第171話 会議だよ! ※主人公は出ません。



「――と、このように短期間での競技開催となる場合は現在使用頻度の減った競技場を再利用を考えています。


競技内容としてはフラッグ戦、攻城戦など迷宮学園の学生たちならではの競技に加え、迷宮内部を模したアスレチックなども予定しており、これには一般の方でも参加を予定しています。


安全性を配慮し、スケープゴートバッチの配布なども予定しております」



東と西の迷宮学園合同での体育祭


その競技内容を説明するのは北学区の副会長である氷川明依である。



「いいですねいいですねぇ~


やはり大々的にやるならそれくらいは最低限してもらわないとぉ~」



そしてその説明にご満悦な様子を見せているのはこの会議が行われている学園の主であるドラゴンであった。



「――ひとつ、よろしいですか?」



そんな中で手を上げたものがいた。



「西部学園の北学区、戦闘術講師をしている日下部善光くさかべよしみつだ」



余談であるが、散々歌丸連理から内心でハゲと言われている男である。



「今回の競技全体で、多くの学生が本島に向かうこととなるわけですが……その場合の治安についてはどうお考えなのか聞かせてもらいたい」


「治安対策としてはまず各学園での自警団に出てもらいます。


そして警察にも協力を依頼しております」


「それでも完全とは言えないのでは?


こういうことはあまり言いたくないが、迷宮学園の学生というのはそれだけで一般人には脅威だ。


警察だけでは不完全と言える」


「その場合を考慮して……オリンピックなどのかつてのスポーツの世界大会を参考にして、学生を一か所に集めて選手村のような場所を確保して隔離します」


「えー、それはちょっと可哀想じゃないんですか?」



氷川の意見に、ここでドラゴンが異を唱えた。



「折角の本島なんですから、実家が近くにある学生とかそっちに行きたいでしょ?


それに折角本島でやるなら、いろんなところ巻き込みましょうよ!


競技は準備に一週間、本番一週間と長いスパン取ってるんですから、もっと大々的にしないと面白くないです、やる意味がないです!」



そのドラゴンの意見に、この会議に出席していた者たちの誰もが顔をしかめた。


そして、ある男が一人の華奢な男を軽く肘で叩く。



「……え、あの……あ、はい」



その者は政治関係者のものであり、隣にはその上司にあたるものが座っていた。



「あの……その場合にかかる経済的な負担と、先ほどのリスクについて、学長殿はどうお考えで?」


「え? そんなこと別に大した問題ではないでしょう?


学生第一なんですから、何事も学生を優先しなければ!」



そう言い切った言葉に、誰もが実感する。


ああ、違う存在だ、と。


人の命など推し量れない……いや、推し量ろうともしない。


ただ純粋に自分が楽しいか否かでのみ人間を区別する人類の天敵


その思考は、ドラゴンにとっては合理的であるのだろうが、人間としてみれば、どこまでも果てしないほどに、破綻をきたしている。



「ああ、じゃあお金の問題として換金率の高い迷宮生物を本島に送り込みましょうか!


きっと楽しいですよぉ!」


「そのようなことは認められません」



学長の思い付きのような最悪の提案を、氷川は即座に却下した。


この場で誰も何も言わなければ、このドラゴンは本当に実行するとわかっているからだ。



「迷宮生物を本島に送り込めば、どのようなことが起こるのかわかりません。


学生証の恩恵を受けられない一般の方の被害もそうですが、万が一逃げ出して国内で繁殖した場合の生態系の被害なども考えられます。


過去に南米にて良く調べていない迷宮産の植物を持ち帰った結果、それまで主食としていた穀物類と交配して毒を発する新種となって拡散し、結果、食糧難によって多くの人が死んだという前例もあります。


これにより、今もその対象の学園の入学者数は減少し、数年後には入学者不足から休校、もしくは廃校となる可能性も示唆されているそうです」


「むっ……うーん、それはそれで楽しそうですけど入学者が少なくなるのは困りますねぇ~。


…………じゃあ、もう面倒くさいからお金に関しては日本国内で何とかしてくださいよ」


「なっ――そ、そんな簡単にできることではないからこうやって話し合いをしているのですよ?」


「別にいいじゃないですか~、皆さん揃って私たちの迷宮から持ち帰った資源で潤ってるんでしょう?


ならちょっとくらい損したっていいじゃないですかぁ~」



「――トカゲ頭め」



会議に出席していた西の学園側の政治家である久川伴三は軽い調子のドラゴンに小声で悪態をつく。


自分のことを棚に上げている気もするが、事実、目の前のドラゴンは人類にとって共通の害悪であるのでこの会議のみんなの気持ちは一つとなっている。



「――学長、よろしいですか?」



そんな中、一人の男性が手を上げた。



「おやおや、金瀬くん、どうしました?」



金瀬創太郎


十年前の卒業生にして、現在は世界に名を轟かせる金瀬製薬の御曹司にして専務を務めている男である。



「今回の体育祭、金瀬製薬は全面的にスポンサーとして出資する用意があります」


「ほほぉ、流石は私の見込んだ卒業生、話が早いですねぇ!」


「ただ、それにあたって一つ…………そこの彼女から今この場で、あることを聞かせてもらってよろしいですか?」



そう言って、金瀬宗太郎が見たのは、この会議の場で一応席を設けられている者の、開始からずっと沈黙していた幼い少年少女の集団だ。


皆が肩身の狭い思いをしている中、一人だけ真剣な目で会議の様子を見ている少女がいた。


その少女を、創太郎は名指しで指名する。



「歌丸椿咲さん、あなたに聞きたいことがあります」



瞬間、この会議に出席していた全員の意識が彼女に向けられた。


興味、好奇心、哀れみなどが主だが……ごく一部には邪魔ものを見る様な侮蔑な視線を送るものがいた。


それが誰とは言わないが、西の政治家であることだけは述べておく。


そしてそれらの視線を受け、椿咲は創太郎の方を向いてから、次にこの場の司会進行も務めている氷川明依を見た。



「……まずは内容を聞きましょう」



一応了承ということらしい。



「なんでしょうか?」



少しだけ声が震えたが、それでも背筋を伸ばしてしっかりと相対しようとする。


まだまだ背伸びをしている様子は抜けないが、それでも真摯に向かい合おうとするその態度に創太郎は交換が持てた。



「――ここ数日、君はこの学園にいる犯罪組織と接触したそうですね」



ざわりと、会議の場の空気がどよめく。


犯罪組織――この学園でその存在がようやく確認されたものたちだ。


そして、金瀬宗太郎の妹である金瀬千歳も、その犠牲者として知られている。


この問いに、どう答えるかと椿咲は思案して氷川の方を見た。


氷川は無言で、重々しく頷く。



「……はい、そうです」


「聞くところによると……実行犯二名を捕まえたそうですね」


「はい。兄と、兄の仲間が捕まえました」


「なっ――――!」



椿咲の回答に、久川伴三が声をあげた。


一時その視線が向くが、即座に何事もなかったかのようにふるまう。


そして少し後ろで控えていた秘書を呼び出して何かを言っている様子だ。



「ありがとう。


それが事実かどうかを確かめたかった。


怖い思いをしたことを思い出させてすまないね」


「いえ……」



続いて、創太郎は学長の方に顔を向けた。



「学長、以前にも犯罪組織についての情報を提供していただけましたが……今回はその二人がこの学園で在学中にどう動き、そしてそれに関わってきた者たち……主に依頼人につながるである人脈についてのリストの作成など……それをしていただけることを約束してくだされば、金瀬製薬は全面的に今回の体育祭の出資を約束します。


できますか?」


「生徒を限定してるのならまぁ可能ですよ。


公平がモットーの私ですが、捕まった以上は敗者であることも事実ですし身元が割れてしまった以上隠しておいて私も皆さんの機嫌を損ねたくもありませ――」



「ちょっと待った!」



学長の言葉を、食い気味に大声で割って入る者がいた。


久川伴三である。



「ここはそのようなことを話す場ではない。


そういうことはもっと、こう……別の場所で話すものだ。


まだ若い者たちに聞かせるべきではない」



立派なことを言っているが、保身に走っていることは明白である。



「だいたい、恥を知り給え!


そのようなことの交換条件に体育祭に出資を約束するなど言語道断!


清く正しく行われるべき体育祭を汚す気か! まったく!」



言ってることは本当に立派なのだが、事実関係を知る者たちの気持ちはこの時一つになった。



――お前が言うな、と。



「そうだそうだ!」

「私情をこの場にもちこむな!」



久川伴三の言葉に賛同したように、西の学園の者たちが声を上げた。


その言葉を受けても、創太郎は特に動じた様子もない。



「これは体育祭の安全にもかかわってくることです。


ここで一掃する機会を得られなければ、体育祭に関わる人たちの安全も保障はできないと判断して出資はできかねます。


関係者の中に犯罪組織の一員が関わっている可能性があっては安全も万全な保証ができませんから」


「それでは脅迫ではないか!


個人の都合で、君は体育祭を潰す気かね!」



完全に話をすり替えた。


問題を発言しているのはドラゴンであるはずなのに、創太郎が悪いように指摘し、ドラゴンから情報を引き出させないようにして金だけ出させようという気なのか。


だが……



「潰したいに決まってるじゃないですか」


「…………は」



その言葉を肯定されることは、流石に予想していなかったようだ。



「そもそも、どうして皆さんはそんなに体育祭を開くことに賛同しているんですか?


私は違います。


体育祭など、学園ごとにやるべきであり、本来は国内に持ち込むべきものではないと考えています。


お金はかかるし、時間も手間もかかるし、何より危ない。


そんなものを、どうして積極的に開きたいのですか?」


「そ、れは……いや、しかし……だね、ドラゴンが……」



語気の弱くなった久川伴三は、ちらりとドラゴンを見た。


その気になれば世界だって亡ぼせる人類の天敵


その機嫌を損ねることは、この場にいる全員が避けたかったことだ。



「――下らない」



そして、そんな彼らの態度を創太郎は侮蔑した。



「では、学長……一つ質問ですが、あなたはこのままつつがなく、何の問題も起きずスムーズに体育祭ができればそれで満足ですか?」


「おやおや、その聞き方はズルいですぇ~


もちろん、それじゃつまらないから嫌です!」


「そうですよね、貴方の場合、必ず何らかのトラブルを発生させる。


無事に終わるであろうイベントですら、無事では終わらせない。


貴方は、騒動を求めている。


平和など微塵ももとめず、ただひたすらに血を見たいんだ」


「そこまでバイオレンスなつもりはありませんが……まぁ、おおむねその通り。


命の危機、流血の場……この迷宮学園でこれまで見てきたすべてで私は確信しました。


真の青春、年齢を問わない。


流血を、生命を体の内から解き放つ行為と過程こそ私は見たい。


故に、ぶっちゃけこの会議もどうでもいいんです。


どんな結果に転ぼうと、私の都合が悪くなればただ力を振るうだけですから」



はっきりと言い切った。


そう、ご機嫌伺いなど初めから無意味だ。


その行為そのものが、ドラゴンにとって無意味であると断じられているのだから。



「だいたい……“清く正しい”体育祭?」



創太郎の刺すような侮蔑のこもった目が、久川伴三を貫く。



「一体いつの話しているのですか?


迷宮学園の体育祭が、貴方たちの知ってる生温いお遊戯会と一緒にしないでもらいたい」


「な、何をこの若造が」

「死人が出るんですよ、毎年、体育祭で」



剥きになり、席から立ち上がろうとした久川伴三を創太郎は言葉で制した。



「そのすべての原因が、そこの学長のちょっとした思い付き。


体育祭のプログラムにはない、横槍が原因です。


それを知らないわけではないですよね?」


「そ、それは、だね……!」



額に汗を浮かべながら視線をさまよわせる久川伴三



「そんな体育祭、一般の人が多くいるであろう本島に積極的に持ち込むなんて……狂ってるとしか言いようがない。


それなのに、どうしてあなたたちは積極的に体育祭を開催しようとお考えなのですか?


力づくで開くと言っている以上、仕方がないところもありますが、それならどうして不安要素を最大限まで排除しようと思わないのですか?


犯罪者集団何て目に見えてものを排除することに、何の問題があると?」


「……そ、それを問題に言っているのではなくてだな……その、ここにはそういう話を聞かせるべきではないまだ若い者たちがいるから、それを控えて欲しかっただけだ」


「つまり、犯罪組織の排除あなたは全面的に、賛成だと」


「と、当然だ! この場にそれを反対するものなどいはしないさっ」


「では……先ほどの話は改めて……この会議の後すぐに詰めましょうか、学長」


「ええ、構いませんよ」



創太郎の発言により、その場はギスギスした沈黙が流れる。


だが、ドラゴンにとってはそんなのお構いなしだ。



「さてさて、これでお金の問題は解決ですね!


さてさて、それじゃあ私としては他にもいろいろな競技を提案したいのですがね!


一般人参加の大規模戦闘とか、楽しそうじゃないですか!」


「学長、戯れが過ぎますよ」


「え、本気なんですけど?」



一般人参加の大規模戦闘レイドなど狂気の沙汰に他ならない。


何人、いや、何百人死者が出るか、下手をするとさらに増える可能性だってある。



「それで、歌丸椿咲さん、君はどんな競技がいいと思いますか?」



再び、すべての視線が椿咲へと向けられた。



「私は……競技のこととか……別に、意見とかは」


「では、この学園での所感でもかまいません。


もともと私は、一般人の……学園に身内のいる家族の一人として君をここに呼びました。


ぶっちゃけ、歌丸くんの妹である理由は、彼の反応を見たかっただけですから」


「…………」



まさかのぶっちゃけに椿咲は隠そうともせず不快な表情をする。


他の者たちも、そんなことを包み貸そうともしないドラゴンの態度に唖然とする。



「だがしかし、君は……私に価値を見せてくれた。


言いなさい。君の言葉は、私にとって聞く価値があるものだ。


君がこの学園で何を見て、何を聞き、何をして、何を望んだのか。


私はそれが聞きたいのです」



言葉をじっと待つドラゴン


この会議が始まったときから今までで、一番の真剣な表情だ。


その態度に、自然と会議室の空気も椿咲の言葉を待つものとなった。



「私は……まず、兄が特別じゃないんだってことを、改めて実感しました」



歌丸連理


他者にスキルを付与するスキルを持った少年


ある意味では、この会議の中心にいるであろうその少年を、妹がそう言ったのだ。



「特別な力を持っていても、本人は普通の人間で……この学園では、そういう普通の人が簡単に死んでしまう。


そういう環境があって、兄はそこに身を置いている。


……私は、兄が死んでしまうと本気で怖くなりました。


何より怖かったのは…………それを仕方ないと受け入れようとしてしまった自分です。


私は……兄が死んでしまうという事実を、一度でも受け入れてしまったんです」



その言葉の意味を、本当の意味で理解できたものがこの場にどれだけいただろうか?


だが少なくとも、そんな彼女の言葉を真摯に聞いている人物がいた。


この学園で、妹を亡くした金瀬創太郎


彼がこの場で、もっとも椿咲の言葉に耳を傾けていた。



「そうですね。


歌丸くんは、持っている力が特別なだけでスペックは学園の中でも低い部類です。


死ぬ危険性は、前線に向かってる分他の生徒よりも高いと言わざるを得ないでしょう」


「はい。


兄よりずっと強い人と、兄が戦おうとする姿も見ました。


私は……血まみれになってまで戦おうとする兄を見ました。


本当に、いつ死んでもおかしくなくて……生きている方が、奇跡だと思います」


「ほぅ……奇跡ですか。


では、君は兄の他の学区への移動を望みますか?」


「いいえ。


兄は……命を懸ける価値を北学区で見出していたんです。


私よりも……家族よりも大事だと、言われました。


そこまで言われちゃったら……もうどうしようもありません」



寂しげな表情でそこまで行って、「だけど」と椿咲は言葉を続ける。



「それでも家族は大事なんだって、兄は命懸けで私を守ってくれました。


一番じゃなくても……一番になれなくても、兄は私にとって大事な家族なんです。


だから……その……」



椿咲はちらりと創太郎の方を見てから、申し訳なさそうにうつむいて言葉を発する。



「危ないことは……わかってはいるんですけど…………この学園にいる生徒が、日本で待っている家族と会える機会が増えるのなら…………私は、是非開催してほしいです。


三年間会えなくて……次に会えたのが死んだ家族だったなんて…………そんなのは、悲しすぎます。


だから……ほんの少しでも、画面越しじゃなくて……ちゃんとこの学園の生徒が、日本で待っている家族と会える時間を、私は、作って欲しいです。


何も知らず、何もわからず……あの入学式の日に別れたまま、それでおしまいだなんて……私は嫌です」



椿咲の言葉に、創太郎は思い出す。


全く似ていないのに、目の前でたどたどしくも一生懸命に言葉を紡ぐ彼女が、亡くなった妹と重なった気がしたのだ。



「兄妹、だな」



自分に向けられた言葉ではないし、歌丸連理と会った時よりもずっとしっかりした言葉だが、それでも同じ意志を、自分の本音を伝えたいという強い気持ちを感じられた。



「――ブラボー、おぉ、ブラボー!!!!」



そして炸裂するドラゴンの拍手


ただ自分の手を叩いているだけの衝撃


だが、それだけでこの会議室全体を揺るがし、その風圧で机や椅子が倒れるには十分


殆どの者たちが悲鳴を上げながら床に這いつくばる。


無事なのはこの場で学生証を持つ氷川明依と金瀬宗太郎


そして、ドラゴンの故意でその衝撃を受けることのなかった歌丸椿咲の三人であった。



「おっと、皆さん失礼、少々はしゃぎ過ぎました。


まぁそれはそれとして」



倒れている者たちのことなど歯牙にもかけず、ぎょろりと、好機の光で輝く瞳が椿咲を捉える。



「歌丸椿咲さん、君は中学校で会ったときから一皮むけました。


目に見張る成長で、大変大変喜ばしいことです」


「……おかげさまで」


「うふふふふふっ……そのように言い返すあたり、お兄さんとそっくりです」



そこまで言ってドラゴンは満足げに手を広げて宣言する。



「君の成長に祝福を!


この感動は値千金ですよ!


安全に不安? いいでしょう、私が解決してあげます!」



「何を、するつもりですか?」



ドラゴンの発言に不安を覚えたのか、氷川明依がその場から移動して、椿咲の近くまでやってきた。


椿咲を守る様にたち、無駄だと理解しつつもいつでも武器を取り出せるように身構える。



「君たちの不安をすべて解消してあげるのですよ!


体育祭開始期間中、東京……いいえ、日本全域を結界で覆います!


その範囲内では人が死なない、建物も壊れない特別仕様、出血大サービスの結界の設置を約束しましょう!」



その宣言に、倒れていた大人たちは顔をあげる。


常識外れの、圧倒的な、そして絶対的な力の差を宣言された。


同時に、その絶望的なほどの差はこの会議においての不安を完全に取っ払った。



「やりましょうじゃありませんか、温くて安全で、そして下らない清く正しい体育祭!


死人が誰も出ない体育祭、それを実行しようじゃありませんか!


歌丸椿咲さん、あなたの言葉には、それだけの価値があると私が認めます、認めますとも!」



たった一人の、非力な少女の言葉


それを諸悪の根源が、認め、感動した。


ある意味で彼女は兄以上の大きな成果を獲得した。


ドラゴン出現から二十余年



「ではここに、合同の【全日本体育祭】の開催を宣言します!


さぁ皆さん、頑張りましょう!!」



人類の天敵であるドラゴン


それが今、初めて自分から進んで、人類の安全を保障したのである。

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