第47話 相棒
最悪だ。
皇帝が死んで、マルファーリスもいない、白竜も俺が倒してしまった。
公開はしていないが、なんてタイミングの悪い。
これでは様子見で別の強者をぶつけることもできない。
「傷を負ったのはひさしぶりだ。その能力……魔法じゃねえな?」
「そうだ……なぜわかる」
「魔法陣がないだろ? それに、俺に聞く攻撃なんてそうはない。俺に斬(き)る殴る系の攻撃効かねえからな」
「それはまた厄介だ……」
一度距離を取って、魔族の敵をマップとレーダーで全域を探査しながら後退する。
元いた世界ってことは、原爆や戦車、戦闘機といった現代兵器が効かなかったってことだ。
どうする? こいつは俺をロックオンしているから、下手にアルカリス王国へは近づけられない。
かといって、どうすれば倒せるのか……その境界線が見えてこない。
のろのろと空間魔法を使っている余裕も、ブラックホールの重力崩壊を待つ時間もないぞ。
基本的な能力が高くて魔法も使えて、不死。
そのうえ、限界まで挙げた動体視力でも動きを追えないときた。
全部レーダー頼りでなんとか防いだだけだ。
そうだ! こう言う時の相談役じゃないか。
俺は空間操作でラインを構築して、声を伝達するための振動を操作する。
糸電話みたいなものだから、相手の位置がわからないと無理だが。
『ミュースか?』
店番の子の名前だ。
『え? はい? え~とコウセイさん?』
おっかなびっくりといった声だ。
『そうだ。いまちょっと魔王と戦ってるんだが……。どうすればいい?』
『……え?』
いや突然のこのセリフにその反応はわかる、わかるんだが……。
男の拳をぎりぎりのところで察知して、刀で受け流す。
どうやら妖刀の方がオートで刀を動かしているようだ。
俺には剣技の習得とかないし、そんな受け流すとか細かい芸当は無理だからな。
『とりあえず状況を……』
相手が魔王で、魔族が集団で出現、不死身な上に支配でパワー無限大。
こんな感じで伝えた。
さすがのミュースも固まるかと思ったが、そうではなかった。
『すいません。もう少し細かく聞かせてもらえますか? 支配数は正確に何体ですか?』
『それはちょっとわからない……そのくらい多い。悪魔もたくさんいる』
『魔族の中には、悪魔族の上級悪魔がいるはずです。彼らは人間の世界では生きていないので光の索敵が効かない可能性があります。ですから、全範囲の攻撃をお願いします』
俺は即座に、手の中に水を生み出してそれを核分裂反応を起こして爆弾へと変えた。
周囲が水蒸気と熱波で覆われると、すぐ背後から何かが爆風を押し戻しているのがわかった。
『悪魔は物理的索敵が効きませんが、攻撃の余波に対してはきちんと防御を行います。世界は共有されますから。そこを空間ごと排除してください』
俺は言われたとおりに空間を指定して、そのまま空間を押しつぶして消滅させた。
物理的には意味のないことなのだが、最後の瞬間、何かの悲鳴が聞こえた。
『上級悪魔は数は多くありません。その方法で一通り排除できるはずです。あと、魔王ですが、人間の王の犠牲とは違って、支配しているものが目の前にいます。強さを支えている元を取り除けばただの魔族の一体になります』
なるほどな。
その方法があったか。
だがあの魔族たちにも不死体性を与えられているが……、どうすれば?
俺は上級悪魔を潰しながら、他の魔族を倒す手段を考える。
とりあえず隕石や鉄柱で比較的大きい魔族を攻撃していく。
「おいおい、俺を忘れるなよ?」
そこで、妖刀が男の攻撃を刃で防ぐ。
「悪いな。俺は一人じゃないんだ」
そう、この妖刀がいる。
こいつは、俺の相棒のように、別の動きで魔王を抑え込んでいる。
「ふっ、面白いぜお前」
なぜか魔王の男は笑っていた。
そこで俺が前から考えていた攻撃を試すことにした。
『ミュース、光線は収束させて制御すればレーザーを撃(う)つのは可能なんだよな?』
『はい、可能です。操作能力だけだと無理ですが、コウセイさんの能力は「強制」も可能だと言う話でしたね。でしたら、光を強引に曲げてエネルギーを蓄積させることは可能です』
純粋な光学高エネルギーレーザーは光エネルギーを増幅して指向性を持たせなければならない。
それを持ち運び感覚で武器にできる現代兵器はないが、能力で代替してエネルギーそれを抑え込めるというわけだ。
それに……、
ミュースは魔族への対抗策であることも付け加える。
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