第108話 浪漫と実用~ささやかなフラグを添えて~

場所は北学区の校舎、さらにその一室


生徒会直属ギルド“風紀委員(笑)かっこわらい”が使用している一室に、僕はやってきていた。



「というわけでチーム天守閣は世界最速で森林エリア攻略を完了しました」



「早すぎるだろ」



僕たちの報告を受けた同じギルドの先輩の下村大地先輩の言葉である。



「もっとこう、苦労したこととか楽しいこととか、色々言うことあるんじゃないの?」



僕たちの報告があまりにも簡素だったので、同席していた栗原浩美先輩も表情がぎこちない。



「いえ、出てくる迷宮生物モンスター……主に討伐クエストの対象なんですけど、英里佳が文字通り一蹴してしまいまして」


「ああ……暴君圧凄タイラントだもんね、榎並さんの武器」



大型ゴーレムの肉体を加工して作り上げた重量を自在に操ることができるブーツ


英里佳のベルセルクとして強化された素早い動きにとんでもないパワーが上乗せされたその破壊力は、どんな敵も潰れたトマトのように瞬殺される。


金瀬創太郎さんの話を聞いてから英里佳はより迷宮攻略に力をいれるようになったから、攻略スピードがなおのこと速かった。



「おかげで、転職ジョブチェンジした紗々芽さんもあまり活躍することもなく、複雑な表情をしていました」


「なんか、その光景が目に浮かぶわね……」


「で、他の連中は?」


「会長から明日から合宿するから各自必要なものを準備しろって言われまして……今日はそれぞれ買い物です」


「お前はいいのか?」


「いえ、それが……僕と紗々芽さんは特に何もいらないって言われまして……で、紗々芽さんは詩織さんの買い物の手伝いってことで僕が代表して報告にきました」


「ふむ……つまり前衛組三人は何かしら準備がいるってことか」


「一応僕も前衛なんですけど……」



そりゃ、シャチホコたちのフォローありきだけど、ちゃんといろんな迷宮生物と戦ったりもしたわけで……



「しかしそうか……お前たちももうそこまで来たのか」



感慨深そうに腕を組んで天井を見上げる下村先輩



「そういえば聞きそびれてましたけど、先輩方はどの階層まで攻略してるんですか?」



「俺たちは47層……つまり火山エリアだな」


「うわ……早いですね流石です」


「あー……いや、暗闇エリアは人海戦術で他の連中と協力して攻略したし、それ以降は基本先輩の力借りて攻略だったからそれほど苦労してないぞ」


「え? 下級生の攻略に上級生が力貸していいんですか?」


「そりゃ、そうだろ。学年またいでパーティ組むことだってあるしな」



あ、確かにそれもそうか。



「他の学区の卒業の必須攻略階層は20層までで、北学区ではこれは一年生の独力で攻略させるべきだって言う目安でもあるの。


そこまで行けないような一年生は、その先の攻略は危険だから」



栗原先輩の補足説明に納得する。


10層までのレンガの通路エリア、そして森林エリアと、正直出てくる迷宮生物も迷宮自体の危険性もあまり高いとは言えなかった。


アレに手こずるなら確かに北は難しいかもしれない。


まぁ、そういう意味ではシャチホコたちのいない僕が一番不適合なのだろうが……



「まぁそういうことだ。


だからこれから先、何か大変だと思ったら俺たちに遠慮なく声かけろ。


手伝ってやるよ」


「はい、その時はお願いします」


「まぁ、お前らなら問題はないだろうがな」



そう言いながらコーヒーを飲む下村先輩



「あ、そういえば先輩、ちょっとお聞きしたことがあるんですけど、いいですか?」


「ん、早速なんだ?」


「ちょっとお耳を拝借します」



僕は栗原先輩に聞こえないように細心の注意を払いながら、下村先輩に耳打ちして訊ねる。



「――瑠璃先輩と交際し始めたんですよね」


「ばっ!? な、え、ちょ、お前なんでそれを」

「こ、声デカいですよ」



ミルクを入れたコーヒーを飲んでいた栗原先輩が驚いた様子でこちらを見た。



「? 二人ともどうかした?」


「「なんでもない!」です!」


「そ、そう?」



とりあえず内緒話であることを察してくれたのでそれ以上は追及してこなかった。


流石栗原先輩、分かってくれるできる女。



「……で、その……誰に聞いた?」


「別に直接聞いたわけではないんですけど……この間、迎賓館に招かれたときに車内で瑠璃先輩の様子がおかしくて。


会津先輩が指摘したんです。あの、まずかったですか?」


「……あ~……まぁ、その……隠してるわけじゃなかったが……そうか、最近あの先輩の俺を見る目が変だったのはそれが理由だったのか」


「ってことは、やっぱりちゃんと交際を?」


「……いや、保留された」


「……え?」



予想外の返答に僕は間の抜けた顔になる。


瑠璃先輩のこの間の様子を見ると満更でもなかったように思うんだが……え、保留?



「断られた……わけではないんですよね?」


「まぁ、な……ただ、その……卒業するまで待って欲しいって言われた」


「えぇ~……」



瑠璃先輩、ヘタレやがった……



「そこで先輩、それを了承したんですか?」


「まぁな……」


「なんでですか? そこでグイグイ押してけば完全にフラグ成立でしょ」


「……こんなこと言いたくはないが、まぁ、お前ら後輩が理由だ」


「え?」


「瑠璃は生徒会役員でギルド代表


確実ではないが、俺も来年の生徒会役員候補に挙がってる。


お互い抱えるものが大きいし……正直、そんな状態でイチャつけるほど俺もあいつも肝が太くはない。


お互いに、真剣に付き合いたいから全部清算した卒業後に……そう話し合って決めたんだ」


「……なるほど。


すいません、野暮なこと言いました」


「いや、気にしなくていい。


むしろお前がいなきゃ何も言わずに卒業してたろうしな」


「え?」



下村先輩、最後の方がは小声過ぎて何を言っているのかよく聞こえなかった。



「なんでもない。


……あ、そういえばお前、あのチケット使ったのか?」


「チケット?」


「ほら、あれだよ、東学区のプレミアムチケット。


あり……日暮副会長からもらったやつ」


「ああ、そういえばありまし…………拾ってもらったやつですねっ!」



この間の土曜日、モンスターパーティでの一件でもらったチケット、そういえばまだ使ってなかったな。



「……まぁ、そういうことにしておいてやろう」



あ、バレてる!



「まぁとにかくだ、折角だし使ったらどうだ?


特に暗闇エリアは専用の装備が無いと辛いぞ」


「専用……?


どういうことですか? 何か他とは違うんですか?」


「主に出てくる迷宮生物モンスターが変わるな。


暗闇エリアは俗にいう“死霊系”の迷宮生物モンスターが出てくる」


「し、死霊系……」



なんか考えただけで嫌な予感が……



「一番面倒なのが、死んだ学生の死体を利用した“ゾンビ”だな」


「し、死体……? 学生のですか?」


「暗闇エリアの中に漂っている亡霊が、学生の死体を操ってるんだ。


噛まれてもこっちがゾンビになるってわけでもないが……生きてた時のスキルとか使ってくるんだよな」


「そもそも噛まれるほど近づきたくもないです……」


「ああ、俺もだ。正直どのエリアが一番辛いかって聞かれると、俺は暗闇エリアが一番精神的に辛かったな。


遭難した学生や、殺された学生がそのエリアだと敵として襲い掛かってきて、それが嫌で二年になってから他の学区に転校したってやつもいる。


精神防御のための護符とか、精神安定剤の類が手放せないってやつもいたな」



こ、怖ぇ……!


僕の場合はスキルでその辺りは平気かもしれないけど、学生のゾンビとはできれば会いたくないな……



「他にも暗闇に潜むタイプの迷宮生物もいて、奇襲や不意打ちがザラにある。


光源の無い場所だからそれがデフォルトになるぞ」


「じゃあ、死霊系対策のアイテム、もしくは暗闇の中でも見える暗視スコープとか会った方がいいですかね?」


「暗視スコープは割と安価に手に入るからお前の場合は防御用の装備の方がいいだろ。


特にお前は、他の連中と違って制服が変わらないからな。外付けで制服を強化しておけ」



他のみんなは職業ジョブによって制服も専用に強化される一方、ヒューマン・ビーイングの僕は制服が一切変化しないため防具としての機能は殆どない。


正直、腕章着けても意味がないから、そういう装備着けて僕も制服を変化させるというのもいいかもしれない。何より格好いいし!



「大地、折角だから一緒に行ってあげたら?」


「え? いや、だが仕事が……」



此方の話を聞いていないと思ったら、途中から栗原先輩は聞き耳は立てていたらしい。


まぁ、僕たちも暗闇エリア辺りから小声じゃなくなったから普通に聞こえるか。



「男同士で内緒話してる間に私が終わらせました。はい」



まとまった資料の束を栗原先輩は下村先輩の机に置く。



「あ……あー……すまん」


「別にいいわよこのくらい。


あなたちょっと働き過ぎだし、行ってきなさいよ。


それに好きでしょ、東学区の武器屋。


プレミアムチケットなんてものがあるなら、さぞ男の子が好きなSF映画みたいな武器ももらえるでしょうし」



「…………よ、よし、じゃあ行くか歌丸!」


「そうですね、行きましょう! ライトなセイバーとかありますかね!」


「ビームライフルとかレールガンとかもあるぞ!」


「ポジトロンなバズーカもありますか!」


「あるさ! でもあくまで死霊系対策メインだからな!」


「はい!」



というわけで……



「「おぉぉぉぉぉ…………!」」



東学区にある最新技術を用いて作られた武器


それが入った強化ガラスケースに僕と下村先輩は張り付いていた。



「凄い……これ一つで500万……!」


「拳銃型レールガンか……普通の弾丸も使えるようにカスタイマイズされてる。


トータス系の甲羅も容易く楽々貫通とは恐れ入るぜ」


「でもこれ、撃ったら反動で腕が複雑骨折するから、筋力、耐久がともにA以上推奨ですよ。


しかも一発撃ったらその度に整備が必要とかあります」


「それだけ能力値あったら普通の武器でもトータスは倒せるな。


そしてそれなら特殊な弾丸を拳銃でぶっ放す方がコスパがいい」


「「だがそれがいい!」」


「ああ、こっちは振れば音が出るアークセイバー!」


「どんな分厚い鉄板もバターのように切り裂く夢の武器だな!」


「一本七千円の使い捨てバッテリーで最大30秒の使用制限!」


「ちなみに俺なら普通の剣でスキルを使えば同じことができる!」


「流石先輩、そしてこの剣、使い辛い」


「「だがそれがいい!」」



なんてロマン武器の数々!


性能は本物だけど、それを帳消しにして余りあるほどのデメリットが詰まっている!


だがむしろそれを抱えてでも夢を実現させえたこの武器の数々の製作者たちに僕は敬意を表したい!


大人じゃ絶対に作らないような武器を作ってしまえる学生だからこそのこの情熱!


本当に尊敬する!



「あぁ、この刀剣付きの二丁拳銃もカッコいい……!」


「拳銃なのに馬鹿みたいに重い上に切れ味もそれほど高くなく、そもそも両手を使って銃弾の装填もまともにできないな」


「しかも見た目重視したから耐久もそれほどでもなく、普通の銃より性能が悪い」


「完全な見た目のみを追求したこのフォルム……」


「ロマンです」


「ロマンだな」



東学区、頭のいいひとだけの残れる場所のはずなのに、こんな頭の悪い(誉め言葉)ことができる人がいるなんて……心から尊敬するよ、僕は!



「……何をしているのだ?」


「店内で騒ぐな北のダブルホープ」



「「ん?」」



横から声をかけられたので振り返ると、そこには見覚えのある顔をした二人の男子生徒がいた。



「あなたたちは…………………………………………あ、下村先輩、あっちに変形合体ロボありますよ!」


「おいこら歌丸! 思い出せないからってなかったことにするんじゃねぇ!」


「都合が悪いことはすぐに目を逸らすなこの後輩」



僕の肩を掴んで怖い顔をする先輩と呆れているもう一人の先輩


あれ……まさか……!



「ED先輩とホモ先輩!」


「「誰のことだ!!」」


「あ、すいません……えっと、日暮先輩のギルドの……こ、こ……“コーラ”の覆面先輩とゲイ先輩でしたよね!」


「違うのだが」



あれ、素で間違えた。


それを見かね、下村先輩が教えてくれた。



「日暮副会長のギルド“コール”に所属している、生徒会会計の福田倫ふくだみつると、書記の比渡瀬涯ひわたせがいだ」


「くっ、惜しかった!」


「否定したいが掠ってることが事実で余計に腹立たしいのだが」


「殴っていいかこの後輩?」


「やめてください、死んでしまいます」



いや、本当に冗談抜きで、二年生に殴られたら僕死ぬからね。


能力値の一年分の差はとてつもなく大きいのだ。



「で、なんで貴様らがここにいるのだ?


こんな“ジャンク”の店に」



覆面先輩こと、福田先輩はどことなく警戒した様子でそんなことを尋ねてきた。


そう、僕たちが今いるのは通常の店舗では扱われずにお蔵入りしてしまったような欠陥品や不良品ばかりを集めた店だ。


基本的にSF武器を見てみたいという人しかやってこない。見学メインで買い物に来るような場所じゃないのだ。



「俺は歌丸の付き添いだ。


というか、それはむしろこっちのセリフだ。


生徒会役員が二人そろってこんなロマン武器の宝庫になんでいる? お前たちも鑑賞に来たのか?」


「それほど暇じゃないんだよこっちは」



露骨に不機嫌そうに舌打ちするゲイ先輩、じゃなくて比渡瀬先輩



「何か俺が気に障ることを…………いや、スマン、何でもない」


「ああ、君が気にすることはない下村大地。


涯、部外者である我々が彼に難癖付けるのは筋違いだ。それは八つ当たりだぞ」


「ちっ……わかってるよそれくらい。


だがなぁ……副会長のあんな様子見てたらよぉ」



……あ、そうか……下村先輩が瑠璃先輩に告白したのって土曜日、モンスターパーティの打ち上げの日だったら当然そこには日暮先輩もいたわけで……



「……すいません」


「ん? なんで歌丸が謝る?」


「あ、や、その…………あの、福田先輩、これ日暮先輩に返しておいてください」



僕はアイテムストレージからプレミアムチケットを取り出した。



「え、おい歌丸お前今日それ使うためにここに来たんだろ?」


「そうなんですけど…………その、なんというか……すいません、折角付き添いで来てもらったのに。


でも、やっぱり僕が使うのは違う気がして……」


「……それは、その……まぁお前の考えはわかるけど」



下村先輩はそれ以上は何も言わなかった。


立場上、下村先輩は僕に対して何か言えるわけじゃないんのだろう。


そしてそんな僕たちのやり取りを見て、福田先輩は納得したように頷いた。



「……事情は大体察した。だが気にせず使え歌丸」


「え……でも」


「ああもう、いいから使っておけ歌丸。


副会長も、今更そんなの返されても困るだけだっての」



そう言って、比渡瀬先輩は僕のチケットを強引に押し返した。



「たくっ…………別に、お前たちが気にしなくていい。


むしろ俺たちも副会長焚きつけてたんだから、お前たちだけがそんな責任感じるな。


……下村、悪かったな」


「……ああ、気にしてない」



なんというか、先ほどまで熱量が一気に下がってしまった。


いや、本当に誰が悪いってわけでもないんだけど……



「えっと……それで、先輩たちはどうしてここに?」


「一応秘匿事項なんだが……まぁ、お前たちは生徒会関係だから問題はないか。


知ってると思うが、今回の体育祭外部との連携があるだろ?」


「はい」


「そこで俺たちは、その際の技術交流で使えそうな派手な出し物を見繕いにきたというわけなのだよ」



二人の説明に納得がいった。


確かに、この店に置いてあるロマン武器ってどれも実用性に目をつむれば派手なものばかりだ。


エンターテインメントとしてみる分にはこれほど優れたものはないだろう。



「で、そちらはチケットを使いに来たわけか……だがこの店で使うのはオススメできないのだが……」


「下村、お前先輩ならしっかりした店を案内しろよ」


「い、いや、ここにはただ見に来ただけだ。


ちゃんと後で歌丸に合う防具を探す予定だったぞっ」


「どうだかなぁ……」



半信半疑な目で僕と下村先輩を見てくる比渡瀬先輩


福田先輩も少し懐疑的な目で僕たちを見ている。


……べ、別に欲しかったなんて思ってないよ、ちょっとしか。



「歌丸の防具ということなら……涯、お前の作品の方がいいんじゃないか?」


「は? なんで俺が……」


「歌丸には前衛のアーマーや盾より、お前の作品の方が合っているだろ」



比渡瀬先輩の作品?


どういうことなのかと思っていると、納得したように下村先輩が手を叩く。



「ああ、比渡瀬の職業は……確か職人系のアルケミストだったか?」


「職人系? アルケミストって日暮先輩と同じですよね?」


「同じ職業だが、覚えるスキルによって役割が異なるんだ。例えばスナイパーでも弓と銃を使う人で分かれるだろ。


それと同じで日暮副会長は解析分解、調合など研究系なんだが、比渡瀬は錬金や加工が得意な職人系だ。


本来は比渡瀬みたいなタイプがクリアスパイダーの時に使われた弾丸の加工を行うんだ」



へぇ……じゃあ、あの時は日暮先輩、本職でもないのにエンパイレンを弾丸に加工してみせたっていうのか。改めて凄いことを実感する。



「俺のは非売品なんだが……」


「いいじゃないか別に。歌丸はお眼鏡にかなわないわけでもないだろ」



二人のやり取りに僕は疑問を覚える。



「あの、販売してないのに職人やってるんですか?」



錬金術って、素材集めだけでも結構お金がかかると聞く。


販売しないのではとても懐に厳しいのではないだろうか。



「いや、そっちはちゃんとそれ用で作っている。


だが倫が言っている“作品”は俺が趣味で作った物だ。販売はしない」


「そうだな、しかしその中でもいくつかの作品はこの店に卸しているだろ?」


「「え」」



僕と下村先輩は同時に驚いた。


このロマン武器の宝庫の中に、比渡瀬先輩が作ったものが存在しているのか……!



「探すな探すな!


ちょっとふざけて作った失敗作で、部屋に邪魔だったからここに置いただけだ」


「ちなみにさっき歌丸が言ってた変形合体の奴だ」


「倫!?」



おぉ、あの人間位の大きさのロボット型の鎧か!


変形するから鎧なのに人じゃ装備できないという、悲しきロマン防具!



「凄い! じゃあもっといろんなカッコいい奴もあるんですか!」


「いや、言っとくがあれは本当にふざけて作っただけで、俺の作品はもっとまともな奴だからな!」


「ほぅ、じゃあ歌丸にちゃんとした奴を渡すのだな?」


「だから非売品だって。


それに趣味だからここにあるほどのものじゃないが実用性は乏しい。まともな奴が使うようなものじゃねぇ」


「歌丸にはそれくらいで丁度いいのではないか。


まともな防具より、お前の作品の方が合っていると俺は思うのだが」


「僕もぜひ見てみたいです!」



あの変形合体ロボを作った比渡瀬先輩の作品、とても気になる!



「…………はぁ」



比渡瀬先輩は諦めたように嘆息した。


そして僕に対して手を差し出してきた。



「後で文句言っても返品は受け付けねぇからな」


「はい!」



僕はその手に、持っていたプレミアムチケットを渡した。

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