第2話 休憩室
休憩とは休むこと。
休憩室とは休むところ。
病院によって様々だけど、靴を脱ぐところ、脱がないでパイプ椅子のところ、靴箱があるところと様々。自分のマグカップがあったり、コーヒーとか紅茶、お菓子もたくさんある。退院して頂いたお菓子はここで食べている。カップ麺とかアイスとか、マヨネーズ、ドレッシングを置いている人もいる。飲み物も名前を書いて冷蔵庫に入れる。私物はロッカーに入れる。鍵があったりなかったりする。洗い場があって食器棚があってロッカーがあってテーブルがある。私が新人で入ったところにはソファもあって、座布団もあった。基本的にはベテランさんがソファに座るからいつもすみの方にいたのに、その日は断っても座りなよと何度も言われた。
「じゃあ、すいません」
最高に居心地が悪い休憩時間だった。
歯磨きを外の洗面台でする。戻ろうとしたがソファに座るのが嫌でやめようかなと入り口前でためらっていると中から声がした。
「普通座れって言われて座らないよね」
自分のいない間にいろんなことが言われているのは気づいていたし、当たり前だとは思う。ソファにはそれ以降何度言われようが座らなかった。
あとテレビがあってみんなで見る。テレビの話、ドラマの話、居酒屋の話、結婚とか子どもの教育の話、患者さんたちの話、先生の話、そこにいない看護師やケアワーカーの話。面白い話もあれば耳を塞ぎたくなる話もあれば聞きたくないものもあれば、楽しい時ももちろんあった。お菓子も遠慮してあまり食べられなかった。食べなよ、が怖かった。
基本お弁当を作るようにしていたけど、作れないときは売店でサンドウィッチを買った。それが続くと、お弁当派じゃない人に食堂に誘われた。食堂は全職員と一部だけ一般にも開放していることもある。ご飯と味噌汁とおかず、パンがあるときもある。好きなだけ盛っていいから、職員の健康用に一杯の目安の掲示物があったりする。私が誘われるんだから相手は主任クラスの上司な訳で、緊張してしまう。同期ももちろんいたけどお昼の時間が合わず一緒に食べたのは数えるほど。
恥ずかしながら好き嫌いがなく、ご飯が食べれなくなる経験のなかった私にとって、食欲がないという状態をこの時初めて経験した。今思えば夏バテもあったんだろうけど。
休憩室にいられなくて、食堂のすみで時間潰しにゆっくりと買ったサンドウィッチとにらめっこして豆乳だけ飲んでやめた。夜家に帰るとやけ食いしては吐いての繰り返しだった。一人暮らしだからだいぶご飯はテキトーだったし、休みの日は落ち込むか、勉強するか、寝るか、飲み歩いた。一時期1日の差が激しかったがしだいに気分は落ち込んでいく。休憩時間は休憩できずに、休憩室では休憩できずに。
だから食堂か売店か廊下か階段にいた。
今日の言葉
メリハリをつけなさい
もう先にあきらめてるんだよね
初心忘れるべからず
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