第3話 ローテーション
ローテーション研修
各病棟を回る
自分の病棟に戻って来る
また違う病棟へ行く
とにかく勉強しないといけない
そんな時間がない
そんな気力もない
しないといけないことが
圧倒的に増えた
どうにもできなかった
どうする気にもならなくなった
自分の病棟の勉強もままならないのに
一応やった
それくらいでもう行かなくては
時間がないから
朝自転車をかっ飛ばして行く
余裕を持って出るのに
突然の雨でカッパを使う
夏の暑さと雨と
体力が減っていく
回復ができない
ご飯も食べない
やけ食いする
違う病棟の大変なところはどうしてもお互いに比べてしまうところだ。こっちだって清拭の仕方や入浴、検温や医師への対応が違うと感じる。だからもちろんローテーション研修者を受け入れる側もこの人はうちに入った子とはここが違うと感じる。つまりは当たり前なのだ。
だけど当時の私にとって苦痛でしかなかった。
「ねえそれ本当に自分のとこでもやってるの?」
「嘘だ、絶対やってるって」
「どこ出身?一人暮らし?へーがんばってるんだねぇ」
お客さま扱いで優しいところもある。基本は病棟ごとの違いを教えてくれる。呼吸器病棟、整形外科病棟、循環器病棟、回復期病棟などなど。手術室のローテーション研修にたどり着く前に私は辞めてしまったから、看護学校の実習でしか経験はない。
ローテーション研修は最後にカンファレンスがある。こういった発表も死ぬほど苦手だった。緊張してうまく言葉にできない中、患者さんとその家族の方にわかりやすい言葉で説明している姿を発表した。手術前後の不安は大きい。忙しいのにたわいのない話もしながら、説明している姿はすごいと感じた。その看護師さんは私が辞めようかと悩んでいることについても声をかけてくれた。
ローテーション研修を含めていろんな看護師さん、ワーカーさん、先生や薬剤師さん、患者さんと出会った。
冷蔵庫の残り物を見るような目の人
私で採血の練習していいよという人
ひたすらに無言の人
物品がどこにあるか教えてくれる人
声をかけてくれる人
研修後も顔を覚えてくれている人
生乾きの匂い臭い
濡れて乾いたサンダル
病院の更衣室から受付前を歩く
正面玄関を今日も2回くぐる
明日はどこで何をするんだっけ?
あれとそれとこれとどれを
どうしなくちゃいけないんだっけ?
夜なのに蒸し暑い道路を走る
いろんな人に出会ううちに私は気持ちを固めていった
今日の言葉
出会いが人を変える
勉強しないで来たの丸わかりだからね
看護師はなんでもできないといけない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます