第341話 スヴァローグ攻略 ⑥デバフにはデバフを



スヴァローグ迎撃から時間を遡り、鬼の里にて一人の少女が刀――鬼形・丑裂の刀装具を整えていた。



「……ふぅ……私にできることは、ここまで……です。


すいません……ほんとうだったらちゃんとした鞘も用意したかったのですが……」


そう言いながら鞘に納め、少女――シャムスは丑裂を担い手である萩原渉へと渡す。


丑裂が収められている鞘は、以前から歌丸が使っているものと同じ鞘を使っており、なおかつレージングで簡単には抜けられないように封が施される。



「いや、十分すぎるくらいだ。


時間だってないのに、ここまでの仕事…………地上どころか、世界中の人間合わせてもそうはいない出来だよ」



鞘に納められる直前に見た刀身から、当初の鬼形を超える強い鬼気を感じた。


鬼形は今、二刀に分けられて弱まったのではない。


歌丸連理という特異な弱者に触れ、それを補うための力と意思を持った部分が子跨咬ねこがみ


当初本来の、純粋な復讐の憎悪がスヴァローグの角を取り込んだことでより鋭さを増したものが丑裂となった。


今、渉の手にある丑裂は、鞘とレージングの封、更に歌丸連理のスキルにより精神的な防御がなければ、触るだけで正気を保てないほどの強力な【呪い】そのものへと昇華した。


その呪いの根源であるテツの意思がまだ残っているからこそ、この丑裂はこの先永遠に、シャムスただ一人以外誰も触ることを認めないのだろう。


今こうして封印越しに触っている渉でも、触れている箇所から煮え滾るような熱の錯覚を覚えるほどなのだから。



「……いよいよ、なんですね」


「ああ、スヴァローグがここに下りてくる。


……一応、ムラオサの家の周りに防壁や生垣とか用意したから、そっちに避難しといてくれ」


「それが必要になるときって、渉さんたちが負けた時、ですよね」


「…………まぁ、そうなるな」



すでに避難場所にいまだに意識が朦朧としている歌丸連理や、村にいる非戦闘員は避難している。


万が一負けた時、もしかしたらドラゴンが歌丸を助けに来て、ついでに里に残った人たちも助けてくれるのではないかという……ほとんどないに等しい淡い期待を抱いての考えだ。


もっとも、あのドラゴンがそんな慈悲深い行動をするとは、地上からやってきた者たちならば誰も考えていないのだが……



「でしたら、私はここにいます」


「だが」「待ってます」



渉の言葉をかぶせてシャムスはその場に姿勢を正したまま、じっと目を見て言い切った。


これは梃でも動かないのだろうなと、渉も早々に理解し、渡された鬼形を佩いて、柄頭を軽く叩く。



「わかった、こいつと一緒に……あの牛捌いて、いの一番に君に報告に来るよ」


「はい。待ってます」





封が解かれた丑裂は、まるで熱した鉄を掴まされているような錯覚を覚える。


しかし、指がまるで一体化したかのように咄嗟に離すことができないことに、渉は一瞬は驚いたが、すぐに都合が良いと判断する。



(――憎イ)



腹の奥からグツグツと煮え滾る憎悪を嚙みしめるようにして、いまだに英里佳の方ばかり見ているスヴァローグを睨む。



走行してるうちに、じりじりと接近する一団に気づいたスヴァローグが熱線を再び放つ。



「――俺は、壁、だぁあああああああああ!!!!」



そして先頭にて盾を構える谷川大樹が、渉、蓮山、麗奈、詩織を守る。


盾を構えるその手は熱によって尋常ではない火傷を負っている。


脈動回復を掛けてもらっているとはいえ、痛みが消えたわけではない。


それでも大樹は一切揺るがず、変わらず――いやむしろより速く前へ前へと進んでいく。



「あと三回――渉、間合いは?」


「まだだ」



憎悪で視界が歪みそうになるのを、歌丸から受けたスキルのおかげで即座に正気に戻される。


思考も比較的に冷静故に、自信の技量から冷静にスヴァローグに確実に攻撃を当てられる間合いを測る。



「――ちっ!」



その一方、連続で英里佳がスヴァローグに攻撃を叩き込み続けているのだが、そのすべてが当たる前に肉体を炎に変えられて回避されてしまう。


物理無効の紫の光を纏った状態でも攻撃は通じず、現状、ドラゴンの首すらぶっ飛ばせる彼女の物理無効スキルは、熱からの防御以外では役に立ってない状態であった。



『       』



しかし、それはそれとしてもスヴァローグ自身も英里佳の存在を鬱陶しく思っていた。


相手の攻撃はこちらに通じてなくとも、こちらの攻撃も相手には通じない千日手のような状態


何よりも、スヴァローグの認識にとっては目の前の存在は虫けら同然であり、それが自分に向かってくるという状況も不快であった。



故に、絶対に攻撃を当てるつもりで収束はさせず、純粋な熱を強めた炎をこの階段通路という狭い空間で放つ。


英里佳は先ほどと同様に物理無効で熱を防ぐが、そのスキルの使用には魔力を大量に使う。


炎が収まったあと、即座に魔力回復の水薬を飲もうとするが、それを実行する前に英里佳に向かって連射性を優先させたのか、先ほどより細い、しかし人一人の胴体に風穴を開けるには十分な熱線を放つ。



(まず、い――スキルが維持できない……!)



どうにかその手に水薬の入った瓶を握ることまではできたが、それを飲む前に、今度は収束された熱線を受けること必至。


直撃を受ければ即死――仮に生き残れても戦える状態じゃない。


本能と理性が同時に警鐘を鳴らしつつも、回避も防御もまともにできず自身の死を予感。


だが、その熱線は自分に当たる前に、まるで野球のフォークボールのように軌道を下に変えて階段の表面を溶かした。



「――大樹、三上、悪いが次そっちだけで耐えろ!!」



防御用のレイドウェポン、重力を操作できる【クロスリフューザー】


それによって英里佳に向かった熱線の進行方向を捻じ曲げたのだ。


そしてその隙を英里佳は逃がさず、即座に水薬を飲み切り、腹いせいと言わんばかりに空になった瓶を投げつける。



『      !!』



その行為か、はたまた自分の攻撃を再び防がれた結果からか、スヴァローグは再び怒りから炎を放つ。


その行為ではダメージを与えられないとはわかっているが、相手が嫌がることをスヴァローグは理解したのだ。


だがしかし、それは同時にスヴァローグのミスを誘発する。


この攻撃を行えば周囲が炎で包まれる。


つまり、スヴァローグの視界すらもその炎によって遮られる。



「――十分だ」



そして、炎が消えて視界が戻って来たと思った時には、すでに目の前には一体の鬼が剣を振るっていた。


その体の一部には氷が残り、髪は濡れているのを見るに、全身に強い冷気を纏った状態で炎をの中を飛び込んできたのだろうと判断する。



『  ふ』



しかし、だからどうした。


そう言いたいかのようにスヴァローグは目の前に来た鬼――丑裂を抜いて、その影響で鬼化した渉を鼻で笑う。


たとえどんな攻撃だろうと、自分には通じない。


まさか冷気を纏った程度で自分に攻撃が通じるようになるとでも思ったのかと。



――やはり愚かな生き物だ。



そう判断し、英里佳を排除するついでで焼いてしまおうと迫る攻撃を無視することにした。


それ故、スヴァローグはほぼ無防備のまま、己の首に刃が突き刺さるのを、知覚できなかった。



『    ――AaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』



知覚し、痛みを認識したと単に発せられる絶叫



「――おせぇよ、スヴァローグ」



その目に憎悪を燃やしていた渉の口から出た言葉


同時に、スヴァローグに突き刺さった鬼形・丑裂を思いきり捻る。


その結果、スヴァローグの肉体は炎に変化することなく、その肉を捻り潰す感覚が柄から渉は手応えを感じた。



テツさんの今までの分の御礼だ――たっぷり味わえ」



鬼形・丑裂の性能は、これまでの鬼形から劇的に強まったわけでもない。


子跨咬ねこがみのように刀身を使用者に合わせて変化させるわけでもない。


鬼化する際の能力も依然と変わらない。


強いて言うなら、スヴァローグの角を使ったから、以前よりも頑丈になったくらいだろう。


だが、相手がスヴァローグとなれば、こいつは絶対に必要な攻撃手段となる。


丑裂の斬撃はスヴァローグの角を取り込んでいることで、スヴァローグが肉体の炎と化した際に透過する異物ではなく、同じ存在だと認識してしまう。


故に、たとえスヴァローグが肉体を炎に変えても丑裂の刃だけはその身に受けるのだ。


そしてその時になって、ようやく丑裂はその最大の真価を発揮する。



『BUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――っ!!!!』



絶叫しつつ、反撃の炎を発送としたスヴァローグだが、その炎が発せ提せられる前に、その体は通路の壁に勢いよく叩きつけられる。



「――ざまぁ見ろ」



そこには、スヴァローグの腹を思いっきり蹴飛ばした手応えに喜色を浮かべている英里佳がいた。



「よし、そのまま畳みかけろ!!」



蓮山はそう叫びつつ、最大の懸案事項が無事に達成され、形成が変わったことを確信した。


丑裂の真価、呪い


対象スヴァローグにのみ特化した、超高性能デバフ


他の者にはほとんど意味を為さないという汎用性の一切を捨てた代わりにスヴァローグには比類なき効果を発揮する。



一つ、肉体の炎化を封印



「はぁああああ!!!」



今までの鬱憤を晴らすかのように、英里佳はスヴァローグの腹に天童紅羽から渡された剣を突き刺して壁に縫い付け、その頭、腹、前足後ろ足に至るまで、蹴りを叩き込む。


ご丁寧に、その足につけられたレイドウェポンのブーツの能力である重量増加によって、インパクトの瞬間に制御できる最大の重量を与えている。


更に当然の如く、この場で倒しきるために物理無効スキルも併用している。


しかし、どういうわけかスヴァローグはまだ牛としての形を保った状態である。


その状態を見て、麗奈は絶句する。



「嘘……あれを食らってまだ生きてる……? まさか効いてないの?」



一方で兄である蓮山はその様子をしっかり観察し、改めてスヴァローグがどのような存在なのかを認識する。



「肉体が抉れてるが、その箇所が一瞬で盛り上がるみたいして形が保たれてるようだな。


性質としては不死存在イモータルに近いのか……だったら攻撃すればするほどに、奴の力は大きく削れているはずだ。


一撃で倒せないのも想定内だ、構わず畳みかけろ!!」



しかし、一方でスヴァローグも「はいそうですね」と攻撃を受け続けるほど間抜けではない。


己の体に突き刺さった二本の刃を抜くことよりも、今はひとまず目の前の存在を燃やし尽くすことを優先する。


しかし――その炎が燃え盛る前に、スヴァローグが全身が冷気により凍らされた。



「英里佳、攻撃に集中して」

「うん!」



クリアブリザードの冷気により、スヴァローグの攻撃を妨害する詩織



二つ、炎の出力の大幅な減少



炎をすべて無力化することまではできなかったが、それでもこれまでの熱線に比べれば生ぬるい程度の炎しか、今のスヴァローグは操ることができなくなっていた。


そして何より最大の呪い、それは――



『殺ス』『憎イ』『赦サナイ』『死ネ』『消エロ』『死ネ』『死『死ネ』』『死ネ』』『『『『『死ネ』』』』』



『    ――AAAA■■■■■■■■■■!!??』



三つ目、精神汚染



歌丸連理のスキルの共有がなければ、矛先が向いていない渉ですら発狂するほどの強い怨念が今、その標的に対して直に放たれている。


突き刺さった刀身により体の内側に直接注がれる強い憎悪が、スヴァローグから思考力を奪う。


外側からは英里佳に、内側から丑裂に、肉体と精神の両方を同時に攻撃されては、さしものスヴァローグもまともに対応ができないでいた。



(ここで決める)



スヴァローグの姿形にまだ辛うじて牛と呼べる程度の保たれているが、英里佳は本能的にもうすぐ倒せると読んだ。


実際に、再生したスヴァローグの肉体が徐々に歪になり、体がデコボコで、異様に太いところもあれば、足が針金のように細くなっているという、子供の落書きをそのまま立体にしたようなものになっているのだ。



これで殺す。



その思いを込め、その頭を完全に踏みつぶしてやろうと蹴りを放とうとしたその瞬間、スヴァローグの姿が縮んでいく。



(体積を小さくして避けようとしても無駄、それくらいでかわさせたりしな――)



蹴りの勢いをそのままに、軌道を修正しようとした英里佳だったが、その直後に目を見張る。


あろうことか、今、英里佳の目の前には今はこの場にいないはずの歌丸連理の顔があったのだ。



「――ぁ、え」



その擬態は、咄嗟に意図したものではない。


攻撃が来ると思い、避けなくては、逃げなくてはいけないと、朦朧とした意識の中でスヴァローグは考えた。


そしてその時になって、最も強くそのイメージの印象に残った存在こそ、歌丸連理だった。


名は知らずとも、自分に傷をつけ、そして逃げおおせた脅威


自分が追いつめられる状況で、スヴァローグは本能的に最も逃げるのに適した姿だと判断したのだ。


もしこれが、天童紅羽や来道黒鵜だったならば驚きはしても決して揺るがなかった。


しかし、このスヴァローグの苦し紛れの擬態は、皮肉にも榎並英里佳にとってはこれ以上ないほどに有効な手段だったのだ。



「だ、駄目っ!?」



過去、歌丸連理を傷つけた時の記憶がフラッシュバックし、絶対に蹴りを当ててはならないという意思が働く。


咄嗟のことで蹴りをそらしたが、あまりに勢いをつけすぎた上に、足場の悪い階段であったということもあり、英里佳は転倒し、階段を転げ落ちる。



「英里佳!」



即座に詩織が受け止めたが、それは十分な隙だった。



『ぎ、が――ぁあああAAAAAA!!』



歌丸に擬態したスヴァローグは雄たけびを上げながら、自分に突き刺さった鬼形・丑裂の方をつたない手つきで抜こうとする。



「っ、させるか!!」



突然のことに驚いていた渉だが、即座に前に出て牛裂を抜かせないようにしようとする。



「く、ぅううう!!」

『がぁあああ!!』



鬼形を握りしめたことにより、再度鬼化してその膂力で突き刺そうとする渉


一方、スヴァローグも最後に見た歌丸の姿を模しつつも、剣を抜こうと必死に力を込め、その勢いのままに炎を放出した。



「うあ、ぐ、ぁああ!?」


「しまった……!」



英里佳を受け止めたことで咄嗟にクリアブリザードを使えなかった英里佳


それにより、渉はその身に直に炎を受け、更にその勢いによってスヴァローグに刺さっていた丑裂も、英里佳が突き刺した剣も抜けた。



『が、ぁ……GUO……!!』



血走った目で射殺さんばかりに睨んでくるスヴァローグ


しかし、奴の取った行動は攻撃ではない。


歌丸に姿を擬態させたままその場で浮き上がり、上へと高速で、こちらを睨みつけたまま登って行ったのだ。



「……逃げ、た?」



呆然と、状況をかみ砕いて確認するようにつぶやく麗奈


一方でこの場の指揮を任された蓮山はすぐに我に戻り状況を確認する。



「渉、おい、しっかりしろ!」


「ぁあ……でかい声出すなって……ギリ大丈夫……」



炎の直撃を受けた渉だが、出力が弱まっていたこと、スヴァローグの意識が朦朧としていたこと、更に鬼化していたことと事前に様々なバフを付与していたことなど、それらの要因が絡みあり、渉はゆっくりと立ち上がる。


ついでに予備として持っていた回復用の水薬も飲む。


脈動回復の魔法と合わせて、火傷は直ちに治る。



「……ごめん、油断した」


「私も……あの場は追撃するべきだったわ」



自身の判断により、最大の好機を逃したことに歯を食いしばりながら悔やむ英里佳と詩織



「……いや、あんなん動揺するなとか言われても無理だろ。


……しかし……おのれ歌丸連理、あいつ起きてても寝てても場を引っ掻き回すな……!」



本人がいたら「冤罪だよ」と突っ込みを入れるところであるが、当事者たちにとっては割と深刻な状況だった。



「……で、どうする」



そんな中で口を開いたのは、谷川大樹だった。



「今の奴の炎なら、俺はあと3回は確実に耐えるぞ」


「……少なくとも、私が与えたダメージの分は、シャチホコの呪いの効果ですぐには回復はしない」



大樹と英里佳は、責めるのならば今と判断した。


当然、今度は相手の土俵である溶岩エリアでの戦闘となるリスクもあるが、今、スヴァローグが確実に弱っている。



「……渉、丑裂の呪いはどれくらい維持できる?」


「一回与えたならもうそう簡単には消えない。


少なくとも、この丑裂が無事なら、肉体の炎化はまずできないだろうな。


……だが、炎の出力に関しては制限されている分を補うくらいに奴が熱を蓄えて無理やり打ち破るかもしれないな」


「精神汚染の方は?」


「直接刺してる時ほどではないが、今も残っているだろうな。


だが、これはせいぜいあと数日くらいだろう…………一旦この場は引いて、歌丸が復帰するまでの待つってのも、戦略の一つではあるだろうな……」



スヴァローグが退却した。


あれだけの深手を与えたならば、すぐにまた降りてくるとは考えづらい。


今も警戒しているが、熱線を放ってくる様子もないから、59層の溶岩エリアに戻ったと考えていいだろう。


何より、あの制限された炎ではたとえ60層に下りてきても、すべてを焼き尽くすという、神吉千早妃が見たような惨状は起こせないはずだ。



「でしたら、やはり連理様の復帰を待つ方が賢明だと思います。


仮に追撃した場合は広い場所での戦いとなり、先ほどと違ってスヴァローグは動き回るはずです。


肉体を炎に変えられないならば、例の瞬間移動も封じられている……ならば、連理様のスキルで戦える状態の先輩たちに後を託すのがもっとも確実です」



麗奈も一方で冷静に状況を分析して判断する。


スヴァローグにとってもっとも恐ろしかった肉体を炎に変えての攻撃の回避と機動力が封じられたとなれば、あの二人でも確実に対処できるはずだ。


しかし、どちらもメリット、デメリットがある。


それらを冷静に考慮し……数秒



「――はっ……いやいや、もうこうなったらヌルゲーだろ」



鬼龍院蓮山は、逃げたスヴァローグをあざ笑いながら階段を見上げる。



「あいつは今、逃げるべきじゃなかった。


最低でも、俺たちを全滅できなくても、誰かを殺すくらいの気迫を見せるべきだった」


「……蓮山、どうした?」


「どうしたもこうしたもねぇよ。


精神汚染の影響、ばっちり受けて、あいつは最大の悪手を打った」



蓮山は不敵な笑みを浮かべながら、自信満々に言い切った。



「追撃だ。


俺たちの持てる戦力全部使って、確実にあの畜生を仕留めるぞ。


そして……とびっきりの屈辱を味合わせてやる」



――丑裂に込められたスヴァローグに対する憎悪は強力すぎるあまり、直接触っていなくても近くにいるだけで伝染する。


そんなことが後になってから判明するために、この時この場にいる誰も、この後に語られる蓮山のスヴァローグに対する憎しみが滲み出ている作戦を誰も反対しなかったのであった。

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