第336話 スヴァローグ攻略 ① 寿命解決?



シャムスとのデートをうまいこと渉がこなしている一方で、少しばかり時間を巻き戻しほぼ同時に進行していたもう一つの事態


すなわち、歌丸連理のやらかす少し前まで時間を戻す。



「――――実際問題さ、スヴァローグって僕たちだけで倒せる可能性ってどれだけあると思う?」



ナズナが、自分たちと同じ学園以外の者たちは地上に戻れる可能性があるという事実を黙っていようと提案した数秒後に、歌丸は口を開いた。



「き、急に何よ……今大事な話してるんだから話題変えないでよ」


「いや、でもさ、スヴァローグをどうやって倒すのか、地上に戻れるか否かの根本的な原因ってあいつなんだから、避けては通れないでしょ。


で、ぶっちゃけた感じ詩織さんはどう思う?」


「そう、ね……」



急な話の内容の切り替わりに戸惑いつつも、三上詩織は先日見たスヴァローグの戦闘能力を思い返す。


次元干渉、鬼形など切り札はそろってきているが……それらがあったとしてどこまで戦えるのかと考え……



「……ルーンナイトになった私で、どうにか逃げるくらいの時間が稼げる、くらいね。


正直、生徒会長と副会長コンビでもあそこまで翻弄されたと考えると、ユニークスキルを持っている私たちでも、足手まといって言い切れるわ。


相手の耐久力も未知数だから、英里佳やユキムラの攻撃がどこまで有効化もわからないし……」


「新しい鬼形の素材にスヴァローグの角もあるし……成人の鬼なら十分に攻撃できるくらいなんじゃない?


それ考えると、素のあいつの耐久はそこまでじゃないと思うよ」


「ああ、なるほど、確か……に……………ぁ」



相手の能力を分析しようと考えてる最中、ふと口にした疑問をさも当然のように答える歌丸の答え。


それを聞いて、詩織は息を呑む。



「そうよ……鬼の存在やこの集落のことですっかり失念してた……過去に、スヴァローグに攻撃を当てた実例があるじゃないの……!」


「でも、先輩たちや、ここで遭難した学生たちが攻撃を当てられなかったあの牛にどうやって……?」


「それは、調べてみないと何とも言えないけど……可能性として考えられるのは三つね。


一つ、鬼には特別な力があって、それによってスヴァローグに攻撃を当てられた。


二つ、私たち学生と違ってステータスがないことでスヴァローグにとっては有効だを与えられた


三つ、その両方」



詩織のその言葉を聞いて、歌丸は口元に手を当てながら恐る恐る尋ねる。



「……その仮説が正しいなら、だけどさ……僕たち学生……というかステータス持っている人以外に……この里の鬼や、ステータス……学生証を持ってない人の力借りた方が、スヴァローグに有効打を当てられる可能性が高いってこと、だよね?」


「「…………」」



そこまで考えると、大前提が変わってくる。



「……よし、今回のこと、里のみんなに話そう」


「なっ……ちょっと、なんでそうなるのよ!」


「なんでも何も、僕たちだけでスヴァローグを倒すのは難しいだろ。


仮に鬼形でものすっごく弱らせることができたとしてもだよ、あいつのあのビームみ

たいな大火力……あれ、どうやって防御するんだよ?」


「そ、それは……」



スヴァローグの一撃、飛竜であるソラは持ち前の耐久力で生きているが、決して無傷ではない。ステータスで強化しているとはいえ、人間が受ければ消し炭すら残らない可能性が高い、それほどの熱量の攻撃をスヴァローグは放ってきているのを歌丸たちは目にしていた。



「仮に奴の瞬間移動を次元干渉と鬼形で止められても、あのビームをどうにかできないと、会長、来道先輩、ソラ、シャチホコと融合した英里佳、ルーンナイト状態の詩織さん、ユキムラ……現状四人と二匹で奴と戦うし……先輩たちの状況的に僕も近くにいないと戦闘は厳しい……となれば、自然とみんなは僕という足手まといを守りながらの戦闘になる。


どう考えても不利なのはこっちなんだ」


「…………自分で言ってて悲しくならないの?」


「もう割り切ってた。とにかく……あいつ、戦闘態勢に入ると角が光を強く発していたし……何ならビームも角から出してた気がする。ビーム出すの一瞬でよく見えなかったけどそれっぽい」


「ふわふわすぎるわよ……まぁ、私もうっすらそう思ってたけど」


「うん、だから断定こそできないけど、角にダメージをいかに早く与えられるかで、僕たち足手まといの生存率が大きく変動するはずだ。


上手くいけば、それだけであいつのビームを封じられる可能性だってある」


「さらっと私も足手まといに組み込まないでほしいけど……まぁ、そうね」



スヴァローグと天童紅羽、来道黒鵜、そして紅羽のパートナーである飛竜のソラの一対三の戦闘は、終始スヴァローグ有利の状況であったが、言われてみればとナズナもその時の様子を思い出す。


そしてそれらの情報をもとに推察すると、歌丸の仮説もかなり濃厚であるという意見に至る。



「過去にテツさんが、鬼が一切の制限もないスヴァローグに一撃を与えた。


タイミング的にあのクソドラゴンが僕たちとこの里の鬼を引き合わせたのだって、ただ一方的に僕たちが助けるんじゃなくて、彼らの何かが、僕たちにとってプラスになる要因があるはずだ。


あのドラゴン、目的は不明だけど僕たちに力を持たせることには積極的だしね」



一つ一つならば仮説として弱いが、それらが重なり合えば、結論に限りなく近づいていく。



「稲生の言う通り、話さないことでこの村の人たちの平穏な暮らしは保たれるかもしれない。


……けど、万が一でも僕を守るために誰かが犠牲になる、なんてことになる可能性があるなら、僕はそれを無くすためにできる手段は全部やるつもりだ」


「……………」



ナズナは黙考しつつ、視線を詩織の方へと向けた。


詩織自身、その視線を受けて彼女がこの選択をどうすべきかを考える。



「……まず、私たちの現状について冷静に判断しましょう。


……連理、あんたは気づいてないかもしれないけど……この里に留まり続ける選択をした場合、どんなメリットがあるかって考えてる?」


「メリット……?」



急な話題の転換を今度は自分に向けられ、オウム返しをしながら首をかしげる連理



「…………未知との遭遇?」


「違うわよ。というか迷宮なんてずっとそんなのばっかりでしょ。


あんたの寿命よ」


「「寿命……?」」


「ナズナ、前にこいつが入院してるときに共有したでしょ、心臓のこと」


「……あ、そういえば…………え、でも、寿命?」



詩織が言わんとすることを察せないナズナに若干呆れつつ、歌丸の方は少しばかり考えてから、はっと目を見開く。



「……もう成人してる遭難者たちが、いまだにステータスの恩恵を受けている……?」


「そう、つまり現状においてあの人たちの扱いは休学……いまだに学園に所属しているってドラゴンに扱われているのよ。


この前例を考えれば、私たちや連理にも、その扱いが適応されると考えるのが自然よ。


つまり……仮にこの里で三年間過ごしたとしても、学園に所属しているわけだから卒業したことにはならず、ステータスの恩恵――いいえ、もっと言えばあんたのその心臓の状態も継続される可能性が高いわ。


良くも悪くも、あのドラゴンは自分が決めたことに対しては律義に守る。


となれば、エリクシル無しでも、あんたは三年という寿命を無視してここで生き続けられるってことなのよ」


「っ……そ、そうか……それは盲点だったわ……!」



ナズナも、詩織の話を聞いてやや興奮気味に頷く。


一方で歌丸は「あー」と気の抜けた言葉とも言えない声を発して小さく頷いた。



「考えたこともなかったけど、確かにその通りだね……」


「ちょっと、なんで本人がそんな淡泊なのよ。もっと喜びなさいよ」


「喜べる要素なんて無いでしょ。


僕は迷宮の先に行きたい。遭難した人たちは地上に帰りたい。鬼の人たちだって、外の世界を見てみたい。


その全部、スヴァローグって存在に蓋をされている状況なんだ。


全部やりつくして、それで駄目だったって、諦めがつかないのに、ただ生き延びるためにみんなに黙ってるとか、僕は絶対に嫌だ。


だってそんなの、ものすごく惨めで格好悪いし、僕のせいでみんなから帰る場所を奪うなんて、それこそ死んでも嫌だ。


稲生だって、地上に戻ってお姉さんや土門先輩、北海道の家族と一生会えないなんて嫌だろ」


「それは…………う、うん……それは、うん、凄く嫌。みんなと会いたい」


「遭難した人たちは、その気持ちに蓋をされて今までずっと生きてきたんだ。


その気持ちを果たせないまま死んだ人たちだっていた。


……そこまでわかってて、自分が生き残りたいから何もしませんって、僕が彼らの立場だったら、殺したいくらいに恨むよ。逆恨みだとしてもさ」



歌丸のその言葉に、ナズナは目を伏せつつも、小さく頷く。


一方、その話題を振った詩織は、初めから連理がどんな回答をするのか分かっていたようで、静かに連理を見据え続けていた。



「私が、あんたに生きていてほしいって望んでも?」


「……え」



その言葉は予想外だったのか、間の抜けた声を漏らす連理。



「英里佳はちょっと反応が分かりづらいけど……それでもあんたに生きていてほしいって気持ちは、私たちと同じくらいのはずよ。


あんたがもっとみんなと長く一緒にいたいって本気で言えば、ドラゴンのこと、きっと諦めてこの里でずっと一緒にいてくれるわよ」


「いや、だから」


「紗々芽も、千早妃も……あんたの子供を産み育てることになるなら、麗奈さんも多分賛同してくれるんじゃないかしら。


あんたのスキルなら、子供たちにスキルに近い能力を与えられる可能性だってあるわけだし」


「待って、待って待って……急にどうしたの、詩織さん?」


「急に、じゃないわよ。


歌丸連理をどうすれば生き残らせることができるのか……そんなの、私たちみんなずっと考えていたわよ。


……あとね、この意見は私じゃなくて紗々芽がすでに考えていたことよ。


もし、ほかのメンバー邪魔しない状況になったら、毒を使ってでもあんたの動きを止めてこの里に縛り続けるくらいのプランも組んでるくらい、誰よりも本気で、ね」


「「えぇ……」」



とんでもないプランが自分たちの知らないところで組まれ、そして与り知らぬところで共有されている現状にドン引きする歌丸とナズナ。



「私も、紗々芽も千早妃も……多分英里佳も……地上にいる家族を捨ててもいいってくらい、あなたと一緒にいる時間が欲しいって思ってる。


……それでも、戦うの?」


「……いや、でも……」



歌丸にとって、歌丸連理にとって、その質問は簡単に答えを出せるものではなかった。


出せるわけがないのだ。


彼はもう、すべてを失い、ただがむしゃらに未来に向かって手を伸ばしていた入学したての頃とはもう違う。


あまりに尊い、大事なものばかりが手に入った。


そんな彼にとって大事な人たちからのその気持ちは、無碍にしたくない。できはしないのだ。



「……ナズナ、あなたは、こいつのためなら自分の大事なもの、捨てられる?」


「そ、れは……」


「すごく酷いこと言ってるのは、分かってる。


けど、教えて。あなたの大事なものの中で、歌丸連理って人は、何番目に大事なの?」


「ぁ……ぇ……ぅあ……」



ナズナはゆっくりと、しかし肩を小刻み震わせながら大きく息を吸っている。


目は焦点が合っておらず、心なしか顔色も悪い。



「っ」



そんなナズナを見て、自分は何をしているんだと歌丸は自分の頭に血が上るのを感じた。


そして今、詩織がどんな顔をしているのかもようやく気付いた。


どちらもつらそうな顔をしている。


――させているのは誰だ?


それを考えた時には、すでに歌丸はその握り拳を元凶の鼻っ柱に叩き込んでいた。



「「っ!!」」



歌丸は自分で自分の顔を殴った。


それにびっくりして詩織もナズナも目を見開く。


そんな様子をぼやけだす視界に収めながら、歌丸は首が吹っ飛んで真後ろに倒れこんでしまい、口と鼻から血を流すくらい、全力で自分を殴っていた。



「ちょっと! な、何してんのよ!?」


「血、血が出て、あ、あわ、あわわわわっ……!」


「――捨て、さしぇ、なひっ……」



ゆっくりと起き上がり、口の中の血の味を確かめるように噛みしめながら、歌丸は起き上がる。


「ぷっ」と、血の混じった唾を吐き捨て、軽く頭を振って揺らぐ視界を戻す。



「大事なものは、大事なものなんだ……一番とか、二番とか、そんな順位、本当はつけちゃ駄目なんだ。


だって、それはすごく苦しいことだから…………それは、僕もよく知ってる」



この学園で危険なことをして過ごす日々を、かつて妹である椿咲にやめてほしいと懇願された。


しかし、彼はそれを拒んだ。


自分のこと、本気で心配してくれる妹の気持ちを踏みにじって、その上で北学区に残って、冒険する日々を選んだ。


それが一番大事だと決めたから。



「一番大事なもの、決めたけど……それは、二番目以降が大事じゃないって意味じゃない。


本当は、全部大事で……そのどれか一つでも無くなったら、自分が自分じゃなくなるくらい、死んでしまいたくなるくらい、苦しいって思うから。


だから、決められないなら、決めちゃ駄目だ」



歌丸は、はっきりと、ナズナの肩を掴んでそう断言する。


その上で、詩織に向かい合う。



「先に答えを言うよ」


「……ええ、聞かなくてもわかってるけど、聞くわ」


「スヴァローグと戦う。それで地上に戻って、迷宮の先に進み続ける」


「どうして?


私たちがそう望んでいるのに?」


「その願いが、詩織さんたちにとって、一番だっていうなら……きっと僕も答えは変わったかもね……けど、違うでしょ。


詩織さんも、紗々芽さんも、千早妃も英里佳も、それが一番いいって絶対に思ってない」



歌丸の言葉に、詩織は無言のまま頷く。



「僕も、それが一番だとは思えない。


何より、ほかにもっとみんなが納得できる幸せな選択肢があるのに、それを選ばないなんてこと、ありえない。


ありえちゃいけない。その諦めをただ受け入れてしまえば、心が死んでいく。


その先に幸せな未来は存在しないって、それだけは今の僕は断言できる」



「…………はぁ…………そうよね。


ごめんなさい、柄にもなくセンチメンタルになっていたわね。


ナズナも、ごめんなさい。意地悪が過ぎたわ」


「……う、ううん。別に…………いえ、やっぱり良くないわ。すごく嫌な気持ちにさせられてわ。


でも、許す。許すから……そんな風に自分のこと責めたりしないこと。いいわね、約束よ?」


「……そうね、約束するわ」


「……ほら、あんたも血、ほらちり紙鼻に詰めて!」


「ふ、ふがふっ」


「ぷっ……豚の鳴き声見たい」



無理やりに丸めたティッシュを鼻に突っ込まれてされるがままの歌丸をみて笑い出すナズナであり、そんな彼女を詩織は人知れず眩しいなと思いつつ……



「……連理、学生証、光ってるわよ?」



「「え」」





――ということがあった。



その後、そのままスヴァローグと迷宮脱出に関する情報をそのまま喋りだそうとした歌丸を詩織が無理やり黙らせ、再び夜に全員が集まってお互いの状況を報告し合うこととなった。


結果として、鬼形についてはあとはシャムスの完成を待つのみ。


転移妨害の次元干渉については、来道黒鵜が、日暮戒斗におのれの技術を教える方向で安全策も講じる。



そして次の問題は……



「鬼の存在が、スヴァローグにとってどれだけ通用するのか、か……


確かに、俺たちだけでも奴相手に立ち回ることは不可能じゃないが、倒しきれるかというとまだ明確に頷けなかった。


それが事実なら、かなり有効だとは思う……思うが」



この場の代表として、来道黒鵜は何とも言えない表情を見せる。



「この里の鬼がそこまで協力を得るのは困難だな。


仮に協力を得られたとしても、ぶっつけ本番だろ。やっぱり通じませんでしたなんてなったら、全滅、仮に生き延びてもこの拠点での平穏な暮らしなんて不可能になるぞ。


そこまでのリスクを考えれば、俺たちだけで挑んだ方が挽回もしやすいだろうな……多少の犠牲は前提になるが」


「面倒くさいわね……そんなこといちいち考えたって状況変わらないなら、別に普通に戦えばいいじゃない」


「お前のその判断で、この場にいる何人かが死んでもいいっていうのか?」


「む……そこまでは言ってないでしょ。


ただちょっと重く受け止めすぎって言いたいだけよ」



面倒くさそうな天童紅羽に、来道黒鵜は若干苛立ちながら吐き捨てると、流石の紅羽もばつの悪そうな表情を見せる。



「あの、それについてなんですが」



そんな思い空気が流れる中、何とも不敵な笑みを浮かべながら歌丸連理が挙手をした。


同時に、その場にいる全員が思った。



((((なんかとんでもないこと言いそう))))



「……聞くだけ聞いてやる、言ってみろ」


「はい。と、その前に……萩原君、鬼形ってまだ借りることできる?」


「え……あ、ああ。


今はまだスヴァローグの角の加工について、こっち来るまでに手に入れた素材をどうやって配合するかとか、どういう形にするかとか試行錯誤してる段階で、鬼形そのものはまだ手を出してないぞ」


「じゃあ、ちょっと明日一日それ貸して」


「貸すも何ももともとお前の物だろ……でも、どうすんだ?」


「本物の鬼が駄目でも、鬼形なら一時的に鬼になれる。


つまり、鬼形の力を使って鬼の力でスヴァローグに有効打を与えられるのか、もしくはステータスの力を感じ取って奴はこっちの攻撃を先読みして回避しているのか、実験で試せばいいんですよ」


「…………ほう」



歌丸連理にしてはまともなことを言っていると感心しつつ、確かにその方法でうまくいけば説得の材料としては申し分ないなと思う。


「……だが、それがもし失敗したら、鬼形を使った奴が死ぬだけじゃなく、鬼形そのものが失われる可能性があるぞ。


俺や紅羽は……奴のデバフの強い影響を受けることを考えると、榎並か三上のどっちかで試すのか? 本当にお前、その覚悟があるのか?」


「ん、いえいえ、それなら心配いりませんよ。


奴に攻撃を当てられるか試しつつ、そして100%の確率で絶対に奴の攻撃を避けられる人材が、ここにいますからね!」


「何…………まさか、あのスピーカーみたいなユニークスキル以外に、何かほかに新しいスキルを得た奴がいるのか?」



来道の言葉に、その場にいる全員が、何となく詩織を見たが、当の詩織は首を横に振る。


すると当然、同じく今日、スキル発現時に歌丸と一緒にいたナズナに視線が集まるが……



「?…………っ!!」



自分に視線が集まって一瞬首をかしげたが、すぐに首を横に振って自分は違うと主張する。



「いえいえ、違いますよ。ここにいるじゃないですか、ほら、ここに」


「いやだから、誰だ?」


「いや、ほら、ここ、ここっ!」



来道が訊ねると、なぜか歌丸は自分の胸を軽くたたく。



「「「「「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」」」」」



全員、その場にいる人間全員が、本気で首を傾げた。



「いや、だから、僕! 僕、歌丸連理だってば!!」



「「「「「「「「「「「「「「「いや、無理」だ」ね」だよ」です」でしょ」だな」」」」」」」」」



全員、まったくの同意見。



「待って、話を聞いて!


というか、鬼龍院、それに稲生も、お前たちが否定するのはおかしいだろ!!」



「は、貴様は何を言って………………あ」

「…………もしかして」



実際にその時の現場を見ていた鬼龍院と、実際に体験したナズナは、歌丸の言葉でようやく察しがついた。



「ヴァイスとシュヴァルツ、二体と同時融合した状態の僕なら、因果律とやらを捻じ曲げて絶対に奴の攻撃を避けられます!」

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