第34話 アウグステゥス夫婦と魔法少女。
「嘘だ~!ってほんとにお父様なの?! 死んだんじゃないの。わたしを騙そうとしているのならぶっ殺してやるわよ!」
マリルは、目を殺気立たせ、右手から炎を出しながら威嚇した。
「なんの目的で父親なんて嘘を付く必要がある? 命乞いならもっとうまい嘘を付くさ」
魔王は、反対に物凄く落ち着いた態度で言い返した。
「それなら証拠を見せなさいよ! 証拠を!」
「はい」
魔王は、左手を上げ、アウグステゥス家の家紋を浮かび上がらせた。
「俺に施してあるのと同じだ。これは決定的な証拠だろ」
「相手は魔王なのよ。魔王。わたし達の敵なのよ。その敵がお父様だったなんで、安っぽいドラマみたいな展開をそう安々と受け入れられるわけがないでしょ」
マリルは、魔王を父親と認めることを頑なに拒んだ。
「それなら顔見て判断しろよ」
守が、一番てっとり早い確認方法を提示する。
「ちょっと待って、よく見てみるから」
マリルは、魔王の顔をじっと見た。
「どうだ?」
「似ているような気もするし、違う気もする。最後に顔を見たの十一年前だからいまいちはっきりしないのよね~。特にこの髭とロン毛が分かりづらくさせているのよ」
マリルは、ネックとなっている二か所を交互に指さしながら言った。
「そんじゃ今から剃るよ。衛生兵」
魔王が、呼びかけるとハサミと櫛を持った兵士が、三人の前に現れた。
「御用はなんでしょうか?」
「髭剃って、髪の毛短くして」
「かしこまりました」
衛生兵は、手持ち以外の道具を出し、手早く正確な手付きで、髭と髪の毛を処理していった。
「終わりました。いかがでしょうか?」
手鏡を魔王に向けながら仕上がり具合を尋ねる。
「これでいい。下がっていいぞ。どうだ?」
衛生兵が退場する中、魔王は髭無し短髪の顔を見せた。
「今度は分かったか?」
「・・・・確かにお父様のお顔だわ。そうだ。名前、名前はなんていうの?」
「マーベラス・アウグステゥスだ」
「合っているのか?」
「一字一句間違っていないわ」
「それじゃあ、父親認定するのか?」
「ちょっと待って、最終確認よ。母の名前、母の名前は言える? 言えたら認めてあげる」
「マリュー・アウグステゥス」
即答であった。
「合っているか?」
「合っているわ」
「じゃ、認めるしかないよな」
「本当に・・・本当に・・・・・・お父様なのですね?」
マリルは、声を震わせるだけでなく言葉遣いにも変化が生じた。
「本当だよ。マリル」
魔王ことマーベラスは、穏やかな父親らしい表情を浮かべながらマリルを呼んだ。
「お父様~!」
「マリル~!」
二人は互いに名前を呼び合いながら、距離を縮めていった。
「お父様のばか~!」
マリルは右手で、マーベラスをおもいっきり引っ叩いた。
「え、え~?!」
娘からの突然の仕打ちにマーベラスは、叩かれた左頬を抑えながら唖然とした表情を浮かべた。
「おいおい、親父さんに向かって、いきなり平手打ちはないだろ~」
守は、マリルの突然の行為にドン引きしていた。
「だって! だって~! この十一年間ずっと死んだと思っていたのよ。それが魔王としてのうのうと生きていたなんて、ビンタの一発でも喰らわせたくもなるわよ!」
「言われてみればそうかもな」
マリルの言い分も分からないではなかった。
「生きていらっしゃったのならどうして探しにも迎にも来てくれなかったのですか? お父様」
マリルは、マーベラスを父と呼んだ。なんだかんだで認めてはいるようだ。
「わたしだって、ほんとはすぐにも会いたかったけど、結界のせいでできなかったんだよ。それがこんな形で再開するとは予想外だったさ。それで誰に育てられたんだ?」
「パプティマス家の方々です。わたしを本当の娘として育ててくださいました」
「そうか、ジョバンならお前を大事に育ててくれただろうな。この決闘を許可したのは?」
「イバンコ司令官だよ」
「なるほど、あの方の配慮か。それなら決闘を許可したのも納得だ」
「あのさ、色々と積もる話もあるだろうから、どこか落ち着いた場所で話をした方がいいんじゃないか?」
「そうだな。わたしの城で話をしよう。このマジンダムを近くに置ける目ぼしい場所はあったかな?」
マーベラスは、腕を組んで考える仕草をした。
「マジンダムは小さくすることもできるんだ。それでいいだろ」
「いいや、わたしの負けを疑う者も居るだろうから、このサイズのままでいい。それにこんな凄いものを国民に見せないのは勿体無いからな」
マーベラスは、悪ガキのような表情を見せながら言った。
「そうだ。城の東側の草原にしよう。あそこなら場所も十分だし、訪れた国民からも十分目の届く場所だからな」
「あんたが決めたのならどこでもいいよ。なあ、マリル」
「わたしもどこでも構いません」
「それでは行くぞ」
マーベラスの合図の元、三人と一体は決闘場所から移動した。
転送先は一面緑の草原で、左隣には誰もがイメージする山を背景にした古城が建っていて、なだらかな丘を挟んだ先には城下町と呼べるだけの街並みが広がり、黒雲の無い青空から降り注ぐ日射しによって、美しい景観を彩っていた。
「ここ、ほんとに魔王軍の領地なのか? 黒雲が一切無いぞ」
守は、疑問に思ったことをストレートに口にした。
「あの黒雲は、威嚇と防衛用のもので、王都にまではかけていないよ」
「建物の造りが違うこと以外は、ちゃんとした都なのですね」
街の建物は、大半が直線的で都会のビル群のようだった。
「人間が暮らしているんだからそれ相応の発展はするさ。娯楽施設に学校だってあるんだぞ」
「俺が住んでいる世界の人間が見たらイメージを壊しかねない光景だな。いや、空想が過ぎるかな」
「現実には有り得ない巨大ロボットに乗っている身分で言うこと?」
「それもそうだな」
「それよりも早く降ろしてくれないか、この超○金とかいうのは、座っているには固過ぎるんだよな」
「今降ろすよ」
守は、右手を操作して地面に付けた。
「王様、ご無事でありますか?」
三人が地面に降りたところで、転送魔法で現れたクダラ男爵が、マーベラスの安否を確かめてきた。
「この通りピンピンしている。決闘には負けてしまったがな」
ちょっと残念そうに返事をした。
「それでは我が国は連邦の支配下に置かれてしまうのでおじゃりますか?」
同じように転送魔法で現れたバロッケン伯爵が、心配そうに尋ねてくる。
「わたしが敗北した場合はどうなるんだね?」
「俺達はあんたに勝てばいいだけだからこの都には一切手は出さないし。あんたをどうこうしようとも思わないよ。マリルの親父さんならなおさらだ」
「そうか、ありがとう」
そこへ城の城門が開き、タイヤが無く宙に浮いたまま走行する乗り物の一団がやってきた。
「あなた、無事なの?!」
乗り物から降りて、マーベラスに駆け寄ってきたのは、紫の豪華な衣装に身を包み、顔の造りや髪の色までマリルをそっくりそのまま大人にしたような婦人だった。
「マリュー、この通り無事だぞ」
両手を広げて、無事であることをアピールした。
「お母様、お母様なのですか?」
マリューを見たマリルが声を上げた。
「お母様? ねえ、あなた。どうして知らない子がわたしを母と呼ぶの? 確かにわたしの若い頃にそっくりだけど」
ここまでのいきさつを知らないマリューは、首を傾げながら夫に事情を尋ねた。
「連邦で育ったマリルが、このように立派に成長したんだよ。ほら、お母さんに証拠を見せろ」
「はい、お父様。お母様。これを」
マリルは、左手にアウグステゥス家の家紋を浮かび上がらせた。
「本当に、本当にマリルなの?」
娘であることを確信したのか、マリューは声を震わせ始めた。
「はい、お母様」
「マリル!」
二人は、寄り添いしっかりと抱き合った。
「あの日以来、あなたをこうして抱き絞められる日をどんなに待ち焦がれていたことか、今日はなんて良き日なのかしら」
「わたしもこうしてお母様と抱き合える日をずっと夢見ていました」
「わたしの時とはえらい違いじゃないか」
二人の再開を目の当たりにしているマーベラスは、完全に拗ねていた。
「あんたの場合は状況が違い過ぎるし、なにより心の準備ができていなかったんだから仕方ないだろ」
守が、それなりのフォローを入れる。
「ようく、顔を見せてちょうだい」
マリューは、マリルの顔を両手で優しく包みながら言った。
「はい」
「わたしそっくりの美人になったこと」
「お母様には、まだ遠く及びませんわ」
「あの二人、ほんとそっくりだな」
守が、素直な感想を述べた。
「わたしには?」
マーベラスが、期待を込めた視線を向けながら聞いてくる。
「見た目は全然だな。魔力補給を食い物で補うところはすげえそっくりだけど」
「酷い・・・・・」
落胆のあまり、その場に両手量肘を付いてしまった。
「事実だ」
守は、残酷な一言を放った。
「それであなた、これはいったいどういうことなのか、説明してちょうだい」
マリューが、マリルを抱き締めながら、ここまでの経緯について質問してくる。
「ああ、わたしの決闘相手がマリルだったんだ」
マーベラスは、これまでのいきさつを説明した。
「ということは、あなた、この子と戦ったの?」
マリューの語尾に鋭さが混じり始める。
「殺すとかそういう乱暴なことをする気は全然無かったぞ。降参する程度に痛め付けて、連邦の領地に帰ってもらうつもりだったんだから」
マーベラスの態度に焦りが混じり始める。
「あなた、ちゃんと相手が誰であるかを確認してから決闘なさい! この子にもしものことがあったらどうするつもりだったの!」
マリューは、鬼のような形相を向けながら言い放った。
「それは、クダラとバロッケンが名前を言わないから悪いんだよ。すげえ、強い巨大ロボットとかいうのと爆弾抱えた鋼守って少年がわたしとの決闘を申し込んできたってしか言わなかったし~」
マーベラスは、二人に恨みがましい視線を向けながら言った。
「臣下のせいにしないの!」
マリューの言い方は、正に鬼嫁であった。
「お母様、苦しい」
「あら、ごめんなさい」
マリルは、マリューにおもいっきり抱き付かれたままだったのだ。
「お二人共、喧嘩はその辺で止めていただけますか。せっかく十一年振りに再開できたことですし」
マリルが、仲裁の言葉を口にする。
「そうだったな。すまない」
「そうね。久しぶりのアウグステゥス家勢揃いですものね」
それから親子三人は、しっかりと寄り添った。
「なんとも感動的な場面だなって、お前等まで泣いているのかよ!」
守は、いつの間にかマジンダムから分離して側で大泣きしている従僕四人にツッコミを入れた。
「感動の場面ではございませんか」
「マリル様、良かったでござるな~」
「ほんま、今日はめでたい日や~」
「こんなことならカメラ持ってきておくんだったわ~」
「お前等は仕方ないとして、なんだってお前達まで泣いてんだよ?!」
従僕達と同様に泣いているクダラ男爵とバロッケン伯爵にツッコミを入れた。
「感動的な場面なんだから泣いたっていいではないか~」
「互いに死んだと思っていた親子の再会場面なんて滅多に見られるもんじゃないぞよ~」
付き添いの兵士に侍従達ももらい泣きしていた。
「ああ、もう好きなだけ泣けよ!」
「とにかく一旦城に入って話をしよう」
マーベラスの意見に賛成した一同は、乗り物に乗って城に向かった。
その最中、国民とおぼしき集団が、駆けつけてきて、一般兵が止まるよう指示したが、押し退けようとしながら
「王様は、ご無事か?!」
「決闘には勝ったのか?!」
「我々はいったいどうなるのだ?!」
と口々に大声を上げた。
「止めろ」
乗り物を止めたマーベラスは、車体から降りて、国民の前に歩み寄った。
「わたしは、あそこに立っているグレートマジンダムに敗れた。しかし、心配することはない。乗り手である鋼守はわたしとこの国の安全を保障してくれた。だから安心していつも通りの生活を送って欲しい」
「王様、髪と髭はどうされたのですか?」
一人の国民が、容姿の変化について尋ねた。
「ちょっとしたイメチェンだ。いい男になっただろ」
マーベラスが、ダンディなポーズを取って見せた。
「よく似合っていますぞ!」
「なんか若い!」
「惚れ直した!」
「じゃあ、わたしは城に帰るから」
王の帰還の言葉を聞いた国民は、似合っているという言葉を連呼しながら城に入っていく一行を見送った。
城の中は、古風な見た目とは違い、マリルの屋敷と同じだけの設備が揃っていて、とても現代的だった。
「初めにわたし達のことに付いて話をしよう」
一同が集まったのはマーベラスの部屋で、暖炉の部屋の二倍ほどの広さだった。
そこには手を繋ぎ合ったアウグステゥス親子、守に従僕四人、クダラ男爵とバロッケン伯爵の他、数名の将校が同席していた。
「あの夜、わたし達は何者かの襲撃を受けたのだ。あまりに突然の事態に対応できず、わたしは達は重症を負い、マリューは意識さえ失っていた。そんな中、迫る火の手から逃れるべく残る力を振り絞って転送魔法で退避することしかできず、マリルの安否を確認することはできなかったんだ」
「だから、わたしは一人残されていたのですね」
「そうだ。そして辿り着いた先は魔王軍の領土だった」
「魔王軍との境界線には結界が貼ってあって行き来できないようになっているんじゃないのか?」
守が、当然の疑問を口にする。
「何故だかは分からないが、気付けばそこに居たんだ。そこを先代魔王に助けられ、亡くなる時に後を継いでくれるように頼まれたわたしは、助けられた恩もあって引き継ぐことにしたのだ」
「どうして魔王の称号などお継ぎになられたのですか? どのような存在かは連邦議会に在籍されていたお父様なら誰よりもお分かりになられていたでしょうに」
「魔王とは連邦に対する威嚇の意味を籠めた役職名であって、歴史で習うような邪悪な行いをする者ではないのだよ」
「それなら実際は何をしているんだ?」
「王都を治める王様だよ。さっき見た国民達もわたしを王様と呼んでいただろ」
「そういや、みんな普通の人間みたいな恰好で、魔法使いって感じじゃなかったな」
「この街はそうした人間達の為のものだからだよ。そのことは後でまた話すからマリルの話を聞かせてくれ」
マリルは、ここまで至った経緯を守の補足を交えながら話して聞かせた。
「なるほど、そういうことだったのか。お前を助けたのは初めて作ったホムンクルスだったのだね」
マーベラスは、リュウガを見ながら言った。
「お前が居なければ、マリルはあの襲撃で死んでいたかもしれないな。あの時は破壊してすまなかった」
謝罪と共に頭を下げた。
「いいえ、そのお陰でこのような素晴らしい体と力を与えてもらったのですから感謝しております」
リュウガも頭を下げながら返礼した。
「そう言ってもらえると助かる。それにしも邪悪な魔法使いに身を陥としたフローラをマリルが討伐することになろうとは、これも因果応報かもしれないな」
マーベラスが、言いながらため息を洩らす。
「どういうことです?」
「フローラの魔法使いの資格取り消しを決定したのはわたしなんだ。杖を失った彼女が、邪悪な魔法使いと取引して新たな杖を入手しようとしていた現場を抑えたので、その罰として取り消しを命じたんだ。そうしたらこのような結末を迎えてしまったのだ。そうなのだろ。魔導書」
「はい、仰る通りです。彼女は力を欲するあまり再度邪悪な魔法使いと結託いたしまして、わたしを封印している保管庫へ案内したのです。そうして結界を破壊して、わたしを入手して力を手にすると上位の魔法使いの魔法石を奪い自分の体に埋め込むことで、さらに力を増していったのです」
守の胸から現れたブックマスターが、入手経緯を説明した。
「それで、こんなにまともな人達ばっかなのになんで連邦と敵対しているんだ? 魔法の使えない人間ばかりなら戦力不足になることは目に見えているだろ」
「全ては誤解なのだよ」
「誤解?」
「ここは元々荒地で、魔法を持たない者や権力争いに敗れ、都市に住めなくなった魔法使い達の拠り所が発展した都だったんだ。その後、連邦からの介入や圧力を恐れ、住んでいる魔法使いで防衛軍を結成したんだが、それを抵抗する邪悪な軍団とすり替えられてしまったんだ。本来は戦いなど望んでいないのに」
「おいおい、その割にはアーケロンだのバルドムだのドえらい超兵器持っていたじゃないか。それのせいでこっちはえらい目に合わされたぞ」
「あれも連邦の兵器に対抗する為にやったことだ。こちらが弱いと分かれば一気に攻められる恐れがあったのでね。さっき君が言っていた人員不足を補う為でもある。無人機がたくさんあるのもその為さ」
「そんなことならきちんと話し合えばいいじゃないか」
「それで解決すればとっくにそうしている。長い間に双方に多大な犠牲者を出ているんだ。今更、簡単な話し合いで解決できるわけがないだろ。それは君の世界でも同じではないのかね」
「・・・・・それもそうだな」
自身の世界でも紛争は絶えないので、言い返すことはできなかった。
「それで今回はどうしてわざわざ戦を仕掛けるような行為をなさったのです?」
「マリル達が生成した魔力によって結界が破られ、行き来できると分かったので、偵察を兼ねてマリルの消息を調べようと無人機の先兵隊を出撃させたのだが、マジンダムの攻撃によって壊滅させられたので、連邦軍が我々を滅ぼす為にとんでもない超兵器を開発したのだと思い、脅しのつもりで宣戦布告をしたのだよ」
「脅かしなんて、逆効果じゃないか」
「一気に攻め込まれない為の抑止効果も含んでいたんだよ。その後はマジンダムの脅威的な力をどうにか排除しようと思い、要塞をぶつけ、わたし自ら戦った結果がこれというわけさ」
「なんだか、わたし達の行動ってことごとく裏目に出ているような気がするわ」
「自分の行いを恥じるなよ。こうして親子の再開できたんだら良かったじゃないか。今までのことが無かったら死ぬまで再会できなかったかもしれないんだぞ」
守が、マリルに励ましの言葉をかける。
「そのことに関しては本当にあなたに感謝しているわ。鋼守君」
マリューが、頭を下げてきた。
「そうだな。君のお陰で十一年振りに娘の顔を見ることができたのだ。感謝のしようもない」
マーベラスも頭を下げた。
「わたしからもお礼を言うわ。ありがとう。守」
マリルも同じことをした。
「そんな大したことはしていないよ」
三人から礼を言われて、守は照れくさくなってしまった。
「時に守、君は娘の彼氏かね?」
「え?」
「そうそう、どんな間柄なのかしら?」
「お父様もお母様もいきなり何を聞いているのですか!」
マリルは、顔を真っ赤にしながら言い返した。
「だって、年頃の娘のお付き合い事情とか気になるだろ」
「ええ、彼氏の一人でも居るのかと思うものよ」
「俺とマリルは、戦友であって、それ以上でもそれ以下でもありません」
守は、マリルとの関係をはっきりと口にした。
「そうです。守とは一緒に戦う仲でしかありません」
マリルもはっきりと言った。
「これからどうされるおつもりですか?」
ブックマスターが、ベッドで寝ている守に今後の行動に付いて聞いてきた。
親子水入らずにするべく、一休みしたいと言って、案内された来客用の部屋でゴロ寝している最中に勝手出てきて、質問しているというわけだ。
「連邦軍の陣地に戻って事情を話すさ。それに俺の魔王討伐っていう役目は終わったんだからな」
「なるほど、絵に描いたような行動パターンですな」
つまらなそうに返事をする。
「別にいいだろっていうか、魔王討伐は果たしたんだからいいかげん俺から離れろよな。いつまでくっ付いているつもりだよ」
「まあまあ、わたしの判断でいつでも解除できるのですからもう少しこうしていてもいいじゃないですか」
「良かねえよ。爆弾抱えた生活なんて、さっさと終わりにしたいぜ」
「連邦軍にて、討伐が認められたら離れるとしましょう」
「連邦軍か、やっぱ話し合いじゃ解決は無理なのかな」
「何をお考えで?」
「戦いを終わらせる方法さ。魔王軍は凶悪な集団だと思っていたけど、実際はそうじゃないって分かったら戦争なんて無駄だし、どうにかしようって思えてくるぜ」
「ご自分の世界の戦争も止められないのに?」
嫌味たっぷりの皮肉だった。
「嫌な奴だ。消えろ」
「では、また」
ブックマスターは、一礼して消えた。
「だからって、このままでいいなんて思えないよな~」
守は、窓の外から見える街並みを見ながら言った。
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