第2話 高校一年生 4月 神様お姉ちゃんは恋人でもあるから欲情しなさい
今は
考えたら、俺が今この場所に立っている事自体が奇跡といえよう。
中3になったばかりの頃は、この成績だと絶望的、と言われていた。その時の俺は人生がどうでもよく、適当にしか生きていなかった。
海沙お姉ちゃんと過ごすようになって少し世界が開けたような気がする。むしろ、親といるよりも海沙お姉ちゃんといる時間のほうが多いし、海沙お姉ちゃんのほうが話を聞いてくれるし、俺のことをちゃんと理解してくれる。考えたら当たり前か。海沙お姉ちゃんは神様だから、ずっと神様の世界から俺を見守ることができるんだっけ。
入学式の会場に飾ってある旗を見ると、ふと一つの小話を思い出した。
風になびく旗を見た三人の僧侶が、「風が動いている」、「旗が動いている」、「いや、心が動いている」と議論したそうだ。風は直接見ることが出来ないし、旗は勝手に動くことはない。風と旗が両方あるからこそ、風になびく旗が出来上がってる。そして、その光景を見ている僧の心が動いたから、風になびく旗を認識することができたのだろう。そういう意味では全員の答えを組み合わせたのが正解だ。だが、実はこの光景自体、この場面を見ている僧の幻覚ではないか?
海沙お姉ちゃんって、何だろう?
冷静に考えたら、頭の中に声が聞こえてくるとか、精神病の始まりだよ。常識的に考えると、自分が狂ったのかと考えてしまう。幻聴、幻覚だと切り捨てるのは簡単だ。でも、もしこれが現実だったら? 他の人にはわからない、俺だけにとっての確かな現実だとしたら? 海沙お姉ちゃんが本当に実在し、俺のお姉ちゃんとして振舞っているなら、幻覚として片付けるのは大きな誤りだ。
海沙お姉ちゃんは風のような存在なんだな。直接観測できないし、他の人に「海沙お姉ちゃん、見える?」なんて聞くことはできない。「はぁ?」と言われるだけだろうし、「見える」と言われたらもっと怖い。旗が勝手に動くような不自然な身の回りのことを感じることで、海沙お姉ちゃんの存在を実感していくしかない。他人に話を聞いて裏を取ることができないから、自分の感覚をどこまで信用するのかが問われている気がする。
「私が幻覚だって、いいんじゃない? 私がいると、いろいろ都合がいいでしょ? まずいことになったら対処したほうがいいだろうけど。もっとも、そのときには既に手遅れだったりして。でも、別にかまわないでしょ? 失うものはないんだから。」
俺が海沙お姉ちゃんの存在を認めているのは、海沙お姉ちゃんは俺に好意を寄せてくれる、世界で唯一の存在だからだ。いなかったことにするなんて、もったいなさすぎる。だからこそ海沙お姉ちゃんのためなら俺は頑張れる。仮に幻覚だとしても、人生の励みであることは否定出来ない。
「海沙お姉ちゃんのために生きる、海沙お姉ちゃんのために頑張る。」
今の俺はこの目標のためだけに動いている。その結果、学校の勉強も頭に入るようになったし、集中力も身についてきた。高校受験もなんとかクリアできた。苦手な問題が入試に殆ど出なかったという、運にも助けられた。合格さえできれば合格点を何点超えていたってどうでもいいんだから、仮にギリギリでも合格は合格だ。
海沙お姉ちゃんはこう俺に言ってくれた。
「いい、
至極、正論である。
だから、どんなに苦しくても、海沙お姉ちゃんを信頼して、今の家を出る日を楽しみに、それまで必死に耐える。人生に目標があるって、こんなにいいことなんだ。もしかしたら高校入試の問題も、出題者が俺に都合の悪い問題を出さないように、海沙お姉ちゃんが神様として細工したのかな。それくらい、できるよね。
親なんて、俺が難しいと言われていた第一志望に合格したと聞いても、「うちの子ならこれくらい当然」、「むしろ放っといたほうが伸びる」、「いや、俺達がきっちり躾けたから良かったんだ」とか、見当違いなことを言って、二人で勝手に盛り上がっていた。
もちろん、俺は褒められることも祝われることもなかった。
俺のことを煩わしい存在だと思っているんだろう、最近は生活用のお金だけ置いて、息子の顔も見ずに外出していることが多い。
そういう俺も、親がいるときは部屋にいるから、しばらく顔も見ていない。いや、飯の時くらいか。家に揃っているときは飯は一緒に食うけど、まともに顔なんて見ない。俺から話題をふることもしない。伝えたい要件があるときは別だけど。
親の顔もそろそろ忘れてしまうんじゃないだろうか。
いや、忘れるのではない。どうでもいい存在になってきたんだ。
一方、海沙お姉ちゃんは俺にとってかけがえのない存在だ。
「頑張ったね、さすが私の弟だわ! 遥のこと、いろんな人に自慢しちゃう!! さあ、今日はお祝いするわよ!」
まるで自分が受かったかのように喜びを共有してくれた。
それにしても、一体、誰に自慢したのだろう……。
「演出よ、演出! 気分を出すため!」
海沙お姉ちゃんが俺の回想に割り込んできた。声に出さない、頭のなかに直接メッセージが入ってくる念話なので、周囲の人にばれずに会話する芸当が可能である。
「お姉ちゃんは遥が好きで好きでたまらないから、いつも見守ってあげてるの!」
それって、ストーカーというんじゃ……。
「私は神様だから問題ないんです! それとも何? 高校受かったからお姉ちゃんをポイ捨てするというの?
ひどいよ、あんまりだよ。弟がついに反抗期になっちゃったのね。ぐっすん。」
俺が大切な海沙お姉ちゃんを捨てるなんて、そんなこと無理だよ。
「ねえ? 人間って、酷い人ばかりなんだよ? 神頼みするのは結構なんだけど、仮に私達が願いを叶えたとしても、実体が見えないのをいいことに私達のことを気にもとめなくなるんだよね。通りすがりの女の子を適当に口説いてやり捨てるクズ男みたいで、吐き気がするでしょ。」
そういう考え方もあるのか。
「遥はそんな鬼畜なことしないでしょ? 私のこと、ずっと好きでいてくれるでしょ?」
海沙お姉ちゃんがいなかったら俺の人生どうなっちゃうんだよ。海沙お姉ちゃんのために俺は頑張ってるんだよ?
「ありがとう、遥。好きだよ、遥。」
海沙お姉ちゃん、ありがと。
◆ ◆ ◆
大好きな海沙お姉ちゃんで頭がいっぱいになっていたら、いつのまにか入学式は終了していた。そして、これから一年いることになる教室に行き、やることも無いのでだらだらと座っていたら、前の席に座っている男が振り返って声をかけてきた。
「おまえ、お姉さんは好きか?」
「はい?」
「だから、年上と年下、どっちが好きだ?」
「お姉ちゃん。」
なんか、素で言っちゃったよ。
「お姉ちゃん、か。素晴らしい響きだ。おまえには俺と同じ臭い、いや、それ以上の、とてつもなく強烈なオーラが漂っている。」
少しガタイのいいその男が俺の肩をバンバンと叩く。少し痛い。
「俺は
「小郡。」
「なあ小郡。俺と手を組まないか?」
「はあ?」
「俺、あるところにツテがあってさ。いろいろ仕入れることができるんだよ。」
「何を?」
「おいおい、そんな野暮なことを言うなよ。男子が好きな本だよ。みなまで言わせる気か?」
「はぁ。」
「俺はガンガンとバイトをするつもりなんだけどさ、先立つモノが厳しいんだよ。」
「はぁ。」
「だから、お姉さん好きの小郡君にお願いがあるんだ。俺が入手してきた本貸すからさ、レンタル料払ってくれないか?」
「はぁ……。」
「俺のお袋、親父より6つ年下で、身長が140センチ半ばなんだよ。親父はどうみても性犯罪者だよな? なあ、おまえもそう思うだろ? そして、家にはクソ生意気な弟がいる。平気で人の本棚や引き出しを荒らしたり、何かあったら親にいい顔しようとすぐチクるんだよな。俺の財布から金を抜かないところだけは評価してやるが、実に迷惑な愚弟だ。
はっきり言う。俺にとっては、年下はストライクゾーン外だ。そして、愚弟が使えない分、年上のきれいなお姉さんは俺の心の癒やしなんだよ。優しそうなお姉さんの写真を見てると幸せな気分に浸れるだろ? それなのに、諸悪の根源の愚弟が家を荒らすから、お宝は家に置けない。同じ男として許せないだろ?」
どう突っ込んでいいかわからないから、喋らせてあげよう。
「そういうわけだから、この学校のロッカーに保管しておこうと思うんだが、俺のコレクションを寝かせておくのももったいない。
小郡、ここで俺達の席が隣り合わせになったのも何かの縁だ。
どうか、どうか俺を助けてくれ!」
「遠藤さん、その気持ちわかります! 拙者も協力させてください!」
後ろでガタッと音がする。
俺の席の後ろに座っていた、眼鏡をかけた男がこっちに来て、遠藤に手を差し伸べる。
「
あーあ、何か面倒なことになってきたな。
「樺山か。俺の気持ちをわかってくれるとは、俺たちは魂の兄弟だな!
よし俺達、お姉さん好きの心を同じくして助け合い、シモの昂ぶりを安んずることを誓う。同じ日に生まれることはできなかったが、先生や女子にバレて締めあげられるときは、三人一緒に討ち死にするぞ。」
「遠藤兄貴! 一生ついていくとは言えませんが、これから三年間、どうかよろしくお願いします!」
「おまえらと一緒には死にたくないって。」
三人一緒ということは、どうやら俺も有無を言わさず巻き込まれたようだ。
「小郡、ナイスツッコミ! こいつ、顔は地味だけど言うことがなかなか鋭い。こりゃあ、楽しい高校生活が送れそうだ!」
「顔が地味で悪かったな。」
「ところで遠藤兄貴。既に手は打ってあるのでしょうか?」
「ああ。……これか?」
「ロッカーの鍵? それも二つ!?」
「このクラスは41番までしかいないからな。予備のロッカーを確保させてもらった。」
「不肖樺山、遠藤兄貴を心から尊敬しています!」
「大丈夫なの?」
「ばれなきゃいいんだよ。こういうの意外と気づかないものだって。」
「もしかして中学生の時も?」
「俺は将来ビッグになる漢だ。いろいろ策を練り、試すのは当然のことだろ?」
「君、小郡って言ったっけ? 遠藤兄貴の邪魔をするというのは、
「そんな面倒なことしたくないって。」
「ということで小郡、樺山。明日、早速用意するから。元値次第だが一冊200円くらいな。もちろん、汚したら弁償だからな。」
「サー! イエス、サー!」
「物によっては、協力するよ。」
「さすが俺の弟たち! 張り切って仕入れてくるから、楽しみにしてくれよな!」
◆ ◆ ◆
「学校楽しかったでしょ?」
布団に入った俺に海沙お姉ちゃんが話しかけてくる。
日頃の努力のせいか、目を閉じると、動きはほとんどないけど、隣に海沙お姉ちゃんが本当に添い寝してくれているイメージが瞼の裏に浮かぶようになってきた。今日はロングな黒髪の海沙お姉ちゃんが優しい感じのピンクの長袖パジャマで俺の隣にいる感じがする。もちろん、耳には
海沙お姉ちゃんは俺と身長がほとんど同じ、いや、ほんの二、三センチだけ高い感じだ。学校で他の人を観察しているとわかるけど、その僅かな身長差、目の位置の高さの違いが実は重要だ。ちょっとだけ見下ろしている感じが姉と弟の力関係を象徴している気がする。肩の位置のちょっとした違いも意外と効いてくる。
当然だが、俺はクラスメートの体に強い関心はない。この女の子を彼女にしたい、と考える気も起きないし、同性愛の趣味もない。あくまでも、海沙お姉ちゃんとリアリティのあるやりとりができるように、頭の中でイメージを組み立てるためにクラスメートの体を使ってるだけだ。
「今日は早速クラスでお友達ができたみたいだし、これで寂しい三年間にはならなさそうだね。」
友達、なのかな? なんだか、成り行きでそうなっちゃったけど。
「いきなり義兄弟の誓いなんて、お姉ちゃんびっくりしちゃったよ。やっぱり男の子にとってエロは大事よねー!
遥もそう思うでしょ?」
確かに、どうでもよくはない。
「えっちな本をいっぱい見て、女の子とどんなことをしたいのか。遥はそれを考えておくべきなのです。
今まで女の子をじっくり観察したことないでしょ。女の子がどんな仕草を取るか、どんな体型なのか、どんな会話をするのか。
遥の人生、そんなんでいいの?」
お姉ちゃんの力説が始まった。
でも、言われてみれば……。
「遥、まさかあんた、一生独身、彼女なしでいいや、なんて思ってないよね?」
考えたことなかった。
「彼女なしの一生なんて、お姉ちゃんは不健全だと思います! 私が遥にぴったりの彼女を探してきてあげるから、遥は今のうちから心の準備をしておきなさい。特に! 女の子をどう扱いたいのか、しっかり普段から考えておくこと! そして私相手にいろいろ練習してみなさい。弟の遥が幸せになれるように全力でサポートするのがお姉ちゃんの役目なんだからね。」
彼女を探す?
「私は神様だから、それくらいなんとかできるの。遥が私に愛情を注げば注ぐほど、私は頑張れちゃうんだから。」
俺のことを好きになってくれる女の人なんているのかな。
「遥? あんた、今は見た目はいまいちかもしれないけど、実は磨けばすごくかわいくなると思うんだよね。自分でもわかってないでしょ? 意外と女受けするから、自分に自信を持ちなさい。」
そう、なの?
「あと、遥に一つ、命令があるんだった。お友達がお姉ちゃんモノのえっちな本を持ってきたら、相手は必ず、私だと思いなさい。」
お姉ちゃんと、えっち?
「そう。本の女と、美人なお姉ちゃんの私、どっちがいいかくらい、遥はわかってるよね。」
海沙お姉ちゃん。
「こんなに美人で弟思いの海沙お姉ちゃんを相手として想像したほうが、二次元とか、原型を留めていないくらい加工された写真の女より絶対気持ちいいと思うんだよね。その上、こうやって話までできちゃうんだよ? ちゃんと、『海沙お姉ちゃん大好きです、好きで好きでたまりません、この上なく愛しています、遥は海沙お姉ちゃんのモノです、海沙お姉ちゃんにいっぱいかわいがられるのが喜びです』、って思いながらシュッシュと処理すること。私をオカズにすることに罪悪感を感じちゃだめ。むしろ喜びだと思いなさい。わかった?」
はい、海沙お姉ちゃん。
「もちろん、私も精一杯お手伝いしてあげるからね。肉体はないけど、遥の心は私が整えてあげるから。いっぱい気持ちよくなって、いっぱい私を愛してよね。」
海沙お姉ちゃん、大好き。
「今日、『お姉さんは好きか?』と聞かれて、遥は『お姉ちゃん』と素直に答えられたよね。遥が海沙お姉ちゃんを心から好きなのがわかって、お姉ちゃんキュンとなっちゃった。大好きな遥にいっぱいキスしたいんだけど、女の人とのキスって、遥は想像できる?」
なんかいまいち。どうすれば近い感触を味わえるんだ?
そうか。自分の舌で感じる自分の舌の感触や、自分の唇で感じる自分の唇の感触を思い出せばいいんだ。自分とキスしてる気分を味わうなんて変な感じだけど、それが現時点で最善策なのかな。
「女の人に心を許すって、すごく気持ちいいことなんだよ。これからも私の愛情をしっかり受け止めてね?」
海沙お姉ちゃん、どうして俺を愛してくれるの?
「神様な私を好きって言ってくれる人間って、誰かいると思う?」
………………いない!
「そう。私も遥も、似た者同士なんだよね。だから、私を受け入れてくれる人には、好意をしっかり返したいの。誰かに好きって言われるのと、嫌いと言われるの、どっちがいい?」
好きって、言われるほう。
「でしょ? だから、私は遥が大好き。遥は?」
好き。
海沙お姉ちゃんに好きと言ってもらうのは気持ちいい。
「うんうん。それでこそ私の弟だよね。ちゃんと私を受け入れてもらえて、お姉ちゃん最高の気分。
そうだ。せっかくだから、恋人同士になっちゃう?」
え?
「だ、か、ら。姉と弟で、恋人同士。義理だったら結婚だってできるんでしょ? せっかくだから、濃厚な関係の方が絶対いいと思うんだよね。お姉ちゃん彼女のことを想像しながらえっちな気分に浸る、弟彼氏。
お姉ちゃんとえっちするより、恋人としてると思ったほうが、盛り上がるでしょ?
えっちな気分になるときに考える相手は恋人のほうがいいよね?
それとも遥は近親相姦プレイに憧れる変態だったりするの?」
そんなこといわれても……。
「遥? 弟のくせにお姉ちゃんに逆らうつもり?
私は大好きな弟の遥を、恋人として扱ってあげる、って言ってるんだよ?
遥にも将来恋人ができるんだから、今のうちに恋人がどういうものかをしっかり教えてあげようと思ってるんだよね。恋人と結婚して家族もできるだろうから、今のうちに遥の対人スキルを鍛えておいてあげないと。お姉ちゃんが遥のために頑張ろうと言ってるんだけど、それが嫌なの? お姉ちゃんの配慮をムダにするつもり? お姉ちゃんとえっちするのが嫌なの?」
そんなことは……。
「いい? 私はお姉ちゃんだから、いっぱい甘えていいの。そして、恋人になったら、もっともっと甘えていいの。遥が私に逆らわない限り私はいっぱい遥をかわいがるの。そして恋人のよさを遥に教えてあげるの。いい話だと思わない?」
うーん……。
「初恋の人が私じゃ、嫌?」
初恋?
「あー、もう、じれったい。遥? 私にこう言いなさい。
『海沙お姉ちゃん、俺の彼女になってください。』
気持ちを込めて。はい。」
海沙お姉ちゃん、俺のか、かの……。
「そんなんだったら、実る恋も実らなくなるんだよ?
人間相手だと気持ちなんて口に出さないと伝わらないんだから。勇気をもたなきゃ。
いい? もう一回チャンスあげる。失敗したら私に振られて、捨てられる。遥は一生、惨めな人生を送ることになる。それくらいの覚悟で言いなさい。さん、はい。」
海沙お姉ちゃんの……海沙お姉ちゃんの、彼女にしてください!
「……へぇ。遥、そういう趣味があったんだ。
まあ、合格かな? これで遥と海沙お姉ちゃんは無事カップルになれました! いやあ、今日はめでたい日だなー。」
あれ? さっき、焦って変なことを言ったような……。
「細かいことを気にしちゃダメだよ。海沙お姉ちゃんは遥の彼女だからね。どんな変態的なことでも、遥の気持ちをちゃんと受け止めてあげるよ。
いろいろあったし、これくらいでお開きにしようか? えっちな本を見て、恋人の私を相手として想像して盛り上がる遥が楽しみだなー。結ばれた恋人がするような優しいキスをして、今日は終わりにしようね。」
海沙お姉ちゃんが軽く俺に口づける。
俺からも、優しく唇を重ねる。
ん? 何か逃げられないように捕まえられた気がする。
捕まったというより、抱きしめられた、かな。
そして、唇の間に入れられる何か。
海沙お姉ちゃんの舌だ!
その上、何か流し込まれてる気がする。
温かく、優しい感じがする。
ああ。俺、海沙お姉ちゃんの弟で恋人になっちゃったんだ。
嬉しい。気持ちいい。
求められるって、こんなにいいことなんだ。
心がほんわかしてくる。
おやすみなさい、俺の恋人の、海沙お姉ちゃん。
◆ ◆ ◆
「小郡、エロ本は初めてか? とりあえず、おとなしめのにしといたからな。今回はお代はいらねえ。今後どのようなものを仕入れるかを考えないといけないので、どう思ったか、感想を教えてくれ。」
遠藤がエロ本を一冊押し付けてきた。かなり薄いけど、いわゆる「きれいなお姉さん初心者編」の一冊、らしい。週刊誌のとじ込み付録と言ってたっけ。
早速家に持って帰って、制服を着替えるのももどかしく、リュックを開いてそいつを取り出し、表紙をめくる。配られたプリントで即席ブックカバーをつくるあたり遠藤は無駄に気を使ってる。こうすると学校から配られた物のなかに溶け込む。この手慣れた感じを見ると、中学でも似たようなことをやってたんだろうな。
いきなりグラビアで、「きれいなお姉さん」の下着姿のきわどいポーズが目に飛び込んで来る。このお姉さんがこの本というか冊子ではイチ押しらしい。真っ白なシーツに横たわって、こちらに手を伸ばしている。
うわ、エロ本ってこういう世界なのか。大人への扉を一つ開いた気がする。
今まで全然興味なかったからな。週刊誌のグラビアの水着を着た女性をみても、「ふーん」って感想しかなかった。
水着が下着に変わるだけで違うんだ。
その後もロングヘアーのきれいなお姉さんは、場所を変え、下着を脱いで露出度を変え、ポーズを変え、俺を誘って来る。
今まで無気力な生活を送ってきたせいか、人生で心が動かされることはほとんどなかった。そんな俺の心がほんの少しだけ震えた。
このお姉さんのグラビアでおとなしいのか。遠藤っていろいろ知ってるんだな。
◆ ◆ ◆
「今日見たエロ本はどうだった?」
布団の中でいつものように海沙お姉ちゃんが話しかけてくる。
少し、ドキドキしたかな。
「ああいうお姉さんに誘われたらどう思う?」
吸い寄せられそう。
「海沙お姉ちゃんがあんな下着姿だったらどう思う?」
飛び込んじゃいそう。
「さすが私の遥。海沙お姉ちゃんへの愛情がガンガン伝わってくる回答だね。
それじゃ、あんな下着着てる海沙お姉ちゃんが、シーツに横たわる遥を抱きしめている想像をしてみなさい。」
すごく心がドキドキする。
「心が繋がるって、こういうことなんだよ。
下着姿の女の写真を見たってそんなに楽しいものじゃないでしょ?
大好きな人に身も心も任せる気持ちよさを覚えたら、他の楽しみなんてなくなっちゃうんだから。」
そうなんだ。
「今夜、遥が性欲を処理するときは、下着姿の海沙お姉ちゃんに抱きしめられて、好きだ、愛している、といっぱい言ってもらってる想像をしながらしなさい。」
はい、海沙お姉ちゃん。
「神様を想像しながらなんて後ろめたいと思うかもしれないけど、私が許可、いや、命令しているんだから、遠慮せずにやりなさい。」
はい。
「こういうのを嫌がる神様も多いけど、私は好きな人の性欲の対象になることは大歓迎なのよね。愛されてる、って実感できるのが嬉しいんだよね。
だから、私をさしおいて写真の女を想像しながら処理してたら、お姉ちゃんは遥を見捨てるからね。私より写真の女の方がいいと言ってるわけだから、私への侮辱になるんだよ?
そして、私を好きだ、愛している、と私を求める感情をどんどんぶつけること。
慣れてくるとお互いどんどん幸せな気分に浸れるんだよ?
でも、慣れるまでに少し時間がかかるかな。」
大体のことってそうだよね。すぐには無理だって。
「さあ、今日から練習だ! お姉ちゃん、頑張る遥が大好きなんだよね。
遥はこの後寝る前にやることがあるから、今日はおしまいね。」
海沙お姉ちゃん、おやすみなさい。
さて、ティッシュ箱どこに置いたっけ。
◆ ◆ ◆
「小郡、昨日のどうだった?」
翌日、遠藤が俺に聞いてきた。
「下着姿というのは新鮮だけど、それだけだと面白くなかった。やはり、雰囲気がないと。」
「小郡、実は上級者だったのか?」
「遠藤兄貴、小郡さんは何気にやりますなあ。」
「いやぁ、無口だからおとなしい奴だと思ってたけど、実は凄腕のやり手だったとは。これは侮れないな。人は見かけによらないものだ。」
「俺はそれほどじゃないと思うけど?」
「兄貴、できる人ほど謙遜するものですぜ? 真のオタクは『自分なんて大したことない』と謙遜するもので、やたらと自慢をするのは小物の象徴ですな。」
「わかった。俺も次は本気だすか。小郡をぎゃふんと言わせないと兄貴のプライドが傷ついたままだ。樺山、おまえの方はどうだった?」
「巨乳はいいけど、奇乳はだめですな。なので、半分くらい没。とはいえ、きらっと輝く作品が混じってたので、遠藤兄貴の目の付け所のよさを証明してますぜ。」
「まあ、100%がアタリの本なんてないから、一作品でも使えるものがあったらそれでよしとしないと。
小郡、写真と漫画、どっちがいい? ストーリーがあるから漫画か?」
「両方ほしいな。写真でお姉さんの雰囲気を知り、漫画のストーリーを取り入れたい。」
気づいたら何か口走っていた。
「小郡兄貴、攻めてきますなあ。」
「俺達三人の中では小郡が一番スケベかもしれないな。小郡が成長したら俺達を新境地に連れて行ってくれるかもしれない。それまで俺は小郡をみっちり鍛えることにする。」
「拙者を遠藤兄貴の手足のように使っていいので、ブラザー小郡を覚醒させてください!」
俺、初心者だよ?
そう言いたかったけど、ぐっと堪えることにした。
何を言っても誰も聞いてくれないよね。
◆ ◆ ◆
海沙お姉ちゃんと同じ高校に通っていたら、どうなるんだろう?
風呂に入りながらなんとなく考えてみた。
青蘭高校の女子の制服はブレザーで、残念ながらセーラー服姿を拝むことができない。
「でも、ワイシャツとブラウスをこっそり交換することはできるよ? クラスメートにばれたら三年間ネタにされるけど。」
言われてみたらそうだ……って、そんなことできるの?
「私は女子にしては少し背が高いけど体型はそこまでガリガリじゃない。遥は男子にしては小柄だから、無理な話じゃないと思うんだよね。女の子って、言うほど細くないんだよ?」
そうなんだ。
「でも、下着の交換だったらいけるよね。
大好きな彼女の汁がしみこんだパンツを校内で履くの。周囲の人に女子のパンツ履いてるのがばれたら大変だから、慎重に過ごさないとね。
帰るときには、彼女が学校で一日履いていた、遥のパンツに履き替えるの。
あと、知ってる? これやると彼女のパンツの前の部分が伸びちゃうから、新品のパンツでやるのは絶対にダメ。もうすぐ捨てようと思ってる、彼女が何度も履いて、生地が薄くなって穴があきそうな、そして彼女のいろんな体液がシミになっている、彼女のお股の形に伸びたパンツでやるんだよ?」
なにそれ。
「それより校内で堂々といちゃつくのが王道だよね。」
え? そうなの?
「いい、遥?
男女交際というのは軽い気持ちでしてはいけません。遊びで付き合うというのは論外です。結婚を前提にした真摯な関係を築いていくべきだと思います。
もちろん、相手は私が保証するから、遥は心配する必要はありません。
そして、真剣な男女交際をしている以上、濃厚ないちゃつきをするのは当然です。
『この人は既に婚約済みです。』
そう周知することで変な人が寄ってくる可能性を大幅に下げることが出来ます。
だから、校内で思う存分、いちゃいちゃべたべたなバカップルをするのは、遥の身を守るためにも必要なことです。」
海沙お姉ちゃん、なんかいつもと違って口調が怖いんですけど……。
「当然でしょ? 私の遥の体を弄んでいいのは私が認めた人だけなんだから。もちろん、それには私も含まれるんだけどね。今のうちに遥にもしっかり自覚してもらわないと。」
はぁ。
「お昼は用事がない限り、いつも一緒。お弁当でも学食でもなんでもいいから、一緒に食べることが大切なんだからね。食べ物の交換とか、『あーん』とか。口移しもいいかもね。」
さすがに口移しはきついって。
「いい? 私の遥に手を出すな! 俺の彼女に手を出すな! 常にそういうオーラを漂わせることが必要なの。周囲の人に呆れられるくらいがちょうどいい。どうせ、高校卒業したら遅かれ早かれ散り散りになるんだから、いつまでも引っ張られることはないんだし。
そうそう、天気が良くても屋外はだめだよ。日焼けはお肌の天敵なんだからね。」
はあ。
「すれ違うたびに手を握るとか、お尻を触るとか、スキンシップも大切だよね。胸はちょっと厳しいかな?
ハードなことをする場合は、図書館とか、なんかの準備室とか、人通りが少ないところを狙わないとね。部室はなかなか使えないだろうし、準備室は鍵がかかってることがあるだろうから、やはり、図書館かな。声を出せない中でいちゃつくのっていいよね。唇を唇で塞ぐのはお約束。もちろん、襲われる方は演出として、『周りの人に気づかれちゃうよぅ?』『こんなの、よくないよ。』と白々しく言わないとね。まあ、気づかれても『またいつもの二人か』と流されるわけで、特に問題ないんだけどね。」
お尻はいいんだ。
「大好きな彼女の体に欲情するのは当たり前のことなんだから。
ちょっとお金がかかるけど、帰りはカラオケボックスでいちゃつくのもありだよね。
さすがに性行為はダメなところが多いけど、歌っている彼女を膝に乗せて、胸元に手を差し入れて、胸やお腹をなでなでするくらいなら問題ないよね。もちろん、彼女のスカートはふんわり広げてあげるんだよ? 遥のズボンに彼女のパンツが密着するんだ。大胆な彼女ならパンツも脱いでくれるかもね?
ちゃんと歌えたらご褒美にキス。
歌ってる彼女を膝にのせて、彼女の髪を優しく撫でるのも趣がある。
ずっとどこかが触れ合ってるのって、いいと思うんだよね。」
なんとなくわかる気がする。
「あと、下校途中にいちゃつくのも基本かな。
ここ、
遠くまで出かけるの、面倒だな。
「遥? ひきこもってたって人生面白くないよ?
そうだ。せっかくだから、明日、清海神社に来なよ。歓迎するからさ。」
何も用がないのに行くのも何か嫌だな。
「文句ばっかり言うんじゃありません! 女の子が自分の家に彼氏を呼ぶ、って言ってるの。こんなチャンスを断るような遥じゃないよね? どうせ明日はいつものように親が帰ってくるのが遅いんでしょ? それに、特に用事もないじゃない。」
わかった、海沙お姉ちゃん。
◆ ◆ ◆
翌日、俺は律儀に清海神社に向かう。
大玉市の海岸は主に砂浜で、一部は海水浴場になっている。防砂林とそれなりに交通量のある片側二車線の道路を隔てて住宅地がある。海岸から住宅地にかけてゆるやかな勾配になっていて、坂をのぼりきったあたり、海岸から徒歩三分くらいの場所に清海神社が建っている。
それにしても、何で清海神社って少し高い場所にあるの?
「遠浅な海のせいでちょっとした港も設置できないここで、わざわざ海岸沿いに住みたい人、いる?」
今は家が建ってるけど、駅から遠くて不便だよね。
「ずっと昔は? 電車が通る、ずっと前。」
そういえば、このあたりの人は海から離れた場所に住んでた、って聞いたことある。
「そう。海沿いに住んでると波が高いときに水をかぶるし、下手したら大津波で流されるかもしれない。標高がある程度高い清海神社まで高波が来ることはまずないので、『ここより海側に住むのはやめとけ』、って目印になってるんだよね。もっとも、最近は住宅地不足でここより標高が低いところに住んでる人もいるけど、正直おすすめできないんだよ。」
へぇ。
「神社の名前に『海』とついているからって海に隣接している必然性はない。それに、本来は清海神社は『海』ではなく、『水』全般、特に『治水』の神社なんだから。ここだと水を象徴するものが『海』になっているだけ。」
知らなかった。
「ねぇ、遥。私たちは治水の神なんだけど、治水のためには何が必要だと思う?」
治水のために乱開発やめるとか、水をきれいにするとか?
「それも一つの考え方かな。でも結論から言えば、実は人間の活動、つまり産業が必要なんだ。
上流には山があって森林があるんだけど、ある程度人間が手を加える事で、人間にとっても、自然にとっても都合のいい森林にすることができる。環境破壊することで森林を壊すと、山の土が水を吸収、ろ過できなくなって、水が汚くなって、大雨が降ったら濁流になる。結果として稲作や農業に支障が出るし、山菜採りや狩猟にも悪影響が出る。下流でも土砂災害が起きたり魚が釣れなくなったりと厄介なことになる。燃料としての木がなくなると生活にも問題が出る。人間がうまく森林を扱わないと大変なことになるんだよね。
ダムや堤防とかを作って治水することもできるけど、土木技術もいるし、機械も欲しいし、ちゃんとした材料も使わないといけない。賛否両論はあるけど現代の生活様式には必要なものだと思う。そして、作ると決めたなら、しっかりしたものと作らないといけない。」
そうなんだ。
「でも、私たちはあくまでも治水の神というか治水担当だから、人間がやることをやった上で、水を治めることが仕事なんだ。それぞれに役割がある会社の社員みたく、神様にも担当があるんだ。産業は、別の担当。あと私達が活躍するためには、私達と協力できる人の営みが必要なわけだ。私達のアドバイスを無視する人が全力で環境破壊をしだしたら、私達だけで止めるのは、ものすごく大変。」
いろいろとあるんだね。
「私達もできることはしてるんだよ。このあたりは昔、砂の害が酷くてね。塩まみれの砂が大量に飛んでくるから農作地としてはよくなかったんだ。
私が来るかなり前の話なんだけど、どうにかならないか、と真摯な者が清海神社に何度も祈りに来たので、『海岸沿いに砂防林を作れ』ってアドバイスしたんだって。その人は多くの人を説得して私財をなげうって本当に砂防林を作ったんだ。そうしたら耕作地が増えて一気に大地主になったんだ。」
いい話だね。
「その人、遥の遠い先祖だよ?」
え? そうなの?
「十代以上前だから、もう遡って裏をとることはまず無理だろうけどね。」
そっか。俺のご先祖様、この町の役に立ってたんだ。
「清海神社っていい感じでしょ? 木が多くて、住宅地の中にある癒やしの空間、って感じだよね。神社で犯罪やる日本人なんてまずいないから安全だし、開放感があるから、普段じゃできないことだってやれちゃう気がするんだよね。何もない日は結構空いてるから、意外と穴場なんだよ?」
何が?
「たとえば、愛の告白とか。ここの木陰でカップルになると仲睦まじい夫婦になれるとか、誰か噂広めてくれないかなー。
でも、遊びの関係はだめだからね。あくまでも真剣なお付き合いじゃないと。」
俺じゃ無理だよ。誰も信じてくれないって。
「まあ、そういわれたらそうか。邪な連中が大挙すると面倒だし、さっきのは冗談ってことで。でも告白スポットとしては悪く無いと思うんだよなー。
それに、告白だけじゃつまらないよね。」
え?
「いちゃいちゃするにもいい場所だと思うんだよね。木に押し付けてキスしたり、抱きついて体をまさぐりあったり。ここの神様はまじめな交際は応援するから全然問題ないんだよ?
言い忘れてた。告白じゃなくてプロポーズだったら先例はあるな。名所になったら面白いのに。」
へぇ。そうだったんだ。
「昔ここの巫女が巫女装束姿で彼氏とこっそり逢引きしてたんだ。激しくいちゃついてるところを神職に見つかって大目玉。彼氏がその場で『この巫女さんと結婚させてください!』って言い出したから、清海神社で神前結婚式をやるのを条件に許してもらった。ちょうど神前結婚式がブームになりかけた時期だったから、ここの神職もやってみたかった、なんて下心もあったんだけどね。だから、ここで結婚式やろうと思ったらできるんだよ?」
やってる人、見たこと無いけど?
「裏メニューとして存在してるんだ。十年に一度、あるかないかだけど。」
やるとなったら大変そうだな。
「ところで遥? 神社で神様と逢引きって、意外と萌えるでしょ?」
え?
「女の子の家の庭で、お外でいちゃつくの。
私に肉体があったら、私をそこの木に押し付けて、逃げられなくしてキスしちゃうんでしょ。
私の格好、巫女装束がいい? それとも普通の服装がいい?」
巫女装束で……。
「神様に巫女装束を着せたいなんて先鋭的な趣味だな。
その後、もしかして私を神楽殿までお姫様抱っこして押し倒しちゃうの?
床は板張りだし、周囲から丸見えで恥ずかしいよね。」
さすがに丸見えは嫌だな。
「誰もいない夜の神社だったら、いい?」
それでも、何か落ち着かないよ。
「でも巫女装束の私を抱きたいのね。
それとも、もしかしたら抱かれたい?」
どっちも……。
「ふーん。わかった。
遥は巫女装束に包まれたいのね。
私より巫女装束がいいのね。
変態。」
そんなことないって。
「遥。私をごまかせるって思ってる?
あんたの心の中は全部筒抜けなんだから。
だから正直に言いなさい。」
巫女装束に憧れるの、だめ?
「だめじゃないよ。男の子だもん、おかしくないよ。
本当は巫女装束の私に抱っこされたいのね。」
うん。
「抱っこされたままキスする?」
する。
「舌入れる?」
もちろん。
「そのまま押し倒されたい?」
うん。
「もしかして
そっちのほうが、落ち着くかな。
「拝殿で神様な私に抱かれちゃうなんて、遥は私へのお供え物だね。」
ドクン。
「いっぱい、いっぱい、私に愛情を注いでくれるのかな?」
うん。
「そんな遥だったらいつでも歓迎だよ?
私のことを愛したかったらいつでも愛してくれていいんだからね?
でも、一つ忘れてた。」
え?
「拝殿で私に抱かれる前に、遥には
水が冷たいから冬は厳しいよね。やっぱり夏かなあ。
汗だくの遥の全身に冷たい水をかけて、『ひゃんっ』、と甘い声を出させる。裸で神社内を歩く訳にはいかないから、神主装束を着てもらおうかな? どうせすぐ脱がすんだし、上に一枚羽織るだけでもいいんだよ?」
自分で清めるの?
「へぇ。もしかして私に水をかけてほしいんだ。
それはそれで盛り上がるかも。」
ちゃんと、きれいな体になりたいから。
「遥の乳首とかお尻とか、冷たい水をたらすと面白そう。
そして、手水舎でまず遥にキスした後、仲良く拝殿まで行かないとね。
着いたらすぐに濃厚ないちゃいちゃを始めるんだ。
かわいらしい声をあげて従順に抱かれる遥を見て、私はどんどん元気になっちゃうんだ。」
声、出さなきゃだめ?
「もちろん。遥が私にかわいがられて喜んでいる姿を堪能するのが私の楽しみなんだから。
あと、巫女装束を脱がすようなことはしないよね?
巫女装束好きの遥には聞くまでもなかったか。
鮮やかできれいな真っ赤な巫女スカート。手だけでなく、頭から入ってもいいんだよ? ふんわりした巫女袴はもぐりこむためにあるんだから。
私の足を全身で味わっちゃってもいいんだよ?」
いいの?
「いいよ?
私の足の魅力で、遥は私から離れられなくなっていくんだから。
私が『だーめ』と言って遥の頭を巫女袴の上から押さえつけても、遥はすりすりをやめないんでしょ? 足に飽きて口や胸や髪をかわいがりたくなって、はじめてやめる。」
そんなこと……。
「いい? 男の子はこれくらい素直に発情できないとだめなの。大好きって感情を全身で表現しなさい。
素直に甘えるのって、癖になっちゃうんだよね。
甘いえっちを味わっちゃうと、どんどん甘い刺激を求めるようになっちゃうから。
私は遥のお姉ちゃんとして遥を幸せにしてあげるんだから、遥もどんどん私に甘えなさい。」
はい、海沙お姉ちゃん。
「拝殿は日陰だし、風があったら気温が少しくらい高くても問題ないよね。遥が私をいっぱい求めて、その気持ちをたっぷり堪能した後は、もう一回冷たい水をかけて遥の汗を流してあげようかな。手水舎の水はお風呂として使えないけど、もちろん、人にかける分には問題ないよね。また発情したらもう一回いちゃついてもいいんだよ?
遥の気力と体力が続く限り、私はずっと相手してあげるからね?
せっかくだから今夜はこんな想像をしながら処理してみたら?」
やってみよう。
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