第5話 高校二年生 7月 恋人嫁姉妹な神様と妄想旅行するなら三姉妹として

 葉月はつきを家族に迎えてから約三ヶ月が過ぎた。


 今日も自宅に帰ったらすぐに洗濯機を回す。

 最近は葉月が教えてくれた通り、洗濯機に入れる前に一着一着確認を入れることも忘れない。

 ひどい汚れがないか、ポケットに物が入ってないか。ワイシャツの首周り、袖口、それから靴下。汚れていたら軽く下洗いをすると出来上がりの白さが違う。シャツのボタンや、ズボンの裾がほつれていないかも確認する。針や糸を使うのは小学校以来だったけど、やっているうちに簡単なものなら直せるようになった。

 こんな小さなことでも、知っているのと知らないのとでは大違いだ。ものを大事に、きれいに使う術を、葉月が思い出させてくれた。

「小学校で一度習っていたからできるでしょ?」

 葉月は優しいように見えて実はスパルタだった。でも、

「遥お兄ちゃんならできるはず! ほら、ここなんてきれいになってるでしょ?」

 と、ほめ上手でもある。全く知らないことはできないのだから、一度やったことを思い出させてくれた、ということだ。そして最後はちゃんとキスで癒やしてくれる。

 おかげで身だしなみはいつもばっちりだ。

 柔軟剤は二人から指示されることが多くなり、その通り使うことになっている。今日は海沙お姉ちゃん好みでこの柔軟剤、今度は葉月の好みでこっちの柔軟剤、と使い分ける。ちなみに海沙お姉ちゃんはマリン系の香り、葉月はシトラス系の香りを好んで使う。俺の好みは? と聞くと、「『そんなものないでしょ』」と、仲よく声を合わせて言う。

 実は俺の洗濯するものの中に、二人の物がこっそり入れられている……らしい。

 俺の目には見えないけど、服とか、専用ネットに入れられた下着とか。

 それを俺が丁寧に汚れをチェックし、ほつれや痛み具合をチェックし、場合によっては俺がクンカスッフして好きな人を想う気持ちをじっくり味わい、何かをこすりつけ、最終的には綺麗にたたんで、ブラとショーツの柄を合わせ、二人の専用タンスに仕舞うところまでを想像して楽しんでいるそうだ。クンカスッフって何だよ、と聞くと、「まずは軽くクンと軽く息を吸い込み、カッと手早く吐き出すことで、おおまかな匂いを急いで味わう。そしてスーッと深く肺の奥まで吸い込み、フーッとじっくり鼻をから息を吐き出すことで、匂いを深く、じっくりと二度味わう」ものらしい。

「好きな人が着た服の匂いを楽しめるのは洗う人の役得だ。それに洗う前ならちょっと汚してから洗ってもばれないし。どう汚すかって? そういうことを女の子に言わせるのはマナー違反だな。」

 そりゃあ、下着の匂いを楽しみたいけど、実際にはわからないし……。

「遥の気合いが足りないからだ!」

 そんな無茶な……。

 海沙お姉ちゃんはたまに横暴なことを言う。きれいな顔をして実は隠れ体育会系だ。

 考えてみれば、「他人の服を一緒に洗濯機に入れる」というのはかなり親しい間柄でしかできない。

 同棲する恋人同士や、夫婦、家族。よほど相手に心を許せる関係性でないと心情的に無理。

 俺だって親の洗濯物は別にしているくらいだ。

 それが二人と一緒であれば許せてしまう。

 いつの間にかこんなに深く心を許して付き合うようになっていたんだ。

 いいよ、海沙お姉ちゃん、葉月。洗濯物をじゃんじゃん持ってきて。

 でも、俺もクンカスッフはさせてもらうからね?

「本当にそれだけでいいの?

 敏感なところにこすりつけたり、舌でも味わってみたいんでしょ? 他にもあるんじゃない?」

 くっ……何でそれを!

「遥お兄ちゃん? そういうことを許してくれる相手は貴重だよ?」

「私が遥を好きだからクンカスッフすることを許してあげるんだからね? ありがたく思いなさい?」

 そんな冗談を言いながら、三人で笑いあう。


「本当の家族」であれば当たり前の、こんな会話のやり取りができる関係。

 俺には一生、手に入らないと思っていた。

 でも海沙お姉ちゃんと葉月は本当に俺の家族になってくれたのだ。

 海沙お姉ちゃんは疲れた時でも元気をくれる。笑わせてくれる。背中をたたいてくれる。

 葉月は落ち込んだ時には癒してくれる。慰めてくれる。一休みして、もう一度頑張ろうという気にさせてくれる。

 正反対に見える二人だけど、どちらも俺の大切な家族だ。二人のいない生活なんてもう考えられないほど俺の心は姉妹に侵されてしまったようだ。


 洗濯の段取りが終わったから夕飯の支度にかかるか。

 特に食べたいものが決まっていない場合は、冷蔵庫の残り食材とスーパーの安売りの品で食べるものを考える。わざわざ夕方の割引シールが貼られるような時間を狙ってスーパーに行くほどではないが、それでも親に与えられたお金は無尽蔵にあるわけではないから、値段を考えて買う。食材の量の調整は夕飯以外にも、悪くなりそうな食材がある場合は弁当用の作り置きを作ることで対処する。世間ではお弁当男子とか草食系男子とか言われるけど、俺はただ肉食系に走る余裕がないだけだ。

 今日はひき肉と玉ねぎがあったな。ハンバーグにしよう。他にはコールスローとスープがあればいいか。

 最初にお米を研いで炊飯器にセット。これで一つ片付いた。

 次にハンバーグ用に玉ねぎをみじん切りにする。包丁はちゃんと研いであるから目にしみることはない。念のために換気扇を回すのも忘れずに。

 コールスロー用のキャベツと人参の千切りに、玉ねぎのスライス。野菜に長さがあったほうが食べやすい。太さを揃えるのも忘れてはいけない。食感にも、ドレッシングの絡まり具合にも差が出てくるからだ。

 野菜の水分を抜いてしんなりさせるために濃い目の塩水につけて放置。その間にハンバーグの下ごしらえだ。

 玉ねぎを炒める。甘みを引き出し、水分を飛ばし、少し香ばしさを出す。この段階でバターとコンソメパウダーで下味をつけておく。

 炒めた玉ねぎを冷ましている間に、ひき肉に、パン粉を牛乳で湿らせたもの、卵、香辛料、調味料を混ぜ、ひたすら捏ねる。そこに冷ました玉ねぎを入れてさらに捏ね、成形して、冷蔵庫で30分程度寝かせる。

 ハンバーグはわざと多めに作って焼くことにする。姉妹へのお供え物ではなく、明日か明後日の夜のパスタにするためだ。パスタソースはフライパンで小麦粉、バター、牛乳のソースを作って、ハンバーグを崩して混ぜる。キノコがあればなおよい。沸騰させ、適宜味を整えて、茹で上がったパスタを入れて軽く混ぜて出来上がり。ハンバーグの肉汁とキノコで味に深みが出る。

 その間にコールスローだ。塩水から出した野菜をこれでもかと水分を絞る。ドレッシングと合わせたときにまた少し水分が出るからだ。

 ドレッシングは簡単に、マヨネーズとレモン汁、コクを出すために少し砂糖を入れるのがポイントだ。

 これでコールスローは完成。

 料理と同時に洗い物も片付けていく。長い間やっていると自然と体が動くようになった。

 コールスローを冷蔵庫に入れるのと同時にハンバーグを取り出す。30分冷やすのは肉を一旦落ち着かせるためだ。捏ねてすぐ焼くと肉汁が流れてパサパサになってしまう。

 フライパンを温め始めるのと同時にオーブンを200度に予熱。フライパンでハンバーグに焼き色を付けたらそのままオーブンで10分。中まで火を通せば出来上がりだ。これでジューシーなふっくらしたハンバーグが出来上がる。

 焼きあがったハンバーグは少し置いておくのがコツだ。焼き上がりをそのまま食べようとすると肉汁が飛び散ってしまうこともある。せっかくうまく焼けても台無しになってしまう。


 空いた時間を見つけてコンソメスープの準備を始める。コクを出すのにベーコンを入れるか。冷蔵庫に入っていた半端な野菜を炒めてブイヨンを投入。これでスープは出来上がり。

 ハンバーグが落ち着くのを待つ間にワイシャツにアイロンをピシッとかけると、終わる頃には食事の時間だ。

 手際よく家事をするのがルーティンワークと化している。


 親がいるときも飯は俺の担当。おふくろの味? バカバカしい。おふくろは典型的なアレンジャーだ。料理させると、ひどいことになる。

 たとえば、ウスターソースを使う料理に、こっちのほうがおいしそうだ、と言って出来上がりも考えずにオイスターソースを使うくらいのアレンジャーだ。

 その上、味見もしない。つまり食べられるものを作る能力がないのだ。

 親父はおふくろの家事能力の無さは諦めているみたいだ。その上、自分では縦のものを横にもしないから、必然的に家事全般は俺の仕事だ。

 部活をしないのはそのためもある。無趣味なわけではない。家でやることがありすぎるのだ。


 両親が家を空けていることが多いので一人で過ごす食卓がほとんどだ。だけど、お姉ちゃんと葉月とはいつも一緒にいるから、三人で話しながら食べることになる。

「遥、すごいじゃない。こんなのも作れるんだ。」

「遥お兄ちゃんのお嫁さんになる人間の女の子、幸せだよね。こんな料理食べさせてもらえるんだもん。」

 どういうことだ? まさか俺が家事をする前提なのか?

 俺の彼女になる子もアレンジャーの素質ありなのか?

 一般論だよね、うん。でも、やっぱりアレンジャーは勘弁だ。


 よし。いつも通り、我ながらよくできた。

 焦げ付きもなく、焼き目もうまく付いたし、中までちゃんと火が通ってる。

 付け合せも上出来、スープも完璧。特にハンバーグは一口食べてみると肉汁が溢れ出してくる。自画自賛だけど、誰にでも自慢できる出来だ。

 食事のバランスは大事だ。海沙お姉ちゃんに言われてから一層気をつけるようになった。

「料理って大切なんだよ。人間の体は食べ物でできてるんだから、バランス良く何でも食べないと。それに、うまくすると一発で人の心をつかめるんだから、大事な特技にもなるからな。

 目で楽しむ、香りで楽しむ、味で楽しむ。他にも温度や舌触りがある。温かいほうが美味しいもの、冷たいほうが美味しいもの、いろいろあるでしょ。

 相手がどういうものが好きなのか、どうしたら喜んでくれるか、相手がおいしそうに食べて、にっこりしている顔を想像しながら作るのも楽しいよ? せっかく一人暮らしに近いんだし、そういう練習をしてみてもいいかもね。」


 それからは海沙お姉ちゃんや、葉月がやってきてからは葉月のことも意識しながら、料理をするようになった。相手は女性だ、野菜はちゃんと取ったほうがいい。骨のためにはカルシウムも必要だし、つるつるお肌のためにはコラーゲン。

 相手を思って、相手のことを考えて作るというのはこういうことなんだ。自分の好みだけで作ってるのであればレパートリーも増えなかっただろう。毎日コンビニ弁当でも気にしなかったはずだ。


「遥お兄ちゃんの料理っておいしいよね。塩加減もちょうどいいし、スパイスも程よく効いてるし。いつもそうだけど、このハンバーグもすっごくおいしいよ。人間のお嫁さんと一緒に台所に立つのも楽しそう。」

 ちょっと待て。前々から気になってたけど、何で味がわかるんだ?

「それは……。ねえ、お姉ちゃん?」

「おいおい、マジで気付いていなかったのか?

 実は、私達は遥の感覚を共有することができるんだ。」

 感覚を共有?

「遥が何をどう感じているか。たとえば、ハンバーグの出来がよかったとか、今日のエロ本を読んでどう感じたか、とか、要は五感と思考だな。そういうのはしっかり共有できる。もっといえば、遥の脳の中身に自由にアクセスできる。だからエロ本のシチュエーションを再現したり発展させたりできるんだ。私たちに嘘をつけないというのも、こういう理由だ。

 そして私達は人の無意識に干渉できる。遥が望むか受け入れる意志があれば、もしくは私達が強く要求すれば、干渉レベルを上げることもできるんだ。いわゆる憑依状態だな。

 遥以外の人にも多少は干渉できるが、やはり深い関係の遥相手だとやりやすさがぜんぜん違う。もちろん、やりすぎは好ましくないので、干渉は程々に。こんなことができる、って広まりすぎると私達が困るんで、ネタだと思われているくらいが丁度いいんだ。

 本当に今まで不思議に思わなかった?」

 思わなかった。そういうことだったのか。

「だったらテスト勉強なんていらないじゃないか、って?

 ズルは遥の成長によくないからやらないのも事実だけど、その前に遥の頭に全くない知識は使えないんだよね。

 遥が聞いたことのない言語で質問された時、仮に私達が答え方を知っていたとして、それを遥の脳に伝えたとしても、遥はそれを理解して発音することはできないんだ。単語や語句くらいならなんとかなるかもしれないけど、それが限界。ひらめきとしてアイディアをプレゼントすることはできても、理解できなかったら無駄になってしまう。せっかく数学の超難問の証明の答えを教えても、遥がそれを文字に起こして発表することは無理だろうね。きっかけをなんとか作って、むりやりそのヒントに気づかせることもできるけど、凝り固まった脳が相手だとこの方法も無理。干渉が妨害されちゃうんだ。

 干渉って万能なようでそうじゃないんだよね。少なくても、遥が私達を信頼し、必要ならば干渉を受け入れる心の準備ができていないと、効果が落ちてしまう。助けられるものも助けられなくなる。」

 いろいろ大変なんだな。


 夕飯を食べた後、姉妹がご都合主義的に遠藤に調達させているエロ本を開く。遠藤が知らないうちにひっそりと干渉しているのだろうから、気づかれていないので妨害されないのだろな。本人のエロ本の好みと反しなければ干渉を拒否されないだろうし。実にやり手な姉妹だ。

 今日のエロ漫画は家庭教師ものだ。


 年上いとこ姉妹のところに勉強を習いに行く劣等生な男の子のトシユキに、

「ちょっとー。 成績上がらないと私達クビになっちゃうじゃない?」

「お小遣い貰えないし、この子で遊べなくなるし、つまらないよねー?」

「もしかして私達が気になって勉強できないのかな?」

「そっかぁ。

 あ、知ってた? 男の子って性欲溜まると何も頭に入らないんだって。」

 と愚痴るいとこ姉妹、チハルとチアキ。

 赤いチューブトップにデニムのもも丈スカートのチハルと、ダボダボの破れたデザインのTシャツにホットパンツのチアキ。二人の体のラインが嫌でも目に入って来る。その上、この子「で」遊べなくなるという言葉でトシユキが赤くなる。


「じゃあ、まずは彼をすっきりさせないとね。」

「でも、男の子って力強いから弱らせないと。」

 最初は姉のチハルが後ろからトシユキの両腕を拘束し妹チアキがくすぐる刑。

 チアキが両足の上に座っているのでトシユキは足をばたつかせて蹴飛ばすわけにもいかず、下の方から脇を責められるのを必死に堪えている。チアキを見るとチラチラと深い谷間が覗く。

「うーん。まだダメみたいだよ。」

「次は私が彼を抑えておくから、姉貴がどうにかしなさいよね。」

 だいぶ弱ったトシユキを無理やり仰向けに寝かせ、チアキが有無を言わせずトシユキの股間の上に跨がって女の子座りする。彼は真っ赤になるが、チハルが彼の腕をバンザイさせ、その上に女の子座りしてトシユキの動きを完全に封じ、彼の脇をくすぐる。チハルの内腿が直接トシユキの腕に当たる。

 抵抗していたトシユキの反応が弱くなると、

「少しは勉強する気になった?」

 そうチアキが問うが、トシユキは返事ができないくらい意識が遠のいている。

「あーあ、今日は勉強どころじゃないね。せっかくだから、時間いっぱいまでいじめるか。」

 とチハルが冷徹に宣告するところで漫画が終わる。

 あとは想像しろ、つまり読者にとっては「寸止め」といったところか。


「なにこれ? 遥お兄ちゃんもこれくらいじゃ満足できないよね。作者もここで逃げるなんて最低。では夜を楽しみにしていてね。」

 海沙お姉ちゃんか葉月が必ずエロ漫画を叩く。エロ漫画の作者よりぬるいエロは許せない、と必ず意地を張る。そして、その日の夜は姉妹が思いついたもっと過激なプレイを、俺を使って仲良く堪能する。昔では考えられないくらい、楽しい日常である。


 ◆ ◆ ◆


「勉強教えてほしかったら、まずはちゃんとあいさつしないとね。」

「そうそう。よろしくお願いします、って、気持ちのこもったディープキスから始めないとね。遥、まずはお姉ちゃんにキスしなさい。」

 姉妹の服装はそれぞれエロ本のチハルとチアキのイメージ。ただ、葉月が着ているTシャツは破れていない。さすがに下品すぎるから変えたのかな? ホットパンツと同じ水色で、ゆったりしていて、胸元が大きく開いていて、なぜか乳首の場所が盛り上がっている。葉月、ブラしていないのか!

 なお、俺の服装は実際に寝るときに着ている、野暮なパジャマ姿だ。俺の服を考えるより姉妹の服を考えるのが楽しいので、特に指定がない限り普段からそうさせてもらっている。

 海沙お姉ちゃんが迫ってくる。

 頭がふらっとなる、激しいけど気持ちいいキス。海沙お姉ちゃんの弟である前に、恋人であることを意識させられる。そういえば、海沙お姉ちゃんは俺のお嫁さん、という設定もあったっけ。

「私に求められる喜びが伝わってくる、こってりと濃厚な味だ。

 じゃ、次は葉月の番。」

 海沙お姉ちゃんのキスは暴力的で、好きという気持ちを激しくぶつけてくる。一方、葉月のキスは優しく、癒やし、包み込んでくれる感じ。全然違うキスだけど、どちらも好きだ。

「ああ、美味しかった。

 とろけるような優しくて甘い味だね。

 遥お兄ちゃん、疲れた時にはいつでも葉月のところに来てね。

 私は遥お兄ちゃんの元気な顔が見たいから、そのためなら遥お兄ちゃんがいくら私に甘えてきても嫌がらないからね。大好きな遥お兄ちゃんの心のケアは、私の大事な仕事なんだから。」

 葉月、本当にいいの?

「いいんだよ。その代わり、私も遥お兄ちゃんに甘えていい?」

 いいよ。

「ありがとう、遥お兄ちゃん?」

 葉月が前から俺に絡みついてくる。いつものことだけど、心が暖かくなる気がする。

「一人じゃないって、いいでしょ?」

 葉月が俺をがっちり抱いている。葉月の控えめな感じがしつつも押しが強い優しさが気持ちいい。

「葉月? 遥を最初に捕まえたのは私なんだからね? 何、二人で盛り上がってるのよ?」

「ごめん、海沙お姉ちゃん。だって遥お兄ちゃんがあんまりかわいいから。」

「葉月? 今から男の子のかわいがり方を見せてあげるから、ちゃんと覚えておくように。」

「はーい、海沙お姉ちゃん!」

「遥、仰向けに寝なさい。」

 仰向けに転がる俺。布団の中の俺と同じ姿勢だからイメージしやすい。

「両膝を立てて、足をちょっと開きなさい。」

 なんか恥ずかしい、気がする。

「遥、私が嫌いなの? 足を逆V字型に立てて少し足を開きなさい。」

 海沙お姉ちゃんに逆らえない俺。

「いい、葉月? 私の遥は男の子の最も大切な場所を、こうやって自発的に無防備に晒してるの。」

「ほんとだー。」

「上半身裸で手で胸を隠すことが許されない女の子みたいに恥じらって赤くなってるでしょ?」

「遥お兄ちゃん、息が荒くなってきた。」

 うーっ。誰のせいだよう。

「遥は私に懐いているから信頼して私に体を委ねてるの。そして今から私に犯されることに期待して興奮してるわけ。葉月、私と遥の強い絆を感じるでしょ?」

「そうだね。お互い心から好きじゃないと、こういうことできないよね。」

「そして、私は遥の足元から、彼の両足の内側に私の体を入れながら、上がっていくの。」

「遥お兄ちゃん、幸せそうな顔してる。」

「ここで足を閉じるような子だったら、思いっきり叩いてお仕置きするんだけどね。遥は私の体を挟まないよう、逆に少し足を広げてるんだ。いい子だよね。」

「何かすごい。」

 もちろん、俺は海沙お姉ちゃんを受け入れたい。だから海沙お姉ちゃんが俺をかわいがりやすくなるよう、俺は無意識に体を動かしているようだ。

「私の両膝が床についたままだと、私の頭が遥のお臍のあたりまでしか届かないんだよね。

 このあたりで一回、遥の体をぎゅって抱きしめてみる。」

 俺の体が緊張と期待で一瞬こわばる。

「遥? どうしたの?」

 その一言で体の力が徐々に抜ける。

「そう。遥はリラックスして私を受け入れなさい。」

「遥お兄ちゃんの体の緊張がほぐれてるのが見ててわかるよ。」

 抱きしめられるのって、なんだか嬉しい。

 姉妹に抱かれると心が落ち着く。

 ああ、俺は本当に海沙お姉ちゃんと葉月が好きなんだな。

「遥が抵抗する意思を全く見せないことを確認して、私は体をさらに上に動かす。

 私を突き飛ばして逃れることもできるんだけど、遥は私が好きだから私に一切逆らわないんだよね。この甘い雰囲気、大好きだなー。これが幸せなんだよね。」

「わかる、わかる。」

「遥? 両足を少し浮かせなさい。」

 え?

「いいから両足のかかとを少し浮かせなさい。」

 かかとを浮かせると、お腹に力を入れざるを得ない。

 でも、それだけじゃ……。

「欲しくなってきたでしょ?」

 欲しくなってきた、って……。

「素直に言ってみたら? 早く犯してくれ、って。」

 うぅー。

「葉月? 強情な遥の代わりに言うけど、今の遥は襲われたくて襲われたくてたまらないんだよね。」

「そうなの?」

「お股の筋肉がきゅーって締まって、両足の間に何かを挟み込みたい、そう体が悲鳴を上げてるの。続けていると腹筋も疲れてくるし、意外と辛い体勢なんだ。」

「海沙お姉ちゃん、よく知ってるね。」

「ここで無駄に疲れさせるよりは少し楽な体勢にしてあげたほうが長く楽しめるんだ。

 両足を抱えて無抵抗なところをかわいがるのもよし、両膝の後ろに手を一つずつ置いて足を閉じられないようにして、無防備に足を広げた姿を楽しむもよし。この場合、手の親指と人差し指の間を開いて、その間に遥の膝の裏が来るようにすると、手のひらで遥の足を支えつつ、位置を自由に調節できて便利なんだよね。開かせるときも楽なんだな。遥を甘やかしたかったら自分の体を入れて密着するのもありかな。この間に遥のズボンやパンツを脱がせたり、お尻の下に枕をいれると、さらに嗜虐性が上がるんだよね。

 ここから先は何やってもいいんだけど、お尻や太ももをなでたり、脇腹触ったり、脇に指を這わせたり。自分がたっぷり楽しむまで遥に両足を閉じさせたらだめだからね。

 知ってた? 遥、胸をもまれるのも好きなんだよね。」

「えー。そうなんだ。」

 ちょっと……。

「体を撫でる動作はお風呂でさんざん体を洗う時にやってるから慣れているんだろうけど、胸をもむ動作は日常生活ではまず行わないからね。脳が非日常的でえっちな行為だと強く認識しちゃうんだ。」

「へぇー。」

「遥って、お風呂でよく自分の胸をもんで、どう感じるかをいろいろ試してるんだよ?」

 なぜそのことを!

 そうか、感覚共有ってやつか!

「遥お兄ちゃん、もしかして私達が胸をもまれるとどんな気持ちになるか、自分で実感しようとしてるの? その優しさって大切なことなんだよ。私達を幸せにすることを考える遥お兄ちゃんを見てると、葉月は嬉しくなっちゃうな。」

「胸をもむという行為は命の源である心臓をもむことを意識させられる。心から信頼出来ない相手には自分の心臓を任せられないでしょ? だから、胸をもまれて気持ちいい、幸せだ、ということは、相手に自分の命を捧げてもいいくらい信頼していることを意味する。」

 下から見上げるような形で、海沙お姉ちゃんが満面の笑みで俺を弄ぶ。もちろん、俺は両足を閉じることが許されない。

「遥、気持ちいい?」

 うん。

「ねえ? 私のこと、好き?」

 好き。

「海沙お姉ちゃんを愛してる?」

 愛してる。

「姉として? 恋人として? お嫁さんとして?」

 全部、かな。

「遥、私が好きだから、私にしがみついてるの?」

 気付いたら俺の足が海沙お姉ちゃんに巻き付いていた。

 いわゆる、だいしゅきホールドだ。

 そして俺の腕も海沙お姉ちゃんを抱きしめていた。

「遥がこんなに私を求めてくるなんて、嬉しいな。」

 海沙お姉ちゃん、大好き。

「葉月? 男の子がこうやって足で私をぎゅーって締めあげるのは、すごく興奮しているからなんだ。大切なところに血がどんどん流れ込むんだよね。」

「遥お兄ちゃん、すごく興奮してるんだね。」

「遥、海沙お姉ちゃんとキスしたい?」

 したい。

「じゃあ、キスするね。」

 俺の口が激しく犯される。

 俺の心が海沙お姉ちゃんで満たされる。

「遥、女の子、好き?」

 好き。

「海沙お姉ちゃんをお嫁さんにしたい?」

 したい。

「遥は一生、海沙お姉ちゃんのペットでいてくれる?」

 いる。

「大切な弟ペット、海沙お姉ちゃんは離さないからね。」

 うん。

「もっと、ぎゅっ、てしていいよ?」

 うん。

「海沙お姉ちゃんをどう思う?」

 大好き。

「大好きって気持ち、どんどん膨れ上がっていくでしょ?」

 うん。大好き、大好き!

「好きなら私を抱きしめなさい。」

 うん。

「好き?」

 うん。

「海沙お姉ちゃんに抱かれて、幸せ?」

 幸せ。

「抱くのと抱かれるの、どっちがいい?」

 抱かれるの。

「好きって気持ち、爆発させていいんだよ?」

 いいの?

「海沙お姉ちゃんが欲しいんでしょ?」

 うん。

「海沙お姉ちゃんが好きなんでしょ?」

 うん。

「私を求めなさい。」

 うん。

「私が好きなら、好きって言いなさい。」

 好き。

「海沙お姉ちゃん愛してる、でしょ?」

 海沙お姉ちゃん愛してる。

「もっと!」

 海沙お姉ちゃん好き、愛してる。海沙お姉ちゃん大好き。

「私が好きな気持で脳をショートさせなさい! ほら!」

 大好き。海沙お姉ちゃん大好き……なの。


 ◆ ◆ ◆


 気づいたら朝だった。

 すっきりした目覚めだ。

 布団を強く抱きしめていた。

「今夜は私の番だね、遥お兄ちゃん?」

 ああ。昨日は海沙お姉ちゃんに抱かれながら寝落ちしたんだっけ。

 すごく、幸せな気分。


 ◆ ◆ ◆


「今日は葉月の番だな。最初に私がまず遥を味見するけどね。」

 俺を後ろから強く抱きしめる海沙お姉ちゃん。

「ドキドキしてる? じゃあ、もう少しこのままでないとね。」

 ドキドキから安心感に、徐々に気持ちが変わっていく。

 この後、大好きな女の子に襲われちゃうんだ。大好きな女の子を喜ばせるんだ。

 そう思うと嫌でも気持ちが盛り上がっていく。

「遥、昨日教えた姿勢になりなさい。でも、その前に、こっち向いて?」

 振り向いたら海沙お姉ちゃんが強引に俺の唇を奪った。

 舌を絡めて唾を流し込まれる。片腕が背中にまわされ、片腕が俺の後頭部を押さえる。

 また気持ちがドキドキしてきた。

 海沙お姉ちゃんが一度、唇を離す。

「私のこと、好きだよね?」

 うん。

「私に体を委ねて。力を抜いて。」

 海沙お姉ちゃんがまたキスをする。

 今度は背中にある海沙お姉ちゃんの腕が下の方に降りてくる。

 お尻を撫でてくる海沙お姉ちゃん。

 じっくり撫で回しながらも割れ目に指を這わせるのも忘れない。

 頭がふらふらしてきた。

 全身がとろけそうで、身も心も全て海沙お姉ちゃんのものになった気分。

「よし。いい感じになったな。

 下ごしらえも済んだし、横になって葉月にかわいがってもらいな。」

 え? 海沙お姉ちゃん、もう終わり?

「私が遥をもっと犯してもいいけど、遥は葉月のものでもあるから。葉月も遥を抱く権利があるんだ。

 昨日は私が遥を独占した形になっちゃったし、今日は葉月が遥を好きにしていいぞ。」

「はーい、海沙お姉ちゃん。」

 今日の葉月は、布が足首まであるけど袖がない、裾が大きく広がる翡翠色のシンプルで夏っぽいワンピース。長い髪の毛を翡翠色のリボンでまとめている。

 足や胸の露出が少ないにもかかわらず優しい女の子らしさが伝わってくる。

 この子にこの後、どうかわいがってもらえるんだろう。

 気分が盛り上がっていく。

「私を見るだけで興奮してきちゃったの? 素直な遥お兄ちゃん。」

 反論できない。

「遥お兄ちゃん? 葉月は魅力的ですか?」

 うん。

「じゃあ、魅力的な葉月が、最初に遥お兄ちゃんをぎゅーって抱きしめてあげるからね。」

 葉月が俺の上に乗る。もちろん、俺は足を広げたまま。俺の両足の間に葉月の両足がある。

「遥お兄ちゃんは葉月のこと、どう思ってる?」

 かわいい、かな?

「他には?」

 きれい。

「あと?」

 好き。

「お嫁さん?」

 うん。

「素直に答えてくれたご褒美に優しくキスしちゃおうかな?」

 俺に情熱的な、でも優しいキスをする葉月。

 葉月の俺に対する優しい気持ちが伝わってくる。

 俺を包み込み、癒やし、溶かしてしまうようなキス。

「今の遥お兄ちゃん、すごく幸せそうな顔してる。

 葉月とキスして幸せ?」

 幸せ。

「遥お兄ちゃんは葉月が好きで好きでたまらないの?」

 うん。

「いい子。

 ねえ? 葉月の大きな胸が、遥お兄ちゃんの胸にあたってるんだよ?

 気持ちいい?」

 うん。

「私の胸をもっと味わいたい?」

 うん。

「じゃあ、私にしがみついて?」

 こう?

 あ、葉月が横に転がった。

「たまには葉月が遥お兄ちゃんに押し倒されるのもいいかなー、って思ってみたんだけど、どうかな?」

 俺が、葉月を……。

「押し倒して何をしたい?」

 ……………………。

「しょうがないな。キスして?」

 葉月にキスをする。

 海沙お姉ちゃんではあまり味わえない、この甘い気持ち。

 ずっと葉月にキスされててもいいかな、そう考えてしまう。

「遥お兄ちゃんは私とキスするのが大好きなんだね。

 私みたいな妹がいて遥お兄ちゃんは嬉しい?」

 うん。

「私みたいな彼女がいたら人生幸せでしょ?」

 うん。

「安心して。葉月はもう、遥お兄ちゃんと添い遂げるつもりなんだよ?

 もちろん、遥お兄ちゃんが葉月に逆らったら話は別だけど。

 遥お兄ちゃんは、葉月の言うこと、聞いてくれるよね?」

 うん。

「遥は幸せだよね?」

 うん。

「『遥は葉月に抱かれるのが幸せです』って言って?」

 遥は葉月に抱かれるのが幸せです。

「ご褒美に遥お兄ちゃんを抱きしめてあげる。

 遥お兄ちゃん、私の胸に顔をうずめて?」

 やわらかい枕の感じがする。

「遥お兄ちゃん、ずっと葉月のモノでいてね。」

 俺をよしよしする葉月。

 ああ。このぬるま湯のような感じが、幸せだ。

 このまま、幸せを感じつつ眠りに落ちたい。


 ◆ ◆ ◆


 葉月に優しく抱かれながら寝たせいか、翌日の目覚めがよかった。愛されながら眠るって、こんなにいいことなんだな。

 休み時間に昨晩とその前の晩の余韻に浸っていたが、樺山が暇そうにしていたので話しかけてみる。

「そういえば樺山、夏はどこに行くの? また電車乗りに行くの?」

「マエストロなら電車じゃなくて鉄道って言ってほしいですな。ローカル線は気動車、つまり電気で動かない車両で運行されていることが多く、こういうのは電車とは言えないんですよ。本数が少ないとわざわざ電化するメリットがないんでね。」

「へぇ。」

「今年の夏も山間部の路線をメインで回ろうかと思っていますぜ。緑豊かな山に、谷底にある川と道路と線路、たまに集落。心が癒やされますなあ。

 もちろん、特急でなく、鈍行でじっくり楽しむに限りますぜ。」

「へぇ。」

「もちろん! 春のリベンジは確実にやらないと気がすみませんな。」

「春? ああ、あのバカきょうだいが旅を台無しにした話か。今度はいないといいな。」

「それに、季節が変わったから、異なる風景が楽しめて一興だと思うんですよ。

 マエストロは大人の女性とデート三昧、なんて言いませんよな?」

「だから、彼女はいないんだって。」

「いやあ、マエストロのマエストロっぷりが、あまりにも恐ろしいので、彼女も姉もいないのなら、何か神がかってる気がするんですよ。」

 うげ。こいつ鋭い。

「樺山は彼女作ろうとしないの?」

「乗り鉄は複数人でやっても面白く無いんでね。鉄道と自然に俺一人で向き合うのがいいんですよ。一人旅を邪魔されるなんて論外ですな。もちろん! 電車で騒ぎながら乗り鉄なんて乗り鉄としての魂を失ってますぜ。夜の通勤電車の中で酒盛りする仕事帰りのリーマンのほうがまだマシですな。」

「はあ。」

「とはいえ、俺の趣味を邪魔しないような、美人で優しいお姉さんとの同棲生活には憧れますなあ。」

「おう。鉄道もいいけどさ、接客バイトの新たな楽しみに気づいてしまったぜ。」

「なに、遠藤?」

 遠藤が話に割り込んできた。

「女の人の春や夏の服装って、こう、女らしくて心が踊るだろ? 接客するといろいろな女性の顔や服を見ることができるから、理想の彼女を想像する上でアイディアがいろいろ浮かぶんだぜ。」

「師匠……! 遠藤師匠、その視点はありませんでした!」

 そういえば海沙お姉ちゃんが大昔にこんなことを言っていたような。

 まずい。最近さぼりがちだった。こういうのは日々の努力が大切なのに。

「で、遠藤は彼女ほしいの?」

「そ、そりゃあ、欲しいか欲しくないかと聞かれたら、欲しいさ。

 だけど、彼女を作るために行動を起こしたいか、と言われたら、何か起こす気になれない。

 まあ、あれだ。アイドルや芸能人と付き合う気になれないようなもんだな。お姉さんは見て楽しむものだ。もちろん、幸か不幸か、俺の心がときめくようなお姉さんが俺に声をかけてきたら、その時俺はどうするんだろうな。」

「遠藤師匠! 私めも師匠みたく女性を観察するように心がけます!」

「で、小郡、本の感想は? どうせまた叩かれるんだろうけど、小郡の指摘には一理あるからな。ありがたい話だ。」

「……お仕置き。」

「はぁ?」

「……お仕置きのシーンがぬるい。愛情がないし。」

「……マエストロ小郡さん、お仕置きに目覚めたんですか!

 叩かれるのですか? 縛られるのですか? 罵られるのですか?」

「愛情って難しいんだよな。憧れとは違うんだろ?

 そして、樺山。小郡がお仕置きされたい願望があるド変態だということは、他の人にばらすなよ。俺達、魂の兄弟の秘密だ。」

「さて、マエストロ。愛情がない、とは?」

「いとこが主人公に対し愛情をもってないので、これはただの鬱憤ばらし。だからお仕置きに深みが出ない。主人公もただ嫌がってるだけ。こんなの、ただのいじめだ。

 好きな人に無理やり襲われ、でも好きだからこそ心と体を許さざるを得なくなり、不快感が快感に転化する。この心の揺れ動きが感じられないから、いまいち共感できなかった。」

「マエストロらしい感覚ですな。」

「愛情というより、心の動き、か。確かに小郡らしい辛口のコメントだ。」

「いとこは、出会ったばかりの相手のような、ほとんど関係のない他人ではない。だからそれなりに複雑な感情を相手に持っているはず。少なくても一単語では片付くようなものではない。その関係の深さを生かして欲しかったな。」

「マエストロはお姉さんに何を求めているんですか?」

 やばい。なんとかごまかさないと。姉妹との甘い生活、なんて言えない。

 そうだ。


「お姉さんには、甘やかされたいでしょ?」


「……これは真理だ。マエストロが新たな格言を……!!!」

「そうか。確かにそうだよな。

 小郡。俺はおまえの魂の兄弟で、本当によかった。」


 ◆ ◆ ◆


 学校帰りに姉妹が話しかけてくる。

「あの二人、なかなか楽しい事言うじゃない。」

「女の子の服の観察と旅行の話だよね。

 遥お兄ちゃんは自分のおしゃれに興味ないでしょ? 確かに男の子のおしゃれは別にどうでもいいけど、海沙お姉ちゃんが前に言ってたとおり、女の子の服は大切だよ? 私達に着せたい服って、どんなの? お金を度外視できるから遥も選んでよ。女の子の服はいっぱい見てきたでしょ? リアルでも、ネットでも。」

「遥は女の子らしい、女性らしい服が好きなんだよね。」

 やっぱり、女の子だし。女の子っていいよね。

「私のピアスと葉月のネックレスは譲れないけど、他は私達が気に入ったら着るからね。」

「あと、私達とお泊り旅行に行かない?」

 旅行?

「別に本当に行かなくていいんだ。だけど、どこに行きたいとか、どんなことしたいとか、そういうことを考えながら、布団の中で私達と旅行した気分に浸るの。」

「葉月、ナイスアイディアだ。

 遥と普段と違う場所でいちゃつくなんて、何で今まで思いつかなかったんだろ?

 遥の好みの服を着た私達が旅先で遥をいっぱいかわいがっちゃうからね。」

「新婚旅行みたいでしょ? 遥お兄ちゃん?」

「大好きなお嫁さん2人と旅行だぞー?」

「遥お兄ちゃん、いろいろ想像するのは大変だろうけど、応援するから頑張ろうね。」


 ◆ ◆ ◆


 今日は予備校主催の全国模試の日だ。学年が上がると夏休みや土日が模試で潰れることが多くなるのは仕方ない。自虐的な男子の一部は、模試を受けることを競馬に喩えて「レースに出走」とか言っている。もちろん、受けないことは「出走回避」だ。年齢的にやってはいけないからこそ、競馬のようなギャンブルに憧れるのが高校生である。もっとも、さすがに自分たちの成績でギャンブルはしていないようだが。

 模試を受けている間は暇な時間が結構ある。問題や解答用紙が配られ始めたら試験開始まで特にやることはない。やる気のありすぎる試験監督だと配り終わるのが早すぎて暇になる。もちろん、解き終わって見直しが終わっても暇になる。退出して違うことをやっていてもいいんだが、それはそれで面倒くさい。こういう時は姉妹とだべったり、イメージトレーニングをする。


 早めに終わった科目で俺はイメージトレーニングを敢行する。学校帰りにセーラー服姿の姉妹と一緒に下校する設定だ。今の学校はブレザーなので、近くに座っている子のセーラー服を着てもらう。やはり、男子としてはセーラー服は捨てがたい。もちろん、俺はその子の服を頂く犯罪者じゃない。あくまでもデザインを借りるだけ。白襟の白セーラー服、水色のラインとスカーフが特徴的。よし、服のデザインを頭にインプットした。

 まず背景を考える。下校時に通る場所を一箇所、ぼんやりと思い浮かべる。そこに姉妹のイメージを重ねる。まずは全体像。おおよそのシルエット、服、髪型、表情。大雑把なものから細かいディテールに移っていく。鞄や靴は、まあいいか。隣に歩いている設定にしよう。

 最初は左側からくっついてくる海沙お姉ちゃん。ポニーテールで髪を高い位置で縛っているから、もともと高めの身長がさらに高い感じがする。つい、ほっそりとしたうなじに見惚れてしまう。スカートの丈を少し短くしてスタイルのいい足を見せつけている。セーラー服の裾も少し短くしてあるから、おへそがもう少しで見えそうな際どい格好だけど、すらりとした体が強調されて活動的な印象だ。セーラー服の爽やかな白と水色で海沙お姉ちゃんが凛とした美少女に見える。

 いたずらを思いついた顔でこっちにずりずり体を寄せてくる海沙お姉ちゃん。時々耳に息を吹きかけてきたり、お尻を撫でてきたりする。腰を抱いてきたり、背中にツツっと指を走らせる。たまに立ち止まって俺を抱き寄せてくる。俺が海沙お姉ちゃんの顔を見るのに顎をちょっとあげたら、すかさずキスされてしまう。俺はちょっと嫌がる振りをしながら身を任せる。片腕で抱かれて片手で頭をなでられると、気分が落ち着く半分、興奮するのがもう半分。手を繋ぐなんて生ぬるい、それを実感してしまう。もっと強く抱きしめて欲しい。もっと求めて欲しい。俺が反撃をしたくても許さない、攻めるのは海沙お姉ちゃんだけ、といった雰囲気が醸し出す、海沙お姉ちゃんの「お姉ちゃんらしさ」を楽しむことにする。

 迫られるって気持ちいい。

 次に右隣の葉月を想像する。葉月はえへへ、と頬を緩めている。髪は縛ったり髪留めを使ったりせず、背中にゆったりと広げている。白いセーラー服の襟に黒い髪が映える。髪がこめかみから一筋ずつ胸にかかって、顔の両横を飾っているのが愛らしい。この髪型は下手をするとクワガタの角に見えて情けない感じがするが、葉月はそんな無様なことはしない。

 制服を校則通りに着ているから海沙お姉ちゃんのスタイルと比べると少しおとなしめに見えるものの、そこがまた奥ゆかしい印象を与える。その割に胸は発達してるから、どうしてもそこに目が行ってしまう。

 上目遣いに「ちゅーして?」とねだる葉月を抱きしめる。俺の胸に当たる柔らかい膨らみで少しドキッとする。葉月が目を閉じると長いまつげが魅力的だ。葉月の整った顔に見とれてると、目を開けて「まーだ?」と優しく囁いてきた。今度こそ葉月とキスをする。キスしている間につい、目を閉じてしまう。唇を離し、目を開けると、うっとりした表情で微笑む葉月がいる。そして、葉月は優しく「好きっ♪」と微笑んで、また抱きついてくる。

 ああ。癒される。


 ◆ ◆ ◆


 全国模試を受けた帰りに海沙お姉ちゃんの指示で本屋に向かう。普段は電車に乗らないと大きめな本屋に行くことが出来ないし、本屋だけのために交通費を払うのももったいない。今日みたいなチャンスは逃してはいけない。

「学校と家の往復ばかりしてると人生損するぞ? スーパーで必需品の買い出しをしても、たいして人生豊かにならないぞー。」

「そうそう、遥お兄ちゃん。たまには普段と違う刺激を受けないとね!」

 家に早く帰ったからって何かいいことがあるわけではない。逆らう理由なんて無い。


 葉月が「ティーン向けのファッション誌を見たいなー。」と提案したけど、海沙お姉ちゃんはその意見を却下。かわりに旅雑誌を見ることにする。大きい本屋だからコンビニとは品揃えが段違い。海外を扱うものもあるが、まずは想定する旅行先を国内とする。もちろん、特定の場所に実際に旅行に行く予定はない。三人で旅行するとしたらどうしたいかなー、と考えて楽しむだけである。

 ふと横を見たらローカル線特集をやっている鉄道雑誌があった。手にとって見ると知らない路線だらけだった。樺山はほとんど知っているんだろうな。むしろ夏休み中にいくつか制覇するんだろうな。樺山が言っていたように、都市の喧騒から離れて豊かな自然を楽しむのも悪くなさそうだ。

「海と山なら山がいい!」

 海沙お姉ちゃんのリクエストに従い、山への旅行を特集している雑誌を見る。本気の登山ではなく、むしろ自然豊かな山のリゾートがいい。

 調べてみると特急が止まるような大きな駅からバスで数十分の場所が多いことがわかった。ローカル線の駅からバスで数分、なんてケースは意外と少ない。考えてみれば当たり前だ。樺山みたいな鉄道マニアでもない限り、乗り換えは少ないほうがいいし、電車の頻度は高いほうがいい。そして鉄道の長旅の後、さらに一時間以上もバスで延々と揺られたい物好きもあまりいない。道中には曲がりくねった道もあるだろうし、弱い人は車酔いしそうだ。

「山といえば川遊びは外せないな。」

「温泉も捨てがたいよね。少なくても三人でお風呂は外せないでしょ?」

「遥は浴衣姿の私達に興味あるよな?」

 ある。

「そういえばカップルで浴衣を着ている写真があるね。」

「街の花火大会は見飽きてるから、三人だけで花火をやるのもいいな。」

「あ、このリゾート、川遊びができるんだね! 河原でバーベキューもできるし、川でも泳げるみたい。」

「実際にどこか一箇所に行くわけじゃないし、山に旅行しに行ったとしたらやりたいことを考えてみるか。でも、ここでやると遥の顔が真っ赤になるから、家でやろう。」

 ……何を考えるんだろう?

「遥? 私達が好きなら、私達とどんなことをやりたいか、あんたも考えなさいよね?」


 ◆ ◆ ◆


「今日も一日、お疲れ様!

 さて、旅行でやりたい川遊びを考えますか!」

「遥お兄ちゃんと泳ぎたいでーす!」

「葉月、攻めるねえ。でもその前に、山に向かうときに私たちにどんな服装をしてほしいか、考えてもらわないと。今まで予習してきたでしょ?」

 うーん、やっぱり難しいよ。

「じゃあ、お尻のラインがくっきりわかるズボンと、女の子らしくふんわりしたスカート、どっちがいい?」

 ……どっちも捨てがたい。二人とも、どっちでも魅力的だ。

「葉月も遥もなかなかやるな。そうだな、春夏物の服で考えてみようか。

 肌の露出の多いタンクトップとホットパンツみたいな服と、露出の少ないブラウスにロングスカートとかでは、どっちが好き?」

 ブラウスにロングスカート。

「どうして?」

 隠されてる方が想像でドキドキできるよね。

「いいねえ。今度は肌の露出が少ない服で考えてみるか。ピッタリして体のラインがくっきり出てる服と、ふんわり隠れてる服、どっちがいいの?」

 隠れてる服。

「何で?」

 ピッタリしてると体のラインを想像する楽しみがないから。でも川遊びでは元気いっぱい、ホットパンツにボーダーの臍だしTシャツとかでもいいかな。ギャップが楽しめるかも。

「なかなか肉食系だな。では、特別な遊びのときは別にして、普段はふんわりした、体の線が隠れた服の方がいいってことね?」

 うん。

「今度は生地を考えてみる? 厚めの生地だとデニムとか。薄めの生地なら風でなびくくらいひらひらした生地。回るとふわっと広がるようなやつね。もちろん、中間もいろいろあるよ。」

 ひらひらした生地の方がいい。女の子らしい感じがする。

「遥の好みがどんどん決まってきたな。今度は色や飾りを考えてみる?」

 強い色は嫌だな。ふんわりして、涼しげなやわらかい色。レースとかがついててもいいかな。

「だいたい良さそうね。これで遥のファッションの好みが明らかになってきたかな。今答えた感じで、想像してみて?」

 海沙お姉ちゃんが促す。


 短めで広がっている袖の、ふんわりした質感の白やベージュのような明るい色のブラウスに、きゅっと締まったウエストから広がる淡いグリーンとかブルーのひらひらした生地のスカート。白いサンダル。あとはつばの広い帽子と……胸あたりまである黒髪。

「だったら、私は裾が広がったワンピースかな? 気が向いたらスカートをめくってもいいんだからね? めくりやすい服を選んであげるから。そして襟ぐりは大きめに開けた服がいいよね。首元で揺れる円い翡翠色のペンダントで、遥お兄ちゃんを催眠術にかけちゃいます!」

「そしたら、私はズボンかな。スカートに見えるくらいゆったりした素材にして、簡単に遥にまたがれるようにしないと。そして遥に私のお尻の割れ目に指を這わせることを許可する。もちろん、お尻を撫でてもいいんだからな。お尻の穴は……さすがに難しいか。ちゃんと反撃してあげるから、遠慮無く触りに来てね?」

 むしろ触らないとだめですよね。

「海沙お姉ちゃんがそう来るなら、遥お兄ちゃんが私の胸もさわれるように、前をボタンで閉じるワンピースにしようかな。ブラの上からでも、手を差し込んでも、どっちでもいいんだよ? 空いている電車の中なんて最高のチャンスだからね?」

 ばれたら樺山に処刑されそうだ。

「葉月が胸で攻めるなら私は脇で勝負だ! いっそのこと袖がない服を着て、いつでも遥が脇の匂いを楽しんだり、脇にキスできるようにしてやるんだ。日焼けよけのストールも持って行くから、これで遥を包んで遊べるよね。」

 頭に血がのぼってくる気がする。

 ファンタジーでよくいる巨乳エルフを連想させる、若々しい萌黄色のゆったりワンピースの葉月。膝の上に乗せて両手で自慢の下乳を楽しんだり、お腹を片手で抱えつつ、もう片方の手で太ももの内側を撫でる。「もうっ」、「いやん」、「だーめっ」と恥じらう葉月が求めてきたら、甘く優しいキスをする。

 一方、海沙お姉ちゃんは肌触りのいいノースリーブの白のトップスに、ウエストがゴムのゆったりしたベージュ色のズボン。大判の薄いピンクのストールは日焼け防止というより、俺を抱くためにあるようだ。海沙お姉ちゃんのズボンに腰から手を入れてお尻と割れ目を楽しんだら、「お仕置き」と称して海沙お姉ちゃんの膝の上に横向きで座らされる。顔を脇の下に押しつけ、「汗の匂い攻撃だ!」と言われても、これはむしろご褒美である。赤ちゃんの授乳に見えなくもないけど、そういうプレイだから問題ない。同じストールの中に入るのもマフラーの恋人巻きより盛り上がる。髪は揺れる瑠璃色のピアスを楽しめるようにまとめてもらおう。

「旅行する以上、私達もたっぷり楽しまないとね?」

「そうそう。積極的な遥も見てみたいものだ。」


「そして川遊びといえば水着だよね?」

「遥は学校で買わされた水着しか無いんだっけ?」

 ああ、あれか。丈がすごく短いんだよね。太ももが完全に露出する。

「私はお姉ちゃんらしくビキニにしようかな。

 青いビキニで露出は多すぎず少なすぎず。遥、いくら私の裸が見たいからって、水着を川に流さないでね?」

「へぇー。海沙お姉ちゃん、まだまだ甘いね。」

「なんだと、葉月?」

「私は妹らしく、紺のスクール水着にします!」

 え? ちょっと、今なんて?

「おい? まさか?」

「胸には白いゼッケンにひらがなで大きく『はつき』って書いちゃいまーす!」

「くそっ! やられた!」

「胸で立体的になっているゼッケンが魅力的でしょ? 妹の葉月のスクール水着姿、想像するだけで発情してくるでしょ? 幼な妻らしさも最高でしょ?」

 やばい。マジやばい。スクール水着姿の葉月を一度想像してしまうと、それ以外の姿の葉月をしばらく考えることはできない。

 葉月は胸が大きい。だからこそ、よけいにスクール水着姿の破壊力がある。

 学校のプールに入るときに首飾りをつけていると確実に先生に叱られるが、今はキラキラと光を反射して輝く円い首飾りが葉月の魅力を引き立てている。そうだ、結婚指輪もつけてもらったほうがいいのかな。今度デザインを考えておこう。

「いいんだよ? 後ろから抱きかかえて体のラインをじっくり味わっても。スクール水着を着た女の子をなでまわせる機会って、そうそうないんだよ。学校のプールだとまず無理。男女一緒の授業だとしても厳しいよね。公共のプールや海水浴場だとスクール水着は浮いちゃうし。結局、こういう秘境で楽しむしかないんだよ?」

 正論すぎる。「スクール水着」と「幼な妻」、二つのキーワードの組み合わせの破壊力は絶大だ。かわいいお嫁さんの葉月の笑顔がまぶしすぎる。

 葉月をなでまわしたい。後ろから抱きかかえて、胸、脇、脇腹、下腹、おへその窪み、尻、太もも、そして股までも触り倒したい。後ろから両胸をもんでゼッケンの「はつき」の文字を踊らせたい。抵抗したら、耳をなめて黙らせたい。

 なんだろう。普段は受け身になりがちな俺だけど、スクール水着姿の葉月は激しく襲いたくなる。新型と旧型どっちがいいかな? 言うまでもなく旧型だな。お腹の穴から手を入れて葉月の股をまさぐりたい。

「遥お兄ちゃん、大興奮だね。ロリータドレスで迫ったときには海沙お姉にゃんに完敗したけど、水着対決は私の完全勝利だね。これでおあいこかな?」

 あの時のことまだ根に持っていたの?

「そりゃそうだよ。せっかく私が『お嫁さんになる』ってウェディングドレス風のロリータドレスでプロポーズしようとしたら、泥棒猫海沙お姉にゃんに美味しいところを取られちゃったんだから。あれ、自信作だったんだからね?」

「まあいいじゃないか。足の引っ張り合いをやりたいわけじゃないんだし、遥は公平に判断するだろ? 遥を萌えさせたもの勝ちだ。

 葉月がスクール水着を着ている以上、泳ぐ練習もしないとな。

 そうだ。遥に背泳ぎの練習をしてもらうか。」

 どういうこと?

「葉月が遥を仰向きに川に浮かべる。そして両手を私が握る。ある程度落ち着いたら遥にはバタ足でもしてもらうか。」

「それ、いいアイディアだね!」

「わかってると思うけど、力を入れ過ぎたら沈むからな。私は手を離さないし、なんかあったら葉月が助けてくれるけど、これで遥が沈むようだったら、姉である私への忠誠心が足りないことが証明されるわけだ。身を任せられない、ってことだからな。」

「海沙お姉ちゃんと私に全てを預け、リラックスして川に浮かんで、周囲の自然を感じ取ると、すごく気持ちいいと思うんだよね。

 やってみたくなってきたでしょ?」

 やってみたい。

「リラックスして落ち着いた表情をしている遥を見てたら私達も幸せな気分になるよね。」


「その後で川の中で遥お兄ちゃんをかわいがるのも忘れないようにしないと。」

「どうするんだ?」

「まず私が遥お兄ちゃんを羽交い締めにするの。」

「葉月、やけに積極的だな。」

「旅先だから積極的にならないとね。

 そして、海沙お姉ちゃんが前から、遥お兄ちゃんにゆっくり接近するの。」

「ほうほう。」

「無抵抗な遥お兄ちゃんを海沙お姉ちゃんが好き勝手に弄んでいいんだよ?」

「その間、葉月はどうするんだ?」

「うなじや耳に息をかけたり、キスしたり、舌で文字を書いたりするんだ。」

 えっちすぎる。抵抗できない状態で二人にされるがままって、えっちすぎる。

「そして、海沙お姉ちゃんに、遥お兄ちゃんの両足を抱えて欲しいんだ。」

 えーっ?

「遥お兄ちゃんの両腕は私に羽交い締めにされて固定されて、両足は海沙お姉ちゃんの両脇に抱えられる。川底に足がついているのは私達だけ。逆らえない感じが興奮するでしょ?」

「私のお腹が遥の両足で締め付けられるのか。せっかくだから両足を私の肩の上にのせてもいいかもしれないな。」

「遥お兄ちゃんの両足の間に海沙お姉ちゃんがいるんだよ?

 そして、遥お兄ちゃんが私たちにいっぱいかわいがられた後は、優しくお姫様抱っこしてあげないと。水中だと体が軽くなるから簡単にお姫様抱っこできるよね。」

「私も遥にお姫様抱っこされたい。葉月もそうだろ?」

「もちろん! お姫様抱っこは女の子の夢だからね。遥お兄ちゃんは力が強くないから、ちゃんとお姫様抱っこできるのは水中だけ。このチャンスを逃したらもったいないよ!」

 そうだね。お姫様抱っこしたら、すごくいい表情してくれるんだろうな。

「安心しろ。もちろん私達も遥をお姫様抱っこするからな。」

 え?

「両腕を胸の前で揃える遥お兄ちゃんを、両側からお姫様抱っこしちゃんだ。お姫様抱っこに憧れる女の子の気持ちよさを、たっぷり楽しんでもらわないとね?」

 俺は男だ! と強がろうと思ったけど、海沙お姉ちゃんと葉月にお姫様抱っこされている自分を想像すると、妙にドキドキしてしまう。

 二人に抱かれたい。

 二人に身も心も委ねたい。


「川遊びが終わったら、水着の上にお揃いのパーカーを着て宿に戻るんだ。」

「お揃いと言っても色違いのほうがいいよな。 私は碧色、葉月は翠色。遥はどうしよう?」

「……意外と薄いピンクなんて似合ったりして?」

「葉月、やるな。もちろん遥が真ん中。並べてみるときれいな絵になるな。いい色の組み合わせだ。」

「やったー。海沙お姉ちゃんに褒められたー。

 そしてみんな、足を露出して、お揃いのビーチサンダルを履くんだ。

 遥お兄ちゃんは足毛がほとんどないし、三姉妹にも見えちゃうかもね?」

「葉月ナイス!」

「帰りくらい遥お兄ちゃんは荷物持ちを免除してあげようと思うんだ。」

「それはどうして?」

「遥お兄ちゃんの両腕を私達が片方ずつ好きにするからでーす!」

「ほほう。

 遥? まさか、子どもみたく私達と両手を繋いで帰る、なんて思ってないよね?」

 どうせ、もっと酷いことをするんでしょ?

「酷いこととは失礼な。

 私はただ、遥の腕に私の腕を絡めたり、遥の手が私のお尻を触るようにしたり、遥にしなだれかかったり、激しいスキンシップを取りたいだけだ。」

「遥お兄ちゃんに私の腰に手を回させてもいいかもね。」

「葉月、ちゃんとわかってるじゃない。

 ある程度話がまとまったことだし、遥はしばらくの間、私達との川遊びを頭のなかで想像しながら、処理すること。下手なエロ本よりずっと楽しいでしょ?」


 ◆ ◆ ◆


「遥、さすがに川遊びプレイだともう興奮しなくなっちゃったね。」

 数日後、海沙お姉ちゃんが囁いてきた。

「やっぱり三人で露天風呂に入らないとね。」

「川遊びで疲れた遥お兄ちゃんが露天風呂の端にある段差に座ってリラックスしているところを、私達が襲う所から始めるかな?」

「お風呂でお酒は危険だからシラフで攻めるから安心してね。倒れて遥に助けを呼んでもらうのも癪だし。」

「どうやって声をかけようかな? 普通に『お背中お流ししましょうか、遥お兄ちゃん?』だとつまらないよね。」

 確かに平凡すぎる。

「『ここって女風呂だっけ?』とわざと勘違いするほうがいいかな。遥お兄ちゃん、前にそんな本読んでたよね?」

「『隣いいよな?』って有無を言わせず隣に座るほうがいいかもよ?」

「ねえ? 遥お兄ちゃんはどうやって入ってきて欲しい?」

 遥お兄ちゃん、ここにいたんだ、と普通に来てほしいな。

「遥が私達に襲われるのに疲れて逃げちゃった設定か。攻めてばっかりじゃなくて、少しは遥を甘やかさないとダメなのかな。」

「そんなことないよ。遥は普通の刺激だと何も気持よくない子になっちゃったんだから。私達は責任とって、もっと遥お兄ちゃんを襲わないといけないよね。」

「有無を言わさず私達が両側に座って逃げられなくするんだ。」

「怯えた顔した遥を攻めるのって、ぞくぞくするよねー。」

 いつも思うけど、何で俺を攻める話でこんなに盛り上がれるんだ?

「そりゃあ、遥お兄ちゃんが大好きだからだよね?」

「そうそう。まずは両方のほっぺにちゅーかな?」

「人間相手では絶対に無理なシチュエーションだよね。不倫は絶対に許さないからね?

 でも、私達となら平気だよ。神様は別腹だから。」

「ついでに両方の耳を舌で攻めるのもアリだよね。」

「あと、もしかしたら、私達のおっぱいを一緒に味わってみたかったりする?」

 そりゃあ、ねえ。

「私のおっぱい、お湯にちょっと浮くよ?」

「葉月、乳自慢は程々にしろ。」

「私が座って、後ろから座っている遥お兄ちゃんを抱っこして、前から海沙お姉ちゃんに襲わせてもいいかも。」

「私が近寄ると遥は何か期待している目をするよね。」

「遥お兄ちゃん、反応がないけど、意識ある?」

「私たちにかわいがられる想像で頭がパンクしてたりして、

 お風呂でのぼせると大変だから気絶する前に引っぱり出さないとね。」


「お風呂あがったら体を洗わないと。」

 普通はお風呂に入る前に体を洗うものじゃ……。

「私達にも遥お兄ちゃんの体を洗わせなさい!」

「もちろん、遥が私達の体を洗うのが最初だな。私達のナイスプロポーションな体を目に焼き付けてもらわないとね。バスタオルを巻くとか、野暮なことはしないぞー。あと、鼻血出して倒れるとか、あってはいけないから。露天風呂だとしたら湯気でのぼせることはないだろうし。」

「髪も洗ってもらおうかな?」

「遥に奉仕してもらうのって最高だな。そういえば、遥は私の下の毛、あるのとないの、どっちがいい?」

 ない……ほうが。

「えーっ。遥そんな趣味だったのか。私のつるつるのお股、たっぷり堪能してもらわないとね。」

「遥お兄ちゃん? 私もないほうがいい?」

 いや、あったほうがいいと思う。

「何で?! 何よ、この格差!」

「私のほうが胸があるから大人っぽいということなのね。海沙お姉ちゃんは子供っぽい……。」

「葉月。掃除されたいか?」

「二人の違いを遥お兄ちゃんの全身でたっぷり比べてね?」

 全身?

「当たり前でしょ? 遥の泡だらけの体をしっかり味わいたいんだから。

 特に! 私たちの大切なところは、遥の陰毛でたてた泡で洗ってもらうから。

 そして、遥が私たちの体を洗ったら、私達が今度は遥を洗う番だよね。」

「川では葉月が遥を羽交い締めにしたから、まずは私が遥を後ろから抱きしめて、葉月が遥の前半分を洗う。」

「そして、次は私が遥お兄ちゃんを向かい合わせで膝の上に座らせて、海沙お姉ちゃんが遥お兄ちゃんの後ろ半分を洗うのかな?」

「抱っこしながら髪を洗うと泡が葉月の顔にかかるから、髪洗う時だけは一人で座りな。」

「最後にお風呂でもう少しいちゃついてから、一緒に出ておそろいの浴衣を着ようね。」

「もちろん遥の服は私達が撤去しておいたからね。」

 俺も女物の浴衣着るの?

「遥? 私達とお揃いが着れないっていうの?」

 そんなこと……。

「遥。女物の浴衣のほうが、男物より楽しめるんでしょ?

 身八つ口って、知ってるよね?」

 女の子向けの浴衣だけ、横に隙間がある、って話だったっけ。


 ちょっと前に見たエロ本に登場していたな。

 温泉旅館の一人娘カエデが家を継ぐ修行のためOLを辞めて地元に帰ってくる。

 将来は誰か婿養子を迎えて若女将になる約束だったカエデは、都会暮らしをしていた間は洋服で過ごしていたが、修行となるとそうもいかず、和服を着て接客をすることに。

 深夜になって仕事が一段落し、風呂上がりに浴衣を着たカエデ。浴衣姿の彼女に興奮した、かねてからカエデが弟のように思っていた年下の板前のヒロキが、「前々から好きでした!」と襲いかかる。

 旅館の評判を気にするカエデはこの場でレイプに発展することはなんとしても避けたい。「まだ仕事中だから服を脱がさないで」と懇願したところ、「胸だけでも触らせて」と食い下がるヒロキ。結局、カエデの身八つ口にヒロキの手を入れるところまで許可したところ、「今日は仕事中なのでこれで我慢しますが、両思いになった今、次こそは最後までさせてください!」とヒロキがひとまず妥協した話だった。なお、両思いになったと思っているのはヒロキだけ、カエデは翌週にお見合いという、今後の修羅場が不可避な痛々しいオチまで書かれていた。


「そこから、おっぱい吸えるんだよ?」

 ええええー?

「考えてみてよ。着物着た昔の人が赤ちゃんに授乳する時、いちいち脱がなきゃだめだったら大変でしょ? 着るのに時間がかかるんだし。」

 言われてみたらそうだ。

「だから、身八つ口からおっぱい出せるようになってるんだ。

 前をはだけたら見栄えが悪いから、横からこっそり授乳。」

 うまく出来てるんだね。

「遥も飲んでみる? 神様ミルク。」


 …………え? えええええーーーー??

「海沙お姉ちゃんの愛情たっぷりのエネルギー、おっぱいから出しちゃうんだ。

 吸いたいでしょ?」

 えっと……。

「私のミルク、私のエネルギーの塊みたいなもんだから、一口飲むと気絶しちゃうかもね?

 遥への大好きの気持ちがいっぱい入ってるから、美味しいと思うよ?」

 海沙お姉ちゃんに負担かからないの?

「人間がちょっと献血しても問題ないのと一緒だよ。」

「葉月のミルクと飲み比べしてもらわないとね!

 神様によって味がちょっと違うと思うから、両方試してもらわないと。

 だいじょうぶ、遥が海沙お姉ちゃんミルクで意識失ったら、次の日に飲んでもらうだけだから。

 甘くて優しい味の、すごく美味しい、遥専用の葉月特製ミルク。定期的に飲まないと生きていけなくなったりして。」

「最後は遥ミルクを二人で両側から吸っちゃうんだ。ねー? 葉月。」

「海沙お姉ちゃんと私のミルクが、遥の心と混じりあって、愛情たっぷり、甘みたっぷり極上の遥ミルクができちゃいそうだね。海沙お姉ちゃん、今よりもっとツヤツヤになっちゃうかも?」

「葉月の乳牛みたいな乳ももっと大きくなっちゃったりして。

 私達の美容のために遥ミルクをいっぱい出してもらわないとな。」

「心配しないで。本来なら母乳が出ない男の子でも、この世界だとおっぱいからミルク出せちゃうから。私達が遥ミルク飲んでいる間、頭をなでなでしてね? ミルク出している間に優しい気持ちになってると、その分美味しくなるんだよ?」

 おかしい。どうみてもこんなのおかしいよ。

「絶対に癖になっちゃうから、騙されたと思って一度付き合えよ。

 遥も私達のミルク飲んだら、体も心もすっきりするよ?」

「遥お兄ちゃん? キスとはまた違う気持ちよさだよ?」

 じゃあ、明日お願い。

 今日はもう頭が限界。

「わーい。遥お兄ちゃんのミルクでお腹いっぱいにしてもらうんだー。」

「遥、逃げるなよ?」


 ◆ ◆ ◆


 数日後、布団の中。

「神様ミルク、美味しかったでしょ?」

「遥お兄ちゃん、ちょっと飲んだだけで意識飛んじゃってたよね。」

「飲めば飲むほど体に馴染んでいくから、ちょっとずつ慣れていこうね?」

 慣れるものなんだ。

「今日は旅行の続きがしたいなー」

「遥は私達とお風呂に入る想像をして片手で数えきれないくらい楽しんだわけだし、次はご飯にしようか?」

「ご飯とお風呂と遥お兄ちゃん、全部満喫しないとね!」

「ご飯、何食べたい? ホテルのビュッフェ? 部屋で和食フルコース? それとも、近くに食べに行く?」

「お揃いの浴衣を着ているとはいえ、外に食べに行くと目立つからねー。三人でいちゃつきながら食べたいな。」

 それがいいと思う。

 ところで、どんな浴衣にするの?

「そこに気づくあたり、遥の恋人としての経験値が上がってるのがわかるよ。」

「男の子でも女の子でもいける柄となったら、花びらの部分の色が薄くなっている、あの浴衣なんてどうかな?」

「雑誌にのっていた、鬼灯のような五弁の花が散りばめられている浴衣か。葉月、それでいいんじゃない?」

「川遊びの帰りに着ていたパーカーと、同じ色の組み合わせがいいんじゃない?」

「ナイス、葉月! ピンク色の浴衣の遥、美味しそうだなあ。」

 本当に似合うの? 男の子らしくないんじゃない?

「問題なし! 私を信じて!」

「葉月の言うとおりだぞ、遥。絶対に似合う。」

 うーん。

 変な感じがしても逆らってはいけない。

「で、食べる時の席は私と遥が向かい合わせ。葉月はどうしよう。」

「私も遥お兄ちゃんと向かい合せがいいー。」

「遥はどうしたい?」

 喧嘩しないでほしいな。二人とも俺の大切なお嫁さんだし。

「遥がそこまでいうなら葉月と似たような条件で座るか。

 でも、三人並んで外を見ながらというのは味気ないな。」

「私と海沙お姉ちゃんが向かい合わせ、そして遥がその隣のお誕生日席。これでいい?」

「……しょうがないな。その条件を飲むか。

 でも、遥は私の右に座るのが条件だ。右手で遥を弄びたいからな。」

「ずるいー! 海沙お姉ちゃんは横暴です!」

「その代わり、たまに遥にご飯を食べさせてもらったら? 葉月は遥の右手のほうにいるんだし。」

「うーん。もう、しょうがないなあ。」

 俺はそれでいいよ。

「葉月? このあたりの名物ってなんだっけ?」

「えーと。川魚料理と、あと牛肉もそうみたい。」

「そのあたりを頼もうかな? 遥もいいよね?」

 うん。


「ご飯食べ終わったら何をしようか? 私、花火持ってきたけど、駐車場で花火やらない?」

「花火なんて毎年毎年、例祭で見飽きてるでしょ?」

「線香花火を持ってきたんだ。遥お兄ちゃんが、幻想的な線香花火で照らされた私達を見たら喜ぶかな、って思って。だめだったかな?」

 浴衣姿でしゃがんで線香花火を持っている葉月。

 心がときめく光景だ。

「もちろん私の分もあるんだよね?」

「当たり前でしょ? 一人でやってもつまらないもんね。」

「遥は点火係だな。自分で楽しむより美人な私達を見てるほうが好きでしょ?」

 好きだけど……。

「でも、それだと遥お兄ちゃんがかわいそうだよ。」

「しょうがないから、私達が一回ずつ、火をつけてあげるから。線香花火を楽しんでいる可憐な遥の姿も逃すわけにはいかないからな。」

「遥お兄ちゃん、私達で一緒に持ってもいいんだよ?」

「そうだ。線香花火ってたいてい途中で玉が落ちちゃうんだよね。

 最後まで落ちなかった人は、他の二人に何でも命令できちゃうっていうの、どうよ?」

 着火係、誰がやるの?

「しょうがない、このためだけに蝋燭も用意しておくか。でも普段は遥に着火してもらおう。」

「海沙お姉ちゃん、それいいね!」

 俺、いつも二人の言うこと聞いてばかりじゃ……。

「だから遙の言うことも聞いてあげるいいチャンスなんじゃない。考えとくんだよ?」

 二人が玉を落とさなかったら、酷いことになりそうだな……。

「葉月は遥お兄ちゃんを一晩独り占めして、あーんなことやこーんなことをしちゃいます!」

「葉月、積極的すぎるぞ? もともと遥に目をつけたのは私なんだからね?」

 目をつけていたって、いつから?

 俺、いつから狙われていたの?

「細かいことは気にするな、遥。

 遥は私達の大切なペットなんだから。」

「葉月お姉ちゃん、だめだよ本音をいっちゃ。

 遥お兄ちゃんは家族であってもペットじゃないんだから。」

「最近はペットも家族に入るんだっけ?

 まあ、一生大切にしてあげるから、遥は大船に乗った気でいな。」

 話が物騒になってきたけど、深く考えてはいけないのだろう。


「そういえば、天の川が見えるかな? 夏だから見やすいと思うんだけど。」

「どのあたりを見ればいいか事前に調べておかないとな。条件が揃わないといけないけど。遥って目がいいほうだっけ?」

 そこまで悪く無いと思う。裸眼で問題ないし。

「北斗七星くらいなら見えるんじゃない? この呼び方、私達的にはすごい違和感があるんだけど。」

「あの二重星、実際は二つにわけて考えるから、八つの星で構成されていると考えるのが適切なんだよね。」

 そうだったの?

「私達の中ではそういうことになってるんだ。

 北斗七星と北極星を確認できるとなんか嬉しい気がしない?」

「星を見ている遥お兄ちゃんの横から、そっと抱きつくのも捨てがたいよね。」

「葉月?」

「後ろからだと帯がだめになるから、横から甘えるの。

 体をすりよせて、胸をあてるんだ。」

「遥に胸以外の喜びを教えないと、私の立場がなくなりそうだな。」

「流れ星が見えたら楽しいな。

 末永く遥お兄ちゃんといちゃつきたいです、ってお願いするって決めてるんだ。」

「私は、そうだな。

 遥が私なしで生きていけない体になりますように、かな?」

「海沙お姉ちゃん、それは酷すぎるよ。

 せめて、遥お兄ちゃんが私と海沙お姉ちゃんが好きで好きでたまらなくて、私達が毎晩迫らないとだめな心になりますように、くらいにしないと。」

 二人揃って俺のことがそんなに好きなの?

「そんなに長いと願い事言えないぞ?

 そうだ、遥はどんなお願いをしたいんだ?」

 いきなり言われても困るな。

 でも、頭のなかに浮かぶのは海沙お姉ちゃんと葉月のことばかり。

 二人と今後も仲良くできますように、かな?

「さすが遥。私達三人の中で最も常識的な回答だ。」

「もっとはじけてもいいんだよ?」

 これでも遠藤や樺山には呆れられてばかりだよ?

「家族と友達、どっちが大切だ?」

 家族。

「家族って誰?」

 ……海沙お姉ちゃんと葉月。

「だったらいいじゃない。

 私達が問題ない、って言ってるんだから。」

「この帯でお布団入るのは難しいから寝る前には着替えないとね。」

「いつもの野暮なパジャマでなくて、せっかくだから私達とお揃いにするか。」

「むしろ全裸のほうがよかったりする?」

「遥に考える時間を与えないとな。

 裸がいいか、嫌なら何を着て欲しいか。明日、考えておけ。いつものようにネットの通販を漁って掘り出し物を探すだけの簡単な作業だ。もちろん、下着も忘れずに。」


 ◆ ◆ ◆


 翌日、言われたとおりに女性用のパジャマを漁ってしまう俺。

 やっぱり全裸は味気ない。布団とシーツがあるとはいえ、ずっと裸というのも変な感じだ。

 夏だから、ゆったりしていて、袖丈も裾丈も短めがいいかな。上はふんわりとした袖がちょっとあったほうがいい。脱がしやすいように前ボタンかな。下はちょっとフリルがついていて、ホットパンツに近いくらいの丈の長さ。やはり、姉妹の美脚は楽しみたい。

 これといったデザインといったものがなかなか見つからず、結局、数百枚は画像を見たと思う。大多数は外れ。コンマ1秒も注目しなかったと思う。

 まるで食品工場の検査員になった気がする。何時間も延々と商品を目で見て、不良品があったらすぐに反応するんだっけ。人間の目と画像認識能力、集中力ってすごい。

 最終的に、これ! と思ったものがあったけど、色はどうしよう。せっかくだから選んでもらおう。

 下着は上下とも白かな。新婚旅行っぽさのある、初々しい白。下は横を紐で結ぶパンツにして、姉妹のお股の匂いを楽しみながら口で紐を引っ張って外すんだ。上は珍しくホックが前にくるものにしよう。前のホックを外して、ブラのカップからこぼれおちる、姉妹の美しいおっぱいを楽しむんだ。


 ◆ ◆ ◆


「遥お兄ちゃんのパジャマ選びのセンス、流石だね。」

「私達のヒント……。」

「海沙お姉ちゃん? たまには遥お兄ちゃんをたてないと。」

 二人とも探してる途中に黙ってるのは変だと思ってたけど、そういうオチだったのね。

「遥、パジャマは色でギブアップしてたんだっけ?」

「三人分考えるのが大変だったのね。」

 え? 俺も着るの?

「当然でしょ? 昨日言わなかった?」

 もっと男の人が着ても問題なさそうなのにしておけばよかった。

 それに下着も……!

 まさか姉妹が両側から紐を引っ張るの?

「二人で仲良く紐を咥えるんだよ? 私達の上目遣いの目線を楽しんでいる間に、パンツを脱がされちゃうんだよ?

 そうだ! せっかく丈の短いパジャマ着てるんだし、遥お兄ちゃんのパジャマの裾から紐を引っ張ってみない?

 そっちのほうが盛り上がるでしょ?」

 おかしいよ。何かが絶対おかしいよ。

「その前に下着を着た状態もたっぷり楽しまないとな。」


「パジャマは色も一緒のお揃いというのは悪くないかもしれないけど、せっかくだから、色を変えてデザインをお揃いにしない?」

「そうだな。私達のパジャマの色を混ぜたら、遥のパジャマの色になる、ってのはどうだ?」

「それいいよ! 海沙お姉ちゃん、すごいセンスだね!」

「遥が私達色に染まってる感じがしていいでしょ。」

 目の前がぐらってなった感じがする。

 どうしてそんな発想ができるんだ?

「遥も喜んでるみたいだな。白と赤を混ぜてピンクというのも、なんか面白くないな。」

「赤はちょっときつすぎるかも。優しい色がいいと思うんだよね。」

「遥? 何か思いつかない?」

 俺は色彩のセンスはあまりないと思う。色紙があればいけるかもしれないけど。

「しょうがない。遥でもわかるように聞くか。

 光の三原色ってあるでしょ。一番、使えそうな組み合わせはどれ?」

 光の三原色は赤、緑、青。赤と緑で黄色、緑と青で水色、青と赤で紫色。もちろん、原色そのものは使えないので、色を薄める。この中だと青と赤で紫色、かな。

「そうすると、私がパステルブルー、葉月がパステルピンク。そして遥がパステルパープルかな。」

「海沙お姉ちゃん、私はそれでいいよ。」

「遥も異論はないな。想像するだけで気分が盛り上がってくるでしょ?

 言うまでもなく、遥のパジャマもボタンの合わせは女の子合わせで、右側が上だからね。」

 予想ついていたけど、結局こうなっちゃうんだよね。


「遥をどうかわいがるか、これがもっとも重要な問題だ。

 枕投げで汗をかかせて服を乱れさせるのもありだけど、やはり、もっと濃厚ないちゃつきがないと。」

「どう服を着せたまま興奮させるかだよね。」

「ボタンを少しあけて、胸やお腹を触るのは基本かな。」

「海沙お姉ちゃん? 本当は触るだけじゃなくて、頬ずりしたりペロペロしたいんでしょ?

 それに、せっかく下の丈が短いんだから、足沿いに手を滑らせてお尻を堪能しないと。足へのスキンシップもじっくりやらないとね。太ももにいっぱい唇を押し当てるんだ。」

 手を入れちゃうの?

「当たり前でしょ? ついでにお腹のお肉も揉んじゃおうかな。」

 え?

「でも、遥お兄ちゃんは痩せ気味だから、面白く無いかな。」

「腰回りから手を入れて股間をまさぐるのも忘れてはいけないよね。会陰をぐりぐり押してみるとか、割れ目を開くとか。

 遥にやおい穴があったらいいのになー。」

 そんなもの、ありません!

「この世界の遥にはやおい穴があっても問題ないんだよ?

 やおい穴をいじられるとどう気持ちいいかは想像してもらわないとダメだけど。

 せっかくだから、私達が楽しめるようにやおい穴を開けてよ。」

 無理、無理だって!

「遥お兄ちゃんもいつか、やおい穴が欲しくなるよ。

 それに遥お兄ちゃんをいじめてばかりじゃだめだよ。

 たまには優しく抱っこしてあげないと。」

 あれ? 良心的な意見だ。

「抱っこという建前の拘束か。いいな、それ。」

「違うの。優しく胸に顔をうずめさせて、頭をよしよしして撫でるんだ。

 妹に甘えるというのはお兄ちゃん的に抵抗感があるだろうから、こういう機会をのがしてはダメだよ。」

 はぁ。

「ブラのホックが閉じている状態と外れている状態。二つのおっぱいの違いを比べてみてね?

 そうだ。下着を脱がすの、いつにしようか?」

「遥の発情次第じゃない? 脱がすチャンスは一人一回だけだから、もっとも効果的なタイミングでやるんだぞ?

 ゲームの必殺技みたいなものだ。」

「遥お兄ちゃん、責任重大だね?」

「でも、パジャマはできるだけ着せた状態がいいな。下着をちゃんとつけていない状態でパジャマを着ているというのがいいんじゃないか。」

「わかる、わかる。服の上から触られる感覚って、脱ぐと楽しめないんだよね。」

「ゆとりがあるパジャマだと、触られている時とそうでないときで皮膚にあたる感覚が違うので、それが趣深いんだよな。服が乱れるのも視覚的によい。」


 あのー。いつもこんなことばかり考えてるんですか?

「遥? 大好きな遥のことを考えるのは当然だろ?

 それに遥だってよくエロサイトを漁ってるでしょ。よく読むエロ小説も、男の子が攻められているものばかり。私たちに犯される想像ばっかりしている、ド変態な遥。もっと素直になっていいんだよ? クラスメートにばれたら高校生活終了だろうけど、私達は全然問題ないんだから。」

 いいの?

「むしろ、私達をもっと満足できるような変態になりなさい。アブノーマルなものじゃないと、心が動かないんだから。

 さて、話を戻すけど、遥もおそろいのパジャマで足の露出がすごいんだし、後ろから遥を抱えて、大股開きにするのはどうだ?

 ふくらはぎ、それでもだめなら膝の裏を抱えたら、逃げれなくなるんだし。そして、もう一人が太ももを手で、顔で、舌で、髪で、いっぱい触っちゃうんだ。そして、ボタンをちょっと外して服の下を攻めたり、お尻を直接触ったり。その体勢のまま足の指の間を攻めるのもいいかも。」

「大股開きって好きな人の前でしかできない格好だから、それを許すというのは愛情表現なんだよね。

 遥お兄ちゃんは抵抗しないよね? 私達がかわいがってあげるというのに。」

 抵抗しない、と思う。

「まあ、抵抗したらさらにお仕置きするだけなんだけどね。抵抗しなくても襲うけど。まずは私が遥を抱えて葉月が楽しむのかな。太ももを舌で味わったり、ボタンを開けて胸を優しく揉む。こんな感じで葉月が優しく攻めて、その次に私が激しく攻める。」

「私が太ももに指を這わせたら遥お兄ちゃんは大喜びするんだと思うよね。ふーっ、って息をかけるのもいいかな。頻繁にキスするのも忘れちゃだめだよね。大好きだよ、って気持ちを込めて、落ち着かせるんだ。

 そうだ、太ももの内側にキスマークつけちゃおうかな? それも、できるだけお股に近い場所に。よほど深い関係でないとつけられない場所だよ?」

 葉月のキスは心が落ち着く。

「他にも、葉月に遥を押し倒させて、遥の足の間に入り込んでもらって足を閉じられなくするのはどうだ? まずは遥の両足を葉月の両肩の上にそれぞれ乗せる。遥が辛くなって足を両肩から滑らせようとしてもいいけど、そうしたら葉月が遥の足を広げて、それはそれで恥ずかしい姿になっちゃうし、お股の筋肉が疲れちゃうからね。逃げ場なんてどこにもないんだよ。想像するだけで美味しそう。」

 そんなにきつい体勢なの?

「今度、枕使って試してみなよ。

 遥が何か声をあげようとしたら思いっきり私の唇で遥の口を塞ぐんだ。それでも暴れるようだったら露出している太ももの内側を軽く叩いちゃおうかな。つねってみてもいいかもね。おとなしくしていたら、遥の耳たぶを指でもみもみして、その後は遥の頬をなめてみよう。遥の服を乱れさせながらなでなで、もみもみ、すりすり、ちろちろ。胸を露出させて胸を揉みつつ、乳首を吸うと遥は喜ぶんだろうな。この時には遥のブラのホックは外れた状態にしてもらう。顔に胸やお腹を押し付けるのもありだよね。」

「海沙お姉ちゃん、交代で固める役と攻める役をやろうね!」

「そして、寝るときは当然、遥が真ん中で川の字。」

 二人の恋人として当然か。

「別に遥お兄ちゃんが私達のどっちかを向いて寝ても全然怒らないよ? 背を向けられても、後ろから抱きつくだけだから。」

「私に背を向けたら激しくいやらしい胸もみもみが待ってるぞ。

 私たちと一緒に寝てると心が落ち着いて安眠できるからね。心もリフレッシュできるよ?」

「そして、最初に起きたほうが遥お兄ちゃんにキスをするんだ。」

「遅い方はどうしよう。」

「遥お兄ちゃんの手の指を口に含んで、ぴちゃぴちゃ舐めるのはどうかな?」

「うわぁ。ずいぶんとマニアックな話だな。」

「違和感で飛び起きちゃいそうだよね。」

「どっちに目覚めのキスされたい?」

 海沙お姉ちゃん、かな。

 口の中を乱暴に攻められる方が、ちゃんと起きれる気がする。

「遥お兄ちゃん? 指を攻められるのも悪くないんだよ?」

 今度、お風呂でどんな感覚になりそうか試してみるよ。

 指を濡れた温かいタオルでクニクニするんだ。


「旅行から帰るときは行くときとはあまり変わらないかな。」

「海沙お姉ちゃん? 一つ忘れてるよ?

 旅館って無駄に死角が多いんだよね。

 部屋に戻る前に盛っちゃう人のためだと思うんだけど、そういうろころで遥お兄ちゃんに迫らないと。キスとか。お触りとか。」

「死角のたびに、ってわけにはいかないけど、これは欠かせないな。

 帰り道も家に帰るまで遥をたっぷりかわいがらないと。」

「電車の中でも本当のきょうだいみたいにいちゃつこうね?」

 ……樺山に殺されるよ?

「いいじゃない。実際に実行するわけじゃないんだし。」

「そうだよね。旅行に行って実際に体を重ねる相手は、私達じゃなくて人間だし。」


 最後はちょっと悲しそうになる二人。


 海沙お姉ちゃんと知り合ってから約2年。

 葉月と家族になってからは、まだ半年もたっていない。

 でも、ずっと三人家族で過ごしていた感じがする。

 二人には圧倒されっぱなしだけど、俺は今、すごく充実した人生を送ってると思う。


 俺に人間の彼女ができたとき、どういう関係になるんだろう。

 彼女とどんな感じで接するんだろう。

 こんな変態的で爛れた関係になるのかな。

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