君を好きになりたい。ー5ー


「透子先輩、この猫のストラップうけません?」


「あははっ!本当だ。かなりぶちゃいく!でも、なんか愛嬌があって良いね」


「でしょ?クラスの奴にこのキャラ可愛いって言ったら理解して貰えなくって。透子先輩なら分かってくれると思った」


私と藤宮くんは雑貨屋へ。


変な顔をした動物のキャラクターの雑貨ばかりで他の友達からは理解されそうな可愛さのキャラばっかりだけど、私は好きだった。


「何でこの猫、ほっぺびろーんってしてるんだろ。めっちゃじわる」


「でも、このゆるさが可愛いですよね。俺、すごく好きだな」


「わ、私も!友達からは変って言われるけど」


「先輩と俺は感性が同じなんですね、きっと」


「うん。嬉しいな」


「この猫、買っちゃいます?」


「わーい!買お、買お」


「じゃあ、俺が」


「だーめ!藤宮くんには散々お金出させちゃってるし」


「でも・・・」


「良いの。勉強、教えてくれたお礼も兼ねて」


「ありがとうございます」


はっ!


よくよく考えたらこれってお揃いなんじゃ?


「ありがとうございましたー!」


「ふふっ」


店を出ると、藤宮くんはストラップを愛おしそうな目で見つめる。


「そんなに気に入ったんだ?」


「はい。だって先輩からのプレゼントだから。すごくすごく嬉しいんです。スマホにつけよっかな」


「意外。男子もそういうのつけたがるんだ?」


「これは特別なんです!大事にしたいから」


こういうとこは可愛らしいな、藤宮くん。


「ここのイタリアン美味いらしいんですよ」


「藤宮くん、詳しいんだね」


私達はイタリアンレストランで昼食をとる。


ピンクの壁にたまねぎやパスタのイラストが描かれていて、テーブル一台一台に赤いギンガムチェックのテーブルクロスがかけられているのがおしゃれで可愛らしい。


「俺、意外と食いしん坊なんで」


「そのわりには細くない!?」


「あはは。結構食べるんですけどね」


「私の肉を分けてやりたい!ずるい!」


「えー?先輩太ってないですよ!」


「脱いだら肉がだるーんだから」


「えー?本当ですかぁ?触ってみても?」


「だめ!セクハラ禁止ーっ!」


「えー?代わりに俺の筋肉触らせてあげますから」


「どんな交換条件よ!?」


私達は笑う。


あぁ、やっぱり藤宮くんといると楽しいな。


だけど


「透子?」


えっ?


「わーっ!透子達もデート中だったんだ!」


「愛未、立夏・・・」


愛未に声をかけられ、私は驚く。


愛未は立夏の腕に自分の腕を絡ませている。


っ・・・


「そうなの。びっくり!まさかこんなとこで会うなんて」


「ここのパスタ、愛未好きなんだ!立夏くん、ここの席にしよ」


「は?愛未?」


何で・・・


愛未と立夏は私達の隣のテーブルに席を取る。


「てか、透子。いつもと雰囲気違くね?」


「ま、まあね。私だって女の子!可愛らしい格好もするよ」


「へぇ・・・まあ、可愛いんじゃね?」


えっ?


何でこんな時にまでときめくんだよ、私!


愛未がいるんだよ?


「透子ちゃん可愛い!普段からそういう格好にすれば良いのに」


「無理!恥ずかしいし」


早く出てしまいたい。


二人と会いたくなんかなかった!


「透子先輩、何にします?」


「あっ!えっと、ボロネーゼで」


「じゃあ俺はペスカトーレで。すみませーん!」


藤宮くんは私の代わりに注文してくれた。


「透子達、どこ行ってきたの?」


立夏が注文している間に愛未が聞いてきた。


「えっとね、キミじゃなきゃだめって映画観て服や雑貨見てた、この中のお店」


「わあ!透子ちゃん観たんだ!愛未達もこれから観に行こうって話してたんだ!ね、立夏くん」


「ああ。愛未が観たい観たいうるさいから仕方なく?」


「もう!仕方なくって何さー!透子ちゃん、泣いた?」


「え?あ、うん!結構ね」


「良いなぁ!立夏くん、泣いたら愛未にジュース奢りで」


「なんだよ、それ」


「立夏くん、軽くバカにするから!」


「分かった、分かった。まあ、多分泣かないよ?俺は」


イチャつく二人の会話が私の胸を苦しめる。


やだ。


耳を塞ぎたいよ。


「えー!?藤宮くんは?泣いた?」


「俺は泣きませんでした。泣いてる透子先輩可愛いなぁって思ってずっと見てただけです」


藤宮くんはにっこりと笑って言う。


「ふ、藤宮くん!?」


「透子ちゃん、愛されてるねー!」


だけど


藤宮くんはさっきまでと違う感じがした。


不機嫌な感じが。


「お待たせしました」


「わっ!美味しそうだよ!藤宮くん」


「そうですね」


「いただきます」


私はパスタが来ると、食べ始める。


「美味しい!!今迄食べた中で一番かも!藤宮くん!」


「気に入ったなら良かった。俺もここのボロネーゼ大好きです」


「でも、今日はペスカトーレなんだね?」


「はい。別のにも挑戦してみたくて。目指せパスタ全制覇です」


「すごい!それ、楽しそう」


「ん!ペスカトーレも美味しい。貝が本当最高」


「美味しそうだね」


「透子先輩にあげます」


「えっ?じゃあ、私のもどうぞ」


「はい」


私はペスカトーレを貰って食べる。


「わっ!美味しい!こっちの方が好きかも」


「うん。確かに。ボロネーゼも美味しいけど、意外とペスカトーレのがしっくり来る」


あ・・・


「また同じだね」


「はい。透子先輩と一緒嬉しいです」


さっきまで立夏達の事気にしてたのに。


藤宮くんにキュンと来る。


私、変だな。


「透子ちゃん達、カップルみたい」


「ま、愛未!?」


「付き合っちゃえば良いのに。ね、立夏くん」


「まあ、良いんじゃね?透子もずっと彼氏いないし、いい加減にな」


立夏・・・


何よ、それ。


「好きでずっと一人だったわけじゃない!」


はっ!


声を荒げてしまった自分に気付き、私は驚く。


「ごめん・・・」


「透子ちゃん?」


「何キレてんだよ?」


あまりの立夏の鈍さに腹が立ってしまったらしい。


恥ずかしい!


大人気ない。


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