第64話 蘇生
直接は無理でも間接的に心臓を動かす方法はある。
いまから生を取り戻すことができるかもしれない……。
俺は電磁気操作で、心臓を収縮させて動かすことにした。
秘書は動き出した心臓を見て、俺が何かの能力を使っていることに気づいた。
「一体何をして……? まさか生き返らせようと?」
「ああ、そのつもりだ……。とはいえ、一度失われた意識を取り戻させることはできないかもしれないがな。ふつう人間は時間がたつと植物状態と言って、身体の生理機能としての生を取り戻すことしかできないはずだが」
やはりというべきか、心臓を動かしても身体の循環器官が機能するだけで意識が戻るわけではなかった。
だが、脳には無意識化で身体の生理機能を維持する部分があるが、これを復活させることによって身体の生は維持することはできるのだ。
でも毒の影響で脳細胞も死んでいるかもしれない。
そうなれば意識もクソもない。
ここからが挑戦だろう。
電磁気操作で脳の部分へと働きかける。
いわゆる脳の電気パルスをやり取りさせて意識の再生を試みる。
脳はシナプスのやり取りを経て意識を統一している。
記憶との整合性や自我同一性などもすべて電気パルスのやり取りに収束する。
これは幽霊とか魂の話ではない。
なぜなら、人間の身体を通して意識が周囲を感受するのは、人間の機能的な部分に依存するからだ。
であるならば、俺の能力でも何とかなるかもしれないと思ったのだ。
「う~ん、これは……なんていうか不思議な感覚だ」
俺は電磁気操作をしながらそんな独り言が漏れた。
なんというか、このメイドさんは脳構造が単純な気がした。
脳の知識のない俺にどこを操作すれば意識が戻るのかなんとなくわかったのだ。
というよりも選択肢が少なすぎて、とりあえずしらみつぶしに操作ができると言い換えてもいいだろう。
俺は操作を続けながら、メイドに声をかける。
「おい、しっかりしろ。起きてくれ!」
頬を二回ほど叩いて反応を待ってみる。
すると、奇跡とも言うべきか、メイドの口がむにゃむにゃと動いていた。
何かを呟く声がだんだんとはっきりしてくる。
「……だから徹夜は……グはもう……」
訳のわからないことを言っているようだ。
「生き返った……のか?」
まるで寝言を口にしているメイドの姿を見て、秘書も頷く。
「どうやら、そのようですね……」
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