第1羽 たまご

 夢見るたまごは転がっていく。


 たまごには手足がない。ばたばたとばたつかせることもできずに転がり転がされ割れそうになりながら、割られそうになりながら必死に守っていく。薄い人も厚い人も足が出かけている人も、いびつな人も、殻にこもる人も様々。


 看護師になりたい、そう思っている人には理由がある。理由のない人でもある程度漠然とお金が欲しいからとか、社会に貢献したいからとか親戚がやっているからといった理由がある。


 明確な理由がある人、ずっと将来の夢だった人もけっこういる。または社会人を経験してから看護師を目指す人。子どももいれば結婚している、家族の介護をしている人もいる。年齢も性別もバラバラ。男女比はもちろん女子が多いけれど男子もいる。そんな人たちが集まって勉強する学校。大学、短期大学、看護学校、准看護学校、とあるがわたしの知っている3年の看護学校は悪魔を作る地獄の工場だ。


 夢見るたまご


 ゴロゴロと転がるしかできないのに、乱暴に殻を叩かれる。早くでてきなさい。腹を決めなさい。急かされながらいろんなことを学んでいく。詰め込まれてパンパンになった頃についに地獄の実習が始まるのだ。


 夢見るたまごはたいていこの辺りで一度夢をやめる。


 実習、記録、指導者、リーダー、カンファレンス、先生、などなど、いろんな単語に怯える日々が始まる。




 今日の言葉


 物の気持ちになって扱いなさい

 具体的に説明しないことは不親切です

 あなたが遅いだけです

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