君じゃなきゃだめ。ー3ー

土曜日がやってきた。


私はストライプのシャツワンピを着て髪はハーフアップにして行く。


「透子さん、雰囲気変えなくても」


「だって、両親に会うんだよ?派手な服装はだめだよ」


「ミニスカートでも大丈夫でしょ」


「だめだめ!」


駅前のケーキ屋でケーキを4つ買うと、私達は藤宮家へ。


先に中に入る和樹に続いて入ると、和樹のお母さんが迎えてくれた。


「いらっしゃい。よく来たね」


彼女はにっこりと笑って言う。


優しそうな人。


髪を内巻きにしていてピンクの花柄のエプロンをしている彼女はとても上品な感じで綺麗な人だった。


「はじめまして。春名透子です!よろしくお願いします!あの、ケーキ良ければ」


私はケーキを和樹のお母さんに渡す。


「あら!私もケーキ用意しちゃった。透子ちゃん甘いの好きだって聞いてたから」


わっ!


ケーキ以外にすれば良かったかな!?


ちっちゃいマドレーヌとか。


だけど


「二つ食べれるね。やった!」


彼女は嫌な顔一つせず言った。


「お父さん、透子ちゃん来たわよ」


三人でリビングに行くと、和樹のお母さんはソファーで新聞を読んでいる和樹のお父さんに声をかけた。


和樹のお父さんは眼鏡をかけている短髪の穏やかな雰囲気の40代くらいの男性だった。


「は、春名透子です!はじめまして!よろしくお願いします」


「いらっしゃい。せっかくの休日なのにすまなかったね。ささ、自分ちみたいに寛いで良いからね」


「は、はい!」


私と和樹は和樹のお父さんの向かい側にあるソファーに座る。


「紅茶とケーキ用意するね」


「あっ!手伝います」


「良いの。透子ちゃんはお客様なんだし。座ってて」


「は、はい」


かなり緊張する!!


和樹のご両親と上手く話せるかな?私。


「透子さん、大丈夫ですか?」


「か、かなり緊張してます」


私が言うと、和樹は笑う。


交際認めて貰わなきゃ!


「はい。どうぞ」


和樹のお母さんはケーキと紅茶を用意してくれた。


「あ、ありがとうございます!」


皿にはショートケーキとフルーツタルトが置かれている。


「ふふっ。まさか和樹が女の子を連れて来るなんてね」


和樹のお母さんは笑顔で言う。


「父さん、母さん。俺、透子さんと真剣に付き合ってるんだ。俺、透子さんじゃなきゃだめなんだ」


か、和樹・・・


「反対なんてしないよ!和樹から透子さんの話たくさん聞いてたから。貴方が和樹を救ってくれたんだよね?私、本当に感謝しているの」


和樹のお母さんはいきなり涙を流す。


「か、母さん!」


「あら、ごめんなさい。私達ね、ずっと子供がいなくて諦めていたの。だけど、児童施設で和樹と出会って家族になってからね、すごく幸せになったの。血の繋がりは無くても本当に大事に思ってる。もし、貴方が和樹を救わなければ私達は和樹と出会えてなかったかもしれない。本当にありがとうね」


お母さん・・・


「僕からもありがとう。母さんと同じ気持ちだ。本当に感謝している。和樹を救ってくれて、愛してくれてありがとう」


お父さんも優しい表情で言う。


良かった。


和樹のご両親、こんなにあったかい人達なんだ。


本当に安心した。


「いえ、こちらこそ。和樹さんが素敵な家族に出会えて良かった」


気付いたら私は泣いていた。


すごく嬉しかったんだ。


家族に虐げられて来た彼。


だけど、今は素敵なご両親がいるから。


「透子さんってば!もう、泣きすぎ!」


「だって、嬉しかったからさ!」


「本当貴方は変わってないな。俺を病院に連れて行ってくれた時と同じように泣いて」


和樹は私の涙を指で拭き取りながら言う。


「・・・反対なんてしないわ。だって和樹が選んだ女の子だもの」


「僕も。和樹の事をこれからもよろしくお願いします。透子さん」


和樹のご両親は優しい声で言った。


良かった。


認めて貰えた!


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