第2話 高松さん
「さきさんが亡くなった?いつですか?」
花壇の手入れをしていた高松順子の手は止まった。
彼女は少し前に疲れきった環境から脱出すべく退職していた。コールセンターは時間の都合もつきやすく、働きやすい環境と聞いたことがある。自身も始めたころは軽い気持ちではじめていた。それが持ち前の分析好きと夢中になる性質からスーパーバイザーとなり、家庭とのバランスに苦慮しながら走り続けてきた。彼女の仕事を引き継いだのが「たなかあさん」、つまり田中さきだった。
何もわからない状態で移動してきたことも、順子を慕っていることもあり、順子の退職にあたって少なからずダメージを受けている様子はうかがうことができた。
「もう・・・無理だよ~・・・」
本気とも冗談ともとれる言い方で小さな笑顔をみせてつぶやいていた。
「でも彼がついていてくれたら乗り越えられるかな。彼さえ戻ってくれれば」
同年代の高松には違和感があった。
彼とは・・・。
これが最後の会話となることになるとは信じらずにに目を移すと退職のときにみんなの連名で送られた胡蝶蘭がイキイキと咲いている。送別のカードを読むと少し能天気なさきの文字がおどっている。
そんなばかな…順子はかぶりを振った。
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