第42話 逃げ遅れ

 俺たちは魔王軍の敵を警戒しながら進むと、アルカリス王国の領土へとはいった。


 そして、ちょうど5万ほどの軍勢の真上に滞空した。


 残りの10万はもう少し後方にいるようだ。

 ちょうどひし形になるように4つに分けて陣形を組んでいるらしい。


 俺はとりあえず、不死がどの程度かを確認するために、石を召喚・転移して一体のムカデ型の魔物へと石を叩きこんだ。数発繰り返すと脚や胴体など体がバラバラになった。


「よし……、こいつらマルファーリスほど万能の不死じゃないな」

「お兄ちゃん、どういうことです?」

「ああ、あのマルファールスって化け物は粉々にしても一瞬で身体が元に戻っていた」

「それはすごい再生力ですね……えへへ」


 モニカは苦笑いをしていた。


「だが、身体が吹き飛んで再生しないのであれば方法はある。とりあえず、魔王のところに行くまで足を止められればいいんだ。鉄柱を落として粉々に吹き飛ばせばいい」


 さすがに隕石を何発も落としたりして必要以上の威力を与えると、世界の方が壊れてしまうかもしれないから止めておく。



 俺は上空に数十もの直径5メートル以上ある大型鉄柱を上空に浮かべて、一気に落とした。


「お兄ちゃん……大胆ですね」


 モニカの友達のフィーも興味深そうにその様子を見ていた。


「こんどはなにするんスか? あれを落としちゃったり?」


「まあ、そんなところだ」


 中心部を狙って落としたいくつもの鉄柱の先が赤熱化して、一気に敵軍の中央へと落下していく。


 だが、その地上まであと少しのところで、大きな魔法陣が展開された。

 鉄柱は、その全てが魔法陣の壁に阻まれて動きを止めた。


「なんだ? 何が起こっている?」


 誰かが魔法障壁を張ったようだ。

 

「これ、魔法障壁っスね。ふつうは数十人規模で『王クラス』が発動する魔法じゃないっすか?」


 確かに魔法の障壁だ。

 通常の物理の壁であの威力を防げるわけがない。


「そうみたいだな……。そういえば、たびたび聞くんだが、その『王クラス』って他の奴と何か違うのか?」

「それは、その人が王クラ……」


 そこで話の途中にモニカが叫んだ。


「あそこ! たぶん村人でしょう。一人逃げ遅れた女の子がいます」

「は?」


 指のさされた方を見ると、女の子がいた。光を使って拡大したら、確かに背が小さくてモニカと同い年くらいの子だった。

 長い黒髪を腰のあたりでまとめていて、赤と黒の刺繍のあるワンピース。手には護身用だろうか、黒い木の棒を持っていた。


 出会ったばかりのモニカと雰囲気が似ている。


「お兄ちゃん……」


 心配そうな声を出すモニカ。

 たぶん、自分とどこか似ているから、その子とモニカ自身を重ねているのだろう。


「仕方ない……」


 俺はため息をついて、風の操作でモキュを女の子の傍へと下降させた。


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