第3話 ふっ、グンマーなど我ら地雷衆の中で安牌だ! 迷宮学基礎編

「今日は入学式で授業はないが、これからお前らには迷宮探索を行ってもらう。


といっても今日は初めてだから、かなり緩い内容だ」



教室から移動し、僕たちがいるのはこの迷宮学園の中央に位置する大広場だ。


広場、とは言うがその広さは東京ドーム100個は軽くありそうで端から端までが霞んで見えるくらい広い。


とにかく馬鹿みたいに広い。


いったい何のための場所かと言うと、ここは実は迷宮の入り口なのだ。


広場の至る所に円形で輝く紋様がある。


RPGで言うところの「パッと行く」的な転送魔法陣というやつだ。


本当は広場の各所に地下迷宮につながる階段があるんだけど、今日は新入生全員、つまり50万近くの人間が同時に迷宮に入るということでの特別措置らしい。


「初心者ばかりでも人数が多ければ対応はできるし、二、三年の攻略者たちも入っている。


危険な奴は先に入って駆除してもらってるから、今日だけは安心して迷宮攻略をしてもいいだろう」



武中先生のその言葉に、何人かの生徒が緊張を緩ませた様子を見せた。


ちなみに僕もその一人である。



「何を生温いことを……」



ぼそりとまた文句を呟いているグンマ―三上さん。


あなたは文句を言わないと生きていけない人なのですか?



「初日ってことで武器もこっちで用意してある。


自前のものがあるならそれを使っても構わないが、用意できる奴なんて稀だ。


遠慮せず使え。ただし、これが壊れたら次の武器は自分で都合しろよ」



そういって武中先生が指を鳴らすと、唐突に大量の武器が出現した。


パッと見ただけでも長さの異なる刃物、ハンマーや斧、槍に弓矢、盾などがある。



「銃とかはないんだな……」



誰かがぼそりと呟く。


武中先生は頭をかきながら使いの説明をした。



「あ~……銃に関しては一応ダンジョンでの使用は認められてるんだが、免許が必要になる。


日本の銃刀法は規制が緩和されただけでなくなったわけじゃないからな、迷宮攻略には有効ってことで小学校か中学校で教習を受けたものに限り持つことを許可されてるんだ」



つまりガチ勢の証ですね、わかります。



「もっとも、銃を使うやつは大抵が資金に余裕がある奴ばっかりだ。


迷宮生物の中には通常の弾丸が効かない奴もいるしな。


学長とか、その最たる例だぞ」



「「「あ~」」」



みんなが納得した。


そうだよね、あの人(?)ではなかったけど、他の迷宮学園の学長はもっと強力な兵器の直撃受けても平気だったし、核兵器受けても生きてる超級生物だった。



「そういう場合は特殊な弾丸が必要になるのだが、一番安い奴でも拳銃の八発弾倉で8000円くらいだ。相場によってこれ以上になるときもある」



拳銃の弾丸一発で1000円。


在学中に資格を取ろうかと思って銃のことは調べていたから、法外の値段とまでは言わないが、それでもそれが一番安いとなると、効果の見込める弾丸はかなり高価ってことか。


となると、現状はもちろんだけど、その先も使っていけるのかは怪しいな。


やっぱり無難に長持ちする武器の方がいいかも。



「だから身の丈に合った武器を選べよ。そこを間違えると早死にするぞ」



そんな風に武中先生が注意をすると、唐突に僕の肩に手を置かれた。



「全く武中先生はロマンがわかっていませんねぇ」



痛い、軽く爪がめり込んでます学長。



「学長……なんですか?」



「なんですか、ではありませんよ。


君は少々生真面目が過ぎますよ。


身の丈に合った武器というのは確かに大事ですが、そのような言い方では銃を選ぶ人が減ってしまいますよ。


銃はもちろん、火薬を使った武器というのはロマンがあります。


コストばかり意識して、そのロマンを捨ててしまっては青春を謳歌できませんよ。


ねぇ、歌丸くん」



「あっと……その……実用性はあんまり感じられませんけどパイルバンカーとかロマンありますよね」



「ふふふっ、歌丸くんわかっていますねぇ。


ですが、パイルバンカー意外と使われてますよ?」



「マジですか!?」



使われてんの、パイルバンカー! すごい、見てみたい!



「良い反応です。


やはり武器にロマンを求めるのは男子の本懐ですよねぇ」



「……学長、初心者にはどっちにしろ使えませんし使わせませんからそういうことは無闇に教えないでください。


アレ取り扱いが危険なんですから」



「おっと、そうでしたね。


残念ですね、歌丸くん」



「あ~……いえ、別に使いたいわけでは……使ってるところは見たいですけど」



「なるほど、君は謙虚なのですねぇ」



「あ、あはははは……」



なんか懐かれた? いや、目を掛けられているの? なんで、ドラゴンなんで?



「あ、体調大丈夫ですか?


気持ち悪くなったらすぐに言うんですよ?」



あ~、ついさっき教室で思い切り吐いたから、病弱な生徒と思われてるようだ。


否定はしないけどさ……運動苦手だし。



「学長、歌丸についてはこちらも注意をしておきますので仕事に戻ってくれませんか?」



「いいではないですか今日くらい。


君たち人間の手続きなんて本来必要ないのに付き合ってるんですから」



「どちらにしても一人の生徒をひいきする真似はやめてください。


それは周りにはもちろん、歌丸自身のためにもなりません」



なんか、さらっとこの武中先生すごいことやってない?


一国をかるく滅ぼすことができるドラゴンにここまではっきり物申すとか、僕には絶対できないぞ。



「……ふむ、しかたありませんねぇ……あぁ、歌丸くん、これ、エチケット袋です。


もしもの時は使ってくださいね」



「あ、ありがとうございます」



顔が引きつるのがわかる。


なんかもうこのドラゴンの中では僕=ゲロみたいな図式が成り立っているのではないだろうか。


別にそんなしょっちゅう吐いたりしないから、こっちは。


渡されたエチケット袋をポケットにしまって、学長が去っていくのを見送る。



「……ふへぇ~……」



口から情けない声とともに空気が吐き出される。


どうにも僕自身、学長の存在が思っていた以上に重圧だったようだ。



「……さて、とりあえず武器は好きなものを使え。


で、好きな奴と組んで自己紹介とか役割とか決めてから迷宮に入れ。


ただし今日は絶対に何があろうと最低二人組な。


今日は一人での迷宮攻略は絶対に認めないからそのつもりでな」



なるほど、仲間と一緒か。


たしかにそれなら安心だ。



「あ、すいませ」「おい組もうぜ!」



一番近くにいた男子生徒に声を掛けようとしたら別の人と組もうと離れて行ってしまった。


うむ、まぁ最初はこんなもんだろうと、気持ちを切り替える。



「あの」「あー! そこのあなた、私と組もう!!」



な、なんだと……! 自らあの地雷と組もうとは奇特な人もいたものだ。


まぁ、グンマー三上とは正直関わりたくないからあの人ともやめておこう。


ではほかに誰か……



「…………あれ?」



周囲を見回すと、なぜか僕の周辺に空間ができていた。


半径3m以内に誰もいないし近づいてこない。



「……えっと、あの」



その場からゆっくり一歩歩き出すと、前方にいた人たちも一歩動く。



「…………」

『…………』



歩く、動く。歩く、動く。


まさにこれぞ一進一退。


試しに横方向に動くとそちらも動き、意表をついて後ろに動くとそちらも動く。



「な、なんだこの一体感は……!」



まるで示し合わせたかのような動き。


これは誰かの陰謀が働いているとしか思えない。


……はっ! まさか、このための布石か!



「おのれ学長!」



「いやなんでだよ」



唐突に声を掛けられたのでそちらを向くと自己紹介の時一番最初の相田君がいた。


しかし、僕と目が合おうと慌てて目を背け、仲間と思われ人たちから「何してんだよ」と責められていた。


何事だろうか?



「ふむ……」



周囲を見回すとなんか結構集団ができている。


今から入っても阻害感が強くてヤダなぁ……


しかたない。こうなったら人数が少ないところを狙って……



「むむっ」



よく見るとこの場でまだ二人組にしかなっていない人がいた。


というか、さっきの生徒とグンマー三上だった。



「ぐ……三上さん、よかったら僕も」「お断りよ」



ちっ……このグンマーめっ。


しかし、このままじゃ組む人がいない。


ここはどうにか頭を下げて……



「あ」「臭いから近寄らないで無能。あっち行くわよ」

「あ、はい……えっと、ごめんね」



有無を言わさず、頭を下げる前に三上さんと名も知らぬ女子生徒はその場から去っていく。



「……えっと……」



周囲を見回して、僕はようやく自分の置かれた状況に気が付いた。


運動苦手

学力最低

適正無し→戦闘能力低い

おまけに自己紹介のゲロ騒動



「…………やばい、僕グンマ―より地雷じゃん」



何ということでしょう。


そうでなくとも適正がない時点でそうとう地雷なのに駄目押しのゲロでここまで敬遠されるとかイジメじゃね?



というかマズイ、本気でマズイ。



「……あの」



「え」



唐突に声を掛けられて振り返ると、そこには学長と騒動を起こし、僕のゲロの引き金を引いた榎並さんがいた。


一体何の用なのだろうと考えていると、榎並さんがどこか緊張した面持ちで提案してきた。



「今日だけ、よかったら……その、私と組みませんか」



「はぇ?」



意外な提案に変な声が出た。


こんなどう見ても地雷な僕にそんな提案をするんだ、と思ったが、彼女も一人でいることに僕は気づいた。


そうだった、彼女の適性はベルセルク。


今の僕ほどではないにしても、迷宮攻略においては地雷扱いの鉄板だった。



「……あの、やっぱり……嫌ですか?」



「いやいやいやいや、とんでもない! あ、今のは組むのが嫌ってことじゃなくて、組むのが嫌ってのがいやってことであって、だからその、あのえっと――!!」



おおう! ろくに人と話したことも乏しい僕に同年代女子との会話スキルなどまともに望めなかったぜチクセウ!!


僕はもうその場の勢いで角度90度に頭を下げて右手をピンと榎並さんへ伸ばす。



「よろしくお願いひまひゅ!!」



やべ噛んだ。



「…………ぷっ……ふふ」



やべ笑われた。


穴があったら入りたい。


もう顔がありえないほど熱い。


恥ずかしいとき、顔から火が出そうって表現の意味が今ようやくわかったよ。


確かに顔から火が出そうなほど熱いぞ、この恥ずかしさ。



「うん。よろしくね、歌丸くん」



その言葉とともに、手を握られた感触がした。


顔をあげると、笑顔の榎並さんがそこにいた。


教室で見た人形のように無機質だった顔と違い、今は年齢相応の少女のようなその表情に僕は目を奪われ、心が無防備になる。



「……かわいい」



「え」



……って、何言ってんだ僕はぁ!!



「――――か、川はいいよねぇ!! うん、川最っ高!!」



「え……あ、『川はいい』って言ったんだね。歌丸くん川が好きなんだね」



「あ、あああ、大好きさ! リバー最高! ベリーマッチ! 川ラブリー!!」



何言ってんのこいつ、馬鹿じゃね? 僕でした。



「そっか、私はどちらかというと……海の方が好きかな」



「うんうん、海もいいよねぇ!」



何を話し合ってるんだろう僕たちは。


誰か、誰でもいいからヘルプみー……



「ちょっと、そこうるさいわよ」



「あ、ごめんなさい」

「ありがとう」



「いいから静かに……ちょっとなんで今お礼言ったの?」



「ありがとう」

「なんで二回言ったの?」



二回言いたいくらい感謝してるんです。


会話の流れを切ってくれてありがとう(切実に)



「歌丸くんって面白い人なんだね」



「そ、そう? 初めて言われたかも……あ、握りっぱなしだったね、ごめんごめん」



凄い柔らかいから手を放すの惜しいな。


銃とか握ってて感触でマメができてるのはわかったけど、それでも柔らかかった。


女の子の手は柔らかい。


うん、実にいい。



「ううん、いいよ。


……ところで歌丸くん、実は武術とかやってた?」



「え? いや、自己紹介通りに中学もろくに通ってないインドア派だけど」



「でも……歌丸くん、手にマメできてるよね? 変わった付き方してるけど……」



「あ~……それは、その……そう! ゲーム! ゲームコントローラー握りっぱなしだったから、そのマメだよ。あはは」



「そうなんだ。私ゲームとかよく知らないけど、そんなに面白いの?」



「もちろん。特にレトロなゲームとか僕は好きなんだ。


あ、よかったら榎並さんにも貸すよ? 簡単なパズルゲームとか」「英里佳エリカ」「え……」



「私、名前で呼ばれる方が慣れてるから英里佳って呼んで」



じ、女子を名前呼びだとぉうっ!?


しかも出会ってまだ数時間も経っていないのに……!


さ、最近の女友達はこんなフレンドリーなものなのか!



「あ、だったら僕も名前でいいよ、実は僕も苗字がなんか落語家みたいであんまり好きじゃないんだよねぇ」


「そう? 私は歌丸くんの苗字好きだけど……」


「どうも歌丸です。今日からそれが僕の名前だ」

「苗字だよね?」



連理れんり? 何それ、食えンの?



「えっと……呼び方は歌丸くんでいいんだよね?」


「YES。僕は今日、この時この瞬間より未来永劫三千世界の彼方だろうと歌丸だ。歌丸襲名だ」


「ふふ、やっぱり歌丸くんって面白いね」



「本当? 本家超えた?」



「本家?」



「気にしないで、こっちの話」



ヤバい、初めての女子との会話で想像以上に自分が浮かれているのがわかる。


僕ってこんなに馬鹿丸出しなキャラじゃないはずなのに……



「おーい、そこの二人は武器いらないのか?」



武中先生に指摘され、周囲を見回すともうみんな武器をその手に持っていた。



「そうだった、僕もなんか武器を選ばないと。


エ、英里佳さんは?」



「呼び捨てでいいよ。私は自前があるから大丈夫」



呼び捨てでいいよ……だとぉうっ!


最近の女子のフレンドリーさはいったいどうなってんだぁ!


惚れてまうやろっ!! あ、古いか、もう化石か。


っと、落ち着け僕。クールになれ。


この程度で慌てふためくなど“チェリー”くらいなもんだぜ。山形だけになぁ!

※山形県名産品サクランボ



「じ、じゃあ選ぶの手伝ってくれないかな、え、ええええ英里佳」



この程度で慌てふためくぜ“チェリー”だからなぁ! 山形出身だけにぃ!

※山形県名産品サクランボとは一切関係ありません。



「うん、いいよ」



やべぇ、マジ天使。



そんなこんなで武器選び。



「やっぱりスタンダードに剣とかかな」



そう思いながら手近にあった剣を手に取ってみる。


意外と重い。



「歌丸くん、握力どれくらいあるの?」



「えっと……25kgくらい?」



「…………じゃあ、剣やハンマーとか振り回すタイプはやめた方がいいかも。


重い武器を振り回して飛んで行ったら怖いし……かといって小さいものだと間合いが取りづらいから……」



そういって英里佳が手に取ったのは槍だった。


並んでいる槍の中では比較的に短い部類だが、それでも僕の目線のチョイ下くらいまである。



「一般的に槍って使用者の身長より長い方がいいんだけど、迷宮の中って狭い場所もあるからこの短槍の方がいいかな。


短いって言っても槍の中ではって話だし、これなら十分間合いが取れるよ」



そういいながら渡された槍を持ってみる。



「お、なんか軽いかも」



「重心が手元に近いからそう感じるんだと思うよ。


重さならさっきの剣の方が軽かっただろうけど、重心が手元から離れてるから」



「へぇー……重心だけで持ちやすさがこんなに違うんだ」



そう思いながら他の槍を見ている。


なんか横に刃や突起が付いてたり、幅の広いものなど種類が豊富だった。



「そっちのはダメなの?」



「こっちのは振り回したりもできるようにしてるタイプ。


ハルバートは特に多目的に使えるようにできてるの。だけど素人がそういうのに手を出すと怪我しやすいから。


でも今歌丸くんの持っている直槍は突くのに特化した武器で、戦国時代では一般的な武器だったの。だからすごく使いやすくて頼りになるはずだよ。


相手を近づかせずに、突いて倒す。槍の基本で、理想なの。極めるのは大変だけど、基本的なことだからすぐにできるよ」



「なるほど。なんかリバーシみたいだね」



「リバーシ?」



「あ、オセロって言ったほうが分かりやすいかな?


覚えるのに一瞬、極めるのに一生って言われてるんだよ、あのゲーム」



「うーん……ちょっとよくわかんないかも。ゲームとかよく知らなくて」



「え?」



これは名前でピンとこないってわけではなく、リバーシというゲーム自体を本気で知らない感じだ。


あんな一般的などこでもできるようなゲームを知らないって……どういうことだ?


対戦相手もろくにいなかった僕でも知っているというのに…………あ、なんか悲しくなってきたぞ。



「とりあえず作戦だけど……」



そういいながら英里佳が左腕を軽く振ると、その手に大振りなナイフが突然出てきた。



「何それかっこいいっ!」



「え? そ、そう?


とにかく、このナイフを使って私が前に出て戦うから、合図をしたら歌丸くんが槍で突く。それでいい?」



「それだけでいいの? 英里佳の負担大きくない?」



「もしもの時は……こっちも使うから大丈夫」



その言葉と同時に、今度は右手に教室で使っていた拳銃が出現した。



「なんかスパイみたいでかっこいいね!」



「そ、そうかな? そんなこと言われたの初めてかも……」



「いいなぁ~、そのジャキってなる奴って僕にもできたりする?」



「別に難しい仕掛けではないけど……槍じゃ無理かなぁ」



「むっ……確かに」



僕の手にある槍じゃどうやっても袖の中に隠れそうにない。



「よぉーし、じゃあ今光ってる転送魔法陣から好きな奴を選んでどんどん移動しろ」



そんな武中先生の指示に、周囲の生徒たちが動く。



「さっさと行くわよ」

「う、うん」



真っ先に動いたのはグンマー三上と、それについていく杖を持った女子だった。



「あの人、もしかして魔法使えたりするのかな?」



「あ、そっか歌丸くん自己紹介の途中で抜けてたもんね」



すいません、ゲロの処理として着替えてました。


ちなみに今更ですけど、僕だけ上着がジャージです。



「彼女は苅澤紗々芽かりさわ ささめ


適正は支援魔法がメインの“エンチャンター”


迷宮学園全体でも適性が少ないの」



「へぇ……でもエンチャンターって普通集団で光る役割なのに二人だけってどうなんだろ」



「詳しいんだね」



「え? あ、うん。迷宮学園の適性ってゲームの職業とほとんど同じだからね。


グンマーの適正は?」



「ぐんまー?」「言い間違えた。三上さんだった」



「言い間違え?


……えっと、彼女の適性はフェンサー


剣を使うのが得意な適正で、彼女は片手剣を好んで使うみたい」



フェンサー。ソルジャーと並んで新入生に多い職業だったはずだ。



「でも今日はあくまで初心者向けってことだから大丈夫だと思うよ。


明日から別の人と組めばいいだけの話だしね」



「そんなもんかな」



って、今の僕に他人の心配をしてる余裕とかないか。



「それじゃ英里佳、適正のない身だけどよろしくね」



「こちらこそ。それじゃ行こ」



僕たちは並んで残っている魔法陣に足を踏み入れた。

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