第32話 王都と魔法少女。

 「だいたい顔見て分からないのかよ?」

 「分からないわよ。私が覚えている時は髪も短かったし髭も生やしてなかったから」

 仮面を取った大王は、長髪で髭面だったのだ。

 「そういうことなら」

 大王が、左手を翳すと一人のドワーフが現れた。

 「誰?」

 「衛生兵だ。髪を切って髭を全部剃ってくれ」

 「はっ」

 衛生兵が、手にした道具で、手際よく髪を切って髭を剃っていく。

 「どう?」

 髪が短く髭が無くなったことで、印象が大きく変わった顔を向けながら訊いてきた。

 「・・・間違いなくお父様だわ」

 マリルが、重い声で大王が父であることを認めた。いきなりの再開で戸惑っているのだろう。

 「分かってくれたか、マリル~!」

 マーベラスが、両手を広げて、マリルに近付いていく。

 「バカ~!」

 「いった~!」

 マリルは、罵声を上げながらマーベラスをおもいっきりビンタした。

 あまりに予想外過ぎる行動を目の当たりにして、その場に居る全員が言葉を失ってしまう。

 「殴ったね! 娘に殴られたこと一回もないのに~!」

 マーベラスの悲痛な叫びが、辺りに響く。

 「おいおい、いきなりビンタはないだろ~」

 「殴るに決まっているでしょ。生きていたのならどうして会いに来てくださらなかったのですか? 私は一日だってお父様のこと忘れたことなかったのに~!」

 マリルが、両目に涙を浮かべながらビンタした理由を説明していく。

 「それに付いては城で話そう。母さんも待っているしな」

 「お母様も生きていらっしゃるのですか?」

 「私と同じく生きているよ。お前達帰還するぞ」

 「はっ」

 「待ってくれ。俺はまだあんたを完全に信用してないぞ」

 「どうしてだい?」

 「俺と勝負したじゃん」

 「あれは君を負かして条件を飲ますつもりで殺す気は無かったんだよ」

 「その割には重力波で押し潰されそうとしたじゃないか」

 「ああすれば降伏するかと思ったらあんな出方をするとは予想外ったんだ」

 「守、そのくらいにして勝負には勝ったんだからいいでしょ」

 「マリルは親父さんを信用するんだな」

 「もちろんよ」

 「分かった。それなら俺も親父さんを信用するよ」

 「ありがとう」

 「それで俺達はどうするんだ?」

 「君等も一緒に来い。話を聞いてもらいたいし」

 「分かった」

 「あなた達もいいわね?」

 「承知」

 マジンダムから四人分の返事が発せられる。

 「何故マジンダムが返事をするんだ? 思考回路でも搭載されているのか?」

 「マジンダムにはマリルの従僕四人が憑依して力を貸してくれているのさ」

 「ますますもって不思議なロボットだな。では城へ行こう。マジンダムは飛べるからここへ来た時と同じように我々に付いてきてくれ」

 「それならバラけていくよ」

 「どうして?」

 マリルが、不思議そうに聞いてくる。

 「せっかく親父さんと会えたんだから少しでも一緒に居てやれよ」

 「君、なかなか気が利くじゃないか~」

 「そ、それならそうさせてもらおうかしら」

 マリルは、少し照れくさそうに返事をした。

 「そうだ。離れて移動するならこれを付けてくれ」

 マーベラスが、腕輪を差し出した。

 「それは?」

 「我々が使っている通信機だ。いちいちスピーカーで連絡を取るのは面倒だろ」

 「そうだな」

 腕輪を受け取って左手に嵌めた。

 それからマリルが、マーベラスと戦艦に乗るのを見届けた後、マジンダムに乗った。

 「まさかドワーフの大王がマリルの親父さんとは思わなかったな」

 「ほんとに驚きです」

 「真に仰天でござる」

 「予想外過ぎやで~」

 「ほんとびっくり~」

 「リュウガはマリルの最初の従僕なんだよな。親父さんと会ったことあるのか?」

 「はい、一度だけございます」

 「あんな顔だったのか?」

 「はい、間違いございません」

 「なら問題無いな」

 「鋼守、行くでおじゃるぞ」

 通信機からクダラの声が聞こえてきた。

 「分かったよ」

 返事の後にマジンダムを分離させ、戦艦の後に続いていった。

 岩と暗雲の間を進む中、前方に灯りが見えてきて、近付いていくと巨大なドームが放つ光であることが分かった。

 「あれはなんだ?」

 「あれが我等ドワーフの王都である」

 「なんてデカさだ。街一つなんてもんじゃないぞ」

 王都は、アキハバラよりも広い敷地をドームで覆っていて、某ドーム何十個分どころの大きさではなかった。

 「もうすぐ着陸するから準備するでおじゃる」

 「分かった」

 王都が、近付いてきた辺りで、先頭の戦艦の降下に合わせて、ドームに面する地面の一部が左右に開いていった。

 戦艦は、先頭順に中へ入っていき、マーベラスの乗艦の後に続いて入っていく。

 内部には、戦艦一機を余裕で置ける巨大な台座があって、全機が着陸した後、前方に移動して、等間隔で接地されているライトが照す四角い通路を進んでいった。

 通路を出ると多数の戦艦とロボットが置かれ、無数のアームとクレーンに整備員と思われるドワーフが、忙しなく動き回る軍用兵器の格納庫さながらの光景を目にした。

 「麿達の後に降りるでおじゃるぞ。いきなり人間が姿を見せては整備班を驚かしてしまうでおじゃるからな」

 「分かった」

 言われた通りにクダラとバロッケン達が、外に出るのを待つ。

 「もう降りていいのである」

 バロッケンの言葉に従い、レッドエースから降りた後、従僕達がロボットから離れて後ろに立っていった。

 「こっち来てくれ」

 マーベラスに呼ばれるまま側に行くと、構内に居る全ドワーフが気を付けの姿勢で整列していて、その中央に長い黒髪に藍色の服を着た女性が立っていた。

 「マリル?」

 立っている女性は、マリルそっくりだったのだ。

 「お母様?」

 マリルは、女性を母と呼んだ。

 「マリル、マリルなのね」

 女性は、マリルの名前を呼びながら両手を広げた。

 「マリューお母様!」

 マリルは、女性の名前を呼びながら腕に飛び込み、二人は強く抱擁し合った。

 「お母様! ずっとずっとお会いしたかったです!」

 「私もよ。マリル。この日をどれほど待ち望んだことか」

 二人が、感激の言葉を交わしていく。

 「正に感動の再会ですね」

 「生きている内にこんな場面に出くわすとは思わなかったでござる」

 「もう涙が止まらへんわ~」

 「泣きたい時には泣いたっていいのよ~」

 従僕達は、感動して泣いていた。

 「長く離ればなれになっていた親子の再会とは泣けるでおじゃる~」

 「これはもう泣くしかないである~」

 クダラ達も泣いていたが、今度は突っ込まなかった。

 「私の時とは全然違うじゃないか。私の時はいきなりビンタだったのに」

 マーベラスは、完全にむくれていた。真逆の対応を目の当たりすれば当然の反応だろう。

 「あんたの時はいきなり過ぎたんだよ。それにしてもほんとそっくりだな」

 「私には似てる?」

 目を希望に輝かせながら聞いてくる。

 「まったく似てないな」

 「酷い」

 「変に誤魔化されるよりはいいだろ」

 「それはそうだけどさ~」

 「それよりも本当にマリルを元に戻せるのか?」

 「本当だよ」

 少し低い真面目な口調で、返事をしたので嘘ではないと思えた。

 「お母様、お変わりありませね」

 「どういうことだ?」

 「私が最後に会った時のままだから」

 「それに付いてはちゃんと話すわ。展望台に行きましょ。あなた」

 「そうしよう。みんな作業に戻ってくれ」

 マーベラスが指示を出すと、ドワーフ達は一礼して持ち場に戻っていった。

 「あれに乗ってくれ」

 近くに見える透明な筒上のものを指差した。

 「俺達のロボットはどうするんだ?」

 「そのまま置いて構わないよ。整備班には手を出させないから」

 「分かった」

 それから筒の中に入ると、床がエレベーターのように上昇して、あっという間に止まった。

 「着いたぞ」

 「大王、女王、お帰りなさいませ」

 外に出ると小柄でがっしりとした女性二人の出迎えを受けた。

 「今、戻ったぞ」

 「出迎えありがとう」

 「レイラ、ただいまでおじゃる」

 「マルガ、ただいまである」

 クダラが栗色の髪の女性に、バロッケンが紫の髪の女性に帰宅の挨拶をしていく。

 「その二人ってもしかして」

 「レイラは麿のマルガはバロッケンのかみさんである」

 「クラウディアさんが言ってた人達だな」

 「クラウディアは本当に気品ある方だったわ」

 「またお会いしたいですわ~」

 近所の奥さんのような話し方をしているが、これも邦訳魔法のせいだと思い、何も言わなかった。

 「今から話をするから茶菓子を用意してくれ」

 「かしこまりました」

 レイラとマルガは、礼をして奥へ行った。

 「ここが展望室か」

 展望室は、床以外は透明な丸型のカバーで覆われ、王都が一望できる造りになっていた。

 そこで初めに目を奪われたのは太陽と青空だった。

 ドワーフの世界では、暗雲しか見てこなかったので、青空のインパクトは絶大だった。

 「人口太陽とドームの表面に青空の映像を映すことで本物っぽく見せてるんだ」

 マーベラスからの説明だった。

 「そういうことか」

 それから窓に近付いてみると、人間世界のビルとは構造様式の異なる平面な建造物が建ち並び、その周辺をタイヤの無い乗り物が、飛んだり走ったりしているのだった。

 「ファンタジーというよりは完全にSFの世界だな」

 「驚いただろ。私も初めて見た時は同じ反応だったよ」

 「どうしてこのような発展をしたのですか?」

 「機械技術を追求し過ぎた結果、公害物質が世界中に広まってしまったから王都全体を防護ドームで覆っているのでおじゃるよ」

 「おいおい、さっき俺達普通に外で話してたけど大丈夫だったのか?」

 「公害物質は上空にある暗雲だから地上に居る分には問題無いである」

 「なるほど、発展した結果がこの有り様じゃあ意味が無いな」

 「お主の世界にも公害はあるのでおじゃろう。それならば緩やかではあるが我等の世界と同じようになる可能性は十分あるでおじゃるぞ」

 「・・・・」 

 クダラの厳しい言葉に返す言葉が見付からない。

 「じゃあ、話をする前にマリルを元に戻そう。母さん」

 「分かっているわ。マリル、ここに来なさい」

 「はい」

 マリルは、言われるままマリューの正面に立った。

 「気を楽にして。あなたは立っているだけでいいから」

 「分かりました」

 マリルの返事の後、マリューは顔を両手で包んで目を閉じた。

 その直後、マリューの両手が金色に輝き、その光がマリルの全身を覆っていく。

 「いったい何をしてるんだ?」

 「マリル様~!」

 「黙って見てるんだ」

 言われるまま様子を見守り、光が消えた後、そこに立っているのは、悪魔の証である角が無い元の姿のマリルだった。

 「マリル、大丈夫か?」

 信じられない気持ちの籠った声で問い掛ける。

 「なんともないわ」

 角の無い頭を触りながら返事をする。

 「魔法はどうだ?」

 「使える。使えるわ」

 右手から炎を出して見せたが、目が赤く輝くこともなかった。

 「マリル様~!」

 従僕四人が、駆け寄って行く。

 「みんな、ありがとう。お母様、お母様?!」

 「どういうことだ?」

 マリューの姿を見て仰天した。さっきよりも歳を取ったように顔つきが変わっていたからだ。

 「時の魔法を使ってあなたを悪魔にされる前の姿に戻したの。だからその分だけ年を取ったのよ」

 「そんな方法があるなんてジョバンは一言も言ってなかったぞ」

 「魔法の世界では禁忌扱いだからな。この世界だからこそ使えたんだよ」

 「お母様、本当によろしかったのですか?」

 マリルが、申し訳なさそうに問い掛ける。

 「あなたの為だもの全然後悔してないわ」

 「とりあえず元に戻れて良かったじゃないか」

 「そうよね」

 マリルは、とても嬉しそうに笑った。

 それから親子三人で抱き合った。

 「もう突っ込まないからな」

 アウグストゥス親子の心温まる場面に大泣きしてる、従僕四人と部下二人に向けての言葉だった。

 「失礼いたします。お茶をお持ちしました」

 「あら、いい所を見逃しましたわね」

 お茶とお菓子を持って入ってきたレイラとマルガの言葉だった。

 

 「まずは私達のことから話そう」

 お茶の用意の後、親子と向き合う形でソファに座ることになり、左には従僕、右にはドワーフが座るという配置になった。

 マリルは、両親と手を繋いで嬉しそうにしていて、その様を見てるとなんだか自分まで幸せな気分になってくるのだった。

 「襲撃された夜、私は深手を負い、母さんは意識を失い、最後の力を振り絞って転送魔法を使って着いた先がドワーフの世界だったんだ」

 「なんでドワーフの世界だったんだ? 行くのは禁止なんだろ」

 「恐らくできるだけ遠くに離れようとしたからだと思う。そこで私達は先代のドワーフの大王に拾われ、元の世界に帰らないことを条件に治療と滞在を許されたんだ。私も母さんも動けない状態だったからあの時点では条件を飲むしかなかった」

 「だから会うに行くことができなかったのですね」

 「魔法で誤魔化すとかできなかったのか?」

 「私達には魔法を感知する腕輪が付けられていたんだ。それに下手に行動すれば魔法使いとの戦争になるかもしれないからここを出ることはできなかったんだ」

 「あなたを捜しに行けなくて本当にごめんなさい。だけど一日だって忘れたことは無かったわ」

 「今はこうして会えましたからもう良いのです」

 マリルは、慈愛の微笑みを浮かべながら優しい声で許しの言葉を口にした。

 「その割にはなんで大王なんかやってたんだ? 魔法使いなのに」

 「完治して交流を結ぶ内に魔法使いとしての技術を買われ、技術顧問になった後に前大王に指名されてなったのだ。助けてもらった恩もあったし周囲も賛成してたからなることにしたんだ」

 「あのよく分からないマスクとマントも前大王の趣味だったのか?」

 「あれは私の考え」

 「何故あのような格好をしたのてすか?」

 「私だって分かって魔法の世界に知らされたらどういうことだって色々と干渉されるかもしれなかったからだよ」

 「それでマリルを残すことに拘ったのか」

 「そういうことだ。次はマリル達の話を聞かせてくれないか?」

 「分かりました」

 それからここに来るまでの経緯をマリルと交互に話していった。

 「なるほど、そういうことだったのか。それにしてもなんとも皮肉な話だな」

 マーベラスが、噛み締めるように言った。

 「おばさんが罪を犯したから捕まえただけであんたに非は無いだろ」

 「そこじゃなくてフローラを捕まえたことで引き離された私達親子が君達が捕まえたことがきっかけでこうして再会できたことだよ」

 「言われてみればそうかもしれないな」

 「そういった意味では本当にあなたには感謝しているわ。鋼守」

 マリューとマーベラスが頭を下げてくる。

 「いや、俺はただ自分ができることをやっただけだから」

 二人から礼を言われ、どうしていいか分からずにあたふたしてしまう。

 「それからリュウガ、あの時は壊してすまなかった。お前が居てくれなければマリルは無事ではいられなかっただろう」

 「いいえ、マリル様の献身的な処置のお陰で再生できましたし、素晴らしいこうして人生を歩めておりますからお気になさらないでください」

 リュウガは、許しの言葉を口にした。

 

 「ふ~」

 ベッドに寝転がりながら息を吐いた。

 あれから親子水入らずにしようと休憩を申し出て、案内された別室で休んでいるのだった。

 「これで良かったのかな?」

 マリルは、元の姿に戻り、死んだと思っていた両親とも再会できたのだから普通に考えれば、ハッピーエンドだろう。

 だが、現時点ではハッピーエンドとは言えなかった。

 二人が、マリルの帰還に付いては返事を濁したからだ。

 勝負に勝てば帰還を許す約束だったが、相手が実の両親となれば強要することはできず、保留にすることにしたのだ。

 す~。

 が~。

 ぐ~。

 すや~。

 両脇に並んでいるベッドで寝ている従僕達の寝息だった。

 個別の部屋の用意ができるまで、この部屋に居るように言われた結果である。

 四人共、精霊とはいえ、疲れているのだと思い、そのままにしておくことにした。

 ベッドから少し離れ、通信機に呼び掛けた。

 「なんでおじゃる?」

 通話に出たのはクダラだった。話し相手をどう選ぶかなど、この部屋に行く間に操作方法を聞いていたのだ。

 「格納庫に行きたいんだけといいかな?」

 「いいでおじゃるよ」

 クダラの承諾を得た後、部屋を出てエレベーターに乗って、地下まで降りていった。

 「ようこそ守殿、如何したでおじゃる?」

 クダラの出迎えを受けた。

 「ちょっと気になることがあって来たんだ。俺達のロボットはどこだ?」

 「あそこでおじゃる」

 指差す先に見たのは、レッドエースではなく、砂糖に群がる蟻のようなドワーフの群だった。

 「思った通りだったな」

 危惧していた通りの光景を見て、怒鳴る気さえ起きなかった。

 「手は出さない約束じゃなかったか?」

 「約束通り手は出さずに見てるだけでおじゃる」

 「それだからってこの数は異常だろ」

 「仕方ないでおじゃろう。麿達のロボットとは製造方法がことなる超珍しい存在でドワーフの創造意欲を疼かせるのでおじゃるから」

 「あんたも疼いたのか?」

 「もちろんでおじゃる」

 言いながらリングから録画した映像を映して見せた。

 「そういやドワーフはなんでロボットなんて作ったんだ?」

 頭に浮かんだ疑問を口にする。

 「それなら麿の執務室に来るでおじゃる」

 「そうさせてもらおうかな」

 それからエレベーターとターレを使って移動した。

 クダラの執務室は、机と大画面のパネルにロボットの模型に加え、小さな製錬釜らしき物があるなどドワーフの部屋らしい内装だった。

 「お茶は飲むでおじゃるか?」

 「もらおうかな」

 「少し待つでおじゃる」

 クダラは、釜へ行くと手慣れた手付きで、何かを作ってからお茶の用意をしていった。

 「どうぞでおじゃる」

 「人間サイズカップなんてあるんだな」

 差し出されたのは、人間サイズカップに入ったお茶だったのだ。

 「さっき作ったのでおじゃるよ」

 「これをすぐに作れるなんてさすがはドワーフだな」

 「これくらい朝飯前でおじゃるよ。ロボットの開発に付いて聞きたいそうでおじゃるな」

 「そうだよ」

 「それなら資料映像を見た方が早いでおじゃる」

 パネルに映し出された映像によると、作業効率を上げるべく人型の土木機械が開発され、それらを発展させたのが軍用機とのことだった。

 「やっぱり機械を発展させると人型に行き着くんだな」

 「人に取って都合の良い形を追究した結果でおじゃる。他には何かあるでおじゃるか?」

 「魔法使いとドワーフの絶縁になった理由に付いて聞きたい」

 「何故聞きたいのでおじゃる? お主には関係無いことでおじゃろう」

 「マリルを魔法の世界に帰したいんだ。本当の親父さん達と暮らせるのは良いことだけどその代わりに元の世界に帰えれないのは辛いからな。だから理由を聞けば良い案が生まれるかもと思ってさ」

 「そういうことでおじゃるか。こうして大王とご息女を再会させたお主になら話してもよいでおじゃろう。痛ましい事故があったのでおじゃるよ」

 「事故って?」

 「新型エネルギー機関の暴走でおじゃる。元々ドワーフと魔法使いの仲は良好で飛行船など多くのものを協同開発してきてエネルギー機関もそうした経緯で開発していたのでおじゃったが暴走の結果開発施設のあった島を丸ごと吹き飛ばし双方に多大な犠牲者を出してしまい、責任の擦り合いの末に戦争回避の条件として絶縁することを妥協策としたのでおじゃる」

 「もう元には戻れないのか?」

 「犠牲者の遺族も生きている段階ではよほどのことが無い限り無理でおじゃろう」

 「そうか」

 そんな話を聞かされた後では、良い解決策は思い浮かばなかった。

 そこへ警報が鳴り響いた。

 

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