海王《ネプチューン》編
プロローグ 海王《ネプチューン》
いくつものエキゾーストノートが、闇夜に響いていた。
それは、4B11MIVECの
ここ箱根には週末という事もあって、大勢の
東京への出向も終わり、こうして自分の
九月も中旬の事だ。
「やっぱり
箱根湯本から芦ノ湖までを既に三往復して、洋志は改めて
首都高速での
だからこそ、感じるのだ。
知った
箱根湯本で一息ついてから、洋志は再び、愛車、マツダ・RX-7で国道を上り始めた。
しばらく走っていると後ろからパッシングを受けた。
「正気か?」
混雑している週末では、
「どこの
ルームミラーで車種を確認する。
「!?」
洋志は息を飲んだ。
エアダクトやエアロパーツを廃したサイドライン。ウイングのないリア。低いフロントのエアインテークには、
それは紛れもなくマセラティ・MC20だった。
「なんで
箱根では
なので、これは明らかに
それにも関わらずMC20は、どけ、とばかりにしつこくパッシングしてくる。
洋志はルームミラーに目を凝らした。ドライバズシートの他にサイドシートにも人影かがある。どうやら女連れらしい。
隣の彼女にいいところを見せたくてイキっている。洋志はそう判断した。
彼女にいない歴=年齢の洋志は、カッとなった。
「なら、乗ってやるよ!」
短くハーザードを点灯させる。それで
曲がりくねった国道を、二台はテールトゥノーズで疾走した。
「
だが、コーナーはこっちの方が上だとも洋志は思った。
いつ対向車が来るかわからないので、基本的に片側車線のみを走っている。なので、
そこをRX-7はドリフトで駆け抜けていった。対してMC20は、グリップ走行でクリアしている。
「これなら勝てる」
洋志は確信した。コーナーばかり国道では
大平谷のヘアピンをドリフトで駆け抜け、続く右の低速コーナーも洋志はドリフト状態で突入する。
すると、MC20はアウトから反対車線――インへとアプローチしてきた。
「なに!?」
不意を突かれた洋志はどうする事も出来ず、左車線をアウト・アウト・アウトのラインでクリアする。
それに対してMC20は理想的なアウト・イン・アウトで、コーナーを抜けた。
立ち上がりでMC20が前に出る。
「無茶しやがる」
洋志はMC20の無謀さに呆れながら、直ぐにテールへとついた。
さっきとは逆に順位で、二台はテールトゥノーズになって連続する中速コーナーを走って行く。
「そっちがその気なら……」
洋志は対向車の
だが、MC20はそれに素早く反応してブロックしてくる。
「あぶっ……!」
半ば強引に前を塞がれて、洋志はアクセルを緩めてなんとか回避した。
「なんてことしやがるだ!」
洋志は怒りにまかせて叫んだ。
普通、追い抜きを掛けられた場合、相手がノーズを突っ込めばそこでラインを譲るのが暗黙のルールになっていた。これは
だが、MC20はそれを無視して
冷静さを欠いた洋志は、なんとしてもMC20の前に出るんだと思った。
狙い目は宮ノ下の交差点。左の直角コーナーだ。
MC20がブレーキランプを点灯させた。そのタイミングで洋志は反対車線へと飛び出した。
ブレーキング競争でMC20の前に出る。そこからドリフトへと持ち込んだ。
RX-7は、アウトからMC20に被せるようにインへとアプローチする。
「勝った!」
洋志ははっきりと感じた。このまま立ち上がれば前に出られる、そう思った時、
”ドスッ!”
鈍い音がしてRX-7の車体がアウトへと吹っ飛んだ。
「!?」
とっさにカウンターを当てる。それでも横滑りは止まらず、RX-7は直進方向の道路へと飛び出す。このままでは旅館の入り口にぶつかってしまう。
「ちっ!」
慌てた洋志は、サイドブレーキを引いて車体をスピンさせた。
その横をMC20が意気揚々とコーナーを駆け抜けていく。
「ふーっ……」
なんとかRX-7を止めた洋志は、深く息をついた。それから急いで車を降りると車の左側に回り、ドアを見た。
案の定、そこには接触の痕があった。
MC20はドリフト状態のRX-7のサイドにぶつけてきたのだ。
「なんてことしやがるだ!」
洋志は憤慨した。
そこで洋志は、チームメンバーから聞いた話を思い出した。
曰く、最近、
「通り名は確か、
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