第2話 はじめてのおべんとう。

はじめてのおべんとう。ー1ー


「透子せんぱーいっ!」


犬のように私を見つけると、笑顔で駆け寄ってくる藤宮くん。


やっぱり可愛い。


「どうしたの?」


昼休みになるなり、私のクラスに現れた藤宮くんに私は聞いた。


「一緒にランチしたくて来ちゃいました」


藤宮くんは笑顔で言う。


「そ、そっか」


すると


「この子が藤宮くん!?超可愛い!まさか透子の彼氏!?」


「透子ずっるーい!」


友達が私に聞く。


「ち、違うってば!」


私は否定する。


だけど


「まあ、そうなる予定ではありまーす!透子先輩の彼氏候補ってやつです」


藤宮くんは笑顔で言う。


ふ、藤宮くん!?


「また来やがったのか・・・」


立夏が呆れた顔で藤宮くんに言う。


「いけませんか?好きな女性に会いに来るのは」


「ふ、藤宮くんっ!」


「行きましょ?透子先輩」


藤宮くんは私の手を引き、歩き出した。


「屋上?」


「はい、あんま人来なそうだし」


「立ち入り禁止なんじゃ?」


「そういうのワクワクしますよね!立ち入り禁止の場所で密会」


「も、もう!藤宮くん!」


私達は屋上でランチする事に。


「透子先輩、お弁当ですか?」


「うん。お母さんが作ったお弁当」


「透子先輩の手作り、食べたいなぁ」


「ふ、藤宮くんは?」


「うちも家族が作った弁当です。あ・・・」


「どうしたの?」


「またピーマン入ってるし」


藤宮くんは自分の弁当箱を開け、落胆する。


「ピーマン嫌いなの?」


「ええ。ピーマンと人参は駄目なんですよ」


「あはは。可愛いね、藤宮くんは」


「こ、子供扱いしないでください!」


「藤宮くんのお母さん、藤宮くんに好き嫌い克服して欲しいんじゃないかな?」


「知らないんです。あの人は俺の好き嫌いを」


「え?」


「俺、養子なんで。小6まで児童養護施設にいたんです」


「そう・・・なんだ」


やっぱり言いづらいのかな。


「まあ、作って貰ったからには食べないと。残したら気にしそうだし、あの人」


「わ、私が食べるよ!」


「え?」


「おかず交換!」


「良いんですか?」


「うん!私、ピーマンの肉詰め好きだし」


「ありがとうございます。じゃあ、玉子焼きを頂いても?」


「うん!」


「ありがとうございます」


藤宮くんって苦労してるんだなぁ。





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