揺らぐ想いー4ー
昼休みになると、藤宮くんがずっとおあずけと言われていた犬がようやく待てと言われた時みたいな顔で教室に来た。
「透子先輩!」
犬耳が見える!
「今日も屋上で」
「はい!」
もし、藤宮くんが別の誰かを好きになったらランチも一緒に出来ないんだよね。
「わあ!今日のお弁当も美味しそうですね」
藤宮くんはお弁当を開けると、テンションが上がる。
「んまーっ!やっぱり透子先輩のお弁当最高」
「ありがとう」
「そういえば、野田から聞きました。矢田先輩と野田、別れたみたいですね」
矢田先輩とはユキちゃんの事だ。
「うん。私も今朝ユキちゃんから聞いた。めっちゃ病んでたよ」
「あいつ、最低ですよね。年上疲れたからってクラスの女子と付き合い始めて。ただのヤリチンクソ野郎だったんだな」
「ヤリチンクソ野郎・・・」
藤宮くんってたまに毒吐くよね。
「あんなラブラブだったのに。矢田先輩が可哀想ですよね」
「ユキちゃん、言ってた。自分が年上だから彼が無理して疲れたんだって」
「無理するのは相手に気を許せてないからでしょ」
「えっ?」
「元々そこまで好きじゃなかったんじゃないですか?矢田先輩、色っぽいから男からしたら遊びやすいみたいだし」
「確かにユキちゃん、自分でチャラいダメ男ばっかと付き合っちゃうって言ってた」
「不憫ですね」
だけど
「そういえば!藤宮くんも一年生の女の子といる時、ちょっと違うよね」
「え?」
「抱きつかせてたし。藤宮くん、女友達とああいうやりとりするの意外だった。やっぱり同い年と年上って違うんだなぁ」
ってあれ?
これじゃあ完全に私・・・ヤキモチやいてるって・・・
「妬いたの?」
藤宮くんはにやっと笑って聞く。
「へ?そ、そんなんじゃ!」
「あいつ抱きつき魔で。俺、いつものメンツの中で一番筋肉あってがっしりしてるから抱きつきやすいらしいんです」
「なるほど・・・そのシャツの下にそんな筋肉が」
「見ます?」
「け、結構です!」
「まあ、俺は筋肉自慢しない主義なんで」
「どうして?」
「俺の身体、傷だらけで。見せられるような身体じゃないんですよ」
「えっ・・・」
「透子先輩に初めて会った時の傷跡もタバコを押し付けられた跡もしっかり残っていて」
「ひどい・・・」
胸が苦しくなる。
虐待から解放されても、この子の身体にも心にも傷は残っている。
「すみません。暗い話して」
「でも、自慢したいわけじゃないなら何で鍛えてるの?」
「透子先輩にガキに見られたくないからかな。男っぽい方が透子先輩に相応しいし」
「そ、そうなんだ」
またドキドキする発言をこの子は!
「透子先輩も俺に抱きついてみます?」
「で、できないよ!」
「あははっ。まあ、俺としてはハグ以上の関係になりたいんですけどね」
「も、もう!」
「あはは。透子先輩顔真っ赤。変な想像した?」
「せ、先輩をからかわないの!」
藤宮くんといる時間が気付いたら大事なものになっていた。
私、もっと藤宮くんを知りたい。
知って、君を好きになりたい。
「藤宮くんってラーメンだと何味派?」
「断然味噌です。近所に地方別の味噌ラーメン食べる店があって。北海道とか九州の」
「あ!私も好き!あの日曜いつも混んでるバイパス沿いのラーメン屋でしょ?」
「はい!あと、あそこの薩摩揚げも好きで、餃子頼むか薩摩揚げ頼むかいつも悩んで」
「私も!薩摩揚げめちゃくちゃ美味しいよね!辛味噌つけるやつ。よし!」
私はポケットからメモを出し、書き出す。
「透子先輩、ビンゴですか?」
「うん!藤宮くんと透子さんビンゴ!同じ物が好きだったらピンクのペンでハートつけてくの」
私はメモに書いておいたビンゴの中のラーメンの欄をピンクのハートで囲う。
「面白いですね、透子先輩は。でも、趣味違かったら悲しくなりません?」
「もし、藤宮くんが演歌好きで私がロック好きだったら私も演歌ハマれば良いんだよ」
「あははっ。前向きな透子先輩らしい。でも、俺が好きなのは演歌じゃなくてロックですよ。知ってます?山下の月9ドラマの主題歌のバンド」
「あ、私も好き!懐かしい、月9!あ、またハートだ!」
「でもまだ二個ですねぇ」
「じゃあ、オムライスはケチャップ派?デミグラス派?」
「デミグラス派!」
「やった!また一致!」
「きのこたっぷりのデミグラスソースが良いですね」
「うん!きのこ大好きだよ、私も」
ビンゴ結構埋まるもんだなぁ。
「あ、じゃあ先輩!これは?一番好きなフルーツ」
「私、マンゴー!」
「俺、葡萄!」
「あ、ハズレだね」
「むぅ。今日からマンゴーたくさん食べて好きになってやる」
「そ、そんな!」
「先輩の好きなものは俺も好きになりたいの」
「可愛いね」
「あー!子供扱いしましたね!」
「あははっ」
本当に楽しい。
私、藤宮くんといるとすごく安心する。
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