼むぜ」

 「任せて。我操りし鋼の巨人よ、我が魔力を受けて真の姿を示せ! 汝、グレートマジンダム!」

 巨大化魔法を受けたマジンダムに搭乗し、従僕四人が憑依して準備が整ったところで、超○金軍団と正面から対峙した。

 「やれ」

 大邪神の合図を受けた超○金軍団が、実体弾や光学兵器を撃ってくる。

 マリルは、マジンダムより巨大な防御魔法陣を前面に展開して防いだが、表面で生じた爆発は凄まじく、真っ白な世界を一瞬にして、赤黒く染めていく。

 そうして防御している最中、遠距離攻撃を止めて飛び込んできたロボット達のパンチや剣やドリルによる近接攻撃によって、魔法陣はあっさり破壊され、その衝撃によってマジンダムは後方へ飛ばされてしまう。

 「サンダースプラッシュ!」

 マジンダムの全身から発射された無数の稲妻が、攻め込んでくるロボットを撃ち落としていくものの、損傷無く立ち上がってくるのだった。

 「どうして攻撃が通じていないの?!」

 マリルが、驚きの声を上げる。

 「主役ロボットだからあれくらいの攻撃じゃかすり傷にもならないんだよ」

 「まったくもうっこれだから巨大ロボットは~!」

 マリルは、地団駄を踏んで悔しがった。

 「それで、どうやって戦うの?」

 「攻撃が効かないわけじゃないんだ。ここはスピードを生かして戦おう」

 「分かったわ。武器は?」

 「トマホークでいく」

 マジンダムを緑色のハイスピードフォームにして、両手にトマホークを持って突っ込み、超○金軍団に超速で攻撃を仕掛けていったが、防御及び回避されてしまうのだった。

 「くっそ~! やっぱり主役ロボットにもなると反応速度も別格だな」

 「それなら一旦離れてエレメントキャノンで吹き飛ばしましょ」

 「分かった」

 超速で軍団から離れようとするものの、同様の性能を持つロボット達に追い着かれ、抵抗する間もなく叩き落とされてしまう。

 「超速出せる奴も居るんだったな~」

 「ピンポイントホール」

 機体を立て直しそうとボヤく中、マリルが前方に大穴を開け、超○金軍団を落としていったが、回避した一体がドリルを突き出しながら迫ってきた。

 「スパイラルネット!」

 左腕から出したネットでロボットを拘束して放り投げる。

 その後、コックピットに異常を知らせるサブウィンドーが開いて、左主翼が切断されてることを知らせてきた。

 「な~っ! マジンダムが損傷だと~! 嘘だろ! 信じらんね~! どういうことだ~?!」

 初めての目に見える本体の損傷に信じられない気持ちでいっぱいになり、完全に取り乱してしまう。

 「同じ超○金同士なんだから損傷だってするでしょ」

 マリルが、当たり前のことを指摘する。

 「それもそうか。とりあえずエレメントキャノンだ」

 召喚したエレメントキャノンを超○金軍団に向けて撃つも、盾やバリアで防御されてしまうのだった。 

 「お腹空いた~」

 マリルが、空腹の声を上げると波動の放出がしぼんで、止まってしまった。

 「おいおい、こんなとこで攻撃止めたらやられちまうぞ~!」

 「こればっかりはどうしようもないわよ~」

 「ああ~仕方ない」

 食べ物を思い浮かべ、コックピット内をおにぎりやパンなど食べやすい食品でいっぱいにする。

 「これだけあれば十分だろ」

 「そうするわ」

 マリルが、膝から降りて、食べ物にがっついていく。

 「しかし、魔法が使えないんじゃ遠距離攻撃できないぞ。逃げるにしてもハイスピードフォームにもなれないし、こんな時マジンダムの本来の武器が使えれば・・・・そうか」

 あるイメージを思い描いた。

 「シナプスレーザー!」

 迫り来る超○金軍団に向かって、叫びながらスティックのボタンを押すと、マジンダムの両目から青いレーザーが発射された。

 「よし! 発射できた!」

 歓喜の声を上げながらガッツポーズする。

 「なんでマジンダムの目から光波が出るの? 確か使えないんじゃなかった?」

 マリルが、食べながら質問してくる。

 「マジンダム本来の機能を使えるように思い描いたんだよ。だから今は全部の武器が使えるんだ。ジェットスマッシュパンチ! バストブレイザー! ジェノサイドミサイル!」

 叫び声とスティック操作に合わせて、マジンダムは自らに内蔵されている武器だけで敵を迎撃していく。

 「これで終わりじゃねえぞ! グレートブレード!」

 マジンダムは、腰から一本の長剣を出し、切先を超○金軍団に向けた。

 「ファイナルスラッシュ!」

 掛け声に合わせて、全身が白銀の光りに包まれたマジンダムは、一体のロボット目掛けて剣を振って斬り裂いた。

 「よっしゃ!  一体撃破だぜ!」

 ガッツポーズを取って、歓喜の声を上げる。

 「これなら私いらないみたい」

 食べ終えたマリルが、ややふてくされたように言った。

 「いきなり何言い出すんだよ」

 「私が居なくても十分に戦えているじゃない」

 「これはあくまでも一時しのぎみたいなもので、マリル抜きじゃ勝てないぜ」

 「ほんとに?」

 「ほんとだ。今こそ本当に超○金と魔法を本当に組み合わせる時だ!」

 強い口調で、協力の必要性を訴える。

 「分かったわ」

 マリルは、納得したように膝上に座り直した。

 「さっき言ったことできるよな」

 「当たり前でしょ。誰に向かって言っているの?」

 「四方の魔女」

 「大正解」

 その後、マジンダムが発射した両手は炎の矢となり、シナプスレーザーは氷結を起こし、バストブレイザーは稲妻を纏い、ジェノサイドミサイルは巨大化して着弾と同時にキノコ雲が上るほどの大爆発を起こすなど、必殺武器に魔法を組み合わせた戦いを行った。

 「今までの攻撃で何体くらい倒せたのかしら?」

 「レーダーで見る限り、二、三体ってところだな」

 表示しているレーダーで、残っている敵の数を見ながら返事をする。

 「あれだけの攻撃でたったそれだけ?」

 「言っただろ。主役クラスだからそう簡単には倒せないって」

 返事をしている間に超○金軍団が、拳や武器を構える姿勢を取っていく。

 「いったい何をしているのかしら?」

 「まずいぞ! あいつらトドメの超必殺技を使う気だ!」

 「何それ?」

 「敵を倒すのに使う技でファイナルスラッシュのと同レベルのことをやろうとしているんだ。防御魔法陣でも防げないぞ」

 「それなら早く逃げないと」

 マジンダムが退避させようとしたが、超○金軍団から発射された竜巻やビームを浴びたことで、その場から動けなくなってしまう。

 「どうして動けないの?」

 「トドメ技を使う際に相手を拘束する技だからだ。マジンダムのハリケーンストームと同じだよ」

 説明している間に超○金軍団は、動けないマジンダムに向かって、一斉にトドメ技を放ち、これまでで一番大きな爆発を起こって静かになった後、爆心地に一つの物体が転がっていた。

 それは両腕と下半身が無く、全ての装甲が剥がれたことで、露出した回路が小さな火花を上げ、口元を覆っていたマスクも破壊されたことで鼻と唇が露出して、息絶えたように両目の光りを失っているレッドエースの残骸だった。

 「マリル、生きているか?」

 「どうにか」

 「他はどうだ?」

 「大丈夫でございます」

 「問題無しでござる」

 「生きとるで~」

 「ピンピンしているわよ~」

 安否確認の問いかけに対して、従僕達が無事であることを報告してくる。

 「そうか、良かった。にしても狭いな」

 「仕方ないわよ。全員居るんだもの」

 従僕の安全確保の為に、全員をコックピットに避難させているせいで、ぎゅうぎゅう詰めになっているのだ。

 「それにしても主役ロボットの超必殺技を防ぐなんて大したもんだ。さすがは四方の魔女だ」

 「当然よ。けど、防御魔法陣をレッドエースに集中させてなかったら跡形もなく吹き飛んでいたわね。それでどうするの? 超○金軍団が近付いて来ているわよ」

 巨大ロボットならではの巨大な足音が近付いてくる。

 「それなら大邪神様が与えてくだされた力を使うさ」

 「どういうこと?」

 「ちょっと黙っていてくれ」

 それから目を閉じた後、レッドエースの全身が光りに包まれると本体の装甲、手足の順番に修復され、最後にマスクが元通りになることで、傷一つ無い完全な姿へと再生したのだった。

 「ちょっと、これどういうこと?! また天使が助けてくれたの?」

 「大邪神が俺だけ具現化できる力があるって言っていたのを思い出してやってみたのさ。俺も半信半疑だったけど大正解だったぜ!」

 説明している間に立ち上がらせたレッドエースは、息を吹き返したように両目を力強く光らせた。

 「レッドエースだけで戦うつもり?」

 「そんなわけないだろ」

 それからすぐに残りの四機を具現化させていく。

 「ようし、お前達配置に戻れ。逆襲開始だ!」

 「承知!」

 従僕達が、各機体に憑依していった後、合体してグレートマジンダムになった。

 「治ったのはいいけど、これじゃあ、さっきと同じようにやられるんじゃない?」

 「大丈夫、その点も考えてあるさ」

 マジンダムに両手を広げさせると、周囲に数十機のマジンダムが具現化していった。

 「これ、どういうこと?」

 「超○金軍団の数だけマジンダムを具現化させたんだよ。よく考えれたら一体で戦う必要はないからな」

 「だけど、無人じゃ動かないんじゃないの?」

 「誰が無人なんて言った。俺が乗っているマジンダムを思い描いたから全機に俺が乗ってるんだよ。そうだろ?」

 「そうだ!」

 コックピットに開いた機体数の通信パネルに映る守が、一斉に返事をした。

 「よくあれだけの数を具現化できたわね」

 「ロボットファンの想像力は無限大なんだよ」

 「もしかして私達も乗ってるの?」

 マリルが、やや引き気味の声で尋ねてくる。

 「いいや、俺だけだ。さすがにマリル達までは無理だったからな。さてと反撃開始だ!」

 「おうっ!」

 合図に合わせて、全機が超○金軍団に向かい、両軍がぶつかり合ったことで、概念の次元は巨大ロボット同士による戦場となった。

 しばらくの戦いの後、両軍は陣営に別れて対峙した。

 「やっぱりマジンダム軍団でも三機しか倒せないか。こっちも三機やられてるからお合いこだけど」

 レーダーを見て、両軍の数を確認しながら言った。

 「このままじゃ、いつまでたっても決着付かないわよ」

 「こうなったらみんな、あれをやるぞ」

 「分かった」

 「あれって?」

 「マジンダム軍団によるファイナルスラッシュ同時発動だよ」

 「だったら魔法も加えないとダメじゃない」

 「なんで?」

 「私達にあって超○金軍団に無いのは魔法なんだからトドメ技と組み合わせれば確実に勝てるでしょ」

 「その通りだな。全員聞いたな」

 「おうっ」

 その後、マジンダム軍団はマジンダムブレードを出して構えると、超○金軍団が応えるようにトドメ技を行う体勢を取っていく。

 マジンダム軍団が、一斉に直進を開始すると前方に真っ赤な魔法陣が出現し、それを通り抜けると超巨大な炎の矢になった。

 「ファイナルバーニングスラッシュ!」

 両軍のトドメ技がぶつかり合った瞬間、爆発を通り越した猛烈な発光現象が起こり、光が治まった時には、マジンダム軍団は全機健在だったが、超○金軍団は一体を残して全滅していた。

 「あれは・・・」

 マリルは、最後の一体に見覚えがあった。初めて手に触れた超○金玩具だったからだ。

 「こいつが最後に残るとは、さすがは元祖スーパーロボット。ここからは俺達だけでいい。みんな、ありがとう」

 礼を言った後、マジンダム軍団を消していった。

 「元祖スーパーロボットと戦う日が来るとは思いもしなかったぜ。これも巨大ロボット好き冥利に尽きるかな」

 言い終えた後、マジンダムをロボットに直進させていくと、両手を飛ばしてきた。

 「お前の戦法はお見通しだ!」

 グレートブレードで両手を弾いた後、ロボットが両目から発射してきたビームを左手に召喚したアースシールドで防ぎながら一気に距離を詰め、胸からの熱線攻撃をジャンプして回避した後、落下速度に合わせ、両手で持ったグレートブレードを一直線に振り降ろして、真っ二つに斬った。

 ロボットは、破片が地面に落ちる前に大爆発して、跡形もなく消えたのだった。

 「超○金軍団を敗るとはな」

 大邪神は、悔しがるどころか、感心したような言葉を掛けてきた。

 「負けたのはあいつらが無人だからだ」

 「何故、無人だと勝てない?」

 「巨大ロボットはな、鋼の巨体に人間の魂が宿ることで最強無敵になるんだ。魂抜きじゃただのでく人形なのさ。人機一体っていうんだ。覚えておけ!」

 マジンダムの右指で、大邪神をビシッと指さしながら言った。

 「やはり、お前は素晴らしい」

 大邪神が、嬉しそうに称賛の言葉を送ってくる。

 「負けた割にはずいぶん嬉しそうだな」

 「ああ、我は今物凄く嬉しいんだ。こんな気持ちになったのは体があった時以来だ」

 話せば、話すほど、大邪神のテンションが上がっていくように感じられた。

 「あいつ、大丈夫かな?」

 「私に聞かないで。邪神の考えていることなんて分からないなわよ」

 「お前、いつまでも悦に入っていないで次はどうするんだ? 歴代の悪役ロボットでも呼ぶのか?」

 「いいや、戦いはこれで終わりだ」

 「じゃあ、なんだ? 負けを認めて俺達を元の世界に帰してくれるのか?」

 「それはできない」

 「結局のところ、あなたは何がしたいわけ?」

 「こうするんだ」

 大邪神は、マジンダムに急接近するなり、覆い被さるようにして同化した。

 「いったい何が起こったの? 守は平気?」

 マリルは、自身に変化が無いことを確認した後、守の安否を確認した。

 「大丈夫だ。問題無い」

 「守?」

 声に違和感を聞き取って、振り返ると座っているのは守であって、守ではなかった。

 額に大邪神の目が付いていたからだ。

 「ま、守?」

 試しに名前を呼んでみる。

 「その名はもう不用だ。なにせ、今は大邪神だからな」

 目の付いた守が、顔を綻ばせながら大邪神であることを公言した。

 「どういうこと、なんで守に憑り付いているの?」

 シートから離れて、大邪神と向き合い、行動の意図を尋ねる。

 「我は永らくこの時を待っていたのだ。我の体に相応しい器となる者の出現をな」

 大邪神は、両腕を組んで説明し始めた。

 「神様なんだから体くらいどうにでもなるでしょ」

 「なんでもいいわけではない。そもそも我の本来の体はお前達が原初の神と呼ぶ者共によって八つ裂きにされてこの世界を作る材料にされ、意識はこの次元に封じられたのだ」

 「原初の神はどうなったの?」

 「自分達で創った世界を謳歌して数億年後に天寿を全うした。それによって世界に干渉可能となった我は器に相応しい者を選び出すべく行動を開始したのだ」

 「いったい何をしてきたの?」

 「選んだ者達に強運を授けたのだ。どんな困難にも打ち勝つ強運をだ。お前達が英雄と呼ぶ者達はそうして生まれたのだ。だが、どいつもこいつも途中で自滅する者ばかりだったが鋼守は違った」

 「何が違ったのよ?」

 「ここまで生き残ったことだ。これまで幾度も死にそうな目に合いながらも生き残り、なおかつ悪魔にも超○金軍団にも勝ったのだからこれほどの強運の持ち主が他に居るか? 居ないよな。だからこそ我の新たな器としたのだ。それにしても肉体があるというのは本当にいいものだな。生きていることを実感できる」

 大邪神は、両腕を大きく広げて、溢れ出る喜びを猛アピールしてみせた。

 「あなたなんかに守は渡さないわ!」

 マリルは、大邪神を守から追い出すべく、両手を肩に乗せて電流を流した。

 「そんな力が神に通じるものか。そこで大人しくしていてもらおう」

 額の目が光ると、マリルは立ったまま、体を動かすことができなくなってしまった。

 「リュウガ、ホオガ、ライガ、フウガ」

 マリルは、声を振り絞って、従僕達を呼んだが、誰も来なかった。

 「お前の従僕など、マジンダムに封じ込めておるわ。さあ、お前も新たな神の降臨を括目するがいい。そこの特等席でな」

 大邪神は、守がやっているようにスティックとペダルを動かし、マジンダムを操作して、上昇させたまま停止させた後、両手を大きく広げる動作を行った。

 それによって真っ白だった概念の次元が一気に払拭され人間、魔法、妖精、光といったあらゆる世界が、万華鏡のように見えるようになった。

 「全ての世界で生きる者共よ。我は原初の大邪神だ」

 大邪神の声が、全ての世界に轟いていく。

 「我が望むのは絶対的な崇拝と服従だ。まあ、言葉だけでは信じられないだろうから我の力を示すべく一つの世界を消すとしよう。どれがいいかな。そうだ。悪魔どもの居る闇の世界にするか」

 マジンダムが、開いた右手を闇の世界に向け、閉じる動作をに合わせて、押し潰されていく。

 「やめて~!」

 マリルが、力いっぱい叫ぶ。

 「お前達を苦しめてきた世界を無くしてやろうというのだからむしろ感謝して欲しいな」

 大邪神が言い終わると、マジンダムの右手は完全に閉じる寸前で、動きを止めた。

 「何故動かない?」

 「俺が邪魔しているからに決まってんだろ」

 大邪神と入れ替わりに、守本来の声が返事をした。

 「守?! 守なの!」

 「貴様? 何故、我の意のままに操れない?」

 「生憎、マリルの魔力を頻繁に体に通しているせいか、変な力には耐性が付いているみたいだぜ。もっともさっきの電流が無かったヤバかったけどな」

 「そんな馬鹿な・・・・」

 「少しの間、大人しくしていてもらうぞ」

 守は、震える右手で、額の目を突き刺した。

 「ぎゃあああ~!」

 大邪神が、悲鳴を上げる。

 「これで少しは自由になる。マリル、マジンダムから降りろ!」

 守は、額から血を流したまま、マジンダムのコックピットハッチを開けた。

 「まさか、一人で大邪神をどうにかするつもり?!」

 「そうだ。リュウガ、マリルを外に連れ出せ!」

 「承知しました」

 コックピットに現れたリュウガが、マリルを後ろから抱きかかえる。

 「離しなさい! リュウガ!」

 マリルが、リュウガを振りほどこうと抵抗した。

 「そうだ。言い忘れてた。俺、マリルのことが大好きだ」

 「え?」

 マリルが動けない隙に、リュウガが離れたのを見て、ハッチを閉じた後、グレートブレードを出して両手に握らせた。

 「貴様、いったい何をするつもりだ?!」

 「言っただろ。お前をどうにかするんだよ」

 「まさか・・・・・」

 「そのまさかだよ」

 守の操作に応えて、マジンダムはブレードの切っ先を胸部へ向け、コックピットを突き刺し、そのまま押し通して、刃を背中から突き出させた。

 それからマジンダムの全身に亀裂が入り、そこから溢れた閃光と共に大爆発が起こり、爆煙が晴れた後には破片一つ残っていなかった。

 最強無敵の巨大ロボットは、パイロットの少年と大邪神共に世界から消えたのである。

 「守! 守~!」

 マリルが、いくら呼びかけようとも返事はなく、声だけが空しく響き渡るだけだった。

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