第36話 空の民と魔法少女。
「何事でおじゃる?」
「空の民の軍が押し寄せてきます」
その説明に合わせるようにモニターは、暗雲から突き出るように姿を現してくる多数の戦艦を映した。
戦艦は、王都のものと異なり、鳥類を思わせる流線形で、全体が青空を思わせる薄青で塗られているのだった。
「空の民ってなんだ?」
「公害物質の上に住んでいるドワーフ達のことでおじゃる」
「あの上に住む場所なんてあるんだな。それにドワーフってことはあんたらの仲間だろ」
「もちろん同じドワーフでおじゃるが、彼等が住んでいる空中都市は最初の王都を持ち上げたもので、住人として選ばれたのは血筋ある者だけで麿達平民とは違うエリートの集まりなのでおじゃる」
「そのエリートドワーフが何をしに来たんだ?」
「おそらく大王の敗北を知って王座を明け渡すように言ってくるつもりでおじゃるろう」
「つまり俺との勝負が原因ってこと?」
「以前から何かに付けて言っていたで今更なことでおじゃるよ。麿は司令部に行くので守殿はここに居ても良いでおじゃるぞ」
「分かった」
クダラが出ていった後、お茶を飲みながら状況を見守ることにした。
停止した戦艦からは、空色のロボットが多数降下して着地した後、手にしている銃に似た武器を王都に向けていく。
「マーベラス、異世界のロボットに負けたそうだな。そのような敗者に王の資格は無い。このケバブ様に王位を渡せ!」
ロボット群の中から頭部に鶏冠のようなパーツが付き、体に白いラインの入ったロボットが一歩前に出た後、映像にハゲ頭で髭面で左目に眼帯をしている男が割り込むなり、乱暴な口調で要求を言ってきた。
「いかにもって感じの要求だな」
「マーベラスだ。お前の要求は飲めない」
ケバブの映像に割り込んだマーベラスからの返答だった。
「誰?」
ケバブが、冗談ではなく真顔で問い掛ける。
「私だよ。マーベラスだ。マーベラス」
「本当か? 髪が短くて髭も無いじゃないか」
「さっき切ったんだよ。まあ、イメチェンってやつだ」
「イメチェンか。まあそれはいいからさっさと王座を渡せ」
「確かに異世界のロボットに負けはしたが、お前に負けたわけじゃないから王座を渡す理由はない」
「俺達の戦い見てたんだな」
「なら、その異世界のロボットと戦わせろ。俺がそいつが勝ったら王座を渡せ」
「負けたら」
「諦めて潔く引き上げようじゃないか」
「また変な流れになってきたぞ」
「私に負けたお前じゃとてもじゃないが勝ち目はないよ」
「何を言う。お前に負けた日から戦力を三十倍に増強した俺が負けるわけないだろ。今から一時間待つ。その後に返事が無ければ王都を攻撃する。いいな」
「三倍じゃなくて三十倍なんだな。俺に選択権あるのかな~?」
言いながらお茶をゆっくり飲む。
「守、ここに居たんだ」
マリルが、転送魔法で姿を現した。
「もう来たよ」
「もう来たよじゃないわよってここどこ?」
辺りを見回しながら聞いてくる。
「クダラ男爵の執務室」
説明しながらお菓子を摘まむ。
「なんでそんなとこに居るの?」
「ドワーフがロボットを作ったことと魔法使いと仲違いしてる理由を聞いてたんだよ」
「そんなことより大変なの」
「空の民とかいうエリートドワーフが三十倍の軍隊を連れて王座を渡せって要求して来てるんだろ」
「どうして知ってるの?」
「そこのモニターで見てたから」
現在の状況を映すモニターを指差す。
「そういうことだったのね」
「それでどうするんだ? 俺達との対決を要求してるけど」
「まずはお父様に相談するわ」
「ちゃんと許可取るんだ」
「お父様の国なんだから当然でしょ」
「懸命な判断だな」
「それじゃあ、お父様の所へ行きましょ」
言いながら出口へ歩いて行く。
「なんで転送魔法使わないんだ?」
「司令室の場所知らないし、お父様の気配まだ覚えてないから」
少し恥ずかしそうに言い返してくる。
「そういうことね」
通信機で場所を確認した後、執務室を出て司令室に向かう。
「ここだ」
「何者だ?」
扉の前に立ったところで、女性の声で素性を尋ねられた。
「私は大王の娘マリル・アウグストゥスです。中に入れてください」
マリルが、気品を感じさせる話し方で、要件を伝える。
「確認を取りますのでここで待っていてください」
言われた通りに待つ。
「入っていいそうです」
承認を得て中に入る。
司令室は、左側にマーベラスを含む将校達が座り、そこを最上段にした雛壇のような構成になっていて、各段のオペレーター達が情報整理を行い、その先には外の状況を映した巨大モニターが設置されているのだった。
「休んでいるところを悪かったね」
「いいよ。暇してたところだし」
「それでどうされるおつもりですか?」
「マリル達はここに居ろ。私が直に交渉しに行く」
「それなら麿とバロッケンがお供するでおじゃります」
「いいや、ここは私一人でいい」
「大王、何を仰るのでありますか?」
「あの大群にお一人など危険でありますぞ」
クダラとバロッケンを含む将校達が、止めに入っていく。
「行くのはいいとしてロボット無しで大丈夫なのか?」
「予備機があるから大丈夫」
「なるほど」
「なるほどじゃないわよ! ロボットがあるかどうかじゃなくてお父様一人が行くことが問題なんでしょ!」
鬼のような剣幕で、怒鳴られてしまう。
「それなら要件通りに俺達が行けばいいじゃないか」
動じることなく、あっさり言い返す。
「これはドワーフの問題だ。君が関わる必要はない」
「向こうが指名してきてる時点で十分巻き込まれてるよ」
「まあ、そうだけど」
「だったら俺達が行ってあのケバブとかいうおっさんを倒すのが一番の解決方法だ。マジンダムの強さは誰よりも親父さんが一番よく知ってるだろ」
「う~む」
マーベラスは、言葉に詰まってしまった。
「マリルはどう思ってるんだ?」
「指名されているのが私達である以上、私達が行くべきです」
「マリル、お前までなんてこと言うんだ」
「大王、ここは二人に行かせてみてはいかがでおじゃりましょうか?」
クダラからの進言だった。
「クダラ、何を言い出すんだ」
「我もクダラの意見に賛成であります」
バロッケンが、右手を上げて賛成の意思を示す。
「バロッケンまで」
「守殿とマリル様はクダラと我と大王に勝ったのでありますからケバブごときに負けることはないでおじゃりましょう」
「それにこの二人ならばなんとかしてくれそうな気がするのであります」
「他の者達もクダラとバロッケンと同じ意見なのか?」
マーベラスの問い掛けに対して、将校達が手を上げていく。
「後はあんた次第だぜ」
追い討ちを掛けるように答えを仰ぐ。
「分かった。お前達の意見を尊重しよう。ただし母さんの許しを得てからだぞ」
「なんでマリューさんの許可取るんだ?」
「マリルが絡んでいるんだから許可を取るのは当然だろ」
「正しい判断ですわ」
「母さん、司令室に来て」
その呼び掛けに応えるようにマリューが姿を現す。
「マリル、行ってきなさい」
事情を聞いたマリューが、賛成の言葉を口にする。
「母さんまで~」
マーベラスが、落胆の声を上げた。マリューなら反対すると思っていたのだろう。
「あなたを勝ったのだからきっと大丈夫よ」
「そ、そうかな~?」
マーベラスが、マリルに親バカ全開の視線を向ける。
「父親なら娘を信じなさい」
「分かったよ。鋼守にマリル、行って来なさい」
マリューの一押しにて、マーベラスは戦いに行くことを渋々承知した。
「決まりだな。行くぞ」
「分かったわ」
「マリル、気を付けて行くのですよ」
「分かりました」
「危ないと思ったらすぐに帰ってきていいからね」
「そんなことしません」
マリルは、ちょっと頬を膨らませながら司令室から出て行った。
「お待ちしておりました」
廊下に出るなり、横一列に並んだ従僕達が待っていた。
「我等も共に参ります」
「そうこなくっちゃな」
「それじゃあ行きましょうか」
頷き合った後、マリルの転送魔法で格納庫に移動した。
レッドエースの足元に着くなり、整備班が集まってきて整列していった。
「いったいどうしたんだ?」
「先程クダラ様から出撃するとの連絡を受けましたのでお見送りしようと思いまして」
一番前に立っている班長が、事情を説明する。
「あなた達の心遣いに感謝するわ」
「レッドエースは堪能できたか?」
「もちろんですとも。ただ整備班としては少しばかりいじってみたかったですな」
「それなら一つ頼まれてくれないか」
あることを思い付き、班長の肩に手を乗せながら言った。
「出るぞ」
「了解、出口まで運びますので台座に乗ってください」
出撃することを伝えた後、女性オペレーターが指示を出してくる。
「分かった」
レッドエースを歩かせて、台座に乗せた。
「ご武運を~!」
全機が乗ったところで台座が動き出し、整備班の激励を受けながら通路を進んでいく。
「ゲートオープン。進路クリア発進どうぞ」
開くゲートが見えてきたところで、オペレーターが外の状況を知らせてくる。
「鋼守、レッドエース、行きま~す!」
声に乗せて、レッドエースを台座から飛び立たせ、それに合わせて四機もその場から飛んでいく。
「ああ、こういうオペレーターとのやり取りは最高だね~」
「またロボットアニメの話~?」
「そういうこと~」
「もうこんな時まで」
そんな話をしながらケバブの軍勢の前に降りた。
「来たか。時間ぎりぎりだな」
腕の通信機を通して、ケバブの声が発せられる。
出撃前に班長に頼んで、周波数を合わせてもらったのだ。
「こっちも色々と準備があってね」
「なるほど、それがマーベラスを倒した異世界のロボットか」
「そうだ。どうだい、見た感想は?」
「うむ、実にカッコいいな」
素直に誉められた。
「このロボットの良さが分かるなんてセンスあるじゃん」
「この大軍に怖れることなく出てきた敬意も込めているのだよ」
「そりゃあどうも。俺達としては負ける為に来たわけじゃないけどね」
「まったく威勢のいいことだ」
「ケバブ殿、私達が勝ったら軍を引き上げていただけますか?」
マリルが、気品溢れる声で要求を伝える。
「何故ロボットから女の声が聞こえるのだ?」
「このグレートマジンダムはマーベラス・アウグストゥスの娘マリル・アウグストゥスと人間鋼守の二人で操作しているからです」
「魔法使いと人間が操作するとは益々奇妙なロボットだな」
「それで条件飲むのか?」
「いいだろ。この戦力に勝てればの話だがな」
空と地上を埋め尽くさんばかりの戦力を見せ付けるように、ロボットに両手を広げさせながら言った。
「始める前に提案があるんだけどいい?」
「なんだ?」
「あんたのロボ以外全機無人にしてくれないかな。俺達人殺しはしたことないんだ」
「・・・いいだろ。少しのハンデくらい付けてやらんとな」
その言葉通りに戦艦やロボットからドワーフが降りて、戦場から離れていった。
「これで心おきなく戦えるぜ」
「それなら俺の提案も聞いてもらえるかな」
「なんだ?」
「ロボットが一つになるところを見たいのだ」
「合体か。いいぜ。グレートドッキング!」
合体してグレートマジンダムになってみせた。
「どうだ?」
「これは凄いな」
「それじゃあ始めるか」
「それでは先手を取らせてもらおう。撃て」
ケバブが、合図に合わせて斧を向けた直後、ロボットと戦艦が一斉射撃を敢行し、マジンダムは爆発に包まれていった。
「やったか?」
「おっさん、そいつは禁句だぜ!」
爆発の中から姿を見せたのは、右手にアースシールドを持ったマジンダムだった。
「シールドリバース!」
シールドを突き出し、攻撃を受け止めて蓄積したエネルギーを変換したビームを放射して、目の前の敵を一掃していく。
「さすがはドワーフ、いい仕事してるぜ~」
盾の威力を見ながら言った。出撃前に壊れた盾を整備班に修理させていたのだ。
「感心してないで。ドリラーモード!」
シールドをしまった後、機体を黒く輝かせ、回転しながら地面に潜っていく。
「あの形状で地面を潜れるのか。なんて建筑様式を無視したロボットなんだ。だが、甘いな。この機体のレーダーは地中にも及ぶのだぞ。そこか」
ケバブが、レーダーが特定した出現位置に戦艦とロボットの武器を向けさせていく。
「さあ、こい。出てきた時がお前達の最後だ」
言い終えた直後に地鳴り起こり、地面を突き破って吹き出した炎の柱が、真上に居た戦艦と近くに居たロボットを焼失させていった。
「ファイヤーアローキック!」
柱から姿を見せたマジンダムは、炎の矢になってロボット群に飛び込み、地面もろとも黒焦げにした。
「なんて滅茶苦茶なロボットなんだ。かかれ~!」
ロボット群が、銃から斧に変形させた武器を持って押し寄せてくる。
「ファイヤーモード! バーニングウェーブ!」
真紅に染まった機体から突き出す両拳で大地を叩いて、四方に発生させた炎の大波で、ロボット群を一気に吹き飛ばしていく。
「一分も経たずに地上戦力の大半を焼失させただと~? 化け物か。ええい、空からレーザーの雨を降らせてくれるわ!」
戦艦が、マジンダムに砲頭を向けてくる。
「撃たせるかよ。グレートアロー! シューティングスター!」
翼を本体から分離させて変形した弓矢を持って、矢を天に向けて放った直後、空から降り注ぐ大量の光の矢が艦隊を撃破し、暗雲の空に無数の爆球を上げていった。
「このまま一気に艦隊を全滅させるぞ」
「分かってるわ」
その場からジャンプして、艦隊の中心に飛び込む。
「サンダーフォーム! サンダースプラッシュ!」
マジンダムを黄色に変化させ、全身から放出した稲妻で、戦艦を撃破していく。
「ハイスピードフォーム!」
マジンダムを緑色にして、超速で残っている戦艦を根こそぎ破壊して、艦隊を全滅させた。
「後はロボットだけだな」
地上に残っているロボット群を見ながら言った。
「それなら新しい魔法で倒すわ。グレートブレード!」
アースシールドと同じく修復されたグレートブレードを両手に持ち、下向きに構えて急降下していく中、ロボット達がビームを撃ってきたがものともせず、突っ込んでいく。
「ブレードウェーブ!」
地面にブレードを突き刺した直後、根本を中心にして無数の刃が波のように飛び出して、ロボット群を串刺しにして全滅させたのだった。
「これがグレートマジンダムの最強無敵の力だ。まだやるか?」
ブレードの切っ先をケバブのロボットに向けながら問い掛ける。
「ま、参りました」
ケバブのロボットは、降参の証として斧を捨てて、両手を上げた。
「そうか、じゃあお引き取り願おうか」
「そうしたいんだが、さっきの攻撃で機体が動かないんだが」
ケバブのロボットは、ブレードウェーブの刃を受けて、両足が無かったのだ。
「なら、私達が連れていってあげる。守」
「オッケー」
意地悪な返事をした後、マジンダムの右手を伸ばして、ケバブのロボットの頭を鷲掴みにする。
「何をするんだ?」
「あんたを国に送り届けてやるんだよ」
言い終わるなり、マジンダムを上昇させた。
「やめろ。特殊コーティングしていないお前達の機体で公害物質の中に入ったらどうなるか分からないぞ」
ケバブが、必死な声で止めてくる。
「その心配ならいらないぜ」
体から出した世界樹の光で、機体を覆ってから公害物質の中に飛び込んだ。
内部は見た目以上にドス黒くいかに有害であるかが分かったが、悪魔の世界を経験した後だと恐怖は感じなかった。
暗雲から抜け出ると、映像ではない本物の青空が見えた。
「やっぱり本物は違うな~」
「そうね。映像ではこうはいかないものね」
二人して、青空の感想を言い合っていく。
「それであんたの根城はあそこか」
目の前には、一つの島を丸ごと浮かべたような巨大な物体が浮かんでいた。
「そうだ。我が空中都市だ」
「外から見ると神秘の島って感じがするわ」
「じゃ、早速その神秘の島にお邪魔しますか」
島に直進するも後少しという距離で、薄青い幕で全体を覆ってきた。
「あれ、バリアか?」
「そうだ。簡単には破れないぞ」
「解除するように言ってください」
「嫌なこった」
拗ねたような返事をしてくる。
「そうかい、それなら」
ケバブのロボットを前面に突き出した状態で、バリアに向かっていく。
「何をする?!」
「あんたの機体は公害物質には耐えられるみたいだけどバリアには耐えられるのかな~?」
ワザと意地悪く言ってやる。
「分かった。分かった。バリアを解け~!」
ケバブの言葉に合わせて、バリアが消え、悠々と都市に入っていった。
都市の中は、王都と違い、太陽を目指すように高く作られた建物が並び、森や池など自然豊かだった。
「どこに向かえばいい?」
「真ん中の一番高い塔だ」
素直に答えてきた。さっきの行為で抵抗する気が無くなったのだろう。
指定された塔に向かう中、ロボットと戦艦が取り囲むように追随してきて、塔の回りもがっちりと固めているのだった。
「ピリピリムードだな」
「いきなり侵入者が来れば当然の反応だろ」
「なら、大人しくさせるまでさ」
塔の上に乗って、ケバブを降ろした。
「それじゃあ、王都に手を出さない宣言をしてもらおうか」
「俺は異世界のロボットに敗れ、定時された条件通りに王都には二度と手を出さないことをここに誓う」
「ようし、お前らもし王都に手を出す奴は容赦しないぞ。マリル一発かましてやれ」
「仕方ないわね」
剣の切っ先を天に掲げ、稲妻を四方八方に放出させて見せた後、ロボットと戦艦は撤退していった。
「これで一件落着だな」
「待って何か来るわ」
マリルの言葉に合わせるように、レーダーが上空から落下してくる巨大な物体をキャッチした。
「何が来るんだ?」
その言葉の後、上空から巨大な隕石が姿を見せた。
「あれもあんたの仕業か?」
「知らん。知らん。ドームの住人を皆殺しにするような真似なんかせん」
「要求飲まなきゃ攻撃するって言ってたじゃん」
「あれはただの脅しだよ」
「じゃあ、いったい誰が?」
「今はドームに知らせるのが先でしょ」
「親父さん、そっちに大岩が落ちてくるぞ」
通信機を使って連絡を入れる。
「こっちでも感知している」
「どうにかできないのか?」
「今からじゃ間に合わない」
「それなら私達で破壊します。守」
「分かってる」
マジンダムを塔から飛び立たせて、都市を離れて大岩の元へ急行する。
「あれか。ライトニングブレードでぶった斬るぞ」
「分かったわ」
世界樹の光をブレードの刃に集めることで構築した光の長刃を大岩目掛けて降り下ろし、大量の破片を飛ばしながら真っ二つにしていった。
「別方向からも斬って!」
「分かった!」
場所を移動して、ブレードを再度降り下ろすことで、四分割にした。
「中心に行ってエレメントキャノンを撃つわよ」
「よし!」
分断された岩の中心に突入して、マジンダムを回転させながらキャノン砲を撃つことで、粉々にしていく。
「後は防御魔法陣で破片を防げばいいわ」
「そんなに魔力使って大丈夫かよ?」
「平気よ。急がないと王都に被害が出てしまうぞ」
「分かった」
マジンダムをドームの中心に降下させ、上げた両手から防御魔法陣を展開して、破片を防いでいく。
しかし、少しすると魔法陣の範囲が狭まり始めた。
「おい、マリルまさか」
「お腹空いた・・・」
弱々しい返事が来た。
「やっぱり~」
さらに範囲が狭くなる中、別の防御魔法陣が展開した。
「なんだ?」
「守、私だ」
通信機から聞こえるのはマーベラスの声で、左隣を見ると両手を上げたブラックダビデが、防御魔法陣を展開しているのだった。
「ここは私が変わるし、迎撃システムも作動させたから大丈夫だ。マリルを城へ連れて行ってくれ」
その言葉通り、ドームから現れた大砲が発射するビームが、破片を破壊していた。
「分かった」
ドームから離れ、地下の入り口から中に入った。
「ここは?」
目を覚ましたマリルの問い掛けだった。
「私達の寝室よ」
側に座っているマリューが答えた。
「お母様・・・・ですよね?」
戸惑いながら問い掛ける。
「そうよ。どうして?」
「もしかしたら会えたのは夢で目が覚めたらお二人は居ないんじゃないかって思ったものですから」
「大丈夫、あなたの母はちゃんとここに居るわよ」
そう言って笑いながら手を優しく握ってきた。
「ありがとうございます。守はどうしていますか?」
「彼なら父さん達と司令室に居るわ」
「そうですか」
「彼は人間なのによくあそこまでやってくれたわね」
「そうですね。守には感謝しないといけないですね」
「彼とはどういう関係なの?」
「いきなり何を聞いてくるんですか?」
「名前で呼ばせてるし、契約魔法も施してないからどんな関係なのかと思って」
「守はえっとその~戦友です。戦友」
守が、自分との間柄に付いて訪ねられた時に使う言葉を用いて返事をした。
「戦友って?」
「一緒に戦う者同士ということです」
「本当かしら?」
「な、何を疑うのですか?」
「名前の呼び方よ」
「名前ですか」
「父さんも会った頃は名前で呼んでくれなくて一緒に事件を解決してから呼ぶように言ったの。最初は堅かったけど関係が進む内に軟らかくなっていったから。守もあなたを呼ぶ時に固さが全然無いからそれなりの関係なのかと思って」
「そうだったんですか」
マリルは、初めて守との関係を思い返そうと思った。
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