第234話 忘れてるかもしれませんけど、男だよ。



――やっちまったぜ。



現在、僕、歌丸連理は更衣室にて一人頭を抱えていた。



おもいっきり、ついさっき神吉千早妃とキスしてしまった。


がっつり、二回も。



「……うぉおおお……!」



忘れようと思っても何度も唇の感触と、間近での千早妃の匂い、その表情が頭の中で何度もリフレインしてしまう。


忘れようとして忘れられるものじゃない。



「……よくまぁやるな」


「っ! ら、ららら来道先輩!?」



いつの間にか背後から声がして、振り返るとそこには呆れ顔の来道先輩がいた。



「何時だったか、紅羽や清松がお前はどういうタイプか話し合ってたらしいんだが」


「は、はぁ……タイプですか?」


「ああ、人柄、というか漫画とかのキャラ的な意味な。


で、色々話合った結果、お前は“バトルもの漫画だけど直接戦わない系ヒロイン属性”だって結論に至ったそうだぞ」


「長っ!? というか僕男ですよ!」



「額面通りの意味じゃなくて、ポジション的な意味だよ。


お前って別に主人公とか友人とかライバルとかでもないだろ。


で、お前しょっちゅうさらわれるし、お前のおかげで強くなった異性が多いし……ピッタリじゃないか?」


「いや、そん、な……こと…………は…………………………………ないと、いいなぁ」


「自覚あるんだな、やっぱり」



力強く否定できないのがこれまでの自分の経歴である。


今までしょっちゅう色んな危険にあったけど、その一つでも僕一人だけの力で乗り切れた覚えがほとんど……というか、皆無だった。


漫画とかだと確かに僕のポジションってまさにヒロイン的であると今さらながらに自覚できた。



「まぁ、どうでもいいからさっさとデートを再開しろ」


「どうでもよくないですよ!


僕にとっては一大事なんですよ!」


「そうか、じゃあ気をつけろよ。ほら立て」


「無慈悲!」


「いいからさっさと行け。ほら、立て、そして歩け」


「え、あ、ちょ、そんな強引な、もうちょっと心の準備を!」


「この際、ホテルに行こうが俺は構わないから存分に仲を深めてこい」


「先輩今日ちょっと適当過ぎませんか!?」


「他人の色恋に口は挟まない主義なだけだ。ほら行け」



それ以上有無を言わせないという様子で僕は部屋から出されてしまった。


さらにはもう戻ってくるなと言わんばかりに扉をロックされた。



「……えぇ~」



いくらなんでももうちょっとこっちの気持ちに親身になってくれてもいいんじゃないの?


そんなことを内心で思いつつもため息を吐きながら覚悟を決めた。



「……行こう」



このまま千早妃を待たせてしまうのは確かに論外だ。



「――あ」


「あ」



バックヤードから出たところで、フォトフレームを持った千早妃と早速合流した。


つい先ほどのキスのことを思い出し、顔から火が出そうな錯覚を覚える。



「「…………」」



ただ、目を逸らすのは失礼だと思ったのでなんとなく千早妃を見るのだが、向こうも顔を真っ赤にして、目を潤ませながら僕を見ている。


体の奥が熱くなる。


スキルはちゃんと発動してるはずなのに、頭の中がぼんやりとしてしまう。



「連理、さま」


「あ、えっと……お、お待たせ?」


「い、いえ……私も今来たところです、から」



なんでデートの定番の待ち合わせみたいなこと言ってんの僕ら?


そんなことを考えていると、ふと千早妃の手にあるフォトフレームが目に入った。


その写真には、ついさっき城のテラスで抱きっている僕と千早妃の姿があった。


キスはしてないが……これ、する直前の写真である。


ついさっきから思い出していた光景がさらに強く思い出されて、なんとなしに唇を手で覆ってしまう。


もう、今もしかしたら顔が燃えているんじゃないだろうか?


それくらいに顔が熱い。



「あ……えと、これは、その」



僕と写真を交互に見て口ごもる千早妃。



「ま、まぁ……もともと写真撮影が目的だったもんね」


「は、はい。


……あの…………コレ、もらってもいい……ですか?」



千早妃は不安な様子でそんなことを聞いてくる。


キスしたときは意地悪そうに言っていたのに、今更になってそんな弱気になるとか……ちょっとずるいと思う。



「当たり前だよ。それは千早妃のだよ」


「……はいっ」


「あ、でも…………あんまり人には見せないようにね」


「はい。私の人生で一番の宝物として、大事にしまっておきます」



笑顔になって写真を胸元に抱きしめる。



「だから、大袈裟だってば」


「いいえ、これは本当に……私にとって一番大事な宝物です」



嬉しそうにそう語る千早妃を見ていると、僕も自然と笑顔になってしまった。



「……とりあえずその写真はまた僕が預かるよ。帰る時に返すから」


「はい、ではお願いします」


「アトラクションには一通り乗ったけど……何かまだ乗りたいのある?」


「あ……でしたら、おみやげやさんに言ってみたいです。


限定品もありますし…………姉様たちに色々と買ってあげたいので」


「そうだね……うん、僕も色々買っておこうかな」



流石にみんなにおみやげくらい買っておかないと申し訳なさすぎる。


アトラクションを出た僕たちはおみやげの売られている売店コーナーへとむかう。


時間的に少し日が傾いていて、僕たちと同じようにおみやげを買いに来ている他のお客さんがいて結構にぎわっていた。



「わぁ……!」



ぬいぐるみコーナーの前で、千早妃は子供の様に目を輝かせる。


色んなディスティニー映画のキャラクターのぬいぐるみがあって、本当に多種多様だ。



「……あ」



そしてそれらを見て僕は思い出したことがあった。



「連理さま、どうかなさいましたか?」


「い、いや、大したことじゃないから」



そう誤魔化すが、内心で僕は焦っていた。



――リハーサルの時に手に入れたぬいぐるみ、まだ英里佳に渡せてないじゃん。


手のひらサイズのうさぎのぬいぐるみ


英里佳にプレゼントするつもりで購入したのに、結局今日まで渡せず終いだった。


うわぁ、会長の一件もあって完全に忘れてた。どうしよう。今さら受け取ってもらえるかな?


というか渡すきっかけ完全に逃してた……!



「……連理さま、もしかして榎並英里佳のこと考えてます?」


「な、なななんんんんのこととととととかなぁ?」


「目に見えて動揺してますね……」



千早妃が先ほどと違って白い目で僕を見ていた。


って、デート中に他の女の子のこと考えるのっていくらなんでも失礼すぎるだろ僕!



「その……ごめんなさい」



何か誤魔化そうと思ったけど……冷静に考えると千早妃に対してはそれはあまりにも悪手だなと思ったので、素直に謝る。



「ふふ、大丈夫です。怒ってませんよ」


「え?」


「だっておみやげって聞いてから思い出したってことは……デートの間、ずっと私のこと考えてくれていたってことですから」



千早妃はそう語り、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。



「私、榎並英里佳と違っておこぼれを恵んであげる程度には寛容ですので。


なんせ、連理様の正妻ですから」



おぉ……器がデカい……でいいのか?


いや、これ、冷静に考えると男として僕がただただ情けないだけのような…………だめだ、考えるのはやめよう。



「それで、連理さまは何かおみやげを榎並英里佳に渡すおつもりなのですか?」


「……まぁ、そんな感じ」



今更リハーサルのぬいぐるみ渡すより、ここでおみやげを渡したほうがいいような気がしてきた。


やっぱりこっちの方がクオリティ高いし……



「何か迷っているのでしたら、私も一緒にお探ししましょうか?」


「え……いや、でも………………うん、じゃあ、折角だしお願いしようかな」



ここで断るのも、変な話だろう。


どうせなら喜んでもらいたいし、千早妃の意見も取り入れよう。



「ちなみにどういったものをお考えですか?」


「うーん…………種類別のぬいぐるみ…………は、流石に違うよね」



一応受け取ってもらえるだろうけど、なんか詩織さんあたりはちょっと苦笑いしてそうだ。



「そうですね……私見ですけど榎並英里佳は奇をてらわずにぬいぐるみがよろしいかと。


詩織さんはストイックなようですし、何かタオルとか、もしくはボールペンとかそういう実用性のあるものを。


紗々芽さんは……子どもっぽいのより、キャラクタモチーフのインテリアなどが喜ばれるのではないでしょうか」


「ほぉ……確かに言われてみるとイメージに合うかも」


「他にもちょっと値が張りますけど、アクセサリーなどもいいかもしれませんね。


榎並英里佳はともかく……詩織さんも紗々芽さんももう少し飾り気があっても良いと思いますし」


「なるほど」



その辺りはちょっと考えてなかった。


英里佳と詩織さんの場合は、普段の迷宮探索からアクセサリーの類は必要ないって感じだけど……紗々芽さんの場合は詩織さんに合わせてるだけで、実はアクセサリーとか興味があるのかもしれない。



「……千早妃って、詩織さんたちのことしっかり見てるんだね。


僕だとそういうところまで気が回らなかったよ」


「同じ女性ですから。


ひとまず私が選んで、その中から連理様がお選びになりますか?」


「あー……いや、今の意見を取り入れて僕が選ぶよ」



折角の提案だけど、ここはハッキリさせておこう。


まだ完全に決めてないけど……もしアクセサリーを送るなら、ちゃんと僕が決めたものを身に着けてもらいたいって気持ちがある。


……我ながら独占欲が強いなと呆れちゃうね。



「では、妹さんには何を?」


「え、椿咲の?


あー……昔ならなりきりグッズみたいなの欲しがってたのは覚えてるけど、今はどうなのかなぁ……?」



家族だけど……何をあげるのが正解なのか一番予想ができない。


無難にお菓子とか?


いやでもそれじゃあ英里佳たちのおみやげのことを考えると手抜き感が凄い。



「椿咲さまの分、私が選びましょうか?」


「……わかるの?」


「そういうわけではありませんけど、一般的に好まれるものを、と。


いかがでしょうか?」


「……じゃあ……そっちはお願い」



正直、英里佳たちより手抜き感あるけど……まぁ、家族である分変な遠慮とか無くいらないものはいらないって言われそうだ。


特に最近は兄離れが激しいし……なんかホテルとかで一緒に会っても僕より戒斗の方に意識が向いてるときが多かった気がする。


………………なんか思い出したらムカついてきた。


なんで戒斗の奴、兄である僕より椿咲からなつかれてんの?


納得いかない。



「あとは、戒斗さまには……」

「戒斗には剣のキーホルダーでいいや」


「え」



おみやげ屋さんに行くとだいたい入り口あたりにあるよね、剣のキーホルダー。


それを指したら千早妃はキーホルダーと僕を交互に見た。



「あの……もう少し考えた方がよろしいのでは?」


「いや、あれが良い。戒斗、あれ、好きだから」


「そう……なんですか?」


「うん、そうなの」



あの中でも一際ダサいのを選んでプレゼントしよう。


僕はそう心に誓った。





おみやげを選び終え、遊園地を出た頃にはすっかり暗くなっていた。



「あの……本当に私までいただいてよろしかったんですか?」



千早妃の手にあるのは、先ほどのおみやげ屋さんにて購入した大きめのトートバックである。


その中には今日、遊園地の中で撮影した写真の他に、千早妃が購入したおみやげなどが入っている。



「全然問題なし。おみやげ選んでもらったお礼だよ。


それに、千早妃もバックとか無いとおみやげとか持ち帰るの大変でしょ」


「でも……」

「大丈夫大丈夫、僕って意外とお金余裕があるから」



これでも北学区一年随一とされるチーム天守閣


地味に貯金があるので、この程度のおみやげはちょろいものである。



「というか、まだ一緒に競技場まで行くんだし、それまで僕が持つよ」


「いえ、大丈夫ですよ」



「――こんなところにいたのか、神吉千早妃」



駅へ向かうバスに乗ろうと移動していたところ、高圧的な声が聞こえてきた。


聞き覚えのある声に、僕は咄嗟に身構えながら声のした方向を見た。



「……御崎、鋼真」



西の学園の重役である、御崎鋼真が、しかめっ面としか表現できないような表情でそこにいた。



「……連理様、少しおさがりください」



そして、千早妃はこの間のことを思い出してか、僕にそう言い残して前へと向かう。



「……何か御用ですか?」


「何か、だと……ふざけるなっ!」



不快そうに尋ねた千早妃に対して、御崎鋼真はいきなり怒りを爆発させてこちらにやってくる。



「この無能が! こんな時に何を敵と遊び惚けている!


お前のせいで俺の顔に泥がついただろうが!!」



前に会った時も人の話をあまり聞かなさそうな雰囲気だったが、今日はそれが輪にかけて強そうだ。



「何があったんですか?」



明らかに普通じゃなく、御崎鋼真の態度に千早妃も怪訝そうに尋ねる。


だが、返ってきたのは言葉ではなかった。



「なにかどころの騒ぎではない!!」



なんと、御崎鋼真はいきなり千早妃に向かって殴り掛かってきたのだ。


それも、明らかに本気で。


武器は持ってないが、戦闘系の御崎鋼真に殴られたら痛いなんて状態じゃ絶対に済まない。



「――素立無場居スタンバイ!」



僕は咄嗟にスキルを発動させて、今にも殴られそうな千早妃をすぐ近くへと呼び寄せた。


結果、御崎鋼真の拳は空を切るが、その風切り音だけでも相当な勢いがあったことがわかる。



「っ、れ、連理様?」


「お前、何やってんだ!」



千早妃は何が起きたのかわかってない様子だが、あまりの暴挙に僕は声を荒げる。


しかし、当の御崎鋼真は何やら視線を足元に向けている。


そこにあったのは……今まで千早妃が持っていたトートバックで、どうやら御崎鋼真に殴られそうになって、落としてしまったのだろう。


中身が散乱している。



「――何をしていたかと思えば……貴様、ふざけるのも大概にしろぉ!!」


「あぁ――!」



御崎鋼真が何かを踏みつける。


それはついさっき買ったばかりのおみやげであった。



「こんな時に、遊園地で、敵と、デート、だぁ!!


ふざけるのも大概に、しろよ、このアバズレがぁ!!」



何度も何度も何度も、先ほど買ったばかりのおみやげやトートバックを踏みつける。



「や、やめて下さい、それは、連理さまに買っていただいた――!」

「近づいちゃ駄目だ」



千早妃は僕から離れて御崎鋼真を止めようとするが、僕はその肩を掴んで動きを止める。


こいつ、もともと頭のネジ外れた奴だと思っていたけど、まさか本気で味方であるはずの千早妃まで殴ろうとするとは……!



「こんなもんで、現抜かして、何が惟神だ!


ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



トートバックを蹴り上げ、さらに中身が散乱する。



「あ」



僕も思わず声が出た。


その中には、今日取った写真も、そしてあの城で用意してもらったフォトフレームもあった。



「だ、駄目! それだけは!」


「――は、下らん」



地面に落ちたフォトフレームの写真を見て、奴はそう吐き捨てた。


そして、一切の躊躇もなくフォトフレームを踏みつけようとして――



「駄目っ!!」


「千早妃!?」



千早妃は僕が止める前に飛び出して、写真を踏み潰そうとした御崎鋼真を押しのけた。


そして千早妃は地面に落ちたフォトフレームや、他の写真を拾い集めようとする。



「っ、貴様!」



転びはしないが、よろけた御崎鋼真の顔はさらに怒りに歪む。


散らばった写真を集める千早妃を見るその眼は、明らかに正常なものではない。



「調子に乗るなよ、この役立たずが!!」



――再び千早妃に拳が振り下ろされる。



「素立無場居」



腕に痛みを感じた。


しかし、右手に巻き付けて置いたレージングのおかげで、特にそれ以上のことはない。



「――邪魔だぞ、歌丸連理」



眼の前には、御崎鋼真が一切怒気を隠さずに僕を睨んでくる。


素立無場居をまた発動させ、今度は千早妃を呼び寄せるのではなく、僕が千早妃の傍へと転移したのだ。


そして二人の間に割り込んで、御崎鋼真の拳が完全に勢いに乗る前に止めた。



「失せろ。これはこちら側の問題だ」


「はいそうですかって、引けると思うか。


女の子相手にお前、こんなことして恥ずかしくないのか!」


「俺はそいつの婚約者だ。


故に、そいつの間違いを正す責任がある」


「お前の方こそふざけるなぁ!!」



いくら何でも、腹が立つ。


この場で戦うのは、絶対に学園全体にとって良くない。


分かっているつもりだが……! だが……!



「連理、さま」



今、僕の後ろで千早妃が泣いているのが感覚で分かった。


あんなに楽しそうにしていた彼女が、悲しくて泣いている。


そんなことをさせた目の前のこいつが、どうしても許せなかった。



「――退け」


「パワーストライク!」



乱雑に振るわれた御崎鋼真の腕と、僕のスキルを発動させた正拳突きがぶつかる。


明らかに向こうは本気じゃないのに、威力は殆ど互角――いや、ちょっと押し負けた。



「くっ……!」



少しばかりよろけ、千早妃を巻き込まない方向に下がろうとしたら、すぐ目の前に御崎鋼真が迫る。



「っ!!」



殆ど勘で腹を防御すると、ドンピシャで強めの拳が叩き込まれる。



「――ぅぷっ」



腹の奥から何か込み上げ、喉が焼けるように痛くなった。


勢いはそのままに、今度は踏ん張り切れずに僕は地面を転がる。



「はぁ……まったくもって話しにならん。


さっさと行くぞ、神吉千早妃。


これ以上俺をイラつかせるな」


「っ……」



泣いている千早妃に、御崎鋼真が手を伸ばそうとする。



「――仔馬の癖に発情期かよ」


「……あ?」



その手が止まり、再び御崎鋼真は僕の方を見た。


たかが名前のイントネーションだけで反応するとか……西の生徒は大袈裟なのが多いのかな?


そんなことを思いながら、僕はストレージから一本の鞘に納められた刀を取り出した。


――昨日、英里佳のお母さんの榎並伊都さんからもらった魔剣だ。


一方で、御崎鋼真は僕の手にした魔剣を確認し、向こうも槍をその手に出現させる。



「先に抜いたのは貴様だ。


――八つ裂きにされても文句は言うなよ」


「お前は目が悪いのか?


まだ抜いてないだろうが、バーカ」


「弱い犬ほどよく吼える、か……まさにその通りだな」



御崎鋼真は槍を構えるのを見て、僕は魔剣の柄と鞘に絡まっている鎖を緩めていく。


そしてそれが外れ、いつでも刃を抜けるようにして、いざ抜こうと柄を握った。



「そこまでにしてもらおうか」


「せやねぇ……お二人とも、落ち着きよし」



突如、僕の前の前に来道先輩が姿を現して、柄頭を抑え込んで魔剣を抜けないように押さえつけられた。


そして、もう一方も……場違いな舞子さん? 舞子……でいいのかな?


よくわからないけど、とんかく……舞子らしき人が現れて、つい先ほどまで御崎鋼真の手にあった槍をその手に持っていた。


だ、誰だ……?


来道先輩は近くにいたから納得できるけど……あの舞子さんは何者だ?


そんな疑問に答えるように、舞子さんは僕の方を見た。



「西部迷宮学園、北学区生徒せーと会長


中林松なかばやしまつと申します。よろしゅうね、歌丸連理くん」



「なっ…………!?」



西の学園の、北学区生徒会長


天藤紅羽会長と同じ立場


――つまり、今回の敵の中でも最強とされる生徒。


それが今、僕の眼の前に姿を現したのであった。

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