第12話:山賊退治
俺はモキュの大きな背中に乗って、山へと飛んで向かうことにした。
マップを出して山賊の位置を確認し、現在(いま)はその真上で旋回している。
ステータスを出した時に、モキュのことが追加されていることに気づいた。
『所有物(ペット);
モキュ(♀)Lv.4
ビッグハムスター(種族)
固有種スキル:鳴き声
加速(ダッシュ)
噛みつき』
一応、俺の所有物(ペット)となっていた。
人間同様に動物にもステータスがあるのか……。固有種のスキルもあるらしい。
所有物(ペット)扱いなのは、一緒にいることをモキュがすでに同意してくれてるのかもしれない。
「Lv.4とか、なかなか森で大変な目にあってきたみたいだな……」
「キュ~~~」
悲しそうな鳴き声を上げるモキュ。
どうやら、村で魔物と間違えられたことといい、元いた森ですごい大変な目にあってきたみたいだ。
うんうん。もう大丈夫だぞ。
俺はモキュの頭を撫でながら(ついでにモフモフな耳も)、下の様子を観察していた。
下降気流によってゆっくりと地面に降り立った俺は、周囲を見回して洞穴を見つけた。
上から人影が見えないと思ったら、どうも洞窟の中にアジトを作っているようだ。
モキュは俺の後ろへと回り、洞窟の中をついて来る。
もちろん、洞窟のすぐ入ったところには見張り役の山賊の男がいて、俺の姿はすぐに発見された。
「おい、お前なに勝手に入ってきてやがる!」
山賊の男は腰からサーベルを抜いた。
「まずは一人……」
身体に石をたたき込んで、「ガっ!」とうめき声を上げた後男はバタりと倒れた。
洞窟の中にはマップで確認しただけでも全部で60人近く人がいる。
まずはその中の
『山賊たちを殲滅』→『攫われた村の若い娘の救出』→『次の魔物討伐に移行』
という予定だ。
攫われた若い娘たちにはきっちりと、俺が山賊を始末したことの証人になってもらう。
出てきた先から石をたたき込んで始末した数が15人になったところで、洞窟内にある大きな空間に出た。
そこでは、盗賊たちの呻き声や悲鳴を聞いた盗賊たちが俺を囲んでいた。剣や槍などを持った盗賊がざっと15人はいる。
姿は、落ち武者みたいにボロボロの衣服を纏っている。
武器は最低限のものを用意しているのか、折れた矢ということはないようだ。
とはいえ、動揺したりはしない。
たとえ、元の世界の全ての兵力を目の前に集めてきたとしても、いまの俺が負けることはないだろう。
どうやら隅っこに数人の若い娘たちと、見えない他の娘たちはマップを見るとこの奥にいるようだ。
視線を盗賊の方へと再び向けると、ものすごい警戒されていた。
いや、俺ではなくモキュが……。
そういえば、このとこを忘れていた。
どうやらまた、魔物扱いされてるようだ。
俺が一歩だけ歩いて、それにモキュも続く。
「く、来るなっ!」
弓を持った盗賊の一人が無造作に矢をモキュに放った。
「キュッ!」
カキン。
物理操作した石で矢を砕いてやった。
だが、俺は怯(おび)えるモキュを見て、プチンと頭の中から何かがはじける音がした。
「やりやがったな……」
ドスのきいた声で俺は呟くと、召喚できるだけの小石を空中に浮かべ、すべての石をそいつへとたたきこんだ。
身体の原型が残らないほどボロボロになって、地面の赤黒いシミに変った。
「な、なんなんだテメーは!」
盗賊はわけもわからず叫んだ。
そこで中央から大柄の男が姿を現した。
一見、身なりが他の奴と違って冒険者風に見えるが、ここにいるということは山賊の仲間だろう。
スキンヘッドで筋肉質のいいガタイをしている。
「おい、あんちゃん。ずいぶんとヒドいことやってくれたみたいじゃねえか」
「ん? お前たちはすでに死刑が確定してるんだ。モキュの餌代と俺のために死んでくれ」
「は? 何言ってんのかさっぱりだわ」
「わかってもらわなくていい」
「ほう、そうか。じゃあ……」
冒険者風の男は、手をこちらにかざすと、水魔法を唱えた。
「――水球(ウォーターボール)!」
そして、手にした長剣で斬りかかってくる。
俺はまず水魔法を水流操作を使って、ただの水しぶきに変えて無力化した。
そして、男が斬りかかってきた剣を俺は片手でつかんだ。
「は、離しやがれ! くそっ、動かねぇ……」
物質操作・強制で、完全に『剣』の支配権を奪っているんだから当たり前だ。
「これならまだ……騎士の男の方が強かったぞ?」
俺はそのまま男へと石をたたき込んで息の根を止めた。
「おっ、お頭(かしら)が……」
一人の盗賊が呟くのが聞こえた。
どうもこのスキンヘッド、山賊のボスだったらしい。
にしても水魔法を使っていたな……。
村に雇われたのは、水魔法を使える冒険者だったという。
こいつ姿も冒険者っぽいし。
もしかすると、もしかするかもしれない。
俺は改めて周囲を見回す。
モキュが涙目で俺に怖いと言っている気がした。(脳内補正)
とりあえず、囲んでいる奴らには、
「お前ら……モキュが怖がってるだろ!」
山賊たちには石をありったけぶち込んでやった。
悲鳴を残して他の残党の奴らも息絶えた。
危険がなくなって安堵したモキュの頬を俺は撫でてやった。
まったく、モキュを攻撃するとか、なんて奴らだ。
その後、地面に倒れている俺と同い年ぐらいの娘たちに声をかける。
「おい、大丈夫か?」
だが、地面で死んだような目の娘たちからは、あまりはっきりとした応答はなかった。
ああ、こりゃダメだな。精神が壊れかけてる。
こんなところに放置されているということは、何されたかは想像に難くない。
仕方なく数名の娘を一か所に座らせた。
その後、奥にいた手足を縛られた若い娘たちも、縄を切って歩かせ、先ほどの娘たちと同じ場所へ集めることにした。
「あ、あなた様は、一体……」
「助かるのね、私たち……」
「よかった……」
泣いたりはしなかったものの、精神的にはすでにギリギリだったようだ。
助けに来たと教えた途端、へたり込む者や互いに安堵の声を漏らす娘たち。
歳が一番小さい子で八歳くらい、上は二十代くらいの女性もいた。
奥で捕まっていた若い娘たちが、意思薄弱な娘たちに肩を貸して、一緒に洞窟から出ることとなった。
出口から外へ出ると、一人の20代くらいの女性が声をかけてきた。
「あの……助けていただいて、本当にありがとうございます。あなた様のお名前は?」
「俺はコウセイ、こっちがモキュだ」
初めはモキュに驚いていたが、ビッグハムスターだと知ると、皆がその大きさに珍しがっていた。
「もし村に戻ったら、必ず何かお礼を……」
「いや、お礼は別にいらない」
別に助けた出した人から何か物が欲しくてしたんじゃない。
俺が欲しいのは一つだけ。
人々の称賛だ。
いや餌代もあるから二つか。
「……なんと心の広い方なんでしょう」
なんかきらきらした目で見られるのは恥ずかしいな。
こんな風に見られたことがなかったから余計だ。変に顔がゆるんでしまうではないか。
俺は必死に平静な表情をつくった。
やっぱ不意打ちはあかんね。
それと、この女性はとてもきれいな人だったが、20代半ばと年齢的に厳しいから残念。
てか、夫とかいる年齢だろうな。
洞窟から帰り道はわかるということなので、俺はそのまま娘たちを見送った。
今度は魔物の群れを排除するために、街道へと向かうことにした。
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