第13話:角

 モキュの背に乗って今度は街道近くに住み着いた魔物の群れを討伐することにした。

 俺は木々や草花の生える草原の辺りに街道らしき石造りの大きな道を発見した。

 そのまま下降して道の真中へと降り立つ。

 すると、

 

 ガルルルル……。


 さっそく茂みから獲物を見つけたであろう魔物、黒い狼のような奴らが鳴き声をあげた。

 さて、向こうは俺たちを小さい人間とデカい動物だと思っているかもしれないが。

 むしろ、こちらからすれば、お前たちのような雑魚の魔物こそ獲物なのだ。


「じゃあ、モキュ。ちょっと戦かってみるか?」

「キュ?」

「ああ、せっかくスキルがあるんだ。あんな雑魚に獲物扱いされないようにな」

「キュ、キュ~」


 少し怖がっているのか、あんまり乗り気じゃないみたいだ。


「モキュのほうが身体は大きいんだ。加速スキルでタックルすればいいかもしれない」

「キュッ」

 

 ちょっとやってみる?といった感じにモキュは鳴いて魔物を見据えた。

 

「いざとなったら、俺が守ってやる」


 そして、周囲を取り囲むように、だんだんと円を小さくする狼たち。


 その中の一匹が、モキュへと飛び付いた。


「キュッ!」


 だが、反対にモキュが加速(ダッシュ)して頭突きを狼の頭へと叩きこんだ。


「キャンッ」


 体重差と加速の威力で、狼は茂みの方へと飛んで行った。

 倒せたわけではないが、ちゃんと反撃できたようだ。

 

「よし、モキュ。もっと加速(ダッシュ)してタックルだ!」


 ダンッ!

 と地面を蹴ったモキュが、数頭の狼へと突っ込んだ。

 

 どさっ、どさっ、と狼たちが地面に転がる。

 

 ガルルルル……。


 タックルだけでは絶命させられないようで、倒れた狼が唸って立ちあがってきた。

 

 決定打に欠けるな……。何かないものか?

 そうだ、モキュに武装させればいいのか。


 俺は物理召喚で、モキュの背中に鋼鉄でできた鎧と兜を召喚、物理操作で生成した。

 頭には長くて巨大な角も付けておいた。

 これで、モキュのレベルを上げることができるはずだ。


 ここまで戦闘をした感じだと、魔物は打撃じゃなかなか死なない。

 だからあれで串刺しにすれば十分に倒せるはずだ。

 なんか動物に武装とか、ちょっとカッコ良く見える。


 俺はモキュ(戦闘形態)に向かって指示を出す。


「よし、行けモキュ!」

「キュッ!」


 そして、狼の一匹に加速(ダッシュ)して、その頭から心臓にかけて、角が肉をえぐった。

 どさり。

 黒い血が流れ出し、狼の魔物は息絶えた。


 お、倒した!

 まだまだいる狼に対して、モキュは次々に狼たちを巨大な角の餌食にしていった。


「おお、俺の補助なしで倒せたじゃないか」


 モキュの武装を解除して 頭をなでてやると嬉しそうに鳴いた。


「キュ~~~」


 ああ、そういえば。

 レベル上がってるかな?

 すると、モキュのレベルが2つ、スキルが一つ上がっていた。

 『モキュ(♀)Lv.6(↑Lv.4)/~(略)~/加速(ダッシュ)スキルLv.5(↑Lv.4)/~』になっていた。

 

 いい感じだ。


 その時だ。

 俺は茂みの中から槍が飛んでくるのが見えて、石ころで迎撃した。

 ガキンッ、と弾かれた大きな槍は、地面へと突き刺さった。

 ちょっと、驚いた。

 突然の攻撃もそうだが、火を纏うほどに高速の石ころの迎撃で槍が壊れなかったのだ。


「誰だ?」


 モキュは、茂みの中の存在に気づいていたのか、すでにそちらを向いていた。


 ガサガサ。


 森から出てきたのは一人の騎士風の正装をまとった金髪の青年だった。

 同い年ぐらいだが、背丈は向こうの方が高そうだ。それと、いかにもモテそうな顔をしている。

 パチパチと拍手しながら、笑みを浮かべて近くまでいてきた。


「すごいな……」

「質問に答えろ、お前は誰だ?」


 彼は何も答えずに、パチンっ、と指を鳴らした。


 ガサガサガサ……。


 すると青年の背後からは、ダンジョンの中で見勝てたような魔物が無数に出てきた。

 黒イノシシ、鷹、蛇、巨大な幼虫がそうだ。

 カブトムシのような魔物はここではじめて見た。

 

「そうか、これが答えというわけか……」


 俺の言葉ににやりと笑いかける青年。

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