第五章【3】 最後の角
十七時五十七分。間もなく約束の時間だ。刻々とその時は迫っている。日没までにはまだ間がある為、空はまだ明るい。
アーケード街の路地裏を空き地へと向かい、真斗と怜奈は並んで歩く。研究室での一件の後、この事態を知らせるべく雅美に何度か電話をかけたが応答は無く、何故か連絡は取れずじまいだった。やむなく真斗と怜奈は約束通りに二人だけで決着の地へと向かう。
「早乙女先輩、どうしたんでしょう。心配ですね……」
「ええ。でもマサミ先輩に限って万一はないわ。大丈夫よ」
雅美の事が心配なのもあるが、加えて戦力として期待していた事もあった為、連絡がつかないことに真斗は少なからず動揺していた。そんな真斗の気持ちを汲んでかエフが口を開く。
「ところで怜奈、何か策はあるのか?」
「ええ。やっぱり決め手はあの技しかないわ。問題はその時間を稼げるか」
響子との戦いの時に妨害され不発に終わったという怜奈の大技のことだ。昨日いきさつを聞いた真斗はその話を思い出す。
「……確かに。となると、だ」
エフが答え、そこで怜奈は立ち止まる。怜奈とエフの視線が真斗に向けられる。
「……ええ。その技を使うときには合図するわ。だから真斗くん、援護をお願い」
「……はい。必ず怜奈先輩を守り抜きます。任せてください」
真斗はまっすぐと怜奈の目を見て答える。
「マスターカッコいいー。ひゅーひゅー」
ナナが茶化してくる。
「よ、よせよ。照れるだろ」
真斗が顔を真っ赤にする、そんな様子を見て怜奈とエフが笑う。
…………
「――さあ、行きましょう」
そして――真斗と怜奈は、空き地へと続く最後の角を曲がる。
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