エピローグ 彼女の提案

 東京の東にある司馬家の屋敷。

 自室で、ワイシャツにパンツ姿の司馬しば麗華れいかは、ソファーに座りタブレットi padに映し出された報告書を読んでいた。

「今回も道路の封鎖、ご苦労様」

 最後まで読み終えてから、前に立つ御盾みたてあきらに声をかける。

「首都高の封鎖は大変だったでしょ?」

「いえ」

 本当は莫大な経費と人材を使ったのだが、それは奥目にも出さず晶は首を横に振った。

「オービスの方は?」

「警察に圧力を掛けてあります」

「そう」

 その言葉に満足した麗華は席を立った。

「では、私達も出かけましょうか」

「はい」

 部屋の出口に向かう麗華の手には跳ね馬のキーホルダーが握られていた。


 天道が首都高速を去って、二週間が過ぎた。

 沙織は、今日修理から上がってきたばかりのセナを環状線C1内回りで軽く流してから、神田橋の出口で降りて休憩していた。

 当初は激突クラッシュのダメージが心配されたが、モノコックや足回りは無傷でボディパネルの交換だけで済んだ。

 だから、こんな短期間で修理が済んだのだ。無論、計画四のもあったのだが。

「箱根ですか……」

 休憩しながら沙織はスマホで、地図を見ていた。

「速さなら東名なんでしょうけど、海沿いを走るのも面白そうですね……」

 そんな独り言を呟いた時、

”コンコン”

 いきなりサイドウインドウが叩かれた。沙織がスマホからウインドウに視線を移すと、見知った顔があった。

最高位の闘牛士フィグラさん?」

 そこには最高位の闘牛士フィグラこと紗理奈の顔があった。沙織は左ドアを跳ね上げさせた。

「こんなところにいたのか、探したぞ、銀の彗星シルバー・ザ・コメット

 それから車椅子をサイドシートから引っ張り出すと、手で身体をさえて滑るように乗り込む。

「本当に、車椅子なんだな」

 紗理奈は驚きを隠さずに言ったが、沙織は何故、その事を知っているのか疑問に思った。

「なにかご用ですか?」

 なので、若干の警戒心を持って、問いかける。

「実は紹介したい人がいるんだ」

 紗理奈の言葉に、それまで背中に隠れていた人影が前に出る。

Kwoクー?」

 それを見た沙織は、空子のグラビアアイドルとしての名を呟いた。

最速屋ケレリタスとしての通り名は白翼の天使ホワイトエンジェルだ」

「!?」

 沙織は、目を見張った。

「初めまして。蓮實空子です」

 名字を聞いて、沙織はなるほどと思った。白翼の天使ホワイトエンジェルコーナーの魔法使いウィザードは姉弟だったのだ。

「あなたがあたしと対戦バトルしたがってるって聞いて、来たんだけど……」

 空子はそこで後ろをチラッと気にした。

「車は違うけど、受けてくれる?」

「もちろんですわ」

 その問いに沙織は嬉しそうに頷いた。

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