第259話 レイドボス討伐RTA~力の東v.s.技の西~ その③

その光景を前に、あの会長までも唖然としていた。


過程はわかる。


その方法もわかる。


至って簡単で、誰にでも考えついて実現可能な手法での討伐だ。


ただ異質な点を強いてあげるのならば、西部学園側は、戦う相手の情報を完全に収集しきっていたという一点。


だからこそ、ここまで一切の無駄なく相手を完封できたのだ。


運動場の中で誰一人傷を負うこと無く勝利できたという事実に喜びを上げている面々


花魁姿の会長が胴上げされていて、花魁のカツラが外れて大騒ぎとなっていたが、その喧騒が酷く遠くにあるように聞こえた。



――早い。


――早すぎる。



一切の無駄を削った完全な作戦。


少なくとも、あの集団の中にエースと呼べるような生徒はいただろうか?


いや、仮にいたとしても、その役割を演じる必要性が無かった。


完全な予知の元に、マザーフェニックスは戦う前から敗北が決まっていた。



――これが、ノルン



その予知の能力を、一切の邪魔をされずに、そしてそれに従順に従う武力を手に入れた、神吉千早妃という指揮官としての能力なのだ。



「英里佳」



今この場にいる戦士の中で、僕がもっとも信頼できる人物の名を呼ぶ。



「わかってるよ、歌丸くん」



英里佳は僕の隣で、運動場の中からこちらの方を見ている神吉千早妃を見つめる。


睨んでいるわけではないが、その眼はかなり挑発的だ。



「あなたにどうこうできますか?」と、その視線で語っていた。



「勝つ」



英里佳は聞こえはしないだろうけど、短く意気込みを口にした。


その目には揺るがない強い意志が滲む。



「ああ、勝とう」




『先攻、マザーフェニックスの再生能力を完全に封じた見事な作戦でした。


このタイムは歴代最速となるでしょう。


さて、続いては東部迷宮生物の後攻です』



実況の声が聞こえると、再び僕たちは運動場の中へ、そして千早妃たちは運動場の外へと場所を入れ替えられた。



そして運動場の中央には、アキレスタートルが悠然と存在感を放っていた。



「さぁ、私たちの力を世界に示してやろうじゃないの!」


「GUOOOOOOOOO!」



会長の言葉に、パートナーの空が咆哮をあげた。



「――グレンデル!!」



会長とソラの身体から光が放たれたかと思えば、その場に姿を現したのはこれまでとは異なる姿の会長


この場にいる面子はもう三回目になるだろうが、正式にその姿を全国で晒すのはこれが初めてだろう。



『なっ、こ、これは!!


融合! 迷宮学園の生徒と、迷宮生物の融合!!


榎並英里佳選手に続く二人目!!


東部迷宮学園の北学区生徒会長、天藤紅羽!


自身のパートナーと融合しましたぁ!!!!』


「――ドラゴンメイデンよ。


覚えておきなさい」



角に翼、さらには尻尾まで生えた会長のその姿


元々強いのに、その姿になった途端に威圧感が数倍に増した。


そしてそんな会長の隣に並び立つのは、同じ生徒会の三年生



「わざわざこの場で、この目立つタイミングで融合を使うなよ……」



普段通りのマントを身にまとった来道先輩



「諦めろよ来道。


こいつはそもそも負けず嫌いだ。


だからこそ迷宮攻略でトップを張り続けてんだからな」



学生証のストレージから出したのか、大量の巨大武器を運動場に出現させ、その中から無造作に巨大な斧と剣をそれぞれ片手で持つ会津先輩



「私だって、ここ最近地味だったから頑張っちゃうよ~」



袖をまくって腕をぐるぐる回す瑠璃先輩



そんな頼もしい先輩方の背中を見ていた時、背中を軽く叩かれた。



「ほら、行くわよ連理」



ルーンナイトとしての能力を発揮し、現時点ですでに三年生と同等の能力を持っている詩織さん



「――うん、勝とう!!」



僕は自分自身をそう鼓舞し、ストレージから出した魔剣を抜こうと――



「あれ?」



した瞬間に僕の手から魔剣が消えた。


探してみると、どう言うことか魔剣は僕の手から詩織さんの手にあった。


ルーンナイトになると動きがまったく見えなくなるな。



「連理、魔剣禁止」


「へ?」


「魔剣使ったらアキレスタートル逃げちゃうかもしれないでしょ。


これは私が借りるから」



そう言って、詩織さんは魔剣を抜いた。


瞬間、詩織さんの姿が鬼へと変化する。


目は赤く変色し、額から角が生えて身にまとうプレッシャーが増した。


西洋風の軽装鎧も、なんか左側が日本風の鎧に変化した。


右手に魔法剣・クリアブリザード、左手に魔剣・鬼形


西洋剣と日本刀の変則二刀流


――やばい、めっちゃカッコいい


って、考えてる場合か!


これ僕、手持ちの武器が無くなってるじゃないか!!



「え、あの……え……?」



手持無沙汰となった僕はどうすればいいのかと周囲を見回すが、誰もこっちを見てくれない。


英里佳がチラッとこちらを見て心配そうだが、何も言わない。


ああ、つまり英里佳も僕が魔剣使うことは作戦的に邪魔と判断してるわけですか、そうですか。


いや、落ち込んでる暇なんて無いぞ。


僕はただいつだって自分の役割を全力で奴だけじゃないか。


自分の顔を軽く叩いて僕も前へと出て皆に並んでアキレスタートルを見る。


奴は無言のままだが、その窪んだ眼球でしっかりと僕を見ていた。


そして会長が僕に指示を出す。



「歌丸くん、範囲共有を」


「種類は?」


痙攣無効クランプサーマウント万全筋肉パーフェクトマッスル超呼吸アンリミテッドレスプレイション


「了解です」



会長の指示に従い、僕は英里佳と詩織さん以外の面々に共有するスキルを選択する。




「共存共栄Lv.5 範囲共有ワンフォーオール 発動」



「むっ!」「おぉ、来たな!」



スキルを発動させたのを強く実感した三年男子の先輩二人



「歌丸くん、そのまま特性共有ジョイントは使えるかしら?」


「え、あ、はい、問題ないですよ。というか英里佳も詩織さんも使ってますし」


「なら今だけ特性共有の枠を私に一つもらえる?


私、元々サムライだったから歌丸くんが覚えてるスキル全部使えるわよ」


「わかりました」



先輩が差し出した手に僕も触れる。


普段の先輩と違ってその手は若干ドラゴンっぽくて怖かったが、そこは我慢して手を握り、スキルを発動する。



「――っ!


へぇ、凄いわねこれ、今なら何が相手でも負ける気がしないわ!!」



僕の持つすべてのスキルが使用可能になり、テンションが上がった様子の会長


この人、サムライ系のスキルの最上位スキルを全部は覚えてなかったみたいだしな……



『東部迷宮学園最強にして、二人目の融合者、ドラゴンメイデン“天藤紅羽”


北学区の副会長三年生! 依頼達成率100%の仕事人、ディサイダー“来道黒鵜”


北学区三年、人間重機ヘヴィーの異名を持つウォーロード“会津清松”


北学区二年、最強の魔法使いにしてデストロイヤーと謳われるアークウィザード“金剛瑠璃”


人類最新にしてハイエンドと目されるルーンナイトの力を持ち、たった今、魔剣の力もその手中に収めた北学区一年“三上詩織”


先日、東部迷宮学園の学長であるドラゴンの頭部を蹴り飛ばした張本人! ベルセルク・スパイカー、人類初の迷宮生物との融合者! “榎並英里佳”!!


今大会の――いや、世界の台風の目、ヒューマン・ビーイング“歌丸連理”!


このメンバーでいよいよ最終決戦が開始となります!!』





『試合開始!』



実況の声と同時に、アキレスタートルが動く。


本来ならば学生を前にすれば脱兎のごとく逃げ出すはずのその迷宮生物が、あろうことか前進してある人物を狙っていた。


その視線の先にいるのは、歌丸連理



『それじゃあ歌丸くん、お願いね』


『はい! って……え?』



元気よく返事をして走り出そうとした連理だったが、その足は地面を蹴ることは無く、気が付けば宙に浮いている。


ドラゴンメイデンとなった天藤紅羽の尻尾が彼の胴体に巻き付いて持ち上げていたのだ。



『なにをしてっ――』

『会長何を――』



英里佳と詩織がそのことを咎めようとしたが、時すでに遅し。



『ほーら、鬼さんこちらっ!』



紅羽が翼を広げたかと思えば、尻尾で歌丸を確保したままその場から飛び立つ紅羽



『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!』



歌丸は悲鳴をあげながら飛び去って行き、あろうことか迫ってきていたアキレスタートルの真上を陣取った。


それに対してアキレスタートルは足を止めて、その首を伸ばして連理を捕食しようとする。



『瑠璃、足場を消しなさい』


『あ、ちょ、まっ、揺れが、激しっ――やべ吐きそっ』



『あ、あはは~レンりんもう少し頑張ってね~!』



アキレスタートルの首からゆらゆらと揺れながら避ける紅羽とそれに揺さぶられる連理を見ながら苦笑を浮かべる瑠璃は、その杖を構える。


複合系統魔法杖type TRINITY “ガンド瑠璃式ルリシキ


完全に個人用にチューニングされたレイドウェポンである。



『黒き煤舞う深淵の、角笛響く死者の国


焼かれた亡者は口開き、戦は今かと待ち焦がれ。


私は叫ぶ、軍勢よ、戦は今だ。


私はこの熱を忘れない。


その久遠の炎を抱き、全てを燃やせ。


終わらない闘争こそが、世界の心理。


生者よ、花よ、音よ、光よ、全て、終わる』



いつか発動させた“ニブルヘイム”と似ているが、内容が真逆の詠唱。


それを示すかの如く、彼女の周囲が熱を発する。


単なる土と砂の運動場全体に、異常が発生する。



『ムスペルヘイム』



地面が隆起したかと思えば、そこから湧き上がってきたのは炎の柱だった。


それも一つや二つではない。


運動場の見渡す限りの範囲内すべてで炎が噴出し、地面をドロドロに溶かしていく。



『これは、現在確認されている最高位魔法の一つ!


炎熱系最強魔法、ムスペルヘイム!!


使用者の任意した場所を溶岩地帯に変えてしまう魔法です!!』



実況の言葉通り、何の変哲もない運動場がわずか数秒で溶岩地帯へと変わる。


ドロドロに溶けた地面は赤熱して、瑠璃たちが元々立っていた場所以外には足の踏み場など無くなっていた。


『――OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』



これまで沈黙していたアキレスタートルがここでようやく悲鳴をあげる。


元々は氷河エリアという低温の場所に生息していたアキレスタートルにとって、この灼熱地帯は未知の領域


溶岩となった地面で足を焼かれて悲鳴をあげているのだ。



「おら、高い踏み台だぞ、ありがたく使え!!」



そしてそんな溶岩の中へ次々と先ほどストレージから引き出した巨大な武器を投げ込んでいく会津清松


溶岩の中でも融けること無くその存在を主張していたそれらの武器は、現状の足場として最適だった。



『行くぞ』


『は、はい』


『あのアマ後で殺す』



その足場を使って移動を開始した来道黒鵜と詩織、そして英里佳は連理を勝手に連れて行った紅羽に殺意を抱いていた。


足場となった武器を使って高速移動する三人


通常の機動力ならば来道が一枚上を行くはずだった。


しかし現状、英里佳と詩織には歌丸のスキルである足場の悪い所を移動する際は体重が羽の様に軽くなる悪路羽途アクロバットが発動しており、楽に移動が出来ていた。



地面は溶岩


前方に清松と瑠璃


右方に詩織


左方に英里佳


後方に黒鵜


上空に紅羽と連理



今、アキレスタートルを完全に囲みこむ形となった。



「一気に決めるぞ!!」


「ライトニングブラスト・フレアバースト・マグマウィップ!!」



清松はそう言って、残っていた武器をアキレスタートルに向かって投擲する。


飛翔する巨大な武器の質量は一つ一つがとんでもなく重く、それだけでも十分すぎるほどに凶悪だった。


同時に瑠璃も杖の機能である魔法のストックを発動させ、ノータイムで魔法を連続で発動させる。





『熱くなったんなら冷やしてあげるわよ。


――超過駆動オーバードライブ



詩織もここで魔法剣を発動させ、未だに溶岩に焼かれているアキレスタートルの足に狙いをつけた。


ルーンナイトの補正に、魔剣によって強化された膂力によって振るわれる斬撃は、天藤紅羽の放つ一撃と遜色ないレベルにまで至っていた。



羅憑佳狼戦姫ラッカロウゼキ



英里佳はその全身に物理無効のスキルを発動させ、一気に飛び掛かる。



危機一発・兎踏クリティカルブレイク・ラピッドスキップ!!』



その蹴りは連続で放たれるだけでなく、淡い紫色の衝撃波となってアキレスタートルの甲羅を深く抉る。



「――もう三年となれば、隠す意味合いもないか」



実況に音声を拾われないくらいの小声で来道黒鵜はつぶやく。


彼は北学区の副会長であるが、基本的に裏方に徹する男だ。


一年の時に天藤紅羽に目をつけられ、二年の時にはそのせいで他のバトルジャンキーに目をつけられて連れまわされて、そして今の地位に至るだけの実力を身に着けた。


本来ならばこの体育祭も裏方で徹するつもりだったのだが……



――最後くらい、あんたもはっちゃけなさいよ。



そんな一言で自分の主義を今回は捨てることにした。



『――歌丸、お前さっき、転移対策について言っていたな』



マントを翻し、来道黒鵜はその姿を隠すことを放棄した。


その手に持っている物は何もない。


だが、その手を刀の様に構えて、今にも振りぬかんとばかりにを作っている。



『来道先輩?』



空中で吐き気を堪えた蒼い顔をしながらも、自分に呼び掛けた黒鵜に視線を向ける連理。



『良く見とけ。これが、おそらく今お前の探してるドラゴンを打ち破るための技の一つだ』



その体に一切変化はない。


しかし、その場にいる他の六人全員は肌で実感した。


空間の変化が、空気のうねりとなって運動場に風を吹く。



『この一撃はあるスキルの応用。


本来は攻撃スキルとかじゃないから、派手さは期待はするな。だが――』



その手刀が、放たれる。



『俺のは、距離も体格も関係なく、ドラゴン以外は何でも斬れる』



四方向からの同時攻撃


頭には大質量の武装を複数投げつけられ、魔法によって顔を焼かれる。


右の足が一瞬で凍り付き、鋭い斬撃に加えた過熱状態からの一瞬の冷却により、巨大な裂傷が生じる。


さらに左側から放たれる物理無効の効果を受けた連撃が、まるで綿を突き破るかのように甲羅にいくつもの穴を穿つ。


そして、後方から放たれた見えない斬撃は、堅牢な甲羅など無視し、その背中を切りつけて巨大な切創を作り出す。



『――――GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!』



アキレスタートルが絶叫をあげた。


その目は瑠璃の魔法によって潰されているが、命の危機を確かに感じていた。


だが、一つだけ確実にわかっていることがあった。



――奴ヲ殺セ



確かな殺意だけが、今のアキレスタートルを支配していた。


全身血だらけになりながら、その頭と手足を甲羅の奥に引っ込めると、遠心力で血をさらに噴出させながら回転を始めた。



『『『え』』』



どこかで見た覚えのあるようなその動きに、その場にいた男子三人は反応した。


一方の女子四人は回転して何をしているんだろうと首を傾げていたが、アキレスタートルのその行動を次の瞬間に理解する。



――アキレスタートルが、手足のあった場所から空気を噴出させながら飛んだのだ。



『『『飛んだーーーーーーーーーーーー!?』』』



驚き絶叫する。


いつぞや見た覚えのある特撮なその光景に少なからず興奮を覚えてしまう男子三名。


――だが、それが仇となった。


紅羽もその光景には唖然としていて反応が遅れてしまう。


アキレスタートルは飛行したまま迫り、突如その首を伸ばしてきた。



『あ』



連理の反応が完全に遅れた。


死を予知じみた直感で回避するスキルが発動しなかったのだ。


――つまりそれは、これが死に直結しないものであると連理の本能が判断していたのだ。



『――空蝉の型・空』



紅羽の声が響くと、その手にいつの間にか握られていた竜鱗の刀剣が迫り来たアキレスタートルの顔を刻む。


丁度紅羽と歌丸を捉えていたであろう嘴を切り取り、結果、口の中に一瞬入っただけで捉えることも噛み砕くこともできなかったのだ。



『空は私のフィールドよ、バ亀さん』



その瞳にドラゴンを思わせる威圧的な光を発する。


連理という存在に目がくらみ、その隣に最悪の存在がいることを見逃していたのだと、回転を続けるアキレスタートルは自身の判断を見誤ったことを悟る。


しかし、すでに手遅れだった。



『――斬鉄の型・鐵』



単純に“斬る”という動作に強力な補正を加えるスキル


サムライという職業の基本攻撃の延長線上のスキル


だがそれ故に、今までの単なる基礎の動きが必殺の一撃にも至らせるスキル



『つまり紅羽のいつも通りの通常攻撃だな』


――後に、どこぞの副会長がそう語った。



その一撃は、まだ甲羅で覆われているアキレスタートルの身体に竜鱗の刃が豆腐の如く音もたてずにスッと入る。



『流水の型・時雨』



本来は対人戦でのフェイントと織り交ぜた回避不能の斬撃を放つ型が、突き詰めた結果、分身を一時的に生み出して攻撃するというスキル



『なんという悪夢……』



――どこぞの会計はその一瞬の光景をそう語った。



無数の紅羽が一斉にアキレスタートルに襲い掛かった。



『疾風の型・颯』



アキレスタートルがとうとう落下を始めると、紅羽はスキルを駆使してその腹部分の柔い甲羅を切り裂きながら地上のマグマすれすれの高さまで移動した。



『わぁ、あれ便利でいいなぁ~』


――暢気な二年の書記はそんな感想を抱く。



そして頭上から落下してくるアキレスタートルを見て堪えられないと言った具合に歓喜に叫ぶ。



『――やっばい、これ超楽しいぃ!!!!』



そう叫び、最後の一撃を放つ。



『嶮山の型・龍!!』



悪路羽途で一時的に体重をゼロにした状態で溶岩の地面を蹴り、爆発的な加速で落下するアキレスタートルに迫る。


下段から上段への切り上げにより、相手の体勢を崩す技。


突き詰めた結果、どんなに堅牢な相手でも――いや、相手が堅牢な存在であるほどに一撃の威力が跳ね上がる。


先日、英里佳が使用した生存競争LV.5 刃羅怒衝守と効果が似ており、違いを上げるならばあちらは持続型で、此方は瞬発型という点。


だがその分、発揮する効果は極めて高い。


レイドウェポン並みの頑丈さを誇る竜鱗の刀剣――つまり紅羽の尻尾千切れた尻尾から作られた刀剣が、自身の膂力とスキルの反動に耐え切れず、砕け散った。


そして一方で……



『――真っ二つ……』



思わず零れたような実況の感想


そう、アキレスタートルは、空中で真っ二つに割られてしまったのだ。



元々他の面々に甲羅を破壊されていたという点を考慮しても、圧倒的なその一撃


今、完全に勝負は決した。



『――し、試合終了タイムは』『ぅぷ、』『え?』



突如、誰かがえずく。



『あ、やば』



勝利の歓喜に笑みを浮かべていた紅羽の表情が凍り付き蒼くなるが、もう遅い。


そして、紅羽の尻尾に巻かれ動けず、人外の超高速機動に巻き込まれていた歌丸連理。


当然の帰結。



『うぉぼろぇぇええええええええええええええええええええええええええええ!!!!』










ちなみに、実際の中継ではドラゴンの魔法によってキラキラエフェクトに変更されていたらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る