第16話 オモイ過ぎる友達

「ぜ、ひっ、はぁ、くはっ、ああ!」



先ほどからずっと全力疾走を続けている。


走りづらくなったから、先ほど出した槍はもう学生証の中のストレージに戻してある。


とにかく、もうさっきから全力疾走のおかげでもう脇腹が痛くて呼吸をするのもつらい。



「歌丸くん、頑張って!」



僕の手を引いて走っている英里佳はまだまだ余裕そうだ。


なんというか、本当に体力が段違いだ。



「きゅきゅー!」



先行するシャチホコが鳴き声をあげならが角を曲がる。


その後を追って英里佳と僕も次の角を曲がった。



「GARRRRRRRRRRRRRR!」

「GUOOOOOOOOOOOOO!!」



そして曲がる直前、こちらを追いかけてくるラプトルの姿を見た。



「ひぃ、はぁ、ひぃ……!」



もう苦しくてつらいが、足を止めるにはまだまだだ。


というか止まったら息の根も一緒に止められてしまう。


視界が汗やら涙やらで霞んでいく。



――ああ、まったく……



「歌丸くん、大丈夫!」



「うん!」



息が苦しい、胸が締め付けられているかのようだ。


だけど、大丈夫だ。


熱が体全体に行き渡っている。


ああ、全く問題な。


しかし、ここで一つ素直に報告しておこう。



「ちょっと吐きそう!」


「我慢してっ!」



走って走って、曲がって曲がって、休み暇など一切ない。


それでも僕が止まらずにいられるのは僕の手を引いてくれている英里佳がいるからだろう。


だから僕は走りながら考える。


シャチホコの案内を受けているのが彼女一人だったら、おそらくもうとっくに追走してくるラプトルを撒けたのではないか、と。


どう考えても僕が文字通り足を引っ張っているということだろう。



「GYAAAAAAAA!!」



「きゅきゅぅっ!? きゅっきゅう!!」



突如前方に現れたラプトルにシャチホコがその場で大きく跳びあがったが、即座に方向転換して左側の道に走る。


それに僕たちも続いて走っていこうとしたが、目の前のラプトルがジャンプして飛びかかってきた。



「歌丸くん、ごめんっ!」


「え? ――とわっ!?」



唐突に視界が反転したかと思えば、僕はその場でしりもちを着いて転がっていた。


転がる瞬間にラプトルの腹が眼前を通り抜けていく。


かと思えば、紺色の布が大きく広がって視界を塞いだかと思えば、視界の端に印象的な布が見える。



「白」



「GYAOOOO!!?」



ズシンという音とともに、ラプトルの悲鳴が聞こえる。



「…………ッ」


「あ」



よく見れば、僕は寝転がった状態で英里佳を見上げており、その英里佳はスカートを手で押さえて顔を赤くしながら僕を睨み付けていた。



「えっと…………ナイスキック!」



僕に足掛けをして転ばせることでラプトルの攻撃を回避させ、尚且つ着地したラプトルの脚を蹴ってすッ転ばせるとは、なんという手際、いや足際。


見事としかもう言えません。



「いいから早く立って!」

「うっす!」



即座に立ち上がった僕の手を英里佳が掴み、再び走り出す。



「GARRRRR!!」

「GYAOOOOO!!」

「GUOOOOOO!」



すッ転んだラプトルに、追ってきたラプトルが合流してこちらに走ってきた。



「さ、三匹って……多すぎない……!」


「もう一匹、隻眼の個体がまだどこかにいるから気を付けて!」


「まだいるのぉ!?」



いや、事前情報で隻眼がいるのは知っていたし、群れって言うくらいだからもしかしたらまだほかにもいる可能性もあるか。


本当に、息をつく暇すらない。



「わぁあああああ!!」



「「っ!」」



そんな時、前方方向から人の悲鳴が聞こえてきた。



「きゅっ、きゅきゅ!!」



その声に反応して方向を変えようとするシャチホコだが、ここは一本道でもう先がない。



「あ、があ――――」



そして前方から聞こえてきた悲鳴は途絶える。


続いて、何かがこちらに近づいてくるような大きめの足音がして、その姿を現す。


重要を感じさせる足音で、口にを加えた状態で地面を赤い液体で濡らしながらそいつは現れた。



「GURRRRR……」



唸り声をあげながら姿を現したそいつの口にくわえられている物体を見て、僕は背筋が寒くなる。



「あ、あれって…………あの、人の……」



――腕だ。


僕の腕なんかよりよっぽど太くて逞しい男の腕が、制服ごと噛み千切られている。



「きゅ……きゅきゅぅ……」



そしてそれを行った存在を見て、シャチホコが心底怯えた様子で僕の元に戻ってきて足にしがみついてきた。



「隻眼……!」



英里佳がナイフと銃を構えて前方をふさぐ隻眼のラプトルを睨む。


ああ、間違いなく昨日、僕が対峙し、そしてシャチホコが目を潰した個体だ。


急がないと背後から追ってくるラプトルに追いつかれて完全に詰んでしまう。



「GYARRRR……GUOOOOOO!!」



「きゅきゅきゅきゅぅ……!」



隻眼の敵意はどう見てもシャチホコに向けられていた。


当のシャチホコは完全に委縮して僕の脚にしがみついたままだ。


もう完全に委縮してしまっていて動けそうにない。



「歌丸くん、シャチホコをカードに戻して」


「う、うん。戻れシャチホコ」



アドバンスカードを提示しながらそう宣言すると、シャチホコの体とアドバンスカードが同じ光を放つ。


そしてシャチホコの姿が光って、カードの中へと入っていく。



「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」



シャチホコが姿を消した途端、ラプトルの強い敵意が僕に向けられた。


復讐相手を隠されたことがよっぽど腹立ったらしい。



「……で、どうするの?」


「手は繋いだままで……絶対に離さないように、全力で握ってて」


「わかった……ふんっ!」


「…………もっと強く」


「え、これ全力なんだけど?」


「………………私の方で力込めるから我慢してね」


「うっす」



英里佳から握られる手の力が強くなった。


わー、女の子の手やわらか…………いたたたたたたたたたたたたぁ!


痛い、マジで痛い。


英里佳の手の力マジで半端ない!


だが我慢する!


ここで泣き言うとか男として色々情けなさ過ぎるもんっ!



「GARRRRR」

「GYAUAAAAA」

「GUOOOO……」



って、そんなこと考えてる間に後ろから三匹やって来た。



「あの……完全に挟まれたんですけど?」


「うん」


「……打開策とかは?」


「合図したら、目を瞑って」


「え、それだけ?」


「それだけ」



なんか具体策とかまったくないんですけど……大丈夫なのこれ?


…………まぁ、大丈夫か。



「わかった。英里佳を信じるよ」


「…………うんっ。絶対に、歌丸くんを守るから」



やだ、イケメン……ってか、さっきから男女立場逆だと思うんだよね。僕の男子力低すぎ。



「GUROOOOOOOOOO!!」



隻眼のラプトルが吼えると、背後にいた三匹も動く。


四匹同時にこちらに迫ってきた。



「歌丸くんっ」



英里佳に名前を呼ばれ、僕は咄嗟に目を強く瞑る。


瞬間、強烈な炸裂音と瞼でもシャットアウトしきれないほどの強烈な閃光が生じた。



「っ!」



突然の音に酷い耳鳴りがして、立っていられなくなってその場で倒れそうになった。



「――狂狼変化ルー・ガルー


「え?」



そんな中、英里佳が何か呟いた。


そして握っていた手に変化が生じたのだが、それがなんであるか確かめる前に僕は全身が浮遊したような感覚と、強烈に右手を引っ張られる感覚がする。



「っ……んんっ!?」



目を開いてみると、とんでもない速度で壁が流れていく。


視線を壁が流れていく方に送ると、ラプトルたちが四匹ともまとめて倒れているのが見えた。


何か呻いている様子だが、まだ耳鳴りが酷くて何も聞こえない。



「あ、あの、えり……かぁ!?」



今度は反対に、今まさに僕を引っ張っているであろう英里佳を見て、僕は口を大きく開けた固まってしまう。


僕の手を握っていたはずの英里佳の手が、人の手とは思えないほど毛深く……というか、毛皮に覆われたモフモフな感じになっていた。


そして全力で前を見て走っている今の彼女の姿に、僕はさらに驚愕する。



――獣耳けものみみ



人の耳があるはずのその位置。


英里佳のそこにあるはずの耳が、人のそれではなく犬のような耳に変化していたのだ。


唖然とする僕をよそに、英里佳はそのまま通路を走り抜け、そして横道を見つけた瞬間にそこを曲がり、また何度か曲がってからようやく止まった。



「……解除」



英里佳がそう呟いた瞬間、獣耳と毛皮を纏った手が元の人の耳と手に戻る。



「はぁ……ふぅ……はぁ……」



英里佳は大きく息を整えながら、こちらを振り返る。



「歌丸くん……だい、じょうぶ?」


「う、うん……英里佳のおかげで何とも」



英里佳はつないだ手を離して僕の右肩に触れる。



「肩とか、痛めてない?」


「あー……うん、大丈夫みたい」



腕を動かせばちゃんと方は上がる。


ちょっと肩痛いけど、あのままラプトルにやられるよりは何千倍もマシだ。



「そっか……よかった」


「まぁそれより、さっきいったい何をしたの?

なんかすごい音がしてピカッと光ったみたいだけど」


「予備で持ってたフラッシュバンを使ったの。


それでラプトルリザードが動けなくなったところ、ベルセルクの“スキル”を使って、今私の出せる全速力で逃げ出したの」



「ベルセルクのスキルか……凄いじゃん!


というかなんで最初から使わなかったの? あれがあればラプトルから楽に逃げ切れたんじゃないの?」



僕の質問に対して、英里佳は目を伏せる。


あれ、なんか言っちゃ悪いことだった?



「ベルセルクのスキル……そのほとんどが使えば使うほど理性を失いやすくなる副作用があるのは知ってるよね?」


「あ、うん」


「それで……私が習得している“狂狼変化”は、その中でも特に理性を削りやすい物の一つなの。


身体能力を通常時の数十倍に引き上げてくれる代わりに、一日に三分も使えば理性が完全に消えて見境なく動くものを破壊してしまうの」



それなんてウル〇ラマン?


かなり強力なんだろうけど、なぜよりにもよって初期のスキルがそれなんだろうか。


ツリーダイアグラムのスキル構成、僕ほどではないけど英里佳も相当癖が強いぞ。



「そして私は……歌丸くんに会う前に二分以上はこのスキルを使用している」



「……あ」



そうだ、なぜ気づかなかったんだろう。


英里佳がこの状況に陥ったのは、ラプトルに襲われている生徒を助けたからだ。


その時に彼女が格上であるラプトルの群れを相手に立ち回る際にスキルを使わないわけがなかった。



「そして今、逃げるのに少なく見積もっても四十秒は使った。


だから……私がまた、狂狼変化を使えるのは多くて二十秒、最悪、十秒持つかも怪しい。


それが過ぎれば、私はラプトルリザード相手に理性的に行動できず、逃げずに戦うようになる。


当然、その時は歌丸くんを味方だと認識できる保証もないの」



「なるほど……」



ということは、英里佳一人ならあの状況を切り抜けられた可能性はあるが、僕の存在が邪魔で虎の子のスキルを使わざるを得なかったわけか。


あれ、僕すごく邪魔?



「と、とりあえず出てこいシャチホコ」



ラプトルは撒いたし、追ってくるまで余裕もある。


その間に迂回路でもあったらそこから地上を目指そう。


足引っ張った分はそれで汚名返上といこう!



「……きゅう」



なんかテンション低くない?


アドバンスカードから姿を現したシャチホコはなぜか異様にテンションが低かったが、まぁ気にしないでおこう。



「シャチホコ、ここから地上にはどうやって出たらいい?」


「……きゅうきゅう」



僕の質問に、シャチホコはその場から動かずに首を横に振る。



「……シャチホコ、地上への道は?」


「……きゅ」



恐る恐る質問すると、シャチホコがその小さな手で示した方向は僕たちがやって来た道だ。


あの方向にはラプトルがいるからできれば戻りたくない。


何度か道を曲がったとはいえ、向こうの追跡能力も馬鹿にでかいないし。



「他の道はあるのか?」


「きゅん」



首を横に振られた。



「あ、もしかして何度か曲がった道とは別方向にあったってことか?」


「きゅん」



また首を振られた。


いったいどういうことなんだと、僕が首をかしげていると英里佳がシャチホコの前でしゃがんで問いかける。



「……地上に戻るためのルートを行くには、ラプトルとの接触は避けられないってこと?」


「…………きゅう」



重々しく、静かに頷いたシャチホコ。


その事実に、僕は頭が真っ白になった。



「…………えっと……あの…………その……」



やばい、やばいよやばいよ、やばすぎるよ。


せっかく汚名返上とか考えてたところで一気に詰んでたよ!


これじゃ返上どころか、むしろ挽回というか、汚名挽回だぁ!!


どうしたらいいの、教えて偉い人!!



「英里佳、その――ごめ」「ごめんなさい」



どうしたらいいのかわからず、とりえあえず頭を下げようと思ったら英里佳から頭を下げられてしまった。



「あ、え、ちょっと……なんで英里佳が謝るの?」


「だって……私が道を適当に選んだせいで地上へのルートが途絶えて…………本当に、ごめんなさい」


「いやいやいやいや、逃げるのにいちいち道を選ぶ余裕なんてあるはずないよ!


それに謝るのはむしろ僕の方って言うか、僕が足引っ張ったのがそもそもの原因であって……むしろ僕の方がごめんなさいというか……


その、あの……英里佳一人だったら、もっとうまく切り抜けられてたはずだったのに……僕が余計なことしたから……」


「そんなことないっ……私は……歌丸くんが来てくれなかったらあの場から動くことすらできてなかった……むしろ、私はまた歌丸くんを巻き込んでしまって……」


「巻き込んだなんてそんな……ただ僕が好きで勝手に一人で来ただけだし。

そこに英里佳が責任を感じることなんてないって」


「…………どうして」



英里佳は俯いたまま、肩を震わせる。



「どうしてそんなに、歌丸くんは……私のために無理するの?

私は君に、何も返せない」


「あ、うん」


「うんって……私を助けても、何にも得なんてないんだよ」


「そりゃ、まぁね」



僕がそう答えると、英里佳は呆然とした表情になる。



「ん~…………あのさ、英里佳って“友達”ってどういう者だって考えてる?」


「え、友達って……どうして今そんなことを?」


「まぁ、いいからいいから、ちょっと教えてくれないかな?」



どうせ状況は好転したりするわけでもないし、だったら英里佳とちゃんと話しておきたいと、今は思う。



「私は…………友達とか、言われても……よくわからない。

でも…………一緒にいることの多い人……だと思う」



英里佳は自信なさげな様子だ。


多分……英里佳って僕みたいに友達が少ないタイプなのかもしれない。


いや、そもそもそこいらのガチ勢を凌ぐ動きを見せる彼女だ。


小学生から迷宮入学するまで、もしかするともっと長い間訓練してきたのかもしれない。



「うん、僕も詳しいわけじゃないけど、似たような感じかな。

で……なんていうかさ…………僕が英里佳を助けるのって結局のところ僕のためなんだよ」


「……歌丸くんの?」


「そう、僕のため。


損得とか、見返りなんて言われても、思いつかないよ」



英里佳のために動けたら、きっとかっこいい男なんだろうけど……正直そういう理由を考えるとすぐに思いつかない。


それでも英里佳を助けたいと思う理由があるとすれば、それはもっと単純な気持ちから来ているものだ。



「僕はただ英里佳がいなくなったら寂しい。それは嫌だ。


だから助けに来た。それだけだよ」



「……歌丸くん……」



互いに見つめ合う。


あれ、もしかしてこれ、いい雰囲気ってやつ?


命の危うい状況下で恋に落ちる吊り橋エフェクト的なあれですか?



「よく『重い』って言われたりしない?」


「しないかな。そもそも言われる相手もいない」



違った、普通に違った。


というか、え? 重い? アレ、僕の考え重い?



「ふふふふっ」


「あ、あれ? そんなに変だった?」


「うん、変。すっごく変」



二回言われた。



「もう……これなら普通に見返り求められた方がこっちは気楽なんだけどな」


「えぇ~……そんなもんなの?」


「うん、そんなもの。


だからちゃんと私は歌丸くんにお礼を返すから」


「別にそんなの気にしなくても……」



正直、僕としては本当にお返しとかいいのだが……というか指摘されるまでそういうの考えもしなかったし……



「そうじゃないと、私の気が済まない。


だってって、対等なものだって私は思うから」


「……え」



友達……今、英里佳の口からその単語が出た。


それが何を示すことなのか僕はすぐにわかって、たまらずにやけてしまう。



「……うんっ」



父さん、母さん、僕この迷宮学園でようやく友達が出来ました。



「きゅうきゅ」



「よかったな旦那っ」とシャチホコがポンポンと僕の足を軽く叩く。



「ありがとなシャチホコ。うん、お前も僕の大事な友達だぞ。


最悪ラプトルの餌にして逃げようとか思ったけど、もうそんなこと絶対にしないからな」



「きゅう!?」



「それは最終手段として私も考えたけど……シャチホコがいないと地上にも行けないからやめといた方がいいかも」



「きゅきゅう!?」



「冗談だよ。ね、英里佳?」

「え? ……あ、うん、そう冗談冗談」



「きゅきゅきゅ~!?」



冗談と言ったはずなのに過剰に恐れ戦くシャチホコのリアクションに僕も英里佳も内申ほっこりとさせてもらう。


見た目もいいしリアクションも大きいとか、なんかいいムードメーカーだよねシャチホコって。



「よし、じゃあ気合を入れなおして……どうやって地上に出るか考えよう」


「……私の武器はナイフと拳銃で、歌丸くんの槍。


歌丸くんのスキルで使えそうなものはない?」


「あー……えっと、それが……」



僕は学生証を取り出して英里佳に見せた。



「……ヒューマン?」


「うん、なんかスキルのほとんどが“健康になる”っていうもので戦闘にあまり役立たないらしいんだけど……今僕が覚えてるのは“貧血にならない”ってだけのもので……正直役に立たないかな」


「そう、なん…………ちょっと、良く見せて」


「え、あ、うん」



僕は英里佳に学生証を渡すと、その中の二つの項目を注目した。



「……この“意識覚醒アウェアー”っていうの、すぐに覚えられるよね?」


「覚えられるけど……それ、名前がカッコいいだけで結局のところ寝起きが良くなるってだけのスキルだよ?」



貧血にならないスキルだって、名前が“血界突破オーバーブラッド”って仰々しいだけで血液が減らないというだけのスキルだし……


だから正直、三上さんたちと一緒に集めたポイントを使うのは気が引ける。



「それともう一つ……このスキルがあれば……」



「え?」



英里佳が指さしたスキル。


それは僕のツリーダイアグラムの中にあった。


おかしいな、前に見たときはそんなところにスキルとか無かったはずなんだけど……見落としたのかな?


疑問に思いながらも僕はそのスキルの内容を確認する。



「っ……これ、え……ああ、そうか!」



意識覚醒を習得して残ったポイントではどう考えても習得できないが……その内容を確認して活路が見えた。



「このスキルを僕が覚えられれば……」



僕の言葉に、英里佳が力強く頷いた。



「うん。私たち……生き残れるかもしれない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る